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第193号 原子力委員会メールマガジン パラダイム変化と新しい原子力利用の仕組みの創出


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ No.193 ━━━━━
    @mieru(あっとみえる) 原子力委員会メールマガジン
             2016年2月26日号
   ☆★☆ めざせ! 信頼のプロフェッショナル!! ☆★☆
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┏ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┣ 委員からひとこと
┣ 会議情報
┃  (2月12日)
┃   ・国立研究開発法人日本原子力研究開発機構が達成すべき業務運営に
┃    関する目標(中長期目標)の変更について(答申)
┃  (2月18日)
┃   ・国立研究開発法人日本原子力研究開発機構が達成すべき業務運営に
┃    関する目標(中長期目標)の変更について(答申)
┃   ・原子力利用の「基本的考え方」について
┃  (2月25日)
┃   ・第17回アジア原子力協力フォーラム(FNCA)コーディネー
┃    ター会合の開催について
┃   ・アジア原子力協力フォーラム(FNCA)「2016スタディ・パ
┃    ネル」の開催について
┣ 原子力関係行政情報
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━・・・━━ 委員からひとこと ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・

パラダイム変化と新しい原子力利用の仕組みの創出
                               岡 芳明

 東電福島事故から5年を経過しようとしている。被災された多数の方々には、
誠に申し訳なく言葉もない。

 もし原子力関係者の中に東電福島事故前の状態に戻りたい、戻りつつあるの
ではと考える方が居られるならば、それは大きな誤りである。東電福島事故の
反省の上に新しい仕組みを創り出せないなら、日本の原子力利用は現在より更
に厳しい状態、出口のない状態に陥る恐れがある【注1】。

 米国はスリーマイル島原発事故の後、産業界も行政も改善に努力した。規制
の改善のみならず、産業界の努力によって事故率・故障率は大幅に低減し、稼
動率の向上、出力増強も達成した。安定で安価な原子力発電の恩恵が国民に届
いている。国民の原子力への支持も高い。

 ロシアの原子力もチェルノブイリ事故とソ連の崩壊に伴う極めて厳しい状態
を経験した。しかし現在は、過去の原子力利用の基盤と経験の上に、新しい原
子力利用の仕組みを創り出し、国際的に新興国の原子力発電所建設を始め様々
な営業活動を展開している。

 日本も従来の経験や技術の蓄積の上に、東電福島事故や、これまでの原子力
利用や研究開発の反省と改善を積み重ね、新しい原子力利用の仕組みを創り出
す必要がある。そのためには原子力関係者が、従来の考え方や仕事の仕方を根
本から考え直す必要があるのではないかと感じている。

 東電福島事故を契機に、日本の原子力をめぐるパラダイム【自明の枠組み】
が大きく変化した。1つは、電力の競争環境が創り出され、いわゆる電力料金
の「総括原価方式」がなくなることである。もう1つは、「原子力国産化」と
いう言葉で表されていたように、国内向けに集中していた原子力発電利用や研
究開発が、今回の事故によって否応なしに国際展開を求められるようになった
点である。

 「総括原価方式」と「原子力国産化【注2】」は安定な電力供給と世界に誇
る軽水炉製造・建設技術を生み出したが、1990年代以降の日本の原子力利用や
研究開発の停滞の原因にもなっている。

 パラダイムの変化は従来の原子力利用の考え方や仕事の仕方を改める機会で
ある。新しいパラダイムに適合できないと原子力は生き残れないと考えるべき
ではないか。総括原価方式と原子力国産化の意識が生み出した日本特有の考え
方、欠点を改める必要がある。さらに、日本人やその組織の意識や行動の根底
にあり、その長所でもある特徴、例えば協調性、国や組織への依存性、儒教的
精神、ムラの文化、思考停止性向、恥の文化、島国文化、海外導入文化、大国
意識、非合理性、様式美の追求性向、細かい点までこだわれる性向、阿吽の呼
吸、英語圏に比べて遥かに少ない文書化された根拠ある情報、などが欠点にも
なっていることを意識して新たな仕組みを作り出す必要がある。

