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中部電力株式会社浜岡原子力発電所の原子炉の設置変更(2号原子炉施設の変更)について(答申)


52原委第205号
昭和52年4月5日

内閣総理大臣 殿
原子力委員会委員長

 昭和52年2月22日付け52安(原規)第59号(昭和52年3月24日付け52安(原規)第96号で一部補正)で諮問のあった標記の件について、下記のとおり答申する。

① 標記に係る許可の申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第26条第4項において準用する第24条第1項各号に掲げる許可の基準のうち第1号、第2号及び第3号については適合しているものと認める。

② 上記許可の基準第4号については、原子炉安全専門審査会による安全性に関する審査結果報告は別添のとおりであり、適合しているものと認める。

(別添)

昭和52年3月25日
原子力委員会
   委員長 宇野 宗佑 殿
原子炉安全専門審査会
会長 内田 秀雄
中部電力株式会社浜岡原子力発電所の原子炉の設置変更(2号原子炉施設の変更)に係る安全性について

 当審査会は、昭和52年2月22日付け、52原委第119号(昭和52年2月24日付け、52原委第192号をもって一部補正)をもって審査を求められた標記の件について結論を得たので報告する。

 Ⅰ 審査結果

 中部電力株式会社浜岡原子力発電所の原子炉設置変更(2号原子炉施設の変更)に関し、同社が提出した「浜岡原子力発電所原子炉設置変更許可申請書(昭和52年2月8日付け、申請及び昭和52年3月15日付け、一部補正)」に基づき審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は十分確保し得るものと認める。

 Ⅱ 変更内容


1. 熱的制限値の変更

 新しい炉心熱特性評価方法を採用することに伴い、熱的制限値を変更する。

最小限界出力比

1) 第3サイクル末期までの期間、及び第4サイクル以降の各サイクルについて、サイクル初期から、サイクル末期よりさかのぼって炉心平均燃焼度で1,000MWd/t手前までの期間
          1.23

2) 上記以外の期間 1.29
(変更前は最小限界熱流束比 1.9以上)

2. 使用済燃料の貯蔵能力の変更

 使用済燃料プールの貯蔵能力を約220%炉心分に変更する。(変更前は約150%炉心分)

3. 固体廃棄物置場の使用方法及び貯蔵能力の変更

 2号原子炉用固体廃棄物置場を1号原子炉と共用する。

 また、固体廃棄物置場の貯蔵能力を約2年分に変更する。(変更前は約1年分)

 Ⅲ 審査内容


1. 熱的制限値の変更

 新しい炉心熱特性評価方法を採用することに伴い、熱水力特性及び過渡現象解析結果の検討を行って熱的制限値の妥当性を確認した。

(1) 熱水力特性

 本変更は、新しい炉心熱特性評価方法を採用することに伴うものであるが、この手法の詳細は、原子炉安全専門審査会が昭和51年2月16日に採択した「沸騰水型原子炉の炉心熱設計手法及び熱的運転制限値決定手法について」に記載のとおりである。

 本原子炉の熱水力特性を同検討報告書にもとづいて評価した結果、問題はないと判断する。

(2) 過渡現象解析

 通常運転時の熱的制限値を定めるため過渡現象解析にもとづき最少限界出力比(以下MCPRという)の変化(以下ΔMCPRという)を評価し、最大のΔMCPRを生ずる過渡変化を確認した。

 この解析の詳細は、原子炉安全専門審査会が昭和52年2月23日に上記検討報告書の追補として採択した「沸騰水型原子炉の炉心熱設計手法及び熱的運転制限値決定手法の適用について」に記載のとおりである。

 本原子炉において最大のΔMCPRを生ずる過渡変化は、早期炉心用スクラム曲線を適用する期間については給水加熱喪失、または平衡炉心末期用スクラム曲線を適用する期間についてはタービントリップ・バイパス弁不動作でありΔMCPRはそれぞれ0.17及び0.23である。したがって通常運転時のMCPR制限値をそれぞれ1.23及び1.29とすることにより、過渡変化時のMCPRは限界値1.06を下まわらない。

 また解析前提条件の変更に伴い原子炉冷却材圧力バウンダリの健全性についても確認した。

 その結果、原子炉圧力が最大となるのはタービントリップ・バイパス弁不動作であり、早期炉心用スクラム曲線を適用する期間での最大圧力は約79.2Kg/㎝2g、また平衡炉心末期用スクラム曲線を適用する期間での最大圧力は約79.8Kg/㎝2gである。これらの値は設計圧力の1.1倍の圧力(96.7Kg/㎝2g)を下まわっており、原子炉冷却材圧力バウンダリの健全性は維持される。

2. 使用済燃料の貯蔵能力の変更

 本変更は、従来からの使用済燃料プールの基本的な設計方針を変えない範囲で使用済燃料設備の貯蔵能力を増加させるために、使用済燃料ラック19基(1基当り使用済燃料20体)が増設されるものである。

 この貯蔵能力増加に伴う未臨界性は、仮に新燃料を装荷したとしても十分に保たれる。また、使用済燃料プール水は、既設の冷却系により十分冷却される能力を有している。

 以上のことから本変更は問題がないものと判断する。

3. 固体廃棄物置場の使用方法及び貯蔵能力の変更

 本変更は固体廃棄物置場(1、2棟)を1、2号原子炉で共用し、ドラム缶の貯蔵方法は2段積(約4,500本)から3段積(約7,000本)にして、1、2号原子炉合計年間発生推定量(約7,000本)の約2年分を貯蔵することができる能力にするものである。

 この変更により、原則としてドラム缶表面線量の低いものは第1棟に、高いものは遮へい効果の大きい第2棟に貯蔵する方法がとられるので貯蔵能力の増加に伴う敷地境界外への被ばく線量は無視できる。

 以上のことから本変更は問題がないものと判断する。

4. その他

 本変更では、逃がし安全弁の即応逃がし機構を廃止し、タービントリップ時または発電機負荷喪失時に、可変周波数発電機と原子炉冷却材再循環ポンプ用モータとの間の遮断器を切離し、冷却材再循環ポンプをトリップさせる機構が設けられる。

 この機構の変更に伴う運転時の異常な過渡変化解析の結果より、本変更は本原子炉の安全性に影響を及ぼすことのないものと判断する。

 Ⅳ 審査経過

 本審査会は昭和52年2月23日第156回審査会において、審査を開始し、同年3月25日第157回審査会において審査を行い、本報告書を決定した。


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