各炉型式の資料すなわちコールダーホール施工関係資料、ダクト機械設備、建屋、熱交換器、基礎等の資料を集め、これを耐震工学的見地から検討し、さらに耐震設計案にふみ出すための基礎資料とすることとした。
現在英国において建設されつつある黒鉛減速ガス冷却型の発電用原子炉には、さきのコールダーホール以外に改良型として、次の四つのメーカーグループがおのおのその仕様、設計の一部を発表している。
(1)English Electric, Babcock&Wilcox=Tayler Woodrow(EE,B&W)
(2)Nuclear Power Plant Co.(NPPC)
(3)GEC-Simon Carves Atomic Energy Group
(4)AEI-John Thompson Nuclear Energy Co.Ltd.
以下この4グループの設計についてその概要を述べることにする。
5.1 設計の概要
特に構造的見地から設計概要について述べると次のとおりである。
1.EE,B&W
これは熱出力50万kW、電気出力 12万kW、熱交換器とガス回路は炉1基について6個、熱交換器と炉は各別個の基礎上にあり、かつそのレベルは地表面にある。圧力容器は一重球形で、板厚3″、BS1,500type の鋼板で、連続スカート式支持方法をとっている。その他はコールダーとほとんど同様である。
2.NPPC
建設地は Bradwellで熱出力 2×53万kW、電気出力30万kW、熱交換器とガス回路は炉1基について6個である。原子炉は半地下式となり、圧力容器は3″厚鋼板の一重球殻で、ローラーサポートによる柱状支持脚によって支持されている。全体的にみて、原子炉、ダクト、熱交換器等原子炉建屋が非常なコンパクトな設計となっている。
3.GEC-Simon Carves Group
建設地は Scotland の Hunterston で熱出力2×63万kW、電気出力32万kW、熱交換器とガス回路は炉1基について8個である。熱交換器と原子炉は別個の基礎上にあり、いずれも地表面よりは高くなっている。また原子炉の下部にも遮蔽コンクリートがある。
これは燃料の出入を下から行うためで、このためのスタンドパイプが圧力容器を下に貫通し、制御棒は従来どおり上から入れるので結局スタンドパイプは圧力容器を上下に貫通することになる。圧力容器は二重となっており、外殻は厚さ3″の球殻、内殻はリングで補強された厚さ1.5″の円筒殻である。
この内殻の目的は外殻への熱応力を低減させるためにある。またパイル側面を内殻とは別の薄板で巻き、パイル支持板とパイルとの間にボールベアリングをおいていない。圧力容器は連続スカートによって支持されている。このようにこの型の圧力容器内部はいちばん複雑な設計となっている。
4.AEI-John Thompson
建設地は Berkeley で熱出力2×55万kW、電気出力27.5万kW、熱交換器とガス回路は炉1基について8個、熱交換器と原子炉は別個の基礎上にあり、地表面に立っている。圧力容器は二重の円筒殻で、外殻厚さ3″、内殻厚さ1/4″の鋼板からなり、A型フレートによって支持されている。この設計の特色は圧力容器と熱交換器が大きく離れ、したがってガスダクトが非常に長くなっていることである。
5.2 各グループの仕様概要
次表のとおりである。
5.3 耐震上注意すべき点
なお、原子炉の構造上地震に対して注意すべきおもな箇所をあげると次のとおりである。
1.ラディアルキーの構造の概略
コールダーA型のみならず改良型のどのグループについても、パイルのセンタリングは下部レストレイントに取り付けられたラディアルキーによって行っている。
第9図

たとえばコールダーA型では、パイルは正24角柱であるが、その24個の頂角のところに1個ずつラディアルキーが設けられ、これはボルトによってダイヤグリッドにつながっている。その構造の詳細は下記のとおりである。(第9図参照)
第9図において、garter⑪ を締めると、その力はbracket⑩に伝わり、これが restraint beam⑨にweld されているから、結局パイルは beam が締めつけることになる。この beam が24角形の頂角をなすところに extension part① を weld し、これに2枚のparallel plates を weld し、その間にはさむようにして parallel legs 2本を weld する。この parallel legsにはボルト孔があけてある。
一方 support plate⑥を受ける diagrid⑤に stop④ が weld され、この stop にボルト孔をあける。パイル側の parallel legs のボルト孔と diagrid 側のstop のボルト孔とを合わせ、これにボルト⑦を通し、lock nut⑫で締め、さらにlocking screw⑬で固定する。
このような構造から明らかなとおり、数千トンのパイルのセンタリングはφ1inたらずの細いボルト24本によって行われていることがわかる。パイルの重量はボールベアリングによって support plate に支持されているから、水平加速度に対してこのボルトだけでは支持できず、移動を生ずるおそれがある。
2.ボールベアリング(第10図)
振動によって、ボールベアリングのレースが正常な位置からずれたり、ベアリングの球形が歪んだりすれば、各黒鉛柱はただちに傾斜または上下に浮沈するので、特にベアリングについての検討が必要である。
第10図

3.圧力容器支持
(1)A字型支持脚(第11図)
A字型支持脚はルーズボルトでゆるくとりつけられた箇所が2ヵ所あり、この部分は地震の衝撃に対しては破損するおそれがある。
また点接触であるから片荷または容器の壁に応力集中を起しやすい。

第11図
(2)柱状支持脚(第12図)
柱状支持脚ではルーズボルトで止められた箇所 の外に、ダイヤグリッドのすぐ下のところで、ローラーサポートを使っている。この部分についても振動に耐えるかどうか検討が必要であろう。
(3)連続スカート(第13図)
連続スカートはダイヤグリッドに weld し、ローラーサポート等はいっさい用いない。ただスカートの下部でコンクリートに接するところでは熱膨脹を許すためルーズボルトになっているかと思われる。
第12図
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第13図
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支持点の構造に対しては熱応力と耐震性とは相反する要求となるので、これを無理なく解決することが必要である。
連続スカートの熔接部は、熱応力によって相当の応力がかかるが、スカートの部分までラギングを延ばしてやれば(EE,B&Wの例)これをかなり減少できると思われる。
4.スタンドパイプ(第14図)
スタンドパイプと生体遮蔽との間げきは、これを大きくすると遮蔽効果が減るために狭いものとなる。ところがスタンドパイプのつけ根は圧力容器にWeld されているから容器と一体となって振動し、したがってスタンドパイプと生体遮蔽とのすきまが、事実上圧力容器の遮蔽に対する相対変位の限界を与えることになる。

第14図
スタンドパイプが生体遮蔽と接触してパイプの断面が変形したり、パイプの直線性がそこなわれたりすると、燃料の装填と引出しや、制御棒の操作に支障を生ずるから、強震時にそのようなことのないように対策をたてておかなければならない。
〔付録〕 耐震化設計試案
15図は地震を考慮した原子炉建物の設計試案(原子力発電研究委員A.P.T.作製)である。
半地下式構造として原子炉の下半に相当する部分を地盤面下に入れ、かつ構造物全体の重心を極力下方に移すように設計してある。このようにして遮蔽コンクリートでできた剛体にロッキング振動の起ることを防いでいる。また熱交換器は原子炉と一体の基礎上に置き上部は生体遮蔽とつないで原子炉との間に相対変位の起ることを防いでいる。

第15図
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