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昭和52年度原子力開発利用基本計画について


昭和52年3月25日
原子力委員会

 昭和52年度原子力開発利用基本計画を別紙のとおり定める。

 なお、本基本計画は、昭和52年度予算及び関連法案の成立を前提として定めるものである。

 ※本基本計画は、3月31日付けをもって、日本原子力研究所法第24条及び動力炉・核燃料開発事業団法第25条第2項に規定する基本計画として決定された。

(別紙)

昭和52年度原子力開発利用基本計画

Ⅰ 基本方針

 エネルギーの安定確保は、国民生活の維持向上及び社会経済の発展にとって必要不可欠の課題である。国内エネルギー資源に乏しく、一次エネルギー供給の大宗を輸入石油に依存している我が国は、他のどの国にもましてエネルギー消費の節約を図りつつ、石油代替エネルギーの開発を進めていく必要がある。石油代替エネルギーとしては、石炭、太陽エネルギー等もあるが、最も重要なものは、現在実用化されつつある新エネルギーであり、燃料の輸送・備蓄が容易であるなどの利点を有する原子力エネルギーである。

 かかる観点から、政府は、原子力の開発利用をエネルギー政策上の最重要課題として総合的かつ計画的に推進してきたところである。

 しかしながら、原子力施設の安全性について、国民の間に依然として不安感が存在していることなどから、原子力発電所の建設が計画通り進捗していないことに見られるように、我が国の原子力開発利用は必ずしも円滑に進んでいない状況にある。かかる状況を打開し、原子力開発利用の推進を図ることは、今後の我が国のエネルギー確保のための契緊の課題であり、政府は昭和52年度において、以下の基本方針に基づき、原子力開発利用推進のための施策を講ずる。

1 原子力開発利用長期計画の見直し

 今後、広く国民の理解と協力を得て、原子力の開発利用を進めていくためには、原子力開発利用について、実効性と整合性ある長期的な推進計画を明確にし、この計画にそって政策の積極的な展開を図る必要がある。かかる観点から現行原子力開発利用長期計画の総合的な見直しを行う。

2 安全対策の強化

 原子力の開発利用を進めるにあたっては、政府は従来から安全の確保を大前提とし、原子力に関する厳重な規制と管理を実施してきたところである。しかしながら、原子力に対する国民の不安感を解消するとともに、今後の原子力開発利用の本格的展開に対処するためには、原子力発電所等の安全な運転実績を集積しつつ、安全規制体制の強化を図るなど安全対策を一層拡充強化し、核燃料サイクルまで含めての安全確保に万全を期する必要がある。

 このため、安全確保に関する事項を担当する原子力安全委員会を新たに設置するとともに、原子炉の設置、運転等に関する安全規制行政を一貫化し、行政責任の明確化を図るなど安全規制体制の改革、強化を実施する。

 また、安全規制の裏付けとなる各種データを蓄積するとともに、安全審査基準、指針等の一層の整備に資することを目的に、軽水炉等原子力施設の工学的安全研究、放射線障害防止に関する研究、環境放射能の調査研究等原子力に関する安全研究を推進する。

 さらに、原子力事業の従業員に対する被ばく対策を強化する。

3 核燃料対策の推進

(1)原子力発電が将来の安定したエネルギー供給源として、輸入石油に代替しうる地位を確保するためには、天然ウラン及び濃縮ウランの確保から、使用済燃料の再処理及び放射性廃棄物の処理処分まで、一連のいわゆる核燃料サイクルの確立が必要である。とくに、国内ウラン資源に乏しく、天然ウランの供給を海外に依存せざるを得ない我が国としては、使用済燃料を再処理し、回収されるウラン及びプルトニウムを再利用して核燃料の有効利用を図る必要があり、これまでもこのための施策を推進してきたところである。

