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第175号 原子力委員会メールマガジン 身のまわりの元素の安定同位体について(その1)


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    @mieru(あっとみえる) 原子力委員会メールマガジン
             2015年5月29日号
   ☆★☆ めざせ! 信頼のプロフェッショナル!! ☆★☆
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┏ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┣ 原子力委員会ウェブサイトについてのアンケート
┣ 委員からひとこと 身のまわりの元素の安定同位体について(その1)
┣ 会議情報 
┃  (5月19日)
┃   ・原子力利用の「基本的考え方」について
┃   (相馬中央病院 内科診療科長 越智小枝氏)
┣ 事務局だより 着任の挨拶:室谷展寛
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━・・・━ 原子力委員会ウェブサイトについてのアンケート ━・・・━━

原子力委員会ウェブサイトの改善のため、アンケートを実施します。
(実施期間:5月29日(金)〜6月12日(金))

御協力をお願いいたします。

 https://form.cao.go.jp/aec/opinion-0034.html
 (所要時間 1分程度)

━・・・━ 委員からひとこと ━・・・━━・・・━━・・・━━・・・

身のまわりの元素の安定同位体について(その1)

                              中西 友子

 身の回りの元素には重さの違う同位体と呼ばれる核種が含まれていて、例え
ばカリウムにカリウム39やカリウム41などの変化しない同位体(安定同位体)
の他に、カリウム元素の1万分の1を占めるカリウム40という放射性同位体が
あり、炭素でも炭素12の他、1兆分の1を占める炭素14という放射性同位体が
含まれていることを既に述べてきた。そして、これらの放射性同位体は、夫々
が持つ固有の半減期に従って崩壊するため、それらの半減期は時計のような役
割を果たし、崩壊する核種の量を測ることによりその同位体が含まれる環境の
時間経過が示されることを述べた。

 今回は、放射性でない安定同位体について少し述べてみたい。例えば、酸素
にはその大部分を占める酸素16の他に酸素18が約0.2%、また酸素17が約
0.04%含まれる。これらの酸素同位体は安定核種であるものの、互いに重さが
少し異なってくる。そこで、酸素を含む分子、例えば水分子を例にとると、各
々の酸素同位体を含む水分子の化学的な挙動に微妙な差が出てくることになる。
 例えば、水が蒸発する際には軽い酸素同位体(酸素16)の方が蒸発しやすいた
め、海水には重い酸素同位体(酸素18)が多く残る。つまり、蒸発して雲となり
陸で降る雨の水の方が、蒸発してきた海の水よりも軽いことになる。そして蒸
発した水が作る雨雲では重い水の方が凝縮しやすく雨となって降るので、雨雲
が海から内陸に移動するほど、また高さが高くなるほど軽い水の成分が多くな
る。そこで、降ってきた水の同位体組成から、雨雲は海からどの位の距離を動
いてきたかを推定することもできる。

 一方、このような海に生きる貝について考えてみると、貝の骨格となる炭酸
カルシウムは海水からの沈殿物と考えることができる。そこで、重水素を発見
したことによりノーベル賞を受賞したアメリカの化学者、ハロルド・ユーリは、
海水と炭酸カルシウムという二つの相の間でどう酸素同位体が分配されるかに
ついて計算を行ったところ、その分配には温度依存性があることが示された。
つまり、海水温度が低いところで育つ貝ほど、より重い酸素同位体(酸素18)を
含むことになる。そこでユーリは二枚貝の生長線に沿った酸素の同位体比を分
析することにより、過去の海水温の解析を行うことを試みた。0.1%という微
量な酸素同位体比の差が測定できる質量分析計を用い、約1億年前のスコット
ランドの海水域の夏と冬の温度差が約6度であることを推定することができた。
そして、チェーザレ・エミリアーニという若いイタリアの研究者と共に、太平
洋・大西洋の海底から回収した堆積物中の有孔虫を分析し、古水温の解析に成
功したのである。それによると古水温は10度位の幅を持って大きく変動してい
ることが示された。つまり酸素の同位体比を測ることにより過去の温度を調べ
ることができたのである。

 ユーリは、生命の起源を調べるため、原始地球大気を模した窒素、メタン、
アンモニアなどのガスや触媒となる岩石を封じ入れ、放電によりアミノ酸の合
成に成功したことで知られる宇宙化学者であったが、古水温から過去の気候変
動の知見が得られることが判った後には、シカゴ大学からカリフォルニア大学
に移り、他の元素の同位体変化についても研究を進めた。

 次回はその他の元素における安定同位体比の変化について紹介したい。

●次号は岡委員長からのひとことです!

━・・・━━ 会議情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━・
●原子力委員会の会議を傍聴にいらっしゃいませんか。会議は霞ヶ関周辺で開
催しており、どなたでも傍聴できます。開催案内や配布資料は、すべて原子力
委員会ウェブサイト(以下URL)で御覧いただけます。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/index.htm

●5月19日(火)の会議の概要は以下のとおりです。詳しくはウェブサイトに
掲載される議事録を御覧ください。

【議題1】原子力利用の「基本的考え方」について
<主なやりとり等>
 原子力委員会で議論を進めている原子力利用の「基本的考え方」の策定に向
けて、相馬中央病院 内科診療科長 越智小枝氏より御意見を聴取しました。
越智氏からは、原子力発電所事故の健康影響は、放射線以外によるものが非常
に多くを占めていること等の説明がありました。
 委員からは、住民への支援のあり方等について質問があり、越智氏からは、
様々な職種の方が相談役として被災地に入っているが、相談役自体の心理的リ
スクにも配慮が必要であること、それぞれの専門家が自分の領域から余り広げ
ずに活動し、支援を行っていくのが望ましいのではないか等の意見がありまし
た。

●次回の委員会開催については、以下の開催案内から御確認ください。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/topic/kaisai.htm

━・・・━ 事務局だより ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━

着任の挨拶:室谷展寛

 1月中旬、原子力政策担当室に参りました室谷展寛(むろや・のぶひろ)と
申します。1988年に旧科学技術庁に入庁して以来、宇宙、原子力、ライフ
サイエンスほか、様々な分野の科学技術振興に携わって参りました。また、国
際機関や大使館への勤務経験も長く、約12年間にわたりフランス及びオース
トリアにて勤務を致したしました。日本における仕事の進め方には、世界に誇
るべき素晴らしい点もあれば、時代の流れに追いついていくためには一層の改
善努力が必要な面もあると思います。日本が、今後長きにわたって、グローバ
ル社会の中で第一線に立ち続けることができるよう微力を尽くしたいと考えて
おります。

(室谷)

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●次号配信は、平成27年6月12日(金)午後の予定です。

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発行者:内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局)
○メルマガへの御意見・御感想はこちらへ
 https://form.cao.go.jp/aec/opinion-0017.html
○配信希望、アドレス変更、配信停止などはこちらへ
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/melmaga/index.htm
○原子力委員会ホームページ  http://www.aec.go.jp/
○このメールアドレスは発信専用のため、御返信いただけません。
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