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第223号 原子力委員会メールマガジン 核鑑識


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ No.223 ━━━━━
    @mieru(あっとみえる) 原子力委員会メールマガジン
             2017年6月16日号
   ☆★☆ めざせ! 信頼のプロフェッショナル!! ☆★☆
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┏ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┣ 委員からひとこと
┣ 会議情報
┃   (6月13日)
┃    ・関西電力株式会社高浜発電所の発電用原子炉の設置変更許可(3
┃     号及び4号発電用原子炉施設の変更)について(諮問)
┣ 原子力関係行政情報
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━・・・━━ 委員からひとこと ━・・・━━・・・━━・・・━━・・・

核鑑識
                               中西友子

 核鑑識という言葉は、一般の方にはあまり馴染みのない言葉かもしれない。
簡単に説明すると、核鑑識とは、例えば、誰にも管理されていない放射線を出
す物質が見つかった場合、その起源と発見に至るまでの時間や経緯を特定する
ことを指す。この技術を使えば、たとえ発見された物質が極少量であっても、
それが核関連物質であるのかないのか、もし核関連物質である場合にはどの原
子炉でどのくらい燃料として使用されたものか等を正確に把握することができ
る。

 周知のようにウランやプルトニウムが核分裂を起こすと核分裂生成物として
たくさんの放射性核種ができる。そして、それらの核種の量そのものや互いの
核種の量の比は、ウラン燃料の濃縮度や組成などにより異なる。また燃料とし
て使用された後は、時間の経過とともに、核分裂によって生成された放射性核
種の量が各々の半減期に従って減少していく。どの核種を調べれば最も効果的
にその放射性核種の起源と生成した時間を辿れるかについては長年の分析技術
の蓄積が必要である。つまり、燃料の原子炉内での核反応を詳細に把握し、か
つ、極微量の放射性同位元素を正確に分離・分析する技術とその結果を考察す
る広い知識基盤がなければ核鑑識を行うことはできない。

 1950年代にはビキニ事件※を受け、日本では当時の核実験により飛散してき
たフォールアウト中の放射性核種の分析が行われ、その高い技術の成果が報告
されている。核分裂により生成する核種は多様であり、全てを原子量の大きさ
順に並べるとラクダのコブのような二つのピーク型となる。しかしそのピーク
の形はプルトニウムの核分裂で生成したものかウランの核分裂によるものかに
よって少し異なってくる。そこで、かつては核実験が行われると雨水を集めて
分析し、ウランかプルトニウムかどちらの核種が核実験に使われたのかを突き
止める実験が行われていた。1950年代には現在のような発達した計測器がなく、
苦労を重ねて試料の調製や測定が行われていた。特に雨水では多量の試料を要
した。ひと月の間に降る雨を全て溜め、プールほどの体積の水の中に存在する
ストロンチウム90(Sr-90)を分離して測定した例もあった。その結果、
フォールアウトとして降ってくるSr-90の量の季節変化が求められていたこと
は驚きである。また、現在の福島第一原子力発電所事故後のように土壌や作物、
食品などに含まれる放射性物質の分析も行われていた。

 核鑑識に話を戻すと、今年の6月に「核セキュリティを支える技術開発に係
る国際シンポジウム」が日本原子力研究開発機構の主催で開催され、核鑑識
と地域間協力についての講演と討論が行われた。高い核関連物質の鑑識力は、
核セキュリティ力として核テロの抑止力、備えのひとつであり、国としてどう
対応するかという、省庁を横断するスキームの構築が必要との認識がいろいろ
な講演を通じて共有された。

 また、核鑑識では技術開発もさりながら、重要なことはその人材育成にある。
米国の研究所や大学では、核鑑識のサマースクールが定期的に開催されており、
その中から優秀な学生を雇用する道が開かれている。また、EUでもトレーニン
グコースを開催しており、欧米では核鑑識で学位を取った若い研究者が既にか
なりの人数が輩出されていることに驚いた。この分野を究めるには放射化学は
勿論のこと、物理や数学などの広い知識基盤がなければならないからである。
ただ、EU/JRC(欧州委員会共同研究センター)のK. Mayer博士は、一番の問題点
として、核鑑識技術では書き残せない微細な技術、職人の勘や技の部分があり、
それを持つ研究者が定年を迎えはじめており、継承することが難しいことを指
摘していた。

 翻って日本の現状を考えると、例えば、雨水を継時的に取得して放射性核種
を分析している研究者は非常に少ない。核鑑識のような技術分野をきちんと継
承・発展させていくためにも基礎的な化学力を備えた研究者をきちんと育てて
いく必要性を強く感じている。

――――――――――――――
※1954年、漁船第五福竜丸がアメリカのビキニ環礁での水爆実験に遭遇して被
災し、乗組員が放射線被ばくの障害を受けた事件。

━・・・━━ 会議情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━・
●原子力委員会の会議を傍聴にいらっしゃいませんか。会議は霞ヶ関周辺で開
 催しており、どなたでも傍聴できます。開催案内や配布資料は、すべて原子
 力委員会ウェブサイト(以下URL)で御覧いただけます。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/index.htm