(2)昭和52年度においては、国内的には動力炉・核燃料開発事業団の再処理工場の本格的試運転の開始、第二再処理工場の建設準備体制の整備、ウラン濃縮パイロット・プラントの建設等極めて重要な局面をむかえている一方、国際的には核拡散防止の見地から、再処理、プルトニウム利用等に対して国際的規制を強化しようとする動きが顕著になっている。

 このような状況にあって、我が国は、今後とも原子力の平和利用に徹し、核兵器不拡散条約の正式締約国として核拡散防止のための国際協力には貢献していくが、同時に我が国の原子力平和利用が不当に制限されることがないよう、関係諸国と密接な協議を進める。

(3)また、我が国が51年6月に批准した核兵器不拡散条約下の保障措置体制に移行するため、国際原子力機関との保障措置協定を発効させるとともに、この実施に必要な国内保障措置体制を整備する。

(4)以上の施策をふまえ、我が国における核燃料サイクルを確立するため、天然ウラン及び濃縮ウランの確保策、使用済燃料の再処理対策、放射性廃棄物の処理処分対策等の積極的展開を図る。

4 新型動力炉等の開発

(1)今日、原子力発電計画は、軽水炉を中心に進められているが、今後長期にわたり軽水炉だけに依存し続けることは、天然ウランの有効利用の観点から適切でなく、長期的観点に立って、プルトニウムを再利用するなどにより軽水炉に比し核燃料利用効率の高い新型動力炉の開発を進める必要がある。

 このため、原子炉の運転により核燃料を増殖しうる高速増殖炉については、実験炉を臨界に至らせ、出力試験を実施するとともに、原型炉の建設準備を進める。

 高速増殖炉より早期に実用化が可能で、軽水炉に比し核燃料利用効率の高い新型転換炉については、原型炉の建設を完了し、臨界に至らせる。

(2)また、現在発電にのみ利用されている原子力エネルギーを、製鉄、水素製造、船舶の推進機関等の非電力部門においても利用し、これらの分野でも化石燃料からの脱却を図る必要がある。

 このため、直接製鉄等への多目的利用を図る多目的高温ガス炉については、研究開発の充実を図る。

 また、将来の原子力船時代に備え、我が国としての技術蓄積を図る原子力第一船「むつ」については、安全性の総点検等を行い、その開発を軌道にのせる。

(3)さらに、海水中に無尽蔵に存在する重水素を燃料とし、人類の未来をになう究極のエネルギー源として期待される核融合については、臨界プラズマ試験装置(JT-60)の建設を本格的に進める。

5 原子力開発利用の基盤整備

(1)基礎研究は新しい技術開発の芽となるとともに、大型研究開発プロジェクト推進の基盤として極めて重要であり、大学における研究に加えて日本原子力研究所、理化学研究所等の特殊法人及び放射線医学総合研究所、電子技術総合研究所等の国立試験研究機関において、その着実な推進を図る。

(2)また、原子力開発利用にたづさわる科学者、技術者等の確保及びその養生訓練に努める。

(3)さらに、我が国における原子力の開発利用を進めるにあたっては、核燃料対策、研究開発の効率的推進等多方面にわたって国際的な協力協調関係の維持発展が不可欠であり、多国間協力、二国間協力の枠組等を通じ、原子力の国際協力を進める。

6 国民の理解と協力を得るための施策の推進

 以上の方針に基づき我が国の原子力開発利用を進めてゆくが、その円滑な推進のためには、原子力開発利用について広く国民の理解と協力を得ることが極めて重要である。このため、政府は、原子力の安全確保に万全を期して原子力開発利用の必要性を強く国民に訴えるとともに、原子力知識等の広報活動及び国民の意見の吸収に努める。また、電源三法による開発利益の地元への還元、原子力の安全性に関する不安感解消のための安全性実証試験の推進等の施策を進める。

