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第201号 原子力委員会メールマガジン 放射線の利用について−その6


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    @mieru(あっとみえる) 原子力委員会メールマガジン
             2016年6月24日号
   ☆★☆ めざせ! 信頼のプロフェッショナル!! ☆★☆
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┏ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┣ 委員からひとこと
┣ 会議情報
┣ 原子力関係行政情報
┣ 就任挨拶
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━・・・━━ 委員からひとこと ━・・・━━・・・━━・・・━━・・・

放射線の利用について−その6
                              中西 友子

 これから数回にわたって私が中性子線イメージングで研究してきたことを紹
介したい。

 中性子はX線のように直接フィルムを感光させる力はないが、ある種の物質
(コンバータという)と相互作用を起こしてX線と同じ性質をもった電磁波で
あるガンマ線を発生させる。このコンバータを使った仕組みを工夫すると、X
線の場合と同様にX線フィルムを感光させることができる。中性子線を照射す
ると試料の後ろに置いたX線フィルムには、中性子線が通り抜けられない度合
に応じてX線フィルムが感光される。つまり、試料中、中性子線の通過を阻止
するものが多いところは、X線フィルムに届く中性子線の強度が低くなるため
フィルムはあまり感光されなくなる。中性子線を光線に例えれば、光が通り抜
けられない程度に応じた影絵のような像が得られることになる。

 では、例えば生きた植物に中性子線を照射すると何の像が得られるだろうか。
生きた植物中の8割以上は水で占められる。中性子線は、水(正確に言うと水
分子の構成成分である水素原子)により透過量が減少するため、X線フィルムに
は水の量に応じた像、つまり水分像が得られることになる。そこで時間の経過
と共にこの中性子線像を撮っていくと植物中の水の量の変化を調べることがで
きる。

 切り花では、中性子線像を時間の経過と共に撮っていくと、どこの水がどの
位早く減少していくのかを中性子線像から調べることができる。切り花をいか
に長持ちさせるかは花の栽培農家のひとつの大きな課題である。そこで、水の
保持をうまく工夫できたら、切り花の寿命は長くなるかもしれないという思い
から、かつて農業試験場との共同研究でバラの切り花について調べたことが
あった。バラの花は、運搬中に花の部分が付け根から折れ曲がってしまう、い
わゆるベントネック現象を起こすことがあり、一度花の根元が曲がるともう元
には戻らず枯れてしまう。その原因について中性子線を照射して調べてみた。

 バラの花のすぐ下の茎には生きた細胞がぎっしりと詰まっているが、もう少
し下に行くと茎の中心部の細胞密度は低下する。茎の中心部では組織が抜けて
いることが多いのである。このことは、切り花の茎の下部を切ると、茎の真ん
中まで細胞がぎっしり詰まっていないことと対応する。
 バラの花の直下の茎とそれより下の茎では水の保持力が異なるのである。乾
燥状態になると、まず、花の下部の茎が保持している水が無くなり、次にその
上の花に近い茎から水が抜ける。しかし、再度水を吸収させると花より下の方
の茎までは水がすぐに上がるものの、細胞の詰まった上方の茎へは水は上がっ
ていかない。細胞密度が高い所の茎では一度水分を失うと再度水を吸収するこ
とができずそこから花が折れてしまうことが示された。
 このことは、植物の持つ、人間の知恵を遥かに超えた機能のようにも考えら
れる。植物は、乾燥という過酷な環境下では、花を咲かせて実を実らせるとい
う、エネルギーの必要な過程には行かないよう、花の直下の細胞が防波堤のよ
うに水をシャットダウンしているようにも思えるのである。これは、バラが、
特に乾燥状態を切り抜けるための独自の手段として発達させた機能のようにも
思われた。

 どのように観賞用植物の寿命を長くするのか、その方法の一つとして水の性
質を変えることも行われている。水をあげないようにとの注意書きがある木の
鉢が売られていることがある。グリセリン溶液を木全体に行きわたるよう吸わ
せているため、いわば仮死化状態になっている木であり、いつまでも葉は青々
しい。しかし一度水を与えるとグリセリンが抜け出てしまい、あっという間に
枯れてしまう。
 そこで、私たちはキセノンガスを圧力下で少し溶かした水をカーネーション
の切り花に供給したことがあった。キセノンガスが溶けた水は粘度が少し高く
なる。そしてこの水を吸収したカーネーションの切り花は、普通の水を吸収し
たものよりも明らかに日持ちが良かった。この様子について中性子線を照射し
て調べたところ、花の中の子房の周りの水の減少が進まないことが、花が長持
ちする原因の一つであることが判った。

 植物中の水のコントロールは非常に難しく、また植物自身も色々な方法で水
の確保についての戦略をその組織の中で発展させてきている。植物の持つ色々
な知恵を中性子線像により考えることもできる。 
 次回は中性子線を照射して得られた樹木内部の水について紹介したい。

━・・・━━ 会議情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━・
●原子力委員会の会議を傍聴にいらっしゃいませんか。会議は霞ヶ関周辺で開
 催しており、どなたでも傍聴できます。開催案内や配布資料は、すべて原子
 力委員会ウェブサイト(以下URL)で御覧いただけます。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/index.htm

