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第115号 原子力委員会メールマガジン 原子力政策の構造改革


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ No.115 ━━━━━
    @mieru(あっとみえる) 原子力委員会メールマガジン
             2012年11月30日号
   ☆★☆ めざせ! 信頼のプロフェッショナル!! ☆★☆
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┏ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┣ 鈴木委員長代理からひとこと 原子力政策の構造改革
┣ 定例会議情報 高温ガス炉技術国際会議(HTR2012)の会議報告
┃        第13回アジア原子力協力フォーラム(FNCA)大臣級会合の開
┃        催結果について
┃        東京電力(株)福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた
┃        中長期にわたる取組の推進について
┃        原子力人材の確保・育成に関する取組の推進について 
┃        今後の高レベル放射性廃棄物の地層処分に係る取組(案)の
┃        検討と意見募集について 等
┣ 部会情報等  
┣ 事務局だより 日本のプレゼンス向上のための取組と原子力委員会の国際
┃        活動における役割
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━・・・━ 委員からひとこと ━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━

原子力政策の構造改革
                             鈴木 達治郎

 衆議院が解散され、12月16日に総選挙となりました。9月に決定された「革
新的エネルギー・環境戦略」についても、新政権での扱いがどうなるか不透明
だ、との懸念もされています。しかし、前原大臣が述べておられたように、ど
ういう政権になろうと、原子力政策の改革は必要かと思われます。
 日本の原子力政策は、これまで拡大一辺倒で進められてきました。そのため
に、原子力基本法の下、原子力委員会を設置し、平和利用担保を条件に長期計
画を策定して、政府と産業界が協力して計画的に研究開発及び利用を進め、原
子力発電を導入してきました。1974年には発電所立地地域への支援を目的とし
た電源三法を導入しました。原子力立地を受け入れた地方自治体も、安全協定
を事業者と結ぶなど、原子力開発と地域社会を結びつける制度を導入してきま
した。そういった制度に基づき、産業界(電力業界や原子力機器供給産業)や
研究開発機関は、そのためのインフラを長年にわたって維持・拡大してきたこ
とになります。実際、これらは、脱石油やエネルギー供給安定化、そして最近
では温室効果ガス削減という、エネルギー環境政策の目標実現に多大な貢献を
してきたことは事実であり、きちんと評価されるべきであると思います。
 しかし、3・11を経て、これまでの原子力政策に対する不信は非常に強く、
一方で今後「原子力依存度を低減していく」方向には、多くの国民が支持して
いるものと思われます。だとすれば、当然ながらこれまで拡大のために整備さ
れた制度や産業インフラをすべて見直していく必要があります。そういった構
造改革を急に実施すれば、これまでの制度に依存している地域社会や産業にも
負の影響が出る可能性が高いと思われます。したがって、そういった影響を緩
和する期間、いわゆるソフトランディング(軟着陸)のための「政策移行期
間」が必要です。政策移行期間は、政策変更を決定した上で、その緩和策や実
行計画のロードマップを作成するための期間であり、いわゆる「モラトリア
ム」とは異なります。今、この「政策移行期間」の実態が見えてこないこと
が、国民に不安をもたらしている最大の要因ではないか、と考えています。
 エネルギー政策、特に原子力政策は巨大なタイタニック号を操るようなもの
です。進路変更、特にUターンし終えるにはとても時間がかかります。古川元
国家戦略大臣が「面舵いっぱいをきった」と言われたようですが、すぐに進路
変更をしていないように見えても、確実に構造改革を進めていくことが今後氷
山にぶつからないために重要と考えます。
 進路変更に時間がかかる政策の典型が「核燃料サイクル政策」です。
 今後、原子力に依存しない社会を実現するのであれば、再処理はいずれ不要
になり、核燃料サイクル政策も見直しは必至です。しかし急激な変更は、青森
県を始めとする立地地域との約束や電気事業等への影響などを考えると容易で
はありません。直接処分にも技術開発や制度変更が必要です。
 その柔軟性を確保する最大の手段が「中間貯蔵」であり、その戦略的価値は
極めて高いと考えられます。経済面、安全面でもメリットが大きい「中間貯
蔵」を核燃料サイクルの中心に据えていく事が最も現実的で戦略的な方向で
す。事故を起こした東京電力(株)福島第一原子力発電所において、空冷で冷却
に電源が要らない「乾式貯蔵」が津波にも安全であることが実証されました。
 核燃料サイクルには国際的視点も重要です。特に、これ以上プルトニウム在
庫量を増やさないよう、「利用目的のないプルトニウムは持たない」政策の厳
守が必要であり、原子力発電所の再稼働が不透明な今、プルトニウム利用計画
の見直しも必要かもしれません。このような観点も含めて、六ヶ所再処理事業
に係る総合的な評価を数年以内に実施すべきであると2012年6月21日の原子力
委員会で決定しています。こういった構造改革が核燃料サイクル政策にも必要
です。
 これに関連して重要なのが「高レベル放射性廃棄物処分」政策です。日本学
術会議が原子力委員会の要請にこたえて、今年9月11日に「回答」を発表しま
した。この中で、学術会議は「これまでの政策方針や制度的枠組みを自明の前
提にするのではなく、原点に立ち返って考え直すべき」と提言されました。原
子力委員会では、この回答を真摯にかつ謙虚に受け止め、現在の政策の原点と
なっている、1998年の原子力委員会高レベル放射性廃棄物処分懇談会の報告書
「高レベル放射性廃棄物処分に向けての基本的考え方について」まで戻り、こ
れまでの計画や基本方針の見直しを含めて、再検討することを骨子とした見解
を検討中です。さらに、学術会議の回答を謙虚に受け止めれば、いわゆる「ト
イレなきマンション」として批判されてきた原子力政策を見直し、今後は廃棄
物(使用済燃料を含む)の取扱い(貯蔵管理、最終処分)と原子力発電を一体
とした原子力政策に変えていく必要があります。そして、これまで以上に、幅
広い国民との対話を通じて、広範な合意形成を図るプロセスを設計する必要が
あります。
 最後に、国民の信頼回復には、政策そのものに対する信頼性だけではなく、
その決め方や、原子力行政の在り方、電力業界の体制など、これまでの原子力
統治機構(ガバナンス)についても改革が必要だと思われます。原子力安全規
制の改革は、その最も大事なものですが、原子力行政体制も見直しが始まって
います。現在、国家戦略室にて「原子力委員会見直しのための有識者会議」が
開催されており、年内には提言が提出されると期待されています。その提言の
結果、さらに原子力委員会を含めた、原子力行政全体のガバナンス改革も必要
とされるかもしれません。
 こういった原子力政策の構造改革に取り組んでいくことは、どのような政権
になろうと必要なのではないか。これが任期最後のメルマガで考えた私からの
メッセージです。

