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第119号 原子力委員会メールマガジン アルジェリア人質事件の教訓


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ No.119 ━━━━━
    @mieru(あっとみえる) 原子力委員会メールマガジン
             2013年2月1日号
   ☆★☆ めざせ! 信頼のプロフェッショナル!! ☆★☆
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┏ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┣ 鈴木委員長代理からひとこと アルジェリア人質事件の教訓
┣ 定例会議情報 低線量・低線量率放射線影響研究分野における研究推進
┃        方策について
┃        福島復興本社の概要と主な取り組み等について
┃        「もんじゅ」等の研究計画について
┣ 事務局だより 福島井戸端会議
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━・・・━ 委員からひとこと ━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━

アルジェリア人質事件の教訓
                             鈴木 達治郎

 原子力委員としての任期は既に切れましたが、法律で規定されていますよう
に、後継者が任命されるまで、今後も委員としての職務を全力で尽くしてまい
ります。よろしくお願いします。

 さて、このたびのアルジェリアで起きたイスラム過激派による人質テロ事件
で、多くの犠牲者が出たことは、本当に痛ましいことであり、ご遺族の方々に
心より哀悼の意を表したいと思います。
 今回の痛ましい事件は、今後の日本にとってどういう意味を持つでしょうか。
 第一に、グローバル経済とテロの多国籍化というリスクを認識することの重
要性です。今回テロの対象となったプラントは、英国BP社、ノルウェー
Statoil社、アルジェリア国営企業Sonatrach社の合弁企業のものでした。そこ
に技術支援企業として、日本の日揮が参加していました。犠牲者も、日本の10
人をはじめ、フィリピン人8人、英国人3人、ノルウェー人3人、米国人3人を含
む外国人37人の死亡が確認されています(1月27日現在、BBC社による報道)。
このほかにも、オーストリア、マレーシア、ルーマニア人等も行方不明とされ
ています。このように、グローバル化する経済では、世界中に多国籍の従業員
が働いています。どこでテロが起きても、その被害は一国にとどまるわけでは
ありません。テロによる被害は、もはや一国単位で考えていては収まらない、
という時代になりました。日本では当然のことながら邦人犠牲者数や邦人保護
に焦点が当てられていますが、それだけでは国際化するテロ対策の根本的解決
にはつながりません。犠牲者はグローバル経済に組み込まれた多国籍企業の従
業員の方々であり、対策もグローバルな視点で検討される必要があります。
 第二に、危機対応における国際協調の重要性です。日本政府は人命尊重を第
一に、テロ鎮圧への武力行使には極めて慎重でした。また軍事行動も辞さない
とされている英米政府でさえ、今回の突然の武力行使には驚きの声をあげまし
た。なぜアルジェリア政府がこのような早期軍事行動に走ったか、またどうし
てその情報が早めに共有されなかったのかは、今後検証される必要があります。
いずれにせよ、今後はこのような事態において、関係国間でその対応策につい
て、一定のガイドラインなどを共有しておく必要がありそうです。福島第一原
子力発電所事故の危機対応においても、情報共有についての教訓が得られまし
たので、アルジェリア政府と他の政府間とで十分な検証が必要かと思います。
 第三に、情報収集能力とその管理方針の重要性です。事件直後は、さまざま
な情報が報道やインターネットで流れました。正確な情報の把握とその管理方
針を明確にしておくことは、今後の危機管理対応においても、国民の不安を最
小限にする意味でも重要であると思います。また、その後の報道によると、テ
ロリスト集団は内部から情報を得ていた可能性もあると伝えています。そうだ
とすると、内部脅威や機密情報の管理も重要な課題として、その対策の強化が
望まれます。なお、原子力委員会では、既に原子力防護専門部会から原子力関
連施設における個人の信頼性確認制度の導入を提案しています。
 最後に、今回の事件は、天然ガスプラントが対象だったこともあり、エネル
ギー安全保障の問題とも考えられています。事実、海外への資源開発に乗り出
す企業が増えていることを考えれば、このようなリスクは増大することは間違
いありません。一方で、テロが国内でも起きることを想定することも必要です。
原子力関連施設におけるテロ対策、国外で活躍する原子力企業の従業員の安全
確保、万が一のテロ対応、特に国際協力の重要性は、国産エネルギーを多く
持っていても変わるものではありません。原子力関係者は、民間企業、政府と
も、この人質テロ事件を教訓に、あらためてテロ対策を検討していくことが望
まれます。

●次号は秋庭委員からのひとことの予定です!

