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第215号 原子力委員会メールマガジン 過酷事故の防止と影響低減に焦点をあてた安全の理解と研究開発・人材育成


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ No.215 ━━━━━
    @mieru(あっとみえる) 原子力委員会メールマガジン
             2017年2月10日号
   ☆★☆ めざせ! 信頼のプロフェッショナル!! ☆★☆
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┏ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┣ 委員からひとこと
┣ 会議情報
┃   (1月31日)
┃    ・「原子力利用に関する基本的考え方」について(一般財団法人
┃     放射線利用振興協会 理事長 岡田 漱平氏)
┃   (2月7日)
┃    ・「原子力利用に関する基本的考え方」について
┃     (国民の方々とのコミュニケーションの促進について)
┃     ・神津 カンナ氏(作家・エッセイスト)
┃     ・村上 朋子氏(一般財団法人 日本エネルギー経済研究所)
┃     Stakeholder Involvement in Nuclear Decision Making(OECD)
┃     報告
┣ 原子力関係行政情報
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━・・・━━ 委員からひとこと ━・・・━━・・・━━・・・━━・・・

過酷事故の防止と影響低減に焦点をあてた安全の理解と研究開発・人材育成
                               岡 芳明

 国民の安全確保において直接的に重要なのは、放射性物質が多量に環境中に
放出される事故(過酷事故)の発生と影響を低減することである。過酷事故の
防止と影響低減に焦点を当てて安全を理解し、安全確保を図ることが効果的・
効率的である。

 日本では東電福島原発事故前には安全性が冷却材喪失事故など設計基準事故
をもとに審査されたり説明されたりしていたため、過酷事故挙動を踏まえた安
全の理解が不十分なのではないか。原子炉メーカの仕事は軽水炉などの製品つ
くりなので、設計基準事故は直接その仕事に関係するが、過酷事故の影響低減
はアクシデントマネジメントや防災をはじめ、原子炉メーカの仕事を超える部
分も重要である。

 大学にいた時に、東電福島原発事故の後、遅ればせながら過酷事故の研究を
始めた。その時に過酷事故挙動理解の出発点として参考になったのは、米国原
子力規制委員会の「原子力安全の視点」(参考1)という報告書だった。その
特徴は個別の現象ではなく、原子炉設備との関連で過酷事故挙動を説明してい
る点にある。過酷事故の解析コード開発と研究を長年行っている米国の国立研
究所を訪問し、この報告書に言及したところ、彼らが作成を主導したことを知
り、同じ題名の米国原子力規制委員会の研修用に作られたパワーポイント資料
をもらった。

 この資料を見て衝撃を受けたのは、過酷事故を中心に据えて、その発生防止
と影響低減の観点で安全が説明されており、それまで設計基準事故をもとに安
全を理解していた自分の未熟さに気付かされたことだった。

 日本では安全研究が2000年代に予算が削減されて下火になった時期のあった
こともあり、以前は過酷事故とその影響の知見が十分ではなかった。東電福島
原発事故とその後の努力により、国内外で多くの知見が得られている。その知
見をいろいろな状況で使えるように体系化して知識化するとともに、過酷事故
の防止と影響低減のための体系的な安全の研修資料を作る必要がある。

 東電福島原発事故前も個別の過酷事故現象の研究は行われていたが、その結
果を知識化して、いろいろな過酷事故の状態に対して利用できる状態ではな
かった。これは事故前には過酷事故解析を米国コードに依存し、実験や現象の
研究結果の体系化、知識化が不十分だったことも原因であろう。

 過酷事故の現象は様々あるが、研究する時には過酷事故解析コードを自ら使
いながら、あるいは過酷事故解析研究者と連携して研究を進める必要がある。
これによって研究対象の現象の重要度が理解でき、研究成果を解析コードの改
良を通じて知識化できる。過酷事故に関係する現象は多数あるので、研究対象
の現象の優先度をつけることもできる。

 過酷事故は日本では生じないことになっていたので、過酷事故対策設計・技
術において日本はドイツや米国に後れを取ったが、これらの設計や技術はまだ
第一世代である。今後の研究によって現象の不確定性が減少し、技術改良の余
地もあると考えられる。そのためにも過酷事故とその影響の体系的理解を進め
る必要がある。

 過酷事故に限らず、日本では対策がハード(設備)に偏りがちだが、ソフト
(リスクマネジメント、予防型の安全、緊急時対応、防災等)も過酷事故研究
開発と共に進める必要がある。

