前頁 | 目次 | 次頁

財団法人核物質管理センター保障措置分析所における核燃料物質の使用に係る安全性について(答申)


52原委第706号
昭和52年11月29日

科学技術庁長官 殿
原子力委員会委員長

 昭和52年8月29日付け52安(核規)第1762号(昭和52年11月7日付け52安(核規)第1826号で一部補正)をもって諮問のあった標記の件については、下記のとおり答申する。

 当該使用に係る安全性については、別添の核燃料安全専門審査会による審査結果報告のとおり十分確保されるものと認める。

別添

昭和52年11月15日
原子力委員会
   委員長 宇野 宗佑 殿
核燃料安全専門審査会
会長 山本 寛

財団法人核物質管理センター保障措置分析所における核燃料物質の使用に係る安全性について

 当審査会は、昭和52年8月30日付け52原委第517号をもって審査を求められた標記の件について、結論を得たので報告します。

 Ⅰ 審査の結果

 財団法人核物質管理センター保障措置分析所における核燃料物質の使用に関し、同センターが提出した「核燃料物質使用許可申請書」(昭和52年8月15日付け申請、昭和52年10月25日付け一部補正)について審査した結果「Ⅲ審査の内容」に示すとおり本使用に係る安全性は、十分確保し得るものと認める。

 Ⅱ 申請の内容

 本件は、核燃料物質のウラン及びプルトニウムを含む試料中の核物質量並びに同位体組成を、化学分析法、質量分析法及び非破壊測定法により分析・測定するとともに、査察用機器の較正等を行うため、以下の建家及び設備を設置するものである。

 なお、本施設における核燃料物質の使用量は、プルトニウムについては、1回当り最大20g、ウランについては、1回当り最大1,000gである。

 1 建家

(1) 分析棟

 核燃料物質の分析作業を行うための化学分析室、質量分析室、天秤室、排風機室等及び査察用機器の較正等を行う非破壊測定室を設けるため地上2階、延床面積約610㎡、鉄筋コンクリート造りの建家を建設する。

(2) 機械棟

 給気系設備、非常用電源設備等を設けるため地上2階、延床面積約140㎡、鉄筋コンクリート造りの建家を建設する。

(3) 廃液タンク置場

 低レベル廃液を貯留するための廃液タンクを設置するため、面積約23㎡地下3.5m掘込みのコンクリート造り有蓋の置場を設置する。

 2 設備

(1) グローブボックス及びフード

 分析棟内のウラン実験室区域に、ウランの化学分析及び質量分析を行うため、フード3台を設置する。また、プルトニウム実験室区域に、プルトニウムの化学分析及び質量分析を行うため、グローブボックス11台及びフード1台を設置する。

(2) 貯蔵庫及び保管庫

 分析棟内に核燃料物質を貯蔵するため、貯蔵庫を設置する。また、分析作業の仕掛品を保管するため、プルトニウム化学分析室、ウラン化学分析室及び非破壊測定室に、それぞれ核燃料物質保管庫を置く。

(3) 廃棄施設

 i) 気体廃棄施設

 分析棟管理区域内の換気を行うため、排風機等の設備を設置する。

 ii) 液体廃棄施設

 分析棟各室からの低レベル放射性廃液処理のため、配管及び廃液タンクを設置する。

 iii) 固体廃棄物保管場所

 分析棟内に、低及び高レベル放射性固体廃棄物を保管するため、固体廃棄物保管場所を設置する。

(4) 安全設備

 放射線管理設備、各種警報設備、非常用電源設備等を設置する。

 Ⅲ 審査の内容

 本件は、以下のとおり適切な配慮がなされているので、使用にあたっての安全性は、確保されるものと判断する。

 1 施設の安全性

(1) 建家

 i) 耐震耐火性

 分析棟及び機械棟は、その主要部が鉄筋コンクリート造りで、水平震度0.2に耐える構造となっており、室内の主要部材はすべて不燃材料を使用することとしている。

 ii) 負圧維持

 分析棟は、管理区域及び非管理区域との間に常時圧力差を設け、管理区域から非管理区域への空気の流出を防止することとしている。また、管理区域内もウラン実験室区域及びプルトニウム実験室区域に区分し、両区域間に常時圧力差を設けることにより、いかなる場合にもプルトニウム実験室区域からウラン実験室区域への空気の流出を防止することとしている。

(2) グローブボックス及びフード

 i) 耐震耐火性

 グローブボックスは、アンカーボルトで床に固定し、水平震度0.3に耐える構造となっており、転倒のおそれのないようになっている。フードも、水平震度0.3に耐える構造となっている。

 また、グローブボックス及びフードの部材は、不燃材料及び難燃性材料を使用することとしている。

 ii) 負圧維持

 グローブボックスは、気密構造として設計され、排気設備により実験室に対して常時負圧を維持することとなっており、ボックス内の放射性物質の漏洩を防止することとしている。