━・・・━━ 定例会議情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━
●定例会議を傍聴にいらっしゃいませんか。定例会議は通常毎週火曜午前、
霞ヶ関にある合同庁舎4号館で開催しており、どなたでも傍聴できます。開催
案内や配布資料は、すべて原子力委員会ウェブサイトでご覧いただけます。

●1月22日(火)第3回定例会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはウェブ
サイトに掲載される議事録をご覧下さい。

【議題1】低線量・低線量率放射線影響研究分野における研究推進方策につい
て(独立行政法人放射線医学総合研究所 放射線防護研究センター長 酒井
一夫氏)
<主なやりとり等>
 同研究所から、東京電力(株)福島第一原子力発電所事故以降の低線量被ば
く影響研究の現状及び今後の課題と方策ついて説明を頂きました。
 各委員からは、放射線が生体に影響を与えるメカニズム解明研究の成果を今
後どのように活用していくのか、放射線影響に関するリスクコミュニケーショ
ン手法の開発についての具体的な取組は何か、等の質問がありました。

●1月29日(火)第4回定例会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはウェブサ
イトに掲載される議事録をご覧下さい。

【議題1】福島復興本社の概要と主な取り組み等について(東京電力株式会社
福島復興本社代表 石崎芳行氏)
<主なやりとり等>
 本年1月に設立された福島復興本社の主な取組等について説明を頂きました。
 各委員からは、住民への情報発信の取組がこれまでと異なる点は何か、10
万人派遣プロジェクトでは具体的にどのような活動を行っているのか、等の質
問がありました。

【議題2】「もんじゅ」等の研究計画について(中間的な論点の取りまとめ)
(文部科学省)
<主なやりとり等>
 昨年12月にもんじゅ研究計画作業部会で取りまとめられた研究計画について
説明を頂きました。
 各委員からは、高速炉を含めた次世代炉全体の評価を行い、その中で「もん
じゅ」の活用を考えるべきではないか、高速炉の役割として廃棄物の減容等の
研究開発に重点を置く理由は何か、等の質問がありました。

※資料等は以下のURLでご覧いただけます。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/index.htm

●次回は2月5日(火)に定例会を開催します。詳しくは、以下の開催案内をご覧
下さい。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/topic/kaisai.htm

+-+-+-+-+-+-+ 事務局だより +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

福島井戸端会議

 この事務局で働く以前、私は原子力発電所で工事監督の仕事をしていたので
すが、その当時、1年の半分以上の寝食を共にし、一緒に日本全国の発電所を
渡り歩いた友人と、ひさしぶりに福島で会う機会がありました。
 彼は現在、福島第一原発で作業者の被ばく管理の仕事をしているようで、通
常の発電所とはまったく異なる環境で、放射線に関する知識量にかなりの差が
ある作業者が入れ替わりで対応する現場では、作業者の被ばく管理がどれだけ
大変かという、貴重な体験談を聞くことができました。
 朝まで語らう中で、彼が長年つきあっている彼女の実家へ結婚のご挨拶に
行った話になりました。彼女の母親は、身の回りに飛び交う放射線に関する
様々な情報から、彼が福島の現場で働いていることに過度な不安を感じてし
まったようです。
 彼のように福島の現場で働いている方々の中には、自分の仕事に誇りと責任
を持っている職人気質の方や、福島を清浄化するという気概を持った方が多く
いらっしゃると思います。そのような方のご家族や友人が過度な不安を感じる
ことのないよう、現場の状況や放射線の影響について、正確な情報をタイム
リーに分かりやすく説明することの必要性を強く感じました。
(柳澤)

●次号配信は、平成25年2月15日(金)午後の予定です。

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発行者:内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局)
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 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/melmaga/index.htm
○原子力委員会ホームページ  http://www.aec.go.jp/
○このメールアドレスは発信専用のため、ご返信いただけません。
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