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関西電力(株)美浜発電所における燃料体の損傷について



昭和52年2月4日
原子力安全局

 昭和48年当時における関西電力(株)美浜発電所1号原子炉の燃料体の損傷については、既に報告したところであるが、その後、原子炉等規制法に基づき当庁の行った立入検査及び事情聴取の結果、当庁としては、現段階において、次のように対処することとする。

1 本件は、環境に対して影響を与えたものではなかったが、同社が本件に対して講じた措置については、同社の安全管理の体制及び運用面において、適切さを欠くものがあると判断され、当庁としては、極めて遺憾とするところである。また、本社が、同社内部のみに隠されて措置されたという事実は、原子力開発全般に対する国民の不信感を惹起することとなり得ることを憂慮するところである。このため同社に対しては、文書をもって厳重注意を行うとともに、改善策の提示を求め、当庁としても規制の改善強化を図ることとする。

2 同社が本件に対して講じた措置については、具体的には、次のような問題点がある。

(1) 本件は原子炉施設の故障であると認められるが、本件に関し、同社より当庁に対する何らの報告もなかったこと。

(2) 本件に関して同社がとった措置につき、同社の保安管理の体制及びその運用の面において、遺憾な点があったと思われること。特に、本件の処理に当たり、同社内における検討及び判断の手順の明確さ、並びに原子炉主任技術者の役割を含めた責任の明確さについて、不十分な点がみられること。

(3) 原子炉等規制法に基づく核燃料物質の管理に関する諸種の記録及び報告について、その記録及び報告は、実施されているとはいえ、その内容が本件に係る部分に関して、不適切であること。このことは、当時燃料体の損傷により脱落した核燃料物質は、回収もれがないとの同社の判断に起因している点もあるが、その後の調査から見ても、その判断は、十分な調査によって行ったものではなかったことが明らかであること。

 以上の問題点に鑑み、当庁としては、同社に対し、保安管理の体制及び運営方法につき、総点検を行い、その結果について、所要の改善策と合わせて報告すること。社内外に対する報告に関する責任ある体制の検討等の指示を行うこととする。

 当庁としては、今後、これらの指示に基づく同社からの報告及び現在継続中の詳細調査の結果を踏まえて、必要に応じ所要の措置を講ずることとする。

3 当庁においては従来より、原子炉施設で発生する異常事態について、できる限りの情報を得べく原子炉設置者に対して指導してきたところであるが、今後、各原子炉設置者に対しこの趣旨を一層徹底させるとともに、保安規定において、原子炉設置者の自主的な報告に関する規定を加えるよう指導し、広く問題の把握が可能となるよう措置することとし、さらに原子炉設置者に対する立入調査を強化して、法令及び保安規定の遵守状況を厳重に確認していくこととする。


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