 フードは、排気設備を設け、フード開口部において所要の空気流速を維持することにより、フード内の放射性物質の室内への漏れを防止することとしている。

(3) 貯蔵庫及び保管庫

 i) 耐震耐火性

 貯蔵庫は、分析棟の一部であり、その耐震耐火性については分析棟と同様である。

 貯蔵庫に設置する貯蔵棚は、鋼製であり、アンカーボルト等により固定し、水平震度0.3に耐える構造となっている。なお、貯蔵庫入口及び貯蔵棚は、施錠できる構造となっている。

 核燃料物質保管庫は、鋼製で施錠できる構造となっている。

(4) 廃棄施設

 i) 気体廃棄施設

 気体廃棄施設は、地上からの高さ20mの排気筒のほか、排気ダクト、フィルタ装置及び排風機からなる。これらの施設は、排気筒の他はいずれも分析棟に付設する設備として耐震性及び耐火性を考慮した設計になっており、排気筒は、水平震度0.3に耐える構造となっている。

 排気系統は、プルトニウム実験室区域及びウラン実験室区域についてそれぞれグローブボックス及びフード内排気系統と室内排気系統が設けられ、いずれも予備の排風機が設置されている。各排風機は、非常用電源設備に接続される。また、各系統には、高性能フィルタが設置され、放射性じんあいを捕集することとしており、排気モニタにより排気中の放射性物質の濃度を常時監視することとしている。

 ii) 液体廃棄施設

 低レベル液体廃棄施設は、廃液タンク2基及び配管からなる。廃液タンクは、水平震度0.24に耐える耐震構造とし、地下3.5m掘込みのコンクリートには底面及び底面から高さ1mまでタールエポキシライニングを行うこととしている。

 iii) 固体廃棄物保管場所

 低及び高レベル固体廃棄物保管場所は、分析棟の一部であり、その耐震耐火性については分析棟と同様である。

(5) 安全設備

 空気中の放射性物質濃度、排気中の放射性物質濃度等の測定用放射線管理設備、グローブボックスの負圧維持及び温度管理、給気系、排気系設備の故障等の各種警報設備等を設けることとしている。

 2 放射線管理

 管理区域の出入管理のほか、管理区域を、プルトニウム実験室区域とウラン実験室区域とに区分し、両区域間の出入管理を行うこととしている。

 プルトニウム実験室区域とウラン実験室区域においては、放射線量率、表面汚染密度及び空気中放射性物質の濃度を常時測定することとしている。また、従業員の個人被ばく管理については、外部被ばくは勿論、内部被ばくについても管理することとしている。

 3 臨界管理

 本施設においては、設計上臨界管理を考慮しているのは、貯蔵庫である。貯蔵庫内の貯蔵棚を一貯蔵単位とし、収納する核燃料物質量を制限するとともに、貯蔵単位間の相互作用を防止するため、相互の面間距離を30㎝以上とすることとしている。

 4 平常時における一般公衆の被ばく線量評価

 気体廃棄物については、高性能フィルタ3段を経由して排気筒から放出される。このため、施設周辺環境で空気中の放射性物質濃度が最大となる地点での濃度は、周辺環境における許容濃度を十分下まわるものとなっている。

 液体廃棄物については、グローブボックス内で生ずるプルトニウム及びウランを含む廃液は、グローブボックス内で固化し、固体廃棄物として処理する。それ以外の廃液は、放射性物質濃度が放出基準値以下であることを確認した後、施設外に放出する。また、放出基準値を上まわるもの及び固体廃棄物は、日本原子力研究所東海研究所の廃棄物処理場に引き渡すこととしている。

 5 事故時の評価

 本施設は、十分な安全対策が講じられており、放射性物質の環境への放出を伴う事故は、現実には考えられないが、グローブボックス内に最大取扱量20gのプルトニウムが存在するとき、グローブが焼損し、室内に飛散して、排気系統を経て、排気筒から周辺環境に放出するという事故が仮に発生したとし、高性能フィルタの効果を1段のみとして環境への影響の評価を行った結果でも、一般公衆の被ばく線量は十分小さいと判断される。

 Ⅵ 審査の経過

 本審査会は、昭和52年9月12日第7回審査会において審査を行い、引き続き加工・使用部会において昭和52年9月21日、同11月7日及び11月15日に審査を行い、本報告書を決定した。

 なお、同部会の委員は次のとおりである。

部会委員
(部会長) 三島 良績 東京大学
伊沢 正実 放射線医学総合研究所
今井 和彦 日本原子力研究所
 (昭和52年10月31日から)
岡島 暢夫 中部工業大学
清瀬 量平 東京大学
筒井 天尊 京都大学
中田 正也 船舶技術研究所
松岡 理 放射線医学総合研究所
山本 寛 東京大学名誉教授
吉沢 康雄 東京大学


前頁 | 目次 | 次頁