Ⅱ 具体的施策

1 原子力開発利用長期計画

 現行の原子力開発利用長期計画は、昭和47年6月に策定されたが、その後の我が国の原子力開発利用の状況をみれば、原子力発電所の建設計画の遅れ、各種研究開発プロジェクトの進捗の遅れ、研究開発及びその成果の実用化のための所要資金の増大、国際情勢の変化など、内外にわたる大きな情勢変化があった。今後原子力開発利用を円滑に推進していくためには、長期的展望にたった実効性と整合性ある計画に基づく政策の積極的な展開を図る必要があり、かかる観点から、上記の情勢変化をふまえつつ、現行原子力開発利用長期計画の総合的な見直しを行う。

2 安全対策

(1)安全規制

 安全規制体制の強化を図るため、従来、開発と規制の機能を併せ持っていた原子力委員会から安全の確保に関する事項を所掌する原子力安全委員会を分離、独立させるとともに、安全規制行政の一貫化による行政責任の明確化を図る。さらに、関係行政機関における安全規制体制の一層の強化拡充に努めるとともに、関係行政機関間の連繋を密にする。

 また、原子炉施設及びウラン濃縮、核燃料の加工、使用済核燃料の再処理、プルトニウムの利用、放射性廃棄物の処理処分、核燃料の輸送等核燃料サイクル全般に対する総合的安全規制及び放射性同位元素、放射線発生装置等に対する安全規制を強化する。

 また、これら安全規制に必要な各種安全基準、指針の整備をさらに進めるとともに、原子力発電に関する国際的な安全基準作成計画に引き続き参加する。

(2)安全研究

 安全規制の裏付けとなる各種データの蓄積及び原子炉施設等の各種安全審査基準、指針のより定量化、精密化を図ることを目的として、以下に述べる安全研究を推進する。

(イ)軽水炉の工学的安全研究

 軽水炉に関する工学的安全研究については、日本原子力研究所を中心として、国立試験研究機関、民間等の協力の下に、総合的、計画的に実施する。とくに、日本原子力研究所においては、一次冷却材喪失事故時の緊急炉心冷却装置の効果に関する実験及び原子炉安全性研究炉(NSRR)を用いた反応度事故時の燃料の安全性確認実験を継続して実施するとともに、燃料安全研究、構造安全研究、耐震安全研究等を実施する。

 また実用原子炉燃料を試験、検査するホット・ラボの建設を引き続き行うなど、安全研究の強化拡充を図る。

 他方、国際協力による安全研究を推進するために、LOFT計画、PBF計画、ハルデン計画、インターランプ計画、オーバーランプ計画等の二国間、多国間協力に積極的に参加する。

(ロ)放射線障害防止に関する研究

 放射線による人体の障害を防止するための研究については、放射線医学総合研究所を中心に、国立試験研究機関等において総合的、計画的に実施する。

 放射線医学総合研究所においては、低レベル放射線の人体に及ぼす影響に関する研究として、放射線による晩発障害及び遺伝障害並びに内部被曝の障害評価に関する調査研究を強力に推進する。

 国立試験研究機関においては、低レベル放射線による哺乳動物系における突然変異の検出法に関する研究、植物における突然変異の誘発と回復に関する研究等を実施する。

(ハ)環境放射能に関する調査研究

 放射線医学総合研究所その他の国立試験研究機関、日本原子力研究所、地方公共団体試験研究機関において、環境モニタリング及び公衆の被ばく線量評価に関する調査研究並びに一般環境、食品及び人体内の放射能の挙動と水準の調査を行なう。

(3)原子力事業従業員の被ばく管理

 原子力事業従業員の被ばく管理については、原子炉等規制法、放射線障害防止法、労働安全衛生法等に基づき引き続き厳重に行うこととするほか、新たに昭和52年度より原子炉施設等を対象として、従事者でなくなった者の被ばく記録の集中的管理を行う被ばく線量登録管理事業を実施する。

 さらに原子力発電所における従業員の被ばく線量の低減化を図るため、原子力発電施設の改良標準化の一環として定期検査等の作業に際して従業員に対する被ばく線量を低減するような原子炉等の配置、構造又は遠隔操作や遠隔監視について検討を進める。

