前頁 | 目次 | 次頁

動力炉・核燃料開発事業団東海事業所における核燃料物質の使用の変更(プルトニウム燃料第2開発室の変更)に係る安全性について(答申)


51原委第1057号
昭和52年1月21日

科学技術庁長官 殿
原子力委員会委員長

 昭和51年10月26日付け51安(核規)第2210号(昭和51年12月21日付け51安(核規)第2685号で一部補正)をもって諮問のあった標記の件については、下記のとおり答申する。

 当該変更に係る安全性については、別添の核燃料安全専門審査会による審査結果報告のとおり十分確保されるものと認める。

(別添)

昭和51年12月22日
原子力委員会
   委員長 前田 正男 殿
核燃料安全専門審査会
会長 山本 寛

動力炉・核燃料開発事業団東海事業所における核燃料物質の使用の変更(プルトニウム燃料第2開発室の変更)に係る安全性について

 当審査会は、昭和51年10月26日付け51原委第903号(昭和51年12月21日付け51原委第1051号で一部補正)をもって審査を求められた標記の件について、結論を得たので報告します。


 Ⅰ 審査の結果

 動力炉・核燃料開発事業団東海事業所における核燃料物質の使用の変更(プルトニウム燃料第2開発室の変更)に関し、同事業団が提出した「核燃料物質使用変更許可申請書」(昭和51年10月16日付け申請、昭和51年12月14日付け一部補正)について審査した結果「Ⅲ審査の内容」に示すとおり、本使用の変更に係る安全性は十分確保し得るものと認める。


 Ⅱ 変更の内容

 本核燃料物質の使用の変更は、高速実験炉用燃料製造設備において、従来と燃料仕様(寸法、化学組成、プルトニウム同位体組成等)の異なる照射炉心用燃料を製造するためのものであり、その概要は次のとおりである。

1 使用施設

(1)ペレット製造工程

① グローブボックスの増設及び改造

 燃料ペレットの加工後、検査期間及び組立工程へ移送するまでの間一時保管するため、グローブボックス1台を増設し、ボックス床面にペレット保管庫を設置する。また、収納する機器の大型化に対応してグローブボックス2台の容積を増大する。

② 機器の増設、改造等

 工程の自動化、遠隔化により能率向上及び作業者の被ばく低減を図るため、粉末秤量、粉末混合、造粒、成型、ペレット検査等の装置の増設、改造等を行う。

③ 物質移送トンネル及びトランスファーカートの新設

 ペレット製造工程から組立工程への製品ペレットの移送を自動的に行うため、各工程のグローブボックス間を物質移送トンネルで連結し、同トンネル内にトランスファーカートを設置する。既設の物質移送トンネル内を走るトランスファーカートについては、その台車を更新する。

(2)組立工程

① グローブボックス及びオープンポートボックスの増設

 燃料棒の寸法等の変更に伴い新設される機器を収納するため、グローブボックス及びオープンポートボックス各1台を増設する。

② 機器の増設、改造等

 燃料棒及び燃料集合体の寸法、構造等の変更に伴い、ペレット充てん、上部端栓溶接、燃料棒表面除染等の燃料棒加工装置、ヘリウムリーク等の燃料棒検査装置並びに集合体組立溶接、洗浄等の集合体組立装置の増設、改造等を行う。

(3)品質管理工程

 ペレット製造工程及び組立工程の変更に伴い、品質管理工程の能率向上を図るため、発光分光分析装置の改造及び金相研磨機の更新を行う。

2 貯蔵施設

 燃料棒の出し入れ作業を容易にするため、中間製品貯蔵棚3台の更新を行う。

3 廃棄施設

 グローブボックス及び物質移送トンネルの増設に伴い、グローブボックス排気系の排風機2台(1台は予備)を排風容量の大きなものに更新するとともに、グローブボックス及び物質移送トンネルから排風機までの排気系ダクト等の増設を行う。


 Ⅲ 審査の内容

 本変更にあたっては、以下のとおり適切な配慮がなされているので、変更に伴う安全性は確保されるものと判断する。

1 施設の安全性

(1)使用施設

① ペレット製造工程

(イ)グローブボックスの増設及び改造

 増設又は改造されるグローブボックスは、ガスケット等を用いた気密構造とするとともに、内部は強制換気によって常時負圧に維持されることとなっている。給排気口には高性能フィルタが設置され、放射性物質の漏出を防止することとしている。構造強度については、ステンレス鋼を主体とし、かつ、アンカーボルトによって床に固定することにより、水平震度0.3に耐える耐震構造とすることとなっている。

 耐火性については、不燃性又は難燃性の材料で製作されることとなっており、さらに消火設備として窒素消火系を備えることとしている。

(ロ)機器の増設、改造等

 増設、改造等が行われる機器は、粉末散逸防止、過負荷防止、暴走防止等の安全装置を備え、かつ、グローブボックスにスタッドボルト等で固定されることとなっている。

(ハ)物質移送トンネル及びトランスファーカートの新設

 物質移送トンネルは、水平震度0.3に耐える耐震構造とするとともに、ステンレス鋼を主体とした気密構造とし、内部は強制換気によって常時負圧に維持されることとなっている。また、給排気口には高性能フィルタを設けて放射性物質の漏出を防止することとしている。トランスファーカートは、バッテリ内蔵型自走車で、暴走防止等の安全装置が備えられることとなっている。

