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第155号 原子力委員会メールマガジン 「原子力:7つの常識と3つの非・常識」(その2)


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ No.155 ━━━━━
    @mieru(あっとみえる) 原子力委員会メールマガジン
             2014年7月25日号
   ☆★☆ めざせ! 信頼のプロフェッショナル!! ☆★☆
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┏ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┣ 委員からひとこと 「原子力:7つの常識と3つの非・常識」(その2)
┣ 会議情報 
┃  (7月15日)
┃    ・平成26年度原子力関係経費に係る取組について(文部科学省、
┃     経済産業省)
┃  (7月22日)
┃    ・第14回ITER理事会の開催結果について
┃    ・平成27年度原子力研究、開発及び利用に関する予算の基本方針
┃     について
┣ 事務局だより 収穫
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━・・・━ 委員からひとこと ━・・・━━・・・━━・・・━━・・・

「原子力:7つの常識と3つの非・常識」(その2)

                              阿部 信泰

 前回出しました私のつたない寄稿に対して何人かの方からご意見をいただき
ました。ありがとうございます。これから順次、議論を進めて行きたいと思い
ます。
 まず、常識の1.「絶対安全な原発も絶対危険な原発もない。」ですが、東
京電力福島第一原子力発電所であれだけの事故があったわけですから、絶対安
全な原発はないということは実証されました。しかし、原発再稼働をめぐって、
また、絶対安全でなければならないという議論が出てきています。勿論、そう
あって欲しいのはやまやまですが、人間が作るものなので、絶対ということは
ないと言わざるを得ません。だからこそ、事故が起こった場合の緊急対策のた
めのオフサイト・センターの設置が義務付けられ、避難計画を作ることが求め
られ、損害賠償制度があるのです。
 一方、原発が極めて危険で今にもまた大事故が起こるかと言えばそんなこと
はありません。むしろ極めて安全と言えるかもしれません。自動車に乗ったり、
飛行機に乗ったりすることに比べれば、事故に遭って死んだり、負傷したりす
る可能性ははるかに小さいと言えます。ただ、一旦、大事故が起こった場合の
影響の広さと異様さ、そして目に見えない脅威という恐怖が人々を不安にして
いるのだと思います。
 振り返って見ると人類は常にさまざまな危険にさらされながらそれを回避し、
対処する知恵を出してきました。また、新しい発明には常に危険もともないま
した。蒸気機関も内燃機関(自動車のエンジン)も最初のころはよく爆発事故
を起こしたそうですが、一生懸命改良に改良を重ねた結果、今ではだれもこう
したエンジンが爆発するなどと考えもしません。しかし、場合によって、人類
は折角発明したものも何らかの理由から放棄して使わないことにしたこともあ
りました。最近の例では、超音速旅客機がそうではないでしょうか。技術的に
は可能であり、それなりに便利な乗り物だったのですが、結局、今は存在しま
せん。原発についてもいくつかの国は使わないということを決めました。結論
をどうすべきかについては後でもう一度議論したいと思います。
 次に常識の2.「強い放射能は有害だが、微小な放射能については議論が分
かれている。放射能の影響についてはまだまだ分からないことも多い。」です
が、以下のようなご意見がありました。
 1.「放射能の影響について進めようとした時に反対される部分が有るよう
に見えたのが不思議でした。また医学分野で癌発症の確率論に入った段階で一
斉に手が引かれた様な感じがしました。」
 2.「放射線の影響は被曝線量の大小により異なる。放射線影響のメカニズ
ムについては分からないことが多いが、被曝線量と影響の発生頻度との関係に
ついては原爆被爆者の調査によりかなり詳細に分かっている。
 強い放射能は有害だが、微小な放射線の中で人は異常なく生活している。そ
れにもかかわらず微小な放射線の害を主張する人がいる。
 (説明)『放射能の影響についてはまだまだ分からないことも多い。』だけ
の表現では誤解を招く恐れがあります。よく分かっていることもぜひ書いてい
ただきたいと思います。
 放射線被曝量と影響の発生頻度の関係は放射線安全の基準に結びつく重要な
事項です。この関係は広島の放射線影響研究所(Radiation Effects Research 
Foundation=RERF)の長年の疫学調査でよく分かっており、ICRP、 UNSCEAR、
IAEA など世界の関係団体にも認められています。この関係に基づいてICRPに
より作成された放射線の許容基準にも盛り込まれており、我が国の放射線規制
法令にもICRPの基準が導入されています。東電福島原発事故後『「放射線安全
の基準がない』という誤った理解を持つ人が多数います。この誤解を解いて正
しい認識に導くことが重要です。このことの正しい理解なくしては福島のス
ムーズな復興はできません。」
 おっしゃられるとおりで、強い放射能の影響については、(心が痛むことで
すが、)広島・長崎の被爆者の医療・健康調査の結果から被曝線量が100ミ
リ・シーベルトを超えるとガンの発生率が5.5%増え、その後、100ミリ・シー
ベルト増えるごとに5.5%ずつ発生率が増えていくこと、被爆時の年齢が10歳
上がる毎にガン発生率が30%ずつ低下するというところまでは異論がないよう
です。ところが100ミリ・シーベルト未満については、影響を示す実証的数値
がないので、安全を見てゼロになるまで同じ比率で下がっていくという想定と、
いや、そういう低線量では放射線の影響はないという見方に意見が分かれてい
るようです。ICRP(放射線防護国際委員会)は、前者の立場を取り、日本政
府もこれを踏襲しているようです。
 国際的に食品の放射線の基準・通常生活の際の放射線の基準などが定められ、
日本政府もこれに準拠したり、あるいはさらに厳しい基準を定めたりしていま
すが、表を見ると分かるとおり規定の仕方はかなりおおざっぱで食品について
は野菜・肉・魚すべて1キログラム当たり500ベクレル(ICRP、日本はさらに
厳しく100ベクレルにした)となっているし、通常生活についても、上述のよ
うに明らかに年齢によって影響に差があるのに一様に20ベクレルとなってい
ます。これだけ大まかに決めているということはそれなりに幅をもって決めて
いると思われます。思うにこれは一般に分かり易いようにこれらの数値を超え
たら念のため流通・消費を控えるように、生活も気を付けるようにということ
で、これを超えた途端に病気になるということではないようです。
 それでは、政府が基準を決めたのだからそれ以下なら問題はない、そもそも
東電福島第一周辺以外の遠い場所でも自然放射能というものがあって年間1〜2
ミリ・シーベルト受けるのだからとか、あるいは科学的には現在、日本政府が
定めた基準よりも高い数値でも問題ないと言って切り捨てていいかといえば私
はそう思いません。病院でCTスキャンを受けた場合6〜7ミリ・シーベルトを
受け、東京からニューヨークに飛んでも放射線を受けると言われます。むずか
しいのは、病院・飛行機はそれぞれある程度リスクを冒しても見返りのメリッ
トが得られるのに対し、多くの東電福島第一原子力発電所周辺の人々にとって
はこの放射能は何の見返りもない放射能だということです。それならすべて東
電の責任なのだからゼロにしてくれということになるわけです。
 また、年齢によって影響が異なることも事実で、それでは年齢に応じて避
難・帰還を分けようとすると家庭・地域社会の分断という問題に突き当たりま
す。そして最後は、科学的にそうだとは分かっていてもやはり放射能はできる
だけ浴びたくないと感ずる人がいるでしょう。そうした個々人の感受性の違い
も尊重する必要があろうかと思います。そうした個々人への配慮をした上で、
できるだけ科学的合理性のある一般原則を定めて物事を動かした方が最終的に
最もよい結果が得られると思うのですが、ここは言うは易く、行うは難しです。