 これは安全文化の確立のみならず、原子力利用や研究開発のすべてに関係し
ている。これらの特徴から派生して生じるタテ割、ムラ相互の対立の構造、責
任の曖昧な構造、自己改善が進まず、独善になりやすい点などを意識的に改め
る必要がある。その上で 産業界、研究開発機関、大学、行政がそれぞれの役
割を果たす必要がある。これが責任を果たすということではないだろうか。

 ムラを作りやすい日本人とその組織の特徴は、例えば製造業などの国内市場
での画一的競争となって表れている。日本の元気な企業は国際展開に成功した
企業である。国際展開は容易ではないが、その重要性は明らかではないだろう
か。新興国を中心に社会インフラ整備のニーズは大きい。エネルギー関連の
インフラ整備分野において原子力に限らず日本の産業の果たせる役割は大きい。
放射線利用においても同様である。

 研究開発機関や大学も原子力国産化時代の意識で仕事をしているとしたらそ
れは時代遅れである。

 最近、原子力関係者の一部から原子力規制委員会を感情的に非難する声を聴
くことがある。新しい仕組みの構築にとって憂慮すべき事態である。独立で透
明で効率的な規制は原子力利用の重要な要素である。被規制側はリスク分析な
どにより証拠となる解析や検討などを自ら行って、その結果をもとに建設的な
議論を規制側と透明性をもって進めるべきである。その議論や検討のプロセス
が文書化され公開されることで、規制に関する規則の制定や運用の予見性・透
明性もより高まるのではないだろうか。規制側は独立した機関であることから、
米国においても議会を含め直接的にそのプロセスに関与することはできない。
しかし規制側は利害関係者との建設的な議論・検討を透明性をもって進める責
務がある。規制行政においてもこのプロセスが作りこまれている必要がある
【注3】。

 産業界、研究開発機関、大学などの役割は、それぞれの組織のプロダクト
(有用な成果物)を考えるとよい。産業界は製品やサービスがプロダクトであ
る。例えば、原子炉メーカーは軽水炉などの製品。電力会社は安価で安全で安
定な電力供給サービス。大学は国内外から優秀な学生を集め、基盤知識やスキ
ルを習得した学生と研究論文を作ること。研究開発機関は原子力利用の知識や
基盤の構築。具体例を挙げれば、ピアレビューされた報告書や計算コード、利
用や規制のための体系化された知識や共同利用設備のサービスなどがプロダク
トである。行政は利用や規制の枠組みや制度・規則の作成・運用などがプロダ
クトではないか。それぞれの組織が果たすべき役割と責任を果たした上で、必
要に応じて、情報交換、連携、共同作業をする必要がある。

 もし産業界が大学や研究開発機関は直接自分のプロダクト作成に役立たない
のではないかと考えているとしたら、それは原子力国産化時代の思考法ではな
いだろうか。産業界、研究開発機関、大学の役割は異なる。それぞれのプロダ
クトに向けて努力する責任は自らにあるはずである。厚い知識基盤が原子力利
用に必要で、それは産業界だけでは作ることができないはずである。重要なの
は結果として、それぞれの組織のこれら活動のメリットが国民に届く必要があ
ることである。なお研究開発段階にあるものについては、その工夫が必要であ
ると感じている。

 新しい原子力利用の仕組みを作り出しつつ、長期エネルギー需給見通しで述
べられた2030年度における原子力発電の電源構成である20-22%に向けて原子
力関係者が着実な努力を積み重ねられることを期待したい。

【脚注】
注1.澤昭裕氏が「戦略なき脱原発へ漂流する日本の未来を憂う」、(Wedge、
2016年3月号、10-17頁)の冒頭で、別の表現で類似の危惧を述べている。

注2.「原子力国産化」とは「海外の設計結果や研究開発結果を導入して国内
利用を図ろうとすること」の意味。なお原子炉容器や蒸気発生器など部品レベ
ルでは、過去に輸出された例がある。

