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第107号 原子力委員会メールマガジン 餅は餅屋?:専門家と社会のあいだ


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ No.107 ━━━━━
    @mieru(あっとみえる) 原子力委員会メールマガジン
             2012年8月3日号
   ☆★☆ めざせ! 信頼のプロフェッショナル!! ☆★☆
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┏ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┣ 大庭委員からひとこと 餅は餅屋?:専門家と社会のあいだ
┣ 定例会議情報 福島復興再生基本方針について
┃        Joint Japan-IAEA原子力エネルギーマネジメントスクー
┃        ルの開催報告について
┃        第4回国際原子力エネルギー協力フレームワーク(IFNEC)
┃        運営グループ会合等の開催結果について
┃        アジア原子力協力フォーラム(FNCA)「原子力発電のための
┃        基盤整備に向けた取組に関する検討パネル」第4回会合の
┃        開催結果について
┣ 部会情報等  
┣ 事務局だより 業務雑感 その3
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━・・・━ 委員からひとこと ━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━

餅は餅屋?:専門家と社会のあいだ
                              大庭 三枝

 「原子力の専門家」に対する不信は、昨今非常に大きなものになってきてい
る。これは、昨年3月の東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故が直接の契
機になっているのは明らかである。しかしながら、世間一般の評価において
「専門家」あるいは「専門性」の価値が下落しているのは、ここ二、三十年、
日本に限らず世界の多くの国で見られる現象であると感じる。
 社会に関わる様々な問題について、専門家のみならず一般の市民も多くの情
報を得ることが出来るようになってきているのと共に、それらの問題について
意見を積極的に表明すべきであるという社会規範も強まり、また実際に声を上
げる機会も増えている。そうしたなかで、専門家がその専門の立場から下す判
断がいつも正しいとは限らない、ということが明らかになることがしばしば起
こっている。専門家は当該分野について多くの情報及び知識を市民よりも持っ
ているのは明らかであり、また専門家であるからこそ、当該問題について抑制
の効いた意見を持つということもある。しかしながら、専門家は、自分の専門
を同じくするもののみで議論を進めてしまうことも多い。その結果、視野が狭
くなり、バランスの取れた判断が出来なくなることも多々あることは否定でき
ない。
 他方、専門家が下す判断よりも、市民感覚から下される判断が常に正しいと
も限らない。政策決定について、その分野のことに必ずしも通じていない素人
こそが公正な判断を下せるという考え方もあり、それは民主主義において重要
な一般市民の政治への参画およびその意見の反映という観点から無視できない
重要性を持つ。しかしながら、「素人判断」という言葉があるように、複雑性
がいっそう増しつつある現代社会における諸課題を、専門性を持たない人間の
みで決断を下すというのは、かなりのリスクが伴うだろう。
 原子力委員会委員に就任してから、原子力業界と私が専門とする国際政治学
の分野とを比較していろいろと考えてみることも多い。その観点からすると、
私の分野においても、この、専門性の持つ問題と、社会一般の意見との乖離が
孕む問題が存在していると感じる。すなわち、様々な外交懸案について、多く
の市民の方々が関心を持っているが、日本が取るべき対応についての市民の多
数派が下す判断と、外交や国際政治を専門とする研究者や外務省の職員など専
門家の判断が大きくずれるということはよくあることである。この分野におい
ても専門家が下す判断の正しさについての信頼が大きく揺らいでいることから、
この両者の意見の分裂は決定的なものになる。
 餅は餅屋なのだが、餅屋は餅のことばかり見ているとも言える。民主主義国
では、専門家と社会一般の意見が大きく分裂する際、最終的には「政治」によ
る決定が下されることになる。現在、原子力の将来も含めたエネルギー政策が
議論されている。最終的な決定は閣僚で構成されているエネルギー・環境会議
が下すことになるだろうが、その際には、専門性の判断と、主権者たる国民の
見解とを十分に考慮した上での長期的視点からの判断を望む。

●次号は尾本委員からのひとことの予定です!

━・・・━━ 定例会議情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━
●7月24日(火)第31回定例会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはホーム
ページに掲載される議事録をご覧下さい。

【議題1】福島復興再生基本方針について(復興庁) 
<主なやりとり等>
 復興庁より、7月13日に閣議決定した福島復興再生基本方針について説明が
ありました。本方針は、「原子力災害からの福島の復興及び再生の意義及び目
標」、「避難解除等区域等の復興及び再生」、「福島県全域への施策」の3部
から構成され、福島県の復興・再生を支援する国の姿勢、避難住民の帰還に向
けた対応、放射線による健康上の不安解消への施策、等の説明がありました。
 委員からは、実施項目についての具体的な実施体制及び進捗状況をどのよう
に確認するのか、避難している若い世代が地元に戻るためにどのような対策を
とるのか、復興・再生の取組に積極的な女性の参画を望んでいるのはなぜか、
等の質問がありました。

●7月31日(火)第32回定例会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはホーム
ページに掲載される議事録をご覧下さい。

【議題1】Joint Japan-IAEA原子力エネルギーマネジメントスクールの開催報
告について(東京大学 教授 上坂充氏)
<主なやりとり等>
 東京大学教授上坂氏より、6月11日から29日にかけて東海村で開催された
IAEA原子力エネルギーマネジメントスクールについて説明がありました。本ス
クールには、将来各国で原子力のマネージメントを担うリーダーとなることが
期待される、アジア諸国を中心とする若手外国人研修生21人と日本人研修生18
人が参加し、原子力に関する幅広い課題に関する講義と、テーマ別のグループ
討議が行われました。
 委員からは、日本人のみを対象とした同様の取組の予定はあるか、各国参加
者から来年もぜひ日本で開催して欲しいという要望の具体的な理由は何か、等
の質問がありました。

