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核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物の運搬に関する基準の改正について


科学技術庁

  1 改正の契機

 当庁は、昭和52年3月17日付け52安第22号をもって「核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物の運搬に関する基準(放射線障害の防止に関する技術的基準に関する部分)の改正について(諮問)」を放射線審議会に諮問したが、それに対する答申が去る8月9日付け放審議第43号として得られたので、それを受けて、昭和52年10月15日をもって「原子炉の設置、運転等に関する規則(昭和32年総理府令第83号)」、「核燃料物質の加工の事業に関する規則(昭和41年総理府令第37号)」及び「使用済燃料の再処理の事業に関する規則(昭和46年総理府令第10号)」の一部を改正し、これらの規則に基づく「核燃料物質等の運搬に関する措置に係る技術的細目等を定める告示(昭和52年科学技術庁告示第9号)」を制定したものである。

  2 改定の必要性

 原子力産業の成長による放射性物質の輸送の増加及び輸送実績に基づく経験を考慮してIAEA(国際原子力機関)において放射性物質の安全輸送のための規則(以下「IAEA規則」という。)の改正が1972年及び1973年に行われた。放射性物質の輸送は、国際輸送が多いことに鑑み、改正された規則を我が国においても採用することが望まれ、原子力委員会は昭和50年1月同規則に準拠して原子力委員会決定「放射性物質の輸送に関する技術的基準について」を行い、関係省庁に対し、同決定に基づき速やかに関係法令の整備を行うよう勧告している。

 また、最近の国内における核燃料サイクルに関連する事業活動の活発化に対応して、核燃料サイクルの総合的安全規制体制の整備を図る観点からも科学技術庁として早急に安全輸送のための技術基準の整備を行うことが必要となった。

 なお、当庁では、従来から運輸省との申し合せの下に上記IAEA規則及び原子力委員会決定の安全基準を運用上の基準として核燃料サイクル輸送物の安全審査を行ってきたところであり、今回の改正についても運輸省の関係省令の改正と整合性を図り、施行を合わせている。

  3 府令及び告示の基本的考え方

 府令及び告示は、原子力委員会決定に従い、いずれも答申の内容に準拠したものである。

  4 府令及び告示の概要

(1)運搬物の基準

イ 核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物(「核燃料物質等」という。)の運搬は、その種類、性状、数量による区分に応じて一定の性能を有する容器に封入した運搬物として運搬しなければならない。

低濃度汚染物又は大型汚染機械等 容器封入に代わる措置
危険性の極めて少ない核燃料物質等 簡易容器
一定量を超えない放射能を有する核燃料物質等を運搬する場合 A型容器
一定量を超える放射能を有する核燃料物質等を運搬する場合 B(M)型又はB(U)型容器

ロ 核分裂性物質の運搬は、臨界の防止の観点から臨界に達する危険性の程度に応じ、第一種核分裂性運搬物、第二種核分裂性運搬物及び第三種核分裂性運搬物の三種類に区分し、そのいずれかの形態で運搬しなければならない。

(2)運搬の基準

イ 一の運搬機器(一の車両、船舶内の一の船倉、区画又は甲板及び一の航空機)に積載する運搬物及びこれを収納したコンテナについて、それらの表面から一定の距離における最大放射線量率及び臨界に達する危険性の両方を考慮して一定の指数(運搬指数)を定め、これを一定値以下に制限しなければならない。

ロ 運搬物及びそれを収納したコンテナには、特定のラベル及び表示を付さなければならない。

ハ 運搬の基準として、運搬物は移動、転倒等のないように積載すること、危険物と混載しないこと、取扱方法等を記した書面、放射線測定器等を携行すること、特定の核燃料物質等の運搬の場合に専門家を同行させること、旅客が通常立ち入る場所では取扱いをしないこと等を規定した。(運輸省令においては、このほか船舶、鉄道及び自動車、航空機の各輸送モード別に輸送方法として遵守すべき事項を定めている。)
(3)運搬の記録

 核燃料物質等を運搬した場合は、種類別の数量、容器の種類、日時及び経路を記録しなければならない。

(4)管理区域内等の運搬

 管理区域内又は周辺監視区域内運搬については、別途安全規制が行われているので、基準の適用を一部除外した。

(5)例外規定

 技術基準の一部について従うことが著しく困難な場合において科学技術庁長官の承認を受けた措置をもってこれに代えることができる旨の特例に関する規定を設けた。

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