3 核燃料対策

(1)核燃料確保策
(イ)核原料物質の探鉱開発

 海外ウラン資源の開発については、動力炉・核燃料開発事業団がアフリカ諸国、カナダ、オーストラリア等の有望地区において引き続き鉱床調査を行うとともに、ニジェール等において海外機関との協力による共同調査を実施する。

 また、金属鉱業事業団の成功払い融資制度を活用して、民間の海外探鉱開発活動を促進する。

 国内探鉱については、動力炉・核燃料開発事業団が、東濃地区の月吉鉱床の精密試錐を行うとともに、東濃周辺の有望地区の探鉱を進め、また、北陸地域、北上地域、琵琶湖周辺地区において、大規模低品鉱床の探鉱を行う。また、人形峠において、露天堀りを開始する。

 さらに、ウラン資源開発のための試験研究については、動力炉・核燃料開発事業団が、人形峠鉱業所におけるUF6までの製錬転換試験、PNCプロセス実証プラントの設計を行うとともに、鉱石処理試験施設の建設操業等を行う。また、リン鉱石中及び海水中のウラン等低濃度ウラン資源の回収技術等に関する研究を進める。

(ロ)濃縮ウランの確保

 遠心分離法によるウラン濃縮の研究開発については、昭和47年8月の原子力委員会の「ウラン濃縮技術の研究開発に関する基本方針」に基づき、動力炉・核燃料開発事業団を中心に推進している。昭和52年度においては、同事業団において、将来のウラン濃縮実用工場の建設、運転に必要な技術を確立するため、ウラン濃縮パイロットプラントの建設に着手する。また、引き続き、カスケード試験を実施するほか、遠心分離機の開発、安全工学研究、量産技術開発、寿命試験等の研究開発を進める。

 レーザー法によるウラン濃縮の研究については、51年度に引き続き、基礎的研究を進める。

(ハ)その他

 プルトニウムの軽水炉利用に関する研究については、動力炉・核燃料開発事業団においてプルトニウム燃料の照射試験等を実施するとともに民間に委託して解析評価等を行う。

 また、日本原子力研究所において、プルトニウム軽水炉利用に関し炉物理等の基礎研究を実施するとともに、材料試験炉等を使用し、燃料、材料の照射試験を主体とした研究を実施する。

(2)使用済核燃料の再処理

 核燃料の有効利用のためには、核燃料サイクル確立の鍵となる国内再処理体制の確立が肝要である。この観点に立ち、昭和53年度操業開始を目途に、動力炉・核燃料開発事業団の東海再処理工場の試運転を進める。

 昭和52年度においては、実際の使用済燃料を使うホット試験を行って工場の性能及び安全性を十分確認し、操業開始に備える。

 また、将来の再処理需要に対応するため、国内第二再処理工場建設計画を進めることとし、原子炉等規制法を改正して民間再処理事業への道を開くほか、所要の調査を行う。また、当分の間の国内再処理能力を上回る再処理需要に対する海外再処理委託等経過的な対応策を推進する。

(3)放射性廃棄物の処理処分

 原子力発電所、再処理施設等の原子力施設から発生する放射性廃棄物については、環境への放出量の低減化を図るため、放射性希ガスの除去技術等の技術開発を一層推進する。また、低レベルの放射性廃棄物については、今後発生量の増加が予想されており、その一層の低減化に努めるとともに最終的処分方法としては海洋処分及び陸地処分を組み合せて実施する方針とし、このため前年度発足した(財)環境整備センターを活用するなどにより、所要の準備を進める。海洋処分については昭和53年頃から、試験的海洋処分に着手し、本格処分の見通しを得る予定であり、昭和52年度はこのための準備をすすめる。併せて、陸地処分についても保管施設の基準整備及び処分技術に関する調査研究を進める。

