§12 放射線審議会

 放射線審議会は,放射線障害の防止に関する技術的基準の斉一をはかることを目的として総理府に設置されている。この技術的基準を策定するに際しては,放射線関係従事者および一般国民の受ける放射線の線量を放射線障害を及ぼすおそれのある線量以下とすることと定められており,放射線審議会は,この基本方針にもとづいて,関係行政機関の長からの諮問に応じて答申し,また必要に応じて意見の具申を行なっている。
 43年度に行なわれた答申および検討事項は次のとおりである。

(1)「再処理施設等から生ずる放射性廃液の海域放出に係る障害防止に関する考え方について」
(答申) 現在,使用済核燃料再処理施設の建設計画がすすめられているが,この種の施設から海域に放出される放射性廃液の濃度等について,まだ具体的な基準が定められていないので,これを定めるにあたっての基本的な考え方について43年3月,内閣総理大臣から諮問があった。これに対し,同審議会は,43年6月,海域放出特別部会(部会長御園生圭輔)を設置して審議を重ねてきたが,44年2月,内閣総理大臣に答申した。
 答申の重点は次のとおりである。

     イ 国際放射線防護委員会の勧告の精神を尊重し,国民の受ける放射線被ばくはできるだけ少なくすることを基本とすること。
     ロ 低レベル放射性廃液の海域放出に起因する人の放射線被ばくは,関係海域からの海産食品を介しての内部被ばくと漁業者等が漁具などからうける外部被ばくの二つの型が考えられるので,これらを総合的に検討して放出の規制などが行なわれるべきであること。
     ハ 低レベル放射性廃液の海域への放出量を推定するにあたって,目やすとすべき人の被ばく線量は,国際放射線防護委員会の勧告する公衆の構成員に対する線量を相当に下まわる値をとるべきこと。
     ニ 上記放出量を推定するにあたってとられる諸因子の値は,当該海域における調査にもとづいてきめられるべきこと。また,当該海域における海水,海産生物等の放射性物質の濃度を施設の規模等に応じて測定監視すること。

(2)放射能測定法等の一部改訂について
 38年以降に放射線審議会において作成された「放射能測定法」,「放射性ストロンチウム分析法」,「セシウム137分析法」について改訂の必要が生じたため,44年3月以降,測定部会において検討することとなった。


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