第2章 国際協力
§2 国際原子力機関の発足と活動
§2 国際原子力機関の発足と活動
2−2 第1回総会の開催
機関発足後第1回目の総会は32年9月1日から同月23日にわたつて,オーストリアのウイーンにおいて開催された。この会議にはすでに機関に加盟している58カ国が代表をおくり,また批准をすませていない国や,国際連合,およびその専門機関もオブザーバーをおくつた。わが国からも12名の代声をおくつた。
第1回通常総会は二日間にわたつてひらかれ,総会の仮議事手続をきめ,それまでに準備委員会によりきまつていた13の理事国にくわえて10の理事国を選出し,理事会を成立せしめて終了した。この後,翌週から第1回特別総会がひらかれた。
これまでに13の理事国は機関憲章第6条の規定にしたがつて次のように選出されており,日本も極東地域を代表して理事国にえらばれていた。
(1)原子力に関する技術(原料物質の生産を含む)のもつとも進歩した5加盟国
次にのこりの3カ国としては一括選挙で,ガテマラ,ペルー,トルコがえらばれ,これら10カ国の中から2年の理事国としてアルゼンチン,パキスタン,ルーマニア,トルコ,および韓国がえらばれた。
米国,英国,カナダ,フランス,ソ連
(2)これらの5大国によつて代表されていない地域のそれぞれにおいて原子力に関する技術(原料物質の生産をふくむ)のもつとも進歩した各1加盟国
北アメリカ ―
ラテンアメリカ ブラジル
西ヨーロツパ ―
東ヨーロツパ ―
アフリカおよび中東 南アフリカ連邦
南アジア イ ン ド
東南アジアおよび太平洋 オーストラリア
極 東 日 本
(3)原料物質の生産国であるベルギー,チエコスロバキア,ポーランドおよびポルトガルの中から2加盟国
チエコスロバキア および ポルトガル
(4)技術援助の提供国
スエーデン
第1回総会では北アメリカをのぞく7地域の代表各1名ずつをふくむように10加盟国を選出することとなつているので7地域の代表としてまず次の7カ国が選出された。
ラテンアメリカ アルゼンチン
西ヨーロツパ イタリア
東ヨーロツパ ルーマニア
中東およびアフリカ エジプト
南アジア パキスタン
東南アジヤおよび太平洋 インドネシア
極 東 韓 国
こうして成立した理事会では議長にチエコスロバキアの理事,副議長にカナダおよび日本の理事が選出された。
つづいて第1回の特別総会が開始され(日本代表も副議長国の中にえらばれた)23日の総会終了まで,機関の事業計画,機構予算について審議がかさねられた。機関の事業計画,機構および予算についてはほとんど修正なく上述の準備委員会案が採択されたが各国から実施にうつす場合の希望がのべられた。そのおもなものは,
(1)機関はなるべく加盟国の既設の設備を利用すること(オーストリア,ポーランド,ブルガリア)
日本からは,原子炉および放射性物質の保健および安全の基準の確立,機関は核分裂性物質の長期的確保に努力すべきこと,国連科学委員会の事業をうけついで放射性フオールアウトの科学的調査をおこなうべきことなどを主張した。
(2)機関に研究が必要かどうかさしあたつて検討すること(英・米)
(3)アイソトープの使用,供給,技術についての定期刊行物をだすこと,フオールアウトの情報をあつめること,ユネスコに相談して,アイソトープの輸送の基準をきめること(ソ連)
(4)FAOと協力して地域的な農業,生物センターをつくること,アイソトープ利用機具の標準化をはかること(ユーゴスラビア)
(5)ウラン資源をさがしたり,その技術の開発をすすめることについての援助に重点をおくこと(アルゼンチン)
(6)科学者および専門家の交換および訓練の計画を最優先的にすること(ポルトガル,オーストラリア,エジプト)
(7)安全保障のシステムをつくることが機関の重要な仕事である。(英,米,カナダ,オーストラリア)
最後に数カ国の共同提案により「機関の仕事を計画するにさいしては低開発地域の状態を改善し,生活水準をあげることに原子力平和利用が最大の成果をあげる項目に最大の優先度をあたえること」という趣旨のことが決議された。
分担金については日本もふくめた小委員会が構成され,日本もその中にくわわつた。分担金率は32年の国際連合の分担金率にもとづき決定され,かつその率は33年の第2回通常総会において,その後の加盟国を考慮して再調整されることなどがきめられた。
行政および法制に関する問題でば総会の恒久的議事手続規則,その機関のメンバーでなくて,国および国連専門機関のメンバーである国の代表の出席についての規則,国連と機関との協定,機関と国連専門機関との関係についての勧告,機関の仮職員規則の一般的原則,機関の恒久的本部などについて討議された。
機関の事業に必要な大枠はこの会議によりきめられたが,具体的なこまかい事項は,この後の理事会および事務局にゆだねられた。
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