 また、高レベルの放射性廃棄物については、国際協力を積極的に推進し、動力炉・核燃料開発事業団、日本原子力研究所等において、固化処理及び地層処分に関する研究開発を実施する。

(4)保障措置

 核兵器不拡散条約(NPT)の批准にともない、NPT下の保障措置体制への移行を図ることとし、国際原子力機関との保障措置協定を発効させるとともに、その実施にともない、原子炉等規制法の改正、核物質分析施設の整備等国内保障措置体制の充実強化を図る。

 また、保障措置に関する試験研究を日本原子力研究所及び動力炉・核燃料開発事業団で実施するとともに、民間に委託して進める。

 なお、核物質の防護措置(フィジカル・プロテクション)については、動力炉・核燃料開発事業団の施設をはじめとする各種原子力施設の防護措置を強化するとともに、核物質防護のための研究開発を進めるほか、我が国に適した核物質防護制度のあり方等に関する検討を進める。

4 新型動力炉等の開発

(1)新型動力炉の開発

 高速増殖炉及び新型転換炉については、「動力炉開発業務に関する基本方針」及び「同第2次基本計画」に基づき、動力炉・核燃料開発事業団を中心に以下の研究開発を推進する。

 なお、これら研究開発の効率的な推進を図るため、日本原子力研究所、民間、大学等の協力を得るとともに、海外との技術協力を推進する。

(イ)高速増殖炉

 高速増殖炉実験炉については、昭和52年度早期に臨界に至らせ、その後出力試験を実施する。また、原型炉については製作準備設計等を進めるとともに、原型炉に関する炉体構造、燃料材料、安全性、蒸気発生器等の研究開発を行う。

 さらに、原型炉建設の準備を進める。

(ロ)新型転換炉

 新型転換炉については、昭和52年度臨界を目標に原型炉の建設を進めるとともに、燃料材料、部品機器、安全性等の研究開発を行なう。

(ハ)共通事業

 動力炉開発に共通な施設として、プルトニウム燃料施設を整備し、プルトニウム燃料の生産等を行う。また、廃棄物処理施設の建設等を進める。

 さらに、高レベル放射性物質処理技術開発施設の建設を行う。

(2)多目的高温ガス炉の研究開発

 多目的高温ガス炉の研究開発については、日本原子力研究所における研究開発の充実を図ることとし、昭和52年度は大型構造機器試験ループの設計を実施する。

 また、実験炉の設計研究、高温伝熱流動、耐熱材料、燃料などに関する研究開発を行う。

(3)核融合の研究開発

 核融合の研究開発については、大学の協力を得つつ原子力委員会の、「第二段階核融合研究開発基本計画」に基づき、日本原子力研究所を中心として理化学研究所、電子技術総合研究所、金属材料技術研究所等において総合的、計画的に推進する。

 日本原子力研究所においては、第二段階研究開発の主装置である臨界プラズマ試験装置(JT-60)に関し、トロイダル磁場コイルの製作を進めるとともに、臨界プラズマ試験装置本体の製作設計等を行う。また、中間ベータ値トーラス装置(JFT-2)、高安定化磁場試験装置(JFT-2a)による研究等を行う。非円形断面トーラス試験装置(JT-4)に関しては、51年度行ったコンポーネントの技術評価の成果を踏まえ、調整設計を進める。

 さらに長期的観点から核融合動力実験炉等に必要とされる炉物理、超電導マグネット等の核融合炉心工学技術及び核融合炉工学技術に関する研究を実施する。

 理化学研究所、電子技術総合研究所、金属材料技術研究所等においては、それぞれプラズマ診断技術の研究等、高ベータプラズマの研究、材料に関する研究等を行う。

(4)原子力船の開発

 原子力第一船「むつ」の開発は、日本原子力船開発事業団において従来より進めているが、昭和52年度については、安全性の総点検を実施するとともに遮蔽改修のための設計を行う。

