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第209号 原子力委員会メールマガジン 取り締まり型から予防型の安全確保への移行


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    @mieru(あっとみえる) 原子力委員会メールマガジン
             2016年10月28日号
   ☆★☆ めざせ! 信頼のプロフェッショナル!! ☆★☆
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┏ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┣ 委員からひとこと
┣ 会議情報
┃   (10月18日)
┃    ・岡原子力委員会委員長の海外出張報告について
┃    ・使用済燃料再処理機構の使用済燃料再処理等実施中期計画につい
┃     て(資源エネルギー庁)
┃    ・発電用原子炉設置者11社からの発電用原子炉設置変更許可につ
┃     いて(諮問)(原子力規制庁)
┣ 原子力関係行政情報
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━・・・━━ 委員からひとこと ━・・・━━・・・━━・・・━━・・・

取り締まり型から予防型の安全確保への移行
                               岡 芳明

 安全確保は規制や規則で取り締まるものと考えている方は多いのではないだ
ろうか。しかし国際的には原子力に限らず、安全確保は取り締まり型から予防
型に移行している。予防型と言ってもハードの対策設備を多数作ることではな
い。「予防型の安全確保」は対象に付随するリスクを低減させるアプローチよ
りも、マネジメントの選択肢を広げその中で最適化を目指すアプローチのこと
である。これは原子力に限らず国際的なリスクマネジメントの考え方となって
いる(リスクマネジメントに関する国際標準規格:ISO31000)。

 東電福島原発事故は「取り締まり型から予防型の安全確保への移行」が遅れ
たため生じたと考えることができるのではないだろうか。米国ではスリーマイ
ル島(TMI)原発事故以降、「予防型の安全確保」に事業者も規制側も努力し
てきたことに遅ればせながら気が付いた。日本でも「取り締まり型の安全確保」
から「予防型の安全確保」に移行する必要があるのではないだろうか。

 自主的安全性向上と言っても、それは電気事業者等の努力のことであり、そ
の他の原子力関係者にはピンと来なかった(自分のことと思わなかった)方も
多いのではないだろうか。しかし「予防型の安全確保」は関係者全員の目標に
なると考える。

 「予防型の安全確保」のためには、事故・トラブルをとがめるのではなく、
その教訓を事業者が共有し改善に生かせる環境を作ることが必要である。日本
では小さなトラブルでも大騒ぎになると言われている。小さなトラブルまで公
開させて、取り締まろうとすることは、「予防型の安全確保」にも影響する可
能性があるということに気が付く必要もあるのではないか。

 事故トラブルの経験を共有する安全確保の仕組は航空業界で始まり、米国で
もTMI原発事故後、米国原子力発電運転者協会(INPO)が設立され、原子力発
電事業者から事故故障データを収集、共有し改善に生かすことで、安全性と経
営向上に役立てている。ヒューマンエラーや組織エラーの問題もこの方法で対
策出来る。データベースの非公開はヒューマンエラーや組織エラーを含む良い
データを収集する上で本質的に必要なものであり、自主的安全性向上の成功に
とって肝要な点である。なお米国ではデータベースの公開を求める訴訟がなさ
れたことがあるが、非公開でよいとの裁判所の判断が下されたとのことである。

 日本でも、米国で行われているように、規制基準に抵触しない小さなトラブ
ルは公開させたりせず、事業者間での共有を進めることで、自主的安全性向上
を図るべきではないだろうか。もちろん、ある基準以上の事故は規制の対象で、
取り締まり的ではなく、事実として公開する必要がある。発電所の検査におい
ても細かいミスをとがめるのではなく、予防型の安全確保を促す必要がある。

 東電福島原発事故前は、炉内構造物の検査データの記載の問題など、細かい
点の規制対応に原子力事業者が労力を費やして、大津波などの過酷事故に対応
できなかったと聞いたことがある。細かい点にまで注意を行き届かせるのは日
本人が得意であるが、この場合の長所は弱点になった。この特徴は「予防型の
安全確保」の確立にも影響する。長所は弱点にもなるという点は反省と注意が
必要ではないだろうか。