●前回配信させていただいたメールマガジンNo.200号から今回配信させてい
 ただいたメールマガジンNo.201号までの間に原子力委員会の開催はござい
 ませんでした。

●次回の委員会開催については、以下の開催案内から御確認ください。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/topic/kaisai.htm

━・・・━━ 原子力関係行政情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・
 原子力関係の他の行政における委員会等のリンク情報は以下のとおりです。
直近で開催された委員会等がある場合には、◆【New】マークを付けておりま
す。

※URLが改行されてリンクが認識されない場合
 URLはクリックせず、文字列全体をURL欄に Copy & Paste してください。

■資源エネルギー庁
 ┣総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会
 ┃┃(http://www.meti.go.jp/committee/gizi_8/21.html )
 ┃┣原子力小委員会
 ┃┃┣◆【New】自主的安全性向上・技術・人材WG
 ┃┃┣放射性廃棄物WG
 ┃┃┣地層処分技術WG
 ┃┃┗原子力事業環境整備検討専門WG
 ┃┗電力基本政策小委員会
 ┗総合資源エネルギー調査会基本政策分科会
  ┃(http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/ )
  ┗基本政策分科会
   ┣長期エネルギー需給見通し小委員会
   ┣発電コスト検証WG
   ┗電力需給検証小委員会
   (http://www.meti.go.jp/committee/gizi_8/18.html#denryoku_jukyu )

■原子力規制委員会
 ┗◆【New】原子力規制委員会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/kisei/index.html )
  ┣合同審査会(原子炉安全専門審査会・核燃料安全専門審査会)
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/roanshin_kakunen/index.html )
  ┣放射線審議会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/houshasen/index.html )
  ┣国立研究開発法人審議会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/nrda/nrda/index.html )
  ┣放射線医学総合研究所部会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/nrda/nirs/index.html )
  ┣日本原子力研究開発機構部会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/nrda/jaea/index.html )
  ┣原子力規制委員会政策評価懇談会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/seihyou_kondan/index.html )
  ┣帰還に向けた安全・安心対策に関する検討チーム
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/kikan_kentou/index.html )
  ┗◆【New】原子力規制委員会行政事業レビューに係る外部有識者会合
   (https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/gyousei_gaibu/index.html )

■文部科学省
 ┣原子力科学技術委員会
 ┃┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/055/index.htm )
 ┃┣◆【New】原子力人材育成作業部会
 ┃┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/079/index.htm )
 ┃┣核融合研究作業部会
 ┃┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/056/index.htm )
 ┃┣◆【New】核不拡散・核セキュリティ作業部会
 ┃┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/076/index.htm )
 ┃┗研究施設等廃棄物作業部会
 ┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/057/index.htm )
 ┣核融合科学技術委員会
 ┃┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/074/index.htm )
 ┃┗原型炉開発総合戦略タスクフォース
 ┃ (http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/078/index.htm )
 ┗調査研究協力者会議等(研究開発)
  ┗もんじゅの在り方に関する検討会
   (http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/019/index.htm)

■復興庁
 ┣福島12市町村の将来像に関する有識者検討会
 ┃(http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-4/20141226184251.html )
 ┗原子力災害からの福島復興再生協議会
 (http://www.reconstruction.go.jp/topics/000818.html )

■環境省
 ┗東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関す
  る専門家会議
 (https://www.env.go.jp/chemi/rhm/conf/conf01.html )

■厚生労働省
 ┗薬事・食品衛生審議会(食品衛生分科会放射性物質対策部会)
 (http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-yakuji.html?tid=127896 )

━・・・━━ 就任挨拶 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━・

 本年4月15日付けで、原子力政策担当室に着任いたしました、飯塚と申し
ます。原子力委員会の「原子力利用に関する基本的考え方」に関する業務等を
担当しております。
 前職では、温室効果ガスを削減するための先端的技術をはじめとした環境エ
ネルギー分野における研究開発を推進する業務を担当しており、今回、原子力
関係の業務をはじめて担当させていただくことになりました。「原子力利用に
関する基本的考え方」は、原子力を取り巻く幅広い視点を取り入れ、今後の方
向性を示唆するものであり、その取りまとめは大変ではありますが、重要なも
のだと認識しております。至らぬところが多々あるかと思いますが、事務局の
一員として少しでも貢献できるように、引き続き、頑張ってまいります。

(飯塚)

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●次号配信は、平成28年7月8日(金)午後の予定です。

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発行者:内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局)
原子力委員会:岡 芳明委員長、阿部 信泰委員、中西 友子委員
○メルマガへの御意見・御感想はこちらへ(お寄せ頂いた御意見に対しては、
原則として回答致しませんが、今後の原子力委員会の業務の参考とさせていた
だきます。)
https://form.cao.go.jp/aec/opinion-0017.html
○配信希望、アドレス変更、配信停止などはこちらへ
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/melmaga/index.htm
○原子力委員会ホームページ  http://www.aec.go.jp/
○このメールアドレスは発信専用のため、御返信いただけません。
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