●次号は秋庭委員からのひとことの予定です!

━・・・━━ 定例会議情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━
●11月20日(火)第51回定例会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはホーム
ページに掲載される議事録をご覧下さい。

【議題1】高温ガス炉技術国際会議(HTR2012)の会議報告(独立行政法人日本原
子力研究開発機構 原子力水素・熱利用研究センター センター長 小川益郎氏)
<主なやりとり等>
 独立行政法人日本原子力研究開発機構 原子力水素・熱利用研究センター セ
ンター長小川氏より、10月29日から11月1日まで東京で開催された高温ガス炉
技術国際会議の概要として、「高温ガス炉への期待」等の総合講演が行われた
ほか、一般の方に高温ガス炉を知ってもらうための公開フォーラムの開催結果
について説明がありました。
 委員からは、公開フォーラムのアンケート結果において、フォーラム後に高
温ガス炉が将来の選択肢と答えた方が増えたのはなぜか、脱原発政策をとって
いるドイツが高温ガス炉を対象とした今回の国際会議に参加している理由は何
か、等の質問がありました。

【議題2】鈴木原子力委員会委員長代理の海外出張報告について
<主なやりとり等>
 鈴木原子力委員会委員長代理より、11月6日から7日までドイツのベルリンで
開催された第21回日独フォーラムに参加し、エネルギー政策のセッションにお
いて基調報告を行うとともに、日独共通の課題について意見交換を行ったこと、
フォーラム後には、ドイツの産業団体アトムフォーラムと意見交換を行ったこ
と、等の説明がありました。

●11月27日(火)第52回定例会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはホーム
ページに掲載される議事録をご覧下さい。

【議題1】第13回アジア原子力協力フォーラム(FNCA)大臣級会合の開催結果に
ついて
<主なやりとり等>
 11月24日にインドネシアのジャカルタで開催された第13回FNCA大臣級会合に
ついて説明がありました。参加国は12ヵ国であり、我が国からは白内閣府副大
臣を始め、近藤原子力委員会委員長等が参加しました。
 会合においては、FNCAにおける放射線利用及び原子力発電に関する様々な取
組の成果が各国の大臣級に報告され、今後の活動として、放射線利用の社会経
済的効果の評価を実施するために各国で協力すること、等の決議が採択されま
した。
 委員からは、前回と比較して放射線利用に関する成果報告が多かったのはな
ぜか、等の質問がありました。

【議題2】東京電力(株)福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期に
わたる取組の推進について
<主なやりとり等>
 事務局より、国民の皆様からご意見を募集していた「東京電力(株)福島第一
原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期にわたる取組の推進について」の見
解文案について、ご意見を踏まえて修正した案文の説明がありました。
 修正した見解文案について審議した結果、案文通りのまま見解として公表す
ることとしました。

【議題3】原子力人材の確保・育成に関する取組の推進について 
<主なやりとり等>
 事務局より、国民の皆様からご意見を募集していた「原子力人材の確保・育
成に関する取組の推進について」の見解文案について、ご意見を踏まえて修正
した案文の説明がありました。
 修正した見解文案について、委員から、廃炉措置を含むバックエンドの取組
を企画推進する人材が求められることを踏まえれば、都市工学よりもむしろ環
境工学の方に原子力工学に関する講義等が行われてもよいのではないか、等の
意見がありましたので、案文を一部修正の上、見解として公表することとしま
した。