 過酷事故の防止と影響低減を中心とした安全の理解が進むことで、安全確保
のための人的・物的資源の効率的な利用が可能になると考えられる。例えば、
規制や基準の数値そのものだけにとらわれることなく、過酷事故を中心に安全
を俯瞰的に理解する原子力関係者が増えることで、原子力利用で遭遇する様々
な事故・故障の国民の安全確保における重要度の理解が進み、細かいトラブル
対応に関係者が忙殺されることがなくなることを期待したい。細かいトラブル
対応を米国の様に原子力事業者の自主的安全性向上に任せることで安全が向上
することを期待したい。

 欧州では欧州委員会の原子力関係のプログラムにおいて研究活動に人材育成
を組み込むことが求められている。例えば過酷事故プラットフォーム(研究連
携組織)のSARNETが人材育成活動も行っている。若手育成のセミナーも一流の
過酷事故研究者を講師として毎年開催されており、英文書も出版されている
(参考資料2)。

 過酷事故の研修資料を作成し、研究開発情報を共有し、課題を検討し、連携
を作り出す必要がある。過酷事故研究のプラットフォームを作り情報交換する
とともに、人材育成も組み込むとよい。研究者はまず過酷事故研究において世
界で一目置かれる存在を目指すとよい。

 若手は一人では世界ダントツには育たない。周囲から知識を吸収し、実験設
備が利用できる環境を作る必要がある。解説や総説、研修資料の作成や公開は
そのための第一歩である。情報を自分の村に閉じ込めてしまっては、優れた成
果を生み出すことはできない。

 多数の小さく低い踏台がバラバラに存在しても、高いところには手が届かな
い。研究は踏台の材料を作る作業に相当する。解説や総説、研修資料の作成は
踏台作りにあたる。よい踏台を作るにはピアレビューが必須である。ピアレ
ビューは部外者が行う必要がある。踏台は皆が利用できる状態にする必要があ
る。踏台を集めて、高い台(知識基盤)を作り、成果を持ち寄り情報交換する
ことで、台をより高く・広く・強くすることが必要ではないか。

 過酷事故研究における研究開発機関・大学・産業界の連携が進むことを期待
したい。

参考資料
1. Perspectives on Reactor Safety(NUREG/CR-6042 Rev.2)
2. ”Nuclear Safety in Light Water Reactors: Severe Accident Phenomeno
 logy” Bal Raj Sehgal (2012)

━・・・━━ 会議情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━・
●原子力委員会の会議を傍聴にいらっしゃいませんか。会議は霞ヶ関周辺で開
 催しており、どなたでも傍聴できます。開催案内や配布資料は、すべて原子
 力委員会ウェブサイト(以下URL)で御覧いただけます。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/index.htm

●1月31日(火)の会議の概要は以下のとおりです。詳しくはウェブサイトに
掲載される議事録を御覧ください。

【議題1】「原子力利用に関する基本的考え方」について(一般財団法人 放射
線利用振興協会 理事長 岡田 漱平氏)

<主なやりとり等>
 「原子力利用に関する基本的考え方」について、一般財団法人放射線利用振
興協会理事長である岡田漱平氏より説明をいただき、その後、委員の間で質疑
応答を行いました。

●2月7日(火)の会議の概要は以下のとおりです。詳しくはウェブサイトに
掲載される議事録を御覧ください。

【議題1】「原子力利用に関する基本的考え方」について
(国民の方々とのコミュニケーションの促進について)
・神津 カンナ氏(作家・エッセイスト)
・村上 朋子氏(一般財団法人 日本エネルギー経済研究所)
Stakeholder Involvement in Nuclear Decision Making(OECD)報告

<主なやりとり等>
 「原子力利用に関する基本的考え方」について、国民の方々とのコミュニ
ケーションの促進の視点から、作家・エッセイストである神津カンナ氏及び一
般財団法人日本エネルギー経済研究所に所属されている村上朋子氏より説明を
いただき、その後、委員の間で質疑応答を行いました。

●次回の委員会開催については、以下の開催案内から御確認ください。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/topic/kaisai.htm

━・・・━━ 原子力関係行政情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・
 原子力関係の他の行政における委員会等のリンク情報は以下のとおりです。
直近で開催された委員会等がある場合には、◆【New】マークを付けておりま
す。

※URLが改行されてリンクが認識されない場合
 URLはクリックせず、文字列全体をURL欄に Copy & Paste してください。

■首相官邸
 ┣原子力防災会議
 ┃(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/genshiryoku_bousai/ )
 ┣原子力災害対策本部
 ┃(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/genshiryoku/ )
 ┗原子力立地会議
  (http://www.kantei.go.jp/jp/singi/index/gensiryoku/ )

