第2章 国際協力
§2 国際原子力機関の発足と活動

2−1 第1回総会まで

 国際原子力機関憲章案は国連および国連専門機関加盟の82カ国が参加した国際会議において,31年10月23日採択され,同26日署名のため開放された。
 この憲章は原子力の先進5カ国(米,英,加,仏およびソ連)のうち少なくとも3カ国をふくむ18カ国が米国政府に批准を寄託すれば効力を生ずることになつており,この条件が32年7月29日みたされたので同日機関憲章は発効し,同憲章第1条により機関は発足した。
 これより先にもうけられていた準備委員会は31年10月におこなわれる第1回総会のためにその計画,予算,および機関事務局の機構などについて31年末から32年9月にかけてたびたび会合を開き審議をおこなつた。わが国も準備委員会のメンバーとして選出されたのでこの間,
    (1)機関の物質(ウラン,トリウムなど)の供給業務を重視し長期的に物質を供給しうる方法を講じること。
    (2)機関による保障措置の基準を確立し,機関の諸事業の促進をはかること。
    (3)原子力に関する国際基準の設定に努力すること。
    (4)原子力における保健および安全の面において活動すべきこと。
    (5)情報交換の促進をはかること。
 などを中心として種々意見をのべ討議に参加したが,わが国の主張も機関の計画に反映されている。
 準備委員会はその重要な仕事の一つとして機関の初期の事業計画案を作成したが,その中には次のような事業がふくまれている。
    (1)国際的研究機関と接触をたもち国際的な研究計画の調整をおこない,加盟各国からの要請によつて,研究の援助をおこなつたり,助言をあたえたりする。
    (2)アイソトープおよび放射線の利用に関して,技術援助や国際的な輸送の研究をおこない,放射線測定のための標準資料の作成配布,測定装置の目盛の検定についての勧告をおこなう。
    (3)原子炉の開発についても技術援助をおこない,さらに,中型の原子炉を中心とする研究訓練施設を地域的につくることを奨励するような措置をとる。
    (4)機関に提供された特殊核分裂性物質などの原子力に関する物質,および役務,設備を援助をもとめる国に供給する。
    (5)科学的および技術的情報の収集,配布,および原子力平和利用促進のため,必要な場合には種々の国際会議を主催する。
    (6)加盟国へのコンサルタントサービス,フエローシツプ計画の促進をはかり,地域的訓練センターの設立について積極的に援助する。
    (7)機関の物質供給などにともなう保障措置および双務協定の保障措置の肩替りをおこなう。
    (8)保健および安全上の基準を確立する。河川,海,および大気などにおける廃棄物処理の研究をし,その基準の判定を検討し,また,これらの問題についての法律上の問題および保険の問題についての国際的取扱を検討する。
    (9)以上のような機関の仕事をおこなう上に,必要な場合には研究施設をもうける。
 これらの事業をおこなうため33年度における機関事務局の人員およびその機構の案も作成され機関の33年度の予算は通常予算として約400万ドルと特別資金25万ドル(加盟国の任意寄付金でまかなう。使途は奨学金。)の案がたてられた。


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