●次号は中西委員からのひとことです!

━・・・━━ 会議情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━・
●原子力委員会の会議を傍聴にいらっしゃいませんか。会議は原則として霞ヶ
関にある合同庁舎8号館で開催しており、どなたでも傍聴できます。開催案内
や配布資料は、すべて原子力委員会ウェブサイトで御覧いただけます。

●7月15日(火)の会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはウェブサイト
に掲載される議事録を御覧ください。
【議題1】平成26年度原子力関係経費に係る取組について(文部科学省、経
済産業省)
<主なやりとり等>
 文部科学省及び経済産業省から、平成26年度予算に係る取組について説明
があり、委員からは、福島のオフサイトの取組の状況、前年度からの予算の増
減の理由等について質問がありました。

●7月22日(火)の会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはウェブサイト
に掲載される議事録を御覧ください。
【議題1】第14回ITER理事会の開催結果について
<主なやりとり等>
 文部科学省より、6月18日(水)、19日(木)にフランス・ITER機構
本部で開催された第14回ITER理事会の開催結果について説明があり、委員か
らは、関係各国の役割分担等について質問がありました。

【議題2】平成27年度原子力研究、開発及び利用に関する予算の基本方針に
ついて
<主なやりとり等>
 事務局から、平成27年度原子力研究、開発及び利用に関する予算の基本方
針についての説明を行い、委員からは、基本方針の修正意見がありました。
 次回の委員会において、委員からの意見を踏まえて基本方針案を修正し、審
議を行うこととしました。


※資料等は以下のURLで御覧いただけます。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/index.htm

●次回は7月29日(火)に会議を開催する予定です。詳しくは、以下の開催案
内を御覧ください。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/topic/kaisai.htm

+-+-+-+-+-+-+ 事務局だより +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

収穫

 週末で実家に帰り、家庭菜園の手入れと収穫を手伝ってきました。収穫に至
るまでには、すごい勢いで成長している雑草との格闘が待っていましたが、無
事に、春に植えたトマト、ナス、ジャガイモを収穫してきました。もうしばら
くしたらカボチャやスイカも食べられそうです。炎天下での作業は運動不足の
身にはかなりこたえるものがありましたが、これはこれでいい気分転換になり
ました。

 収穫したものを早速頂きましたが、採れたてはやっぱり美味しいと思います。
夏野菜は夏バテ防止に効果のあるビタミンCやビタミンB1などが多く含まれて
いるそうですので、上手に普段から取り入れてこれからの暑い季節を乗り切り
たいものです。

(遠藤)

●次号配信は、平成26年8月8日(金)午後の予定です。

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発行者:内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局)
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○原子力委員会ホームページ  http://www.aec.go.jp/
○このメールアドレスは発信専用のため、御返信いただけません。
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