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関西電力(株)美浜発電所第1号機の燃料体の損傷について


昭和52年2月4日
資源エネルギー庁

 昭和48年当時における関西電力(株)美浜発電所第1号機の燃料体の損傷については、昨年12月3日に当省が行った立入調査の結果に基づき既に発表したところである。本件については、その後の同社からの事情聴取、日本原子力研究所ホットラボにおける折損燃料棒片の検査及び本年1月11日から19日にかけての再度の美浜発電所への立入調査の結果、当省としては、現段階において次の方針で対処することとする。

1 これまでに判明した調査結果(注)からみて、本件燃料体の損傷は発電所周辺の環境に対して影響を与えたものではなかったが、次に指摘するように同社の昭和48年当時の措置内容は、保安管理上極めて不適切であるのみならず原子力発電所の安全確保に対する同社の取り組み姿勢そのものにもかかわるものであり、誠に遺憾である。

(1) 同社は、昭和48年3月から7月にかけて行われた美浜発電所第1号機の定期検査に当って、燃料体にコラップス(つぶれ)が生じていることは当省に報告したが、本件損傷については、何ら報告もなかった。

(2) 今回の調査の結果、昭和48年当時回収容器に収納されたもののほか、損傷燃料体及び隣接燃料体を構成する燃料棒の間隙等にも本件折損により生じた破片が認められ、折損部分の回収の確認が不十分であったことが判明した。

(3) このような燃料体の損傷発見当時における措置からみて、保安規程の遵守、原子炉主任技術者の職務遂行等同社の保安管理体制は極めて不十分であったと考えられる。

(注) 主な調査結果

① 損傷燃料体の2本の燃料棒が一部折損しており(折損部分の合計は約170㎝)、それらの支持格子のスプリングには欠落がみられる。さらに他の1本の燃料棒にも割れがみられる。

② 損傷燃料体及び隣接燃料体を構成する燃料棒の間隙等には折損により生じた破片がみられる。

③ 日本原子力研究所ホットラボにおける折損燃料棒片の検査の結果、折損燃料棒片に多くの割れ、くぼみ、減肉したフラット面等がみられるが、溶融の跡は認められない。

④ 以上から、本件損傷は、フレッティング・コロージョン(すりきず)が大きな要因となったと推定される。(なお、現在詳細調査を継続中である。)

2 このため、当省としては、同社に対して強く反省を促すとともに次のような指示を行った。

(1) 同社の保安管理体制につき、次の事項を重点として総点検を行い、保安規程等に所要の改善を加え、その結果を報告すること。

① 事故、その他異常の発見から原因究明、対策検討、運転再開に至るまでの社内の処理システム及びその責任の所在
② 社内外に対する連絡、報告システム及びその責任の所在

(2) 保安規程に基づく社内安全委員会の運営状況を報告すること。

 当省としては、今後これらの指示に基づく同社からの報告及び現在継続中の詳細調査の結果を踏まえつつ、所要の措置を講ずることとする。

3 当省においては、従来より原子力発電所におけるささいな故障についても、その原因を調査し、結果を公表するとともに速やかに所要の措置を講じてきている。しかしながら、本件については昭和48年以来同社から当省に対する報告がなく、このため当省の適切な行政的対応が遅れたものであり、極めて遺憾である。当省としては、本件が原子力開発全般に対する国民の不信を誘起しかねないことにもかんがみ、今後定期検査、立入調査等を強化して法令及び保安規程の導守状況を厳重に監督し、原子力発電所の安全確保対策を一段と強力に推進していく所存である。




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