5 原子力開発利用の基盤整備

(1)基礎研究

 日本原子力研究所、理化学研究所及び国立試験研究機関においては、我が国独自の創意による技術開発を進めるにあたって、その基盤となる基礎研究を大学における研究との密接な連けいのもとに推進する。また、これらの研究のため日本原子力研究所の施設の共同利用等を前年度に引き続き積極的に行う。

 さらに、理化学研究所においては、重イオンを用いて物理、化学、生物学、材料試験等多分野の研究を推進するため、重イオン科学用加速器の建設を引き続き進める。

 また、日本原子力研究所において、20MVタンデム型重イオン加速器の建設を引き続き進めるなど物理、化学等基礎研究の充実を図る。

(2)放射線利用

 日本原子力研究所、理化学研究所、放射線医学総合研究所、その他の国立試験研究機関等において工業、医学、農業等の各分野におけるラジオアイソトープ、加速器等の利用技術の研究を推進する。

 とくに放射線医学総合研究所においては、引き続き、医用サイクロトロンを用いたガンの治療及び各種疾病の診断等医学的利用に関する研究を行う。

 また、食品照射については、「食品照射研究開発基本計画」に基づき原子力特定総合研究として推進する。

 さらに、放射線化学の研究については、日本原子力研究所高崎研究所を中心に推進する。

(3)国際協力

 海外との研究開発協力については、新型動力炉の開発、核融合の研究開発、原子炉の安全研究、使用済核熱料の再処理技術、保障措置技術等の各分野に関し、米国、英国、フランス、カナダ、オーストラリア、西独、スウェーデンとの二国間協力を通じて行う。

 また、濃縮ウラン、天然ウラン等の供給確保については、既存の各原子力協力協定に基づいて、引き続きその安定確保に努める。

 さらに、原子力平和利用の各分野にわたり、国際原子力機関(IAEA)、OECD-IEA、OECD-NEA等の国際機関の活動に積極的に参加する。

 発展途上国に対する技術援助については、適切な協力に努める。

(4)科学技術者の養成訓練

 原子力関係科学技術者を海外に留学生として派遣し、その資質向上に努める。また、日本原子力研究所、放射線医学総合研究所等において原子力関係科学技術者の養成訓練を行うとともに、各大学及び民間においても、原子力関係講座及び実験施設を更に充実し、関係科学技術者の教育、訓練を行うことを期待する。

6 国民の理解と協力を得るための施策

 国民の理解と協力を得て原子力開発利用を進めていくため、前述の安全対策、核燃料対策等を進めるほか、以下の施策を講ずる。

(1)広報・広聴活動

 原子力発電等原子力の平和利用に対する国民の理解と協力を得るため、関係諸機関の協力のもとに、テレビ、出版物等による広報活動、講演会及び各種セミナーの開催、関係各界代表等による意見交換、資料の公開、広く国民の意見を聴するためのモニター活動等の施策を引き続き進める。

 また、原子力施設の主要な立地地域に原子力連絡調整官を配置し、国と地方との連絡調整を進める。

(2)電源三法

 原子力発電施設等の立地円滑化のため、「発電用施設周辺地域整備法」「電源開発促進税法」及び「電源開発促進対策特別会計法」のいわゆる電源三法により、原子力発電施設等の周辺住民の福祉の向上等に必要な公共用施設の建設を進めるとともに、施設周辺の環境放射能の監視、温排水の影響調査、原子力に関する広報事業を推進する。

 また、原子力発電施設等の安全性に対する国民の不安感を解消するため、日本原子力研究所、(財)原子力工学試験センター等において、格納容器スプレー効果実証試験、蒸気発生器信頼性実証試験、使用済核燃料輸送容器信頼性実証試験等各種実証試験等を行う。

7 予算及び人員

 昭和52年度における原子力開発利用を推進するために必要な原子力関係予算及び人員は次表のとおりである。

昭和52年度原子力予算政府原案総表

1 一般会計予算

2 電源開発促進対策特別会計予算

総理府、大蔵省及び通商産業省所管


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