 人材育成の課題もある。「予防型の安全確保」は規則・基準や規格の基準な
どの数値だけを知っている人材では対応することが不可能である。このため、
国民の安全にとって最も重要な過酷事故に係る安全確保の経験・知識と制度を
俯瞰できる人材を研修等によって育成する必要がある。米国ではこのような研
修が行われている。事故と安全性改善の歴史や、規制や規格基準の背後にある
考え方の解説や研修資料の作成を進める必要もあるのではないだろうか。米国
原子力規制委員会の研修資料など既存のものを参照・利用することから始める
こともできるはずである。

 日本でも自主的安全性向上の取り組みが始まっている。小さなトラブルをと
がめない環境を作り、研修を行って安全を俯瞰できる人材を育成し、自主的安
全向上を機能させていくことが重要である。

 日本の原子力利用は再稼働後、運転期間延長、稼働率向上を目指すとよいの
ではないだろうか。更に出力上昇の可能性もある。「運転期間延長、稼働率向
上、出力上昇」は米国が1979年のTMI原発事故後行ってきたことである。自主
的安全性向上や規制の改良とのセットでこれを達成してきている。1989年から
の約10年間で発電量は約50%増え(参考1)、事故・トラブル率は大幅に(重
要事象頻度が約30分の1に)低減している(参考2)。これらのことから、安
全性の向上と経済性の向上は両立することが実証されている。国民に安価で安
全な原子力の利点が認識され、米国では原子力に対する支持が高い。日本の原
子力はこれを見習うとよいのではないだろうか。

 重要なことは、稼働率向上は目標ではなく結果であるとの認識である。予防
型のリスクマネジメント、すなわち自主的安全性向上をより実質的に機能させ
ることや規制の改善、小さなトラブルは事業者の改善に委ねることなどが先で、
これらが達成できれば稼働率向上と事故・故障率の低減が実現するのではない
か。「予防型の安全確保」のロードマップを作り、その進捗を確認するのはい
かがであろうか。

 なお、取り締まり型と予防型の安全確保を併用することが必要と考える方が
いるかもしれないが、米国が行ってきたことは、取り締まりも含めた「予防型
の安全確保」である。これは、例えばINPOの活動のみならず、米国原子力規
制委員会が“Risk informed performance based regulation”や“Reactor
oversight process”の標語を掲げて活動してきたことなどからも明らかでは
ないだろうか。

 安全確保は原子力利用の大前提である。日本でも「予防型の安全確保」を目
指していくべきではないだろうか。

【参考文献】
(参考1)US Nuclear Generating Statistics,Nuclear Energy Institute
http://www.nei.org/Knowledge-Center/Nuclear-Statistics/US-Nuclear-
Power-Plants/US-Nuclear-Generating-Statistics

(参考2)Significant events at US nuclear plants, Nuclear Energy Institute
http://www.nei.org/Knowledge-Center/Nuclear-Statistics/US-Nuclear-
Power-Plants/Significant-Events-at-US-Nuclear-Plants

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━・・・━━ 会議情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━・
●原子力委員会の会議を傍聴にいらっしゃいませんか。会議は霞ヶ関周辺で開
 催しており、どなたでも傍聴できます。開催案内や配布資料は、すべて原子
 力委員会ウェブサイト(以下URL)で御覧いただけます。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/index.htm

●10月18日(火)の会議の概要は以下のとおりです。詳しくはウェブサイトに
掲載される議事録を御覧ください。

【議題1】岡原子力委員会委員長の海外出張報告について

<主なやりとり等>
 岡原子力委員会委員長の海外出張報告について、岡委員長より平成28年9
月24日(土)〜30日(金)のオーストリア共和国及びベルギー王国への出
張報告を行い、その後、委員の間で質疑応答を行いました。

【議題2】使用済燃料再処理機構の使用済燃料再処理等実施中期計画について
(資源エネルギー庁)

<主なやりとり等>
 使用済燃料再処理機構が策定する使用済燃料再処理等実施中期計画の認可に
際する経済産業大臣からの意見照会について、資源エネルギー庁より説明をい
ただき、次回以降、当委員会の見解を示すこととしました。

【議題3】発電用原子炉設置者11社からの発電用原子炉設置変更許可につい
て(諮問)(原子力規制庁)

