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第172号 原子力委員会メールマガジン 身のまわりの放射性元素について(その6)


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    @mieru(あっとみえる) 原子力委員会メールマガジン
             2015年4月10日号
   ☆★☆ めざせ! 信頼のプロフェッショナル!! ☆★☆
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┏ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┣ 委員からひとこと 身のまわりの放射性元素について(その6)
┣ 会議情報 
┃  (3月31日)
┃   ・特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律に基づく特定放射性廃棄
┃    物の最終処分に関する基本方針について(答申)
┃  (4月7日)
┃   ・原子力利用の「基本的考え方」について
┃    (原子力損害賠償・廃炉等支援機構 副理事長 山名元氏)
┣ 事務局だより 着任の挨拶
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━・・・━ 委員からひとこと ━・・・━━・・・━━・・・━━・・・

身のまわりの放射性元素について(その6)

                              中西 友子

 宇宙線は、地球の大気圏の上空で空気中の酸素や窒素と衝突し様々な粒子を
生成しているが、その中で生成された中性子は地表に届き、いろいろな核反応
を引き起こしている。そこで、今回は宇宙線により生成される地球上の放射性
核種とその計測による地殻変動の解明について紹介したい。

 地表に届いた中性子は岩石中のケイ酸塩と相互作用を起こし、アルミニウム
26、ベリリウム10、塩素36など多数の放射性核種を常に生成している。中性
子線の強度は岩石の内部にいくほど低くなるため、その分、核反応の起こる頻
度も低くなる。そのため生成する放射性核種の量は表面付近に多く内部にいく
ほど少なくなる。

 そこで岩石の中で生成されるアルミニウム26やベリリウム10などの放射性
核種を測定すると、それらの核種が持つ固有の半減期が時計の役割を果たし、
過去の歴史を知ることができる。例えばアルミニウム26とベリリウム10の例
を挙げてみよう。アルミニウム26の半減期は72万年であり、ベリリウム10の
半減期150万年の約2分の1である。岩石を含むその場所がむき出しになって
中性子線との反応が起きている場合には、生成されるアルミニウム26とベリ
リウム10との比は大体6:1である。しかし、地殻変動が起きてその場所に堆
積物が溜まって沈み込んでしまったり海の底になってしまったりすると、その
岩石表面に届く中性子線の強度が減少するため、アルミニウム26とベリリウム
10は殆ど生成されなくなる。そこで時間が経過すると半減期の短いアルミニ
ウム26の方が、ベリリウム10と比較して倍の速度で崩壊していくため、その
比は6より徐々に小さな値となっていく。つまり時間の経過と共にこの二つの
核種の存在比が異なってくる。この核種の比を測定することにより、例えば氷
床がどのように融解してきたか、あるいは断崖がいつ生成したのか、すなわち
断層の活動頻度などを推定することができる。さらには川からの堆積物がどの
ように蓄積されていったのか、扇状地の形成にどの位の時間がかかってきたの
か、などの地形形成プロセスについての定量的な議論も可能である。

 実際にこのような実験を行う場合には、岩石中の石英部分を取り出し、化学
的な手法で不純物を取り除いた後アルミニウムとベリリウムを精製分離してそ
れらの量を測定するが、この化学的な分離作業にはかなりの経験とテクニック
が必要となる。またこれらの極少量の核種の定量法は、前回述べた炭素14の
測定の際と同様、加速器質量分析計と呼ばれる装置を用いることにより発展し
てきた。

 宇宙線が様々な物体に含まれる元素と核反応を起こし放射性核種を作り出し
ていることを利用して、地上の岩石の場合と同様に、隕石の中の放射性元素の
同位体比を測ることにより、隕石が母体から宇宙空間に飛び出してどのように
地球に落下してきたかの歴史をつきとめることができることも付け加えておき
たい。

●次号は岡委員長からのひとことです!

━・・・━━ 会議情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━・
●原子力委員会の会議を傍聴にいらっしゃいませんか。会議は原則として霞ヶ
関にある合同庁舎8号館で開催しており、どなたでも傍聴できます。開催案内
や配布資料は、すべて原子力委員会ウェブサイト(以下URL)で御覧いただけ
ます。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/index.htm

●3月31日(火)の会議の概要は以下のとおりです。詳しくはウェブサイトに
掲載される議事録を御覧ください。

【議題1】特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律に基づく特定放射性廃棄
物の最終処分に関する基本方針について(答申)
<主なやりとり等>
 2月24日に開催された第8回原子力委員会で経済産業省より説明のあった、
特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律に基づく特定放射性廃棄物の最終処
分に関する基本方針についての諮問に対する答申案の審議が行われ、原子力委
員会として、案のとおり答申することとしました。

●4月7日(火)の会議の概要は以下のとおりです。詳しくはウェブサイトに
掲載される議事録を御覧ください。

【議題1】原子力利用の「基本的考え方」について(原子力損害賠償・廃炉等
支援機構 副理事長 山名元氏)
<主なやりとり等>
 原子力委員会で議論を進めている原子力利用の「基本的考え方」の策定に向
けて、原子力損害賠償・廃炉等支援機構 副理事長 山名元氏より御意見を聴
取しました。山名氏からは、エネルギー自給率が3−4割あった方が、世界の
擾乱に対応でき、国家の強靭化につながるのではないか、専門家や事業者とそ
れ以外の方々との原子力理解についてのギャップを埋めるため、双方が直接接
する機会を持つ必要があること等の意見があり、委員からは、原子力やエネル
ギーに関する検討、解説、報告書などのコンテンツはあるものの、それを国民
の目に届く仕組みにすべきであること、エネルギーの自給率の問題は、食糧自
給率以上にクリティカルな問題であり、関心を向けるべきであること等の発言
がありました。

●次回の委員会開催については、以下の開催案内からご確認ください。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/topic/kaisai.htm

━・・・━ 事務局だより ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━

着任の挨拶

 今年1月に原子力政策担当室に配属になりました菊地と申します。
 この記事を書いている4月には、新年度を迎えて当室も新たな体制へと移行
しており、着任のご挨拶をするには少し時期が遅い気がしますが、今回はこの
場をお借りして簡単に自己紹介をさせていただきます。

 まず自己紹介ですが、私の大学の専門は機械です。しかし「専門です」と胸
を張って言えるほど機械に精通しているわけでもなく、理系で物理が好きとい
う程度のもので、友人からはよく「機械オンチの菊地」なんて言われていまし
た。原子力に関しては、行政官として通算で3年間関与していたくらいでまだ
まだ勉強中の身です。
 今回このように別の形で原子力に携われることになったのも何かの縁ですの
で、技術的あるいは専門的分野にも携われるようになれればと考えております。
 「原子力オンチ」と呼ばれないよう、次の記事を掲載するときにはその成長
を何らかの形で報告できればと考えておりますので、温かい目で見守っていた
だければと思います。

 プライベートに関してですが、ダイビングとここ数年は山登りが趣味です。
ダイビングに関してはプロレベルです。山は主に日本百名山を狙って年に4〜
5回程度、海は専ら伊豆に行くことが多いのですが、機会があればこの記事で
も旅行記を兼ねて、紹介できればと思います。
 今回は簡単挨拶だけで中身がありませんが、次回以降をご期待ください。

(菊地)

●次号配信は、平成27年4月24日(金)午後の予定です。

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発行者:内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局)
○メルマガへの御意見・御感想はこちらへ
 https://form.cao.go.jp/aec/opinion-0017.html
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 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/melmaga/index.htm
○原子力委員会ホームページ  http://www.aec.go.jp/
○このメールアドレスは発信専用のため、御返信いただけません。
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