② 組立工程

(イ)グローブボックス及びオープンポートボックスの増設

 増設されるグローブボックスは、ガスケット等を用いた気密構造とするとともに、内部はヘリウム精製循環装置により常時負圧に維持されることとなっている。構造強度については、アンカーボルトによって床に固定することにより、水平震度0.3に耐える耐震構造とすることとなっている。耐火性については、不燃性又は難燃性の材料により製作されるとともに、内部は不活性雰囲気に保つこととなっている。オープンポートボックスの構造強度及び耐火性についてはグローブボックスとほぼ同様であり、内部の汚染がボックス外に散逸することのないよう強制換気を行い、開口部において所定の流速が推持されることとなっている。

(ロ)機器の増設、改造等

 増設等が行われる機器は、過負荷防止、暴走防止等の安全装置が備えられ、また、各機器は床面又はグローブボックスにアンカーボルト等で固定されることとなっている。

(2)貯蔵施設

 更新される貯蔵棚は、鋼板製の強固な構造で、アンカーボルトにより床に固定することにより、水平震度0.3に耐える耐震構造とすることとなっている。さらに、燃料棒の出入口を、操作しやすい高さの1箇所に限った構造とし、作業面での安全性が確保されることとなっている。

(3)廃棄施設

 排風機については、予備機が設置され、かつ、非常用電源設備を備え、常時必要な排風量が確保されることとなっている。ダクト等は気密構造とし、構造強度については負圧等に十分耐える強固な構造であるとともに、耐火性については難燃性の材料を用いることとなっている。

2 放射線管理

(1) 内部被ばく

 粉末、ペレット等の非密封核燃料物質は、気密構造で、かつ内部を負圧に維持されたグローブボックス及び物質移送トンネルの中でのみ取扱われ、燃料棒に加工された以後の棒燃料物質はすべて密封された状態で取扱われるので、空気汚染による作業者の内部被ばくの恐れはない。

(2) 外部被ばく

 取扱う核燃料物質の化学組成、プルトニウムの同位体組成の変更により、線源強度が大きくなるが、機器の自動化及び遠隔化を行うとともに、必要に応じ遮へいを強化することとしているので、ペレット製造工程及び組立工程について、それぞれ核燃料物質の取扱量とその形状及び作業位置について最も厳しい条件を想定し、妥当な作業時間を仮定して評価した結果、作業者の被ばく量は、許容値より十分低く管理できるものとなっている。品質管理工程においては、取扱う核燃料物質の量が少く、中間製品貯蔵棚の出し入れ作業においては作業時間が短いためいずれもペレット製造工程、組立工程に比べて作業者の被ばく線量はより少い。

3 臨界管理

(1) ペレット製造工程及び品質管理工程

 臨界管理は、グローブボックスごとに設定した計量単位区画について、取扱質量を臨界安全管理基準量以下に制限するとともに、各計量単位区画相互の面間距離を30㎝以上とすることにより行うこととしている。臨界安全管理基準量は、核燃料物質の化学組成並びにウラン及びプルトニウムの同位体組成に応じて決定され、その核的安全性については、英国原子力公社の臨界管理ハンドブックにより確認している。

(2) 組立工程及び中間製品貯蔵

 臨界管理は、グローブボックス又は作業区画ごとに設定した計量単位区画について、取扱質量を臨界安全管理基準量以下に制限するとともに、各計量単位区画の面間距離を30㎝以上とすることにより行うこととしている。臨界安全管理基準量は、核燃料物質の化学組成、ウラン及びプルトニウムの同位体組成並びに寸法に応じて決定され、その核的安全性については、ペレットの状態については英国原子力公社の臨界管理ハンドブックにより、燃料棒及び燃料集合体の状態については、核計算コードによる計算により確認している。

4 平常時における周辺環境への影響

 本施設においては、放射性の気体廃棄物、液体廃棄物及び固体廃棄物についてそれぞれ次のような処理を行うこととしているので、周辺環境への影響は認められない。

 気体廃棄物については、希ガス、ヨウ素等は発生せず、酸化プルトニウム等の粒子状放射性物質は高性能フィルタで捕集することとしている。

 液体廃棄物については、放射性物質濃度が放出基準値以下であることを確認した後、施設外に放出することとしている。

 固体廃棄物については、可燃性、不燃性及び難燃性に区分し、密封した状態でドラム缶詰にし、敷地内に保管することとしている。

5 事故時の評価

 本施設の設計にあたっては、十分な安全対策が施されており、臨界事故及び爆発事故等は現実には考えられないが、変更後の状態について仮に発生したとして評価を行った結果、一般公衆が受ける被ばく線量は、十分小さいと判断される。


 Ⅳ 審査の経過

 本審査会は、次表のとおり、昭和51年11月1日第3回審査会において審査を行い、引き続き加工・使用部会において昭和51年11月16日、同12月7日及び同12月22日に審査を行い本報告書を決定した。

 なお、同部会の委員は、次のとおりである。

部会委員

(部会長) 三島良績 東京大学
伊藤直次 日本原子力研究所
岡島暢夫 中部工業大学
清瀬量平 東京大学
筒井天尊 京都大学
松岡 理 放射線医学総合研究所
山本 寛 東京大学名誉教授
吉沢康雄 東京大学

前頁 | 目次 | 次頁