第1章 原子力発電
2.原子力発電所の運転状況

(1)設備利用率

 商業用原子力発電所の設備利用率は1980年度に60%を超した後,着実に上昇し,1988年度は71.4%と引き続いて70%台の高い比率で推移している。残りの28.6%については定期検査期間の停止が24.7%,その他のトラブルや出力調整などで損失した部分が4%程度である。過去最高の設備利用率77.1%を記録した1987年度に比較すると,1988年度には比較的定期検査が集中したこと,1988年度中の新規運転開始プラントが少なかったこと,故障・トラブルに対する措置等が主な要因で,1988年度は,5.7%低下したものの,主要国の設備利用率と比較すると,依然として高水準を示している。
 このように設備利用率が近年高水準を維持している要因としては,次のような点が挙げられる。
① 従来,定期検査期間を長期化させていた初期トラブル等の対策作業量が減少し,また,定期検査が効率的に実施されるようになった。
② 設備・機器の改良,品質管理の徹底等による信頼性の一層の向上,燃料設計の変更(濃縮度の上昇)等により運転期間を長期化することが可能になってきた。
③ 予防保全を重視した品質管理,内外の故障等に関する情報の活用等,故障の未然防止対策の徹底が図られるなど設備の信頼性の向上により,運転中のトラブルが減少してきた。


(2)故障・トラブル等

 商業用原子力発電所の事故・故障等は,「電気事業法」及び「核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の規定に基づき,原子炉設置者が国に対して報告するよう義務付けられている。1988年度中に両法に基づき報告された故障・トラブル等の件数は23件で,ここ数年低い水準で推移している。
 一基当たりの年平均報告件数(報告件数を基数で割ったもの)については0.6件(前年度0.5件)とトラブルが少ない状態が維持されている。

 なお,以上のいずれの故障・トラブル等についても周辺環境への放射能の影響はなかった。


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