■内閣官房
 ┣原子力関係閣僚会議
 ┃(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/genshiryoku_kakuryo_kaigi/ )
 ┣最終処分関係閣僚会議
 ┃(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/saisyu_syobun_kaigi/ )
 ┗原子力損害賠償制度の見直しに関する副大臣等会議
 (http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/genshiryoku_songaibaisho/index.html )

■経済産業省
 ┣東京電力改革・1F問題委員会
 ┗高速炉開発会議
 (http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment.html )

■資源エネルギー庁
 ┣総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会
 ┃┃(http://www.meti.go.jp/committee/gizi_8/21.html )
 ┃┣原子力小委員会
 ┃┃┣自主的安全性向上・技術・人材WG
 ┃┃┣放射性廃棄物WG
 ┃┃┣地層処分技術WG
 ┃┃┗原子力事業環境整備検討専門WG
 ┃┗電力基本政策小委員会
 ┗総合資源エネルギー調査会基本政策分科会
  ┃(http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/ )
  ┗基本政策分科会
   ┣長期エネルギー需給見通し小委員会
   ┣発電コスト検証WG
   ┣電力需給検証小委員会
   ┃(http://www.meti.go.jp/committee/gizi_8/18.html#denryoku_jukyu )
   ┗電力システム改革貫徹のための政策小委員会
    (http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/kihonseisaku/
     denryoku_system_kaikaku/001_haifu.html)

■原子力規制委員会
 ┗◆【New】原子力規制委員会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/kisei/index.html )
  ┣◆【New】合同審査会(原子炉安全専門審査会・核燃料安全専門審査会)
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/roanshin_kakunen/index.html )
  ┣放射線審議会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/houshasen/index.html )
  ┣国立研究開発法人審議会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/nrda/nrda/index.html )
  ┣量子科学技術研究開発機構部会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/nrda/nirs/index.html )
  ┣日本原子力研究開発機構部会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/nrda/jaea/index.html )
  ┣原子力規制委員会政策評価懇談会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/seihyou_kondan/index.html )
  ┣帰還に向けた安全・安心対策に関する検討チーム
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/kikan_kentou/index.html )
  ┣原子力規制委員会行政事業レビューに係る外部有識者会合
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/gyousei_gaibu/index.html )
  ┗原子炉安全専門審査会 原子炉火山部会
   (https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/roanshin_kazan/00000002.html )

■文部科学省
 ┣原子力科学技術委員会
 ┃┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/055/index.htm )
 ┃┣原子力人材育成作業部会
 ┃┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/079/index.htm )
 ┃┣核融合研究作業部会
 ┃┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/056/index.htm )
 ┃┣◆【New】核不拡散・核セキュリティ作業部会
 ┃┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/076/index.htm )
 ┃┗研究施設等廃棄物作業部会
 ┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/057/index.htm )
 ┣核融合科学技術委員会
 ┃┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/074/index.htm )
 ┃┗原型炉開発総合戦略タスクフォース
 ┃ (http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/078/index.htm )
 ┗調査研究協力者会議等(研究開発)
  ┗もんじゅの在り方に関する検討会
   (http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/019/index.htm)

■復興庁
 ┣福島12市町村の将来像に関する有識者検討会
 ┃(http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-4/20141226184251.html )
 ┗◆【New】原子力災害からの福島復興再生協議会
 (http://www.reconstruction.go.jp/topics/000818.html )

■環境省
 ┗東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関す
  る専門家会議
 (https://www.env.go.jp/chemi/rhm/conf/conf01.html )

■厚生労働省
 ┗薬事・食品衛生審議会(食品衛生分科会放射性物質対策部会)
 (http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-yakuji.html?tid=127896 )

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●次号配信は、平成29年2月24日(金)午後の予定です。

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発行者:内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局)
原子力委員会:岡 芳明委員長、阿部 信泰委員、中西 友子委員
○メルマガへの御意見・御感想はこちらへ(お寄せ頂いた御意見に対しては、
原則として回答致しませんが、今後の原子力委員会の業務の参考とさせていた
だきます。)
https://form.cao.go.jp/aec/opinion-0017.html
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 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/melmaga/index.htm
○原子力委員会ホームページ  http://www.aec.go.jp/
○このメールアドレスは発信専用のため、御返信いただけません。
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