注3.米国は規制規則作成のプロセス【過程】がその手続も含めて文書化され、
連邦政府官報のシステムを通じて公開される。規則作成プロセスのやりとりが
文書化され公開されていることが、規制の透明性、効率性、予見性等の向上に
役立っている。
規則を作る時は、まず連邦政府の官報通達として規則案とその根拠を公表する。
次に規制重畳効果を考慮する必要があり、それには新規則によって被規制者が
受けるチャレンジ(影響)も記述される。その後の検討の手続も決められてお
り、利害関係者とのやりとり、議論や検討の過程も文書化され公開される。こ
れによって規則作成プロセスが強化される。規則つくりにおける「申し立て」
やその採否や検討の手順も決められている。経過は官報通達で公表される。
【参考文献】
※URLが改行されてリンクが認識されない場合
 URLはクリックせず、文字列全体をURL欄に Copy & Paste してください。
1.”Management Directive 6.3, The rule making process”, ML13205A400
2.”Regulations Handbook”, NUREG/BR-0053 Rev.6, ML052720461
3.”NRC regulations”, 
 http://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/cfr/
4.”Unified Agenda and Regulatory Plan”, 
 http://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/rulemaking-ruleforum/unified-agenda.html
なお、米国原子力規制委員会(NRC)の活動方針などについては以下が参考
になる。
5.”Information  Digest”, 
 http://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/nuregs/staff/sr1350/
6.”Citizen’s Guide to US. Nuclear Regulatory Commission”, 
 http://www.nrc.gov/reading-rm/citizen-guide.html

━・・・━━ 会議情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━・
●原子力委員会の会議を傍聴にいらっしゃいませんか。会議は霞ヶ関周辺で開
 催しており、どなたでも傍聴できます。開催案内や配布資料は、すべて原子
 力委員会ウェブサイト(以下URL)で御覧いただけます。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/index.htm

●2月12日(金)の会議の概要は以下のとおりです。詳しくはウェブサイトに
掲載される議事録を御覧ください。

【議題1】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構が達成すべき業務運営に
関する目標(中長期目標)の変更について(答申)
<主なやりとり等>
 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構が達成すべき業務運営に関する目
標(中長期目標)の変更について(答申)について、事務局より答申案の説明
がありました。委員からは修正意見等があり、次回、委員会にて再度、議論を
行うこととなりました。

●2月18日(木)の会議の概要は以下のとおりです。詳しくはウェブサイトに
掲載される議事録を御覧ください。

【議題1】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構が達成すべき業務運営に
関する目標(中長期目標)の変更について(答申)
<主なやりとり等>
 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構が達成すべき業務運営に関する目
標(中長期目標)の変更について(答申)について、事務局より前回委員会で
の委員の意見を踏まえた答申案の説明があり、事務局案を修正の上、答申を行
うこととなりました。

【議題2】原子力利用の「基本的考え方」について
<主なやりとり等>
 原子力利用の「基本的考え方」について、事務局より「基本的考え方」論点
整理に向けた議論ペーパー 原子力を取り巻く環境及び原子力利用の現状と課
題の説明を行い、文言やスケジュールの調整等を行いました。

●2月25日(木)の会議の概要は以下のとおりです。詳しくはウェブサイトに
掲載される議事録を御覧ください。

【議題1】第17回アジア原子力協力フォーラム(FNCA)コーディネー
ター会合の開催について

【議題2】アジア原子力協力フォーラム(FNCA)「2016スタディ・パ
ネル」の開催について
<主なやりとり等>
 第17回アジア原子力協力フォーラム(FNCA)コーディネーター会合の
開催及びアジア原子力協力フォーラム(FNCA)「2016スタディ・パネ
ル」の開催について、事務局より説明を行い、予定どおり開催することとなり
ました。

●次回の委員会開催については、以下の開催案内から御確認ください。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/topic/kaisai.htm