<主なやりとり等>
 発電用原子炉設置者11社からの発電用原子炉設置変更許可について(諮問)
について、原子力規制庁より説明をいただき、次回以降、答申を行うこととし
ました。

●次回の委員会開催については、以下の開催案内から御確認ください。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/topic/kaisai.htm

━・・・━━ 原子力関係行政情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・
 原子力関係の他の行政における委員会等のリンク情報は以下のとおりです。
直近で開催された委員会等がある場合には、◆【New】マークを付けておりま
す。

※URLが改行されてリンクが認識されない場合
 URLはクリックせず、文字列全体をURL欄に Copy & Paste してください。

■資源エネルギー庁
 ┣総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会
 ┃┃(http://www.meti.go.jp/committee/gizi_8/21.html )
 ┃┣原子力小委員会
 ┃┃┣自主的安全性向上・技術・人材WG
 ┃┃┣◆【New】放射性廃棄物WG
 ┃┃┣地層処分技術WG
 ┃┃┗原子力事業環境整備検討専門WG
 ┃┗電力基本政策小委員会
 ┗総合資源エネルギー調査会基本政策分科会
  ┃(http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/ )
  ┗基本政策分科会
   ┣長期エネルギー需給見通し小委員会
   ┣発電コスト検証WG
   ┣電力需給検証小委員会
   ┃(http://www.meti.go.jp/committee/gizi_8/18.html#denryoku_jukyu )
   ┗電力システム改革貫徹のための政策小委員会
    (http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/kihonseisaku/
     denryoku_system_kaikaku/001_haifu.html)

■原子力規制委員会
 ┗◆【New】原子力規制委員会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/kisei/index.html )
  ┣◆【New】合同審査会(原子炉安全専門審査会・核燃料安全専門審査会)
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/roanshin_kakunen/index.html )
  ┣放射線審議会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/houshasen/index.html )
  ┣国立研究開発法人審議会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/nrda/nrda/index.html )
  ┣量子科学技術研究開発機構部会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/nrda/nirs/index.html )
  ┣日本原子力研究開発機構部会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/nrda/jaea/index.html )
  ┣原子力規制委員会政策評価懇談会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/seihyou_kondan/index.html )
  ┣帰還に向けた安全・安心対策に関する検討チーム
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/kikan_kentou/index.html )
  ┣原子力規制委員会行政事業レビューに係る外部有識者会合
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/gyousei_gaibu/index.html )
  ┗◆【New】原子炉安全専門審査会 原子炉火山部会
   (https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/roanshin_kazan/00000002.html )

■文部科学省
 ┣原子力科学技術委員会
 ┃┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/055/index.htm )
 ┃┣原子力人材育成作業部会
 ┃┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/079/index.htm )
 ┃┣核融合研究作業部会
 ┃┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/056/index.htm )
 ┃┣核不拡散・核セキュリティ作業部会
 ┃┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/076/index.htm )
 ┃┗研究施設等廃棄物作業部会
 ┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/057/index.htm )
 ┣核融合科学技術委員会
 ┃┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/074/index.htm )
 ┃┗原型炉開発総合戦略タスクフォース
 ┃ (http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/078/index.htm )
 ┗調査研究協力者会議等(研究開発)
  ┗もんじゅの在り方に関する検討会
   (http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/019/index.htm)

■復興庁
 ┣福島12市町村の将来像に関する有識者検討会
 ┃(http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-4/20141226184251.html )
 ┗原子力災害からの福島復興再生協議会
 (http://www.reconstruction.go.jp/topics/000818.html )

■環境省
 ┗東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関す
  る専門家会議
 (https://www.env.go.jp/chemi/rhm/conf/conf01.html )

■厚生労働省
 ┗薬事・食品衛生審議会(食品衛生分科会放射性物質対策部会)
 (http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-yakuji.html?tid=127896 )

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●次号配信は、平成28年11月11日(金)午後の予定です。

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発行者:内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局)
原子力委員会:岡 芳明委員長、阿部 信泰委員、中西 友子委員
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原則として回答致しませんが、今後の原子力委員会の業務の参考とさせていた
だきます。)
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