【議題2】第4回国際原子力エネルギー協力フレームワーク(IFNEC)運営グルー
プ会合等の開催結果について
<主なやりとり等>
 事務局より、7月19日に米国のテキサスで開催された第4回IFNEC運営グルー
プ会合について報告がありました。同会合では、原子力発電事業への投資に関
する課題について議論されたファイナンスワークショップや、IFNECにおける
基盤整備ワーキンググループや燃料供給サービスワーキンググループの活動が
報告されました。
 委員からは、新興国はファイナンスや燃料供給サービスなどの新たな仕組み
に興味はあると思うが、誤解をして要求が強くなるという懸念があるのではな
いか、等の発言がありました。

【議題3】アジア原子力協力フォーラム(FNCA)「原子力発電のための基盤整備
に向けた取組に関する検討パネル」第4回会合の開催結果について
<主なやりとり等>
 事務局より、7月26日、27日にタイのバンコクで開催されたFNCA「原子力発
電のための基盤整備に向けた取組に関する検討パネル」第4回会合について報
告がありました。
 同会合は、参加各国の政府関係者及び専門家が出席し、原子力発電における
基盤整備の協力として、基盤整備に関する情報共有や、各国の経験・知見の共
有を図っており、今回は東京電力(株)福島第一原子力発電所事故に関する最新
情報、緊急時対応、リスクコミュニケーション、等のトピックスについて意見
交換が行われました。
 委員からは、安全・規制に関する各国の要望が増えており、今後、経産省や
原子力規制庁、環境省等の協力がより一層必要であること、各国の規制体制や
レベルが違いすぎることによる議論のあり方など、今後とも検討が必要だが短
期的な解決が難しい課題である、等の発言がありました。

※資料等は以下のURLでご覧いただけます。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/index.htm

●次回は8月8日(水)に臨時会を開催します。議題は以下のとおりです。
 (1) 東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会最終報告につ
   いて(東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会事務局)
 (2) その他

●定例会議を傍聴にいらっしゃいませんか。定例会議は通常毎週火曜午前、
霞ヶ関にある合同庁舎4号館で開催しており、どなたでも傍聴できます。開催
案内や配布資料はすべて原子力委員会ホームページでご覧いただけます。

━・・・━━ 部会情報等 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━
●原子力委員会には、調査審議組織として専門部会や懇談会等が設置されてい
ます。これらの部会や懇談会等は原則として一般に公開しており、どなたでも
傍聴することができます。開催案内や配布資料はすべて原子力委員会ホーム
ページでご覧いただけます。

●専門部会等の開催はありませんでした。

●次週の専門部会等開催情報
・次週は専門部会等の開催は予定されていません。

+-+-+-+-+-+-+ 事務局だより +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

業務雑感 その3

 原子力政策担当室に勤務して2年4ヶ月となる。勤務当初はそれまでの職場と
勝手が違い、慣れるまで苦労した覚えがある。主な業務は原子力防護、原子力
関係経費のとりまとめ及び諮問・答申案件で、1年目はこれら3つの分野がバラ
ンスの取れた業務配分だった。原子力防護では、IAEAの核セキュリティに係る
基本文書や勧告文書の作成作業に当たった。
 2年目に入る前、福島第一原子力発電所事故が起きた。福島対応では、原子
力政策担当室全員が交代で業務に当たり、室の中心業務となった。原子力防護
業務の2年目は、原子力防護専門部会で平成23年9月に基本文書案を参考に我が
国の核セキュリティに係る基本的考え方についてとりまとめ、その後、本件に
係る原子力委員会決定が行われた。また、原子力防護専門部会の下にワーキン
グ・グループ(WG)を設置し、福島事故の教訓の反映、勧告文書の規制への取
り入れについて検討を行った。WGは9回開催され、その検討結果について原子
力防護専門部会にかけ、その結果を同部会から原子力委員会に上げ、最終的に
本年3月21日に「我が国の核セキュリティ対策の強化について」として、原子
力委員会決定がなされた。とりまとめ直前の2月、3月はかなりハードな日々が
続いた。
 このようにこれまでの業務は原子力防護が中心だったが、その間及びその後、
原子力を取り巻く環境は大きく変化していった。新原子力政策大綱の策定会議
の開始、原子力規制体制の見直し・原子力規制委員会設置法の成立、核燃料サ
イクル政策の選択肢に係る原子力委員会決定、同策定会議の中断、勉強会に係
る検証委員会の設立・調査、エネルギー・環境会議によるエネルギー選択肢に
係る国民的議論の開始等だ。
 約1年前にこのメルマガの原稿作成でこれまでの業務を振り返ったが、原子
力を取り巻く環境はその時よりもさらに大きく変化したように感じる。このよ
うな大きな環境の変化の中で、昨年にも増して自分の立場を自覚し、日々の業
務に努めていきたいと考えている。
(加藤(眞))

●次号配信は、平成24年8月24日(金)午後の予定です。

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発行者:内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局)
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○原子力委員会ホームページ  http://www.aec.go.jp/
○このメールアドレスは発信専用のため、ご返信いただけません。
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