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第152号 原子力委員会メールマガジン 原子力:7つの常識と3つの非・常識


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    @mieru(あっとみえる) 原子力委員会メールマガジン
             2014年6月13日号
   ☆★☆ めざせ! 信頼のプロフェッショナル!! ☆★☆
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┏ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┣ 委員からひとこと 原子力:7つの常識と3つの非・常識
┣ 会議情報 
┃  (6月3日)
┃    ・原子力損害賠償・廃炉等支援機構法等について
┃  (6月10日)
┃    ・海外における放射性廃棄物処分に関する第三者評価機関の
┃     現状について
┣ 事務局だより 確率論的評価と決定論的評価
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━・・・━ 委員からひとこと ━・・・━━・・・━━・・・━━・・・

原子力:7つの常識と3つの非・常識

                              阿部 信泰

 私は、これまで核軍縮・核不拡散を中心に活動してきましたが、その関係で
常に原子力問題にも関心を持ってきました。特に3年前の東電福島第一原発の
事故以後は、事故のすさまじさに驚き、どうしたらこうした大事故が防げるの
かと自分なりに考え、勉強してきました。その結果分かってきた以下の7つの
ことはほぼ常識と言えるのではないかと思います。次の3つは「そんな非常識
な。」という意味での非常識ではなく、残念ながらいまだ常識になっていない
3つの点です。
 [7つの常識]
1.絶対安全な原発も絶対危険な原発もない。
2.強い放射能は有害だが、微小な放射能については議論が分かれている。放
射能の影響についてはまだまだ分からないことも多い。
3.放射能は半減期で減っていく。物理の法則なのでこれを早くすることも遅
くすることもできないが、放射性物質の場所を変える(除染)ことはできる。
4.発電という基本部分について言えば原発は二酸化炭素を出さないので、地
球温暖化防止に役立つ。
5.使用済み燃料の累積的な処理費用と重大事故があった場合の対策費用を考
えなければ原子力は最も安価な発電方法の一つだ。前2者については不確定要
素が多く計算がむずかしい。
6.人間である限り間違うこともあれば、事故もある。問題はその可能性をい
かにして小さくし、万が一起こった場合の対策を考えて置くことだ。
7.東電福島原発の前からあった原発推進派と原発反対派の間の溝は深まりこ
そすれ埋まることはなかった。
[3つの非・常識]
1.原発を考えるときには核兵器不拡散の問題も考える必要がある。
2.さらに原発に対するテロの脅威も考える必要がある。
3.最後は人々の選択の問題である。

 今回はまず、第一の点について考えてみます。
 東電福島事故の遠因の一つは、原発は絶対安全だと信じ込んで事故の可能性
を考えて対策を考えなかったことにあると言われます。実際に事故が起こった
わけですから、絶対安全というわけではないことが証明されたようなものです。
そんなことは原発再稼働推進のさまたげになるから言わないでくれと言う向き
もあるかもしれませんが、絶対安全ということがないからこそ、周辺自治体が
避難計画を立て、事故が起こった場合の損害賠償制度の見直しなどをしている
わけですから、それは無理な相談です。
 では、原発は極めて危険でいつかは必ず事故がまた起こるものかと言えばそ
うとも言えません。安全基準を強化して、様々な安全対策を進めれば事故の可
能性は極めて小さいものにしていくことは可能なはずです。ただ、安全対策は
一定の危険を想定してそれに対する対策を講ずるものなので、想定外の事態が
起これば事故に発展するかもしれませんし、そもそも原発を運用するのは人間
なので、誤操作をする可能性もあります。さらに、意図的に誤操作をしたり、
攻撃・破壊活動をしたりする可能性も否定できません。これが原発テロと呼ば
れるものですが、これにもいろいろ対策があります。
 では、可能性はどれほど小さくできるのか、事故の可能性は10の何乗分の1
というような形で表現するようです。こうなるとなかなか分かりにくくなって
きます。東電福島事故のしばらく後で、原子力委員会が1基の原発が大事故を
起こす可能性を500年に1回と想定して原発事故の賠償その他のコストを試
算したことがありました。一つの分かり易い表現です。500年に1回と言う
と極めてまれなことでそれならいいかということになるかもしれませんが、こ
こが確率の不思議なところで、世界には430基ほどの原発がありますので、
これだと1年と数か月の間に1回ずつ大事故が起こることになります。日本に
も50基ほどの原発がありましたので、10年に1度大事故が起こることにな
りますが、そんなことはありません。おそらくこれは賠償の負担の計算なので、
不足が無いように事故の確率を多めに想定したものと思われます。
 事故対策は危険を想定して対策を考えることと申し上げましたが、極々微小
な危険まで想定していたらキリがありません。例えば、流星(隕石)の落下と
いうのがあって、2013年大きな隕石がシベリアに落下して近くの町でけが
人が出ました。しかし、私が知る限りでは世界中で隕石落下対策まで考えてい
る原発はありません。今まで歴史上、隕石に当たって死んだ人も聞いたことが
ありません。つまり、可能性が極めて小さくて対策が困難な危険(隕石の落下
エネルギーは極めて大きい)に対しては、対策は講じられません。
 以上、私なりに考えたことですが、「それは間違っている。」、「自分はそ
う思わない。」と言われる方も多いかと存じます。大いにご批判をいただけれ
ば幸いです。