【議題4】今後の高レベル放射性廃棄物の地層処分に係る取組(案)の検討と意
見募集について
<主なやりとり等>
 「今後の高レベル放射性廃棄物の地層処分に係る取組について(見解案)」に
ついて議論を行いました。
 委員からは、海外の事例を踏まえれば、高レベル放射性廃棄物の処分に関す
る取組の進め方を監査する第三者組織が、当事者に対しても助言するというの
は不要ではないか、過去に決定した内容を国民の世代が変わったとしても共有
し続ける仕組みを検討すべき、等の意見があり、案文を一部修正の上、国民の
皆様からのご意見を募集することとしました。

【議題5】近藤原子力委員会委員長の海外出張について
<主なやりとり等>
 事務局より、近藤委員長が12月4日から8日まで米国のワシントンへ出張する
旨の説明がありました。近藤委員長は第5回日米官民原子力ラウンドテーブル
に出席し、両国の原子力政策に係る相互理解の促進やネットワークの強化等を
図る予定です。

※資料等は以下のURLでご覧いただけます。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/index.htm

●次回は12月4日(火)に定例会を開催します。議題は以下のとおりです。
(1) 今後の原子力研究開発の在り方について(案)の検討と意見募集について
(2) 近藤原子力委員会委員長の海外出張報告について
(3) その他

●定例会議を傍聴にいらっしゃいませんか。定例会議は通常毎週火曜午前、
霞ヶ関にある合同庁舎4号館で開催しており、どなたでも傍聴できます。開催
案内や配布資料はすべて原子力委員会ホームページでご覧いただけます。

━・・・━━ 部会情報等 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━
●原子力委員会には、調査審議組織として専門部会や懇談会等が設置されてい
ます。これらの部会や懇談会等は原則として一般に公開しており、どなたでも
傍聴することができます。開催案内や配布資料はすべて原子力委員会ホーム
ページでご覧いただけます。

●専門部会等の開催はありませんでした。

●次週の専門部会等開催情報
・次週は専門部会等の開催は予定されていません。

+-+-+-+-+-+-+ 事務局だより +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

日本のプレゼンス向上のための取組と原子力委員会の国際活動における役割

 2年半の任期を終える前に、これまでの業務を振り返るとともに、国際活動
における原子力委員会の役割の重要な点について述べておきたい。まず国際班
に着任した際、業務ガイドや部内目標がなく、法律と政府の戦略が指針と言わ
れ、スケールの大きさに驚いた。一方、その範囲内ならば前向きな提案は大い
に認められたため、常に「日本のプレゼンス向上」を念頭に企画・提案した。
これは国際感覚のある近藤委員長や尾本委員が求める理想的な情報発信の在り
方と、現状の日本の国際社会への発信の在り方とのギャップを埋めることでも
あった。
 最初の取組は、2010年9月の国際原子力機関(IAEA)総会から始めた日本政府
主催サイドイベントと、IAEAの各部局長(DDG)と近藤委員長の会談である。
前者は近藤委員長の下、内閣府が各省に呼びかけ、政府主催イベントとして近
藤委員長が講演を行った。その後、内容はそれぞれだが3年継続されており、
今後、体制見直しがなされても、政府一丸となった発信の継続を願う。DDGとの
会談も広範な知見を持つ近藤委員長故に成し得たとも言えるが、今後もIAEAへ
の透明性のある説明とIAEAと日本政府との密な連携を心掛けてほしい。また、
福島事故のあった2011年、エネルギー環境戦略発表直後の今年9月も、毎年
IAEA総会において、各国の閣僚と会談し、説明責任と信頼維持に務めたのは近
藤委員長であった。今後の体制見直しでは、この委員長が果たしてきた役割を
含め、国際社会への情報発信の在り方や連携方法を十分考慮し、積極的に発信
していくことが日本のプレゼンス向上に寄与すると考える。
 さらに原子力委員会の国際活動の大きな役割の1つとして、原子力委員会と
内閣府にて主催する大臣級会合がある。先日、11/24にアジア原子力協力
フォーラム(FNCA)大臣級会合をジャカルタで開催し、各国よりFNCAの重要性と
アジア地域における経済社会的発展のためにも活動の継続が希望され、白内閣
府副大臣が今後の協力継続を約束した。各国から原子力安全や緊急時対応等の
情報共有も期待されており、今後は規制庁も参画した、より発展的に強化され
たFNCAとなることを切に願う。
 最後に原子力委員会HPだが、業務の合間でのHP掲載というリソース不足のた
め当時のHPは改良の余地が大きかった。このため、プレゼンス向上のための前
述のような取組をより迅速に国内外に発信すべく、HPの大改造を行い、フォト
ギャラリーの追設や英語頁の充実、掲載情報の整理を行った。但しHPの価値
は継続的な運用とメンテナンスが要であり、室内に残る仲間の今後の高い理念
と努力に期待したい。
(濱田)

●次号配信は、平成24年12月14日(金)午後の予定です。

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発行者:内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局)
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