●6月13日(火)の会議の概要は以下のとおりです。詳しくはウェブサイトに
掲載される議事録を御覧ください。

【議題1】関西電力株式会社高浜発電所の発電用原子炉の設置変更許可(3号
及び4号発電用原子炉施設の変更)について(諮問)
<主なやりとり等>
 関西電力株式会社高浜発電所の発電用原子炉の設置変更許可(3号及び4号
発電用原子炉施設の変更)について、原子力規制庁諮問文について説明をいた
だき、議論を行いました。

●次回の委員会開催については、以下の開催案内から御確認ください。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/topic/kaisai.htm

━・・・━━ 原子力関係行政情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・
 原子力関係の他の行政における委員会等のリンク情報は以下のとおりです。
直近で開催された委員会等がある場合には、◆【New】マークを付けておりま
す。

※URLが改行されてリンクが認識されない場合
 URLはクリックせず、文字列全体をURL欄に Copy & Paste してください。

■首相官邸
 ┣原子力防災会議
 ┃(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/genshiryoku_bousai/ )
 ┣原子力災害対策本部
 ┃(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/genshiryoku/ )
 ┗原子力立地会議
  (http://www.kantei.go.jp/jp/singi/index/gensiryoku/ )

■内閣官房
 ┣原子力関係閣僚会議
 ┃(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/genshiryoku_kakuryo_kaigi/ )
 ┣最終処分関係閣僚会議
 ┃(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/saisyu_syobun_kaigi/ )
 ┗原子力損害賠償制度の見直しに関する副大臣等会議
 (http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/genshiryoku_songaibaisho/index.html )

■経済産業省
 ┣東京電力改革・1F問題委員会
 ┗◆【New】高速炉開発会議
 (http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment.html )

■資源エネルギー庁
 ┣総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会
 ┃┃(http://www.meti.go.jp/committee/gizi_8/21.html )
 ┃┣原子力小委員会
 ┃┃┣◆【New】自主的安全性向上・技術・人材WG
 ┃┃┣放射性廃棄物WG
 ┃┃┣地層処分技術WG
 ┃┃┗原子力事業環境整備検討専門WG
 ┃┗電力基本政策小委員会
 ┗総合資源エネルギー調査会基本政策分科会
  ┃(http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/ )
  ┗基本政策分科会
   ┣長期エネルギー需給見通し小委員会
   ┣発電コスト検証WG
   ┣電力需給検証小委員会
   ┃(http://www.meti.go.jp/committee/gizi_8/18.html#denryoku_jukyu )
   ┗電力システム改革貫徹のための政策小委員会
    (http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/kihonseisaku
     /denryoku_system_kaikaku/001_haifu.html)

■原子力規制委員会
 ┗◆【New】原子力規制委員会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/kisei/index.html )
  ┣合同審査会(原子炉安全専門審査会・核燃料安全専門審査会)
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/roanshin_kakunen/index.html )
  ┣◆【New】放射線審議会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/houshasen/index.html )
  ┣国立研究開発法人審議会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/nrda/nrda/index.html )
  ┣量子科学技術研究開発機構部会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/nrda/nirs/index.html )
  ┣日本原子力研究開発機構部会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/nrda/jaea/index.html )
  ┣原子力規制委員会政策評価懇談会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/seihyou_kondan/index.html )
  ┣帰還に向けた安全・安心対策に関する検討チーム
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/kikan_kentou/index.html )
  ┣◆【New】原子力規制委員会行政事業レビューに係る外部有識者会合
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/gyousei_gaibu/index.html )
  ┗原子炉安全専門審査会 原子炉火山部会
   (https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/roanshin_kazan/00000002.html )

■文部科学省
 ┣原子力科学技術委員会
 ┃┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/055/index.htm )
 ┃┣原子力人材育成作業部会
 ┃┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/079/index.htm )
 ┃┣核融合研究作業部会
 ┃┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/056/index.htm )
 ┃┣◆【New】核不拡散・核セキュリティ作業部会
 ┃┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/076/index.htm )
 ┃┗研究施設等廃棄物作業部会
 ┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/057/index.htm )
 ┣核融合科学技術委員会
 ┃┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/074/index.htm )
 ┃┗原型炉開発総合戦略タスクフォース
 ┃ (http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/078/index.htm )
 ┗調査研究協力者会議等(研究開発)
  ┗もんじゅの在り方に関する検討会
   (http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/019/index.htm)

■復興庁
 ┣◆【New】福島12市町村の将来像に関する有識者検討会
 ┃(http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-4/20141226184251.html )
 ┗原子力災害からの福島復興再生協議会
 (http://www.reconstruction.go.jp/topics/000818.html )

■環境省
 ┗東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関す
  る専門家会議
 (https://www.env.go.jp/chemi/rhm/conf/conf01.html )

■厚生労働省
 ┗薬事・食品衛生審議会(食品衛生分科会放射性物質対策部会)
 (http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-yakuji.html?tid=127896 )

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●次号配信は、平成29年6月30日(金)午後の予定です。

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発行者:内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局)
原子力委員会:岡 芳明委員長、阿部 信泰委員、中西 友子委員
○メルマガへの御意見・御感想はこちらへ(お寄せ頂いた御意見に対しては、
原則として回答致しませんが、今後の原子力委員会の業務の参考とさせていた
だきます。)
https://form.cao.go.jp/aec/opinion-0017.html
○配信希望、アドレス変更、配信停止などはこちらへ
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/melmaga/index.htm
○原子力委員会ホームページ  http://www.aec.go.jp/
○このメールアドレスは発信専用のため、御返信いただけません。
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