●次号は中西委員からのひとことです!

━・・・━━ 会議情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━・
●原子力委員会の会議を傍聴にいらっしゃいませんか。会議は原則として霞ヶ
関にある合同庁舎4号館で開催しており、どなたでも傍聴できます。開催案内
や配布資料は、すべて原子力委員会ウェブサイトで御覧いただけます。

●6月3日(火)の会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはウェブサイトに
掲載される議事録を御覧ください。
【議題1】原子力損害賠償・廃炉等支援機構法等について
<主なやりとり等>
 経済産業省資源エネルギー庁より、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法の概
要及び廃炉・汚染水対策推進のための総合体制のイメージ等についての説明が
あり、委員からは、原子力損害賠償支援機構への政府の関与のあり方等につい
て質問がありました。

●6月10日(火)の会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはウェブサイトに
掲載される議事録を御覧ください。
【議題1】海外における放射性廃棄物処分に関する第三者評価機関の現状につ
いて
<主なやりとり等>
 公益財団法人原子力環境整備促進・資金管理センターより、海外における放
射性廃棄物処分に関する第三者評価機関の現状について説明があり、委員から
は、各国の第三者評価機関の役割の違い等について質問がありました。

【その他】
<主なやりとり等>
 事務局より、プルトニウム保有量の報告に関する報道に関連して、これまで
のプルトニウム管理状況報告における対応について説明がありました。
 委員長から、次回の公表に向け適切な対応について検討するよう指示があり
ました。

※資料等は以下のURLで御覧いただけます。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/index.htm

●次回は6月27日(金)に会議を開催する予定です。詳しくは、以下の開催案内
を御覧ください。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/topic/kaisai.htm

+-+-+-+-+-+-+ 事務局だより +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

確率論的評価と決定論的評価

 3か月ほど前の話ですが、「確率論的リスク評価日米ラウンドテーブル」が
開催されました。私自身は、参加はできませんでしたが、関連する報道を読ん
だ限りでは、決定論的評価を主軸とした我が国の原子力施設の安全評価におい
て、確率論的評価が本格導入されるのはもう少し時間がかかるようです。
 安全評価においては、決定論的評価にせよ、確率論的評価にせよ、備えとし
てのリスクを評価し、また、それに対して対策を準備するということは、安全
対策の基本であると思います。
 決定論的評価は、それだけでは、進展シナリオの展開に限界が生じる可能性
があり、また、被害の大きさだけで判断しても、そこに発生確率を考慮しなけ
れば、実態に即した安全対策にはならないのではないかと思います。一方、確
率論的評価については、数多くの事象の、発生確率と被害の相関関係の把握な
ど難しい問題があり、このため不確実性についても、しっかりと評価していく
必要があるのではないかと思います。
 決定論的評価により、大きな被害をもたらす事象を想定し、必要な安全対策
をとりつつ、確率論的評価により、各機器の故障確率などから、さらに潜在的
なリスクを抽出し、安全をより確実なものとする。また津波や地震など、自然
災害に対して、既往最大の対策評価をしつつ、それを超える事象の発生が否定
しきれないリスクについて、確率論的評価を行い、万が一を含めた安全対策を
施す、というように、どちらかではなく、互いを補完するように活用していく
ことが重要ではないかと考えます
 決定論的評価も確率論的評価も日々進化していると考えます。原子力の安全
対策において、常に最新の知見を反映していくことは、基本原則である以上、
どちらも安全性の向上に必要なものであると思います。

(前田)

●次号配信は、平成26年6月27日(金)午後の予定です。

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発行者:内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局)
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○原子力委員会ホームページ  http://www.aec.go.jp/
○このメールアドレスは発信専用のため、御返信いただけません。
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