1.ウラン資源
(1)天然ウランの需給バランス
我が国の電気事業者は,カナダ,英国,オーストラリア等から主として長期契約により約18万ショート・トン,また,ニジェール及びオーストラリアの開発輸入分として約3万ショート・トン,計約21万ショート・トンの天然ウランを確保している。これにより,当面必要な天然ウランについては確保されているが,天然ウランの累積所要量は2000年において少なくとも,22万ショート・トン程度,2030年では70万ショート・トンを超えると見込まれ,1990年代後半には新たな調達が必要とされる。天然ウランの世界的な需給は,現在,緩和基調にあるが,長期的には需給が逼迫化することも考えられ,海外における調査探鉱,開発輸入等の促進を図り,なお一層の安定確保に努める必要がある。
(2)ウラン資源の調査探鉱海外における我が国のウラン資源の調査探鉱活動は,動力炉・核燃料開発事業団及び民間企業によって進められている。動力炉・核燃料開発事業団は,1988年度にはカナダ,オーストラリア,アフリカ諸国等において単独または海外機関との共同による鉱床調査・探鉱を実施しておりカナダ,オーストラリア及びジンバブエにおいては有望な成果が得られつつある。
また,我が国の民間会社もニジェール,オーストラリア及びカナダにおいて調査・探鉱を実施している。海外ウラン資源開発(株)(OURD)が参加しているニジェールのアクータ鉱業では,1978年から生産を行っており,我が国の電気事業者等は1988年度末までに,約8,400トンUのウラン精鉱を引き取っている。また,出光興産(株)が参加して調査探鉱を行っているカナダのシガーレーク地区では高品位の鉱床が発見されている。
(3)製錬・転換技術の開発製錬・転換技術に関しては,動力炉・核燃料開発事業団において,ウラン鉱石からイエローケーキを経ずに,一挙に四フッ化ウランを製錬する技術が開発され,さらに,これに続けて六フッ化ウランまで転換する技術が開発されてきた。
この技術は世界各地でイエローケーキからの製錬・転換にも応用ができるものであり,この実用化のために製錬・転換パイロットプラント(六フッ化ウラン製造能力200トンU/年)の試験運転が1982年3月から行われている。この試験には,岡山県人形峠からのウラン鉱石の他にニジェール産や中国産等のイエローケーキが用いられている。生産された六フッ化ウランは,1989年3月末で346トンUに達し,同事業団のウラン濃縮パイロットプラント及び原型プラントヘ出荷されている。
また,東海再処理工場からの回収ウランについても,六フッ化ウランへの転換試験を実施し,1989年3月末までに六フッ化ウランに転換された回収ウランは24トンUとなっている。
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