━・・・━━ 原子力関係行政情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・
 原子力関係の他の行政における委員会等のリンク情報は以下のとおりです。
直近で開催された委員会等がある場合には、◆【New】マークを付けておりま
す。

※URLが改行されてリンクが認識されない場合
 URLはクリックせず、文字列全体をURL欄に Copy & Paste してください。

■資源エネルギー庁
 ┣総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会
 ┃┃(http://www.meti.go.jp/committee/gizi_8/21.html )
 ┃┣原子力小委員会
 ┃┃┣自主的安全性向上・技術・人材WG
 ┃┃┣放射性廃棄物WG
 ┃┃┣地層処分技術WG
 ┃┃┗原子力事業環境整備検討専門WG
 ┃┗電力基本政策小委員会
 ┗総合資源エネルギー調査会基本政策分科会
  ┃(http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/ )
  ┗◆【New】基本政策分科会
   ┣長期エネルギー需給見通し小委員会
   ┣発電コスト検証WG
   ┗電力需給検証小委員会
   (http://www.meti.go.jp/committee/gizi_8/18.html#denryoku_jukyu )

■原子力規制委員会
 ┗◆【New】原子力規制委員会
  ┃(http://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/kisei/00000113.html )
  ┣合同審査会(原子炉安全専門審査会・核燃料安全専門審査会)
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/roanshin_kakunen/index.html )
  ┣放射線審議会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/houshasen/index.html )
  ┣国立研究開発法人審議会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/nrda/nrda/index.html )
  ┣放射線医学総合研究所部会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/nrda/nirs/index.html )
  ┣日本原子力研究開発機構部会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/nrda/jaea/index.html )
  ┣原子力規制委員会政策評価懇談会
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/seihyou_kondan/index.html )
  ┣帰還に向けた安全・安心対策に関する検討チーム
  ┃(https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/kikan_kentou/index.html )
  ┗原子力規制委員会行政事業レビューに係る外部有識者会合
   (https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/gyousei_gaibu/index.html )

■文部科学省
 ┣◆【New】原子力科学技術委員会
 ┃┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/055/index.htm )
 ┃┣原子力人材育成作業部会
 ┃┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/079/index.htm )
 ┃┣核融合研究作業部会
 ┃┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/056/index.htm )
 ┃┣核不拡散・核セキュリティ作業部会
 ┃┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/076/index.htm )
 ┃┗研究施設等廃棄物作業部会
 ┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/057/index.htm )
 ┣核融合科学技術委員会
 ┃┃(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/074/index.htm )
 ┃┗◆【New】原型炉開発総合戦略タスクフォース
 ┃ (http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/078/index.htm )
 ┗調査研究協力者会議等(研究開発)
  ┗◆【New】もんじゅの在り方に関する検討会
   (http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/019/index.htm)

■復興庁
 ┣福島12市町村の将来像に関する有識者検討会
 ┃(http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-4/20141226184251.html )
 ┗原子力災害からの福島復興再生協議会
 (http://www.reconstruction.go.jp/topics/000818.html )

■環境省
 ┗東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関す
  る専門家会議
 (https://www.env.go.jp/chemi/rhm/conf/conf01.html )

■厚生労働省
 ┗薬事・食品衛生審議会(食品衛生分科会放射性物質対策部会)
 (http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-yakuji.html?tid=127896 )

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●次号配信は、平成28年3月11日(金)午後の予定です。

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発行者:内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局)
原子力委員会:岡 芳明委員長、阿部 信泰委員、中西 友子委員
○メルマガへの御意見・御感想はこちらへ(お寄せ頂いた御意見に対しては、
原則として回答致しませんが、今後の原子力委員会の業務の参考とさせていた
だきます。)
 https://form.cao.go.jp/aec/opinion-0017.html
○配信希望、アドレス変更、配信停止などはこちらへ
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/melmaga/index.htm
○原子力委員会ホームページ  http://www.aec.go.jp/
○このメールアドレスは発信専用のため、御返信いただけません。
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