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第100号 原子力委員会メールマガジン 核燃料サイクルの選択肢:「留保」(wait and see)について


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    @mieru(あっとみえる) 原子力委員会メールマガジン
             2012年4月20日号
   ☆★☆ めざせ! 信頼のプロフェッショナル!! ☆★☆
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┏ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┣ 鈴木委員長代理からひとこと 核燃料サイクルの選択肢:「留保」(wait 
┃                and see)について
┣ 定例会議情報 我が国の核融合研究開発の現状について
┃        原子力損害賠償制度に関する取組状況について
┃        原子力損害賠償制度の課題とその克服に向けた制度改革
┃        の方向性について
┃        平成24年度原子力研究、開発及び利用に関する計画 等
┣ 部会情報等  第11回原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会
┃        の開催について 等
┣ 事務局だより 15年ぶりの東京生活
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

●メールマガジンや、原子力委員会の活動に関するご意見・ご感想等を、
https://form.cao.go.jp/aec/opinion-0017.htmlまで、ぜひお寄せください。

━・・・━ 委員からひとこと ━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━

核燃料サイクルの選択肢:「留保」(wait and see)について
                             鈴木 達治郎

 原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会(以下「検討小委」)では、
いよいよ核燃料サイクル政策選択肢評価の第3ステップ(定量評価)に入りまし
た。「全量再処理」、「再処理・直接処分併存」、「全量直接処分」を3つの
大きな選択肢として代表的なシナリオを3つ想定し、それらの総合評価を実施
することになっています。
 その議論の中で、「留保」(wait and see)の選択肢を入れるべきではないか、
という意見が複数の委員より提起されました。この「留保」の意味がよくわか
らない、というご質問やご指摘をいただきましたので、本日はこの「留保」の
意味と今後の議論の進め方について説明させていただきます。
 前回の検討小委では、「留保」を「現時点で意思決定するよりも、ある期間
決定を留保し、その間に、意思決定に役立つ情報を収集し、又は、不確実性の
減少を待って、意思決定を行う政策措置」と定義させていただきました。これ
は、特に重大な意思決定(大きな投資、非可逆的な政策決定など、決定が大き
なコストや社会的影響をもたらす可能性がある意思決定)をする際に、意思決
定をしないことで社会的損失を少なくする(あるいは利得をより大きくする)時
にとる政策措置と言い換えることができます。これとよく似た政策措置に「凍
結(モラトリアム)」という政策措置もあります。目的としては似ていますが、
こちらは現状を文字通り「凍結」(たとえば「原発新設を凍結」など)して、意
思決定を先送りするのに対し、「留保」の場合は「動きながら状況改善を待つ
」、という形もあり得るので、単なる「先送り」では決してないことを、まず
ご理解いただきたいと思います。
 そのため、「留保」するには、いくつかの条件が必要ではないかと思ってい
ます。まず、「留保する対象となる意思決定(選択肢)」は何か、そしてその目
的は何か、を明確にすることです。次に、「どのような情報を集め、どの不確
実性を減少させるのか」もあらかじめ決めておくことが重要です。これが「留
保期間」や「留保後の意思決定の評価条件」を明らかにすることにつながりま
す。また、「留保期間後の選択が円滑に進むための準備」を留保期間中に実施
しておくことも重要です。このような条件がそろうことにより、「留保」は単
なる「先送り」や「凍結」と異なり、将来の意思決定をより有効なものとする
ことができると考えられます。
 さて、今後の検討小委において、この「留保」をどのように扱うかですが、
前回の議論を踏まえて、六ヶ所再処理工場の運転開始を「留保」した場合の評
価ではなく、まずは六ヶ所再処理工場の運転が「5年遅れた場合」の影響を定
量的、定性的に評価することとしました(「サブ・シナリオ」的位置づけにな
ります)。これにより、実質的には「留保」の影響を、ある程度推定すること
ができます。これ以外にも、委員からのご意見・ご提案があれば、特定プロジ
ェクトの「遅れやキャンセル」について評価することも考えています。そして、
3つの代表シナリオと、上記のような「サブ・シナリオ」の評価を踏まえ、政
策選択肢の意思決定を現時点で「留保」する、という案が考えられます。すな
わち、最後の選択肢提示とその課題整理に向けて、「政策選択肢」として「留
保」を含めるかどうかを検討していきます。もし、「留保」を選択肢として含
めたほうがよい、ということになれば、上記に述べたように、その目的を明確
化し、「どのような情報を集め、どの不確実性を減少させるのか」、留保期間
後に備えた準備内容についても、あらかじめしっかりと整理しておきたいと思
います。
 以上述べたように、「留保」は単なる「先送り」ではなく、よりよい社会意
思決定のために重要な政策措置の一つです。現在のように、原子力発電や電気
事業の将来、技術進歩の行方など、不確実性が極めて高い時代においては、「
留保」という「選択肢」を議論することが、有効であると思われます。その点
をご理解のうえ、今後の核燃料サイクル論議の行方に注目していただければ幸
いです。

●次号は秋庭委員からのひとことの予定です!

━・・・━━ 定例会議情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━
●4月10日(火)第13回定例会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはホーム
ページに掲載される議事録をご覧下さい。

【議題1】我が国の核融合研究開発の現状について(文部科学省、独立行政法人
日本原子力研究開発機構、大学共同利用機関法人自然科学研究機構、大阪大学
)
<主なやりとり等>
 文部科学省より、我が国の核融合研究開発の位置づけ、核融合政策の現状等
について説明がありました。続いて、日本原子力研究開発機構、自然科学研究
機構及び大阪大学より、トカマク方式、ヘリカル方式及びレーザー方式の核融
合について、それぞれの研究開発の現状について説明がありました。
 各委員からは、国際協力を推進しながら研究開発を行う中で、我が国の技術
の優位性をどのように保っていくのか、東日本大震災を踏まえた核融合施設の
安全性向上に対する具体的な検討は行っているのか、等の質問がありました。

●4月17日(火)第14回定例会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはホーム
ページに掲載される議事録をご覧下さい。

【議題1】原子力損害賠償制度に関する取組状況について(文部科学省)
<主なやりとり等>
 文部科学省より、我が国の原子力損害賠償制度の概要、賠償に関する和解を
仲介する原子力損害賠償紛争解決センター、同制度の見直しに向けた検討事項
等の説明がありました。
 各委員からは、原子力損害賠償紛争の和解件数が申し立て件数に対して少な
いが、状況改善に向けて取り組んでいるのか、和解が成立せず裁判に至った際
の訴訟費用の助成は行っているのか、等の質問がありました。

【議題2】原子力損害賠償制度の課題とその克服に向けた制度改革の方向性に
ついて(一般財団法人電力中央研究所 上席研究員 田邉朋行氏)
<主なやりとり等>
 電力中央研究所上席研究員田邉氏より、福島第一原子力発電所事故の原子力
損害の主な特色と賠償処理上の課題、原子力損害賠償制度の改革の方向性、等
について説明がありました。
 各委員からは、国が事業者の損害賠償を援助することによって、事業者によ
る賠償への積極性が低下するのではないか、海外ではどのような形で原子力損
害賠償に国が関与しているのか、等について質問がありました。

【議題3】平成24年度原子力研究、開発及び利用に関する計画について
<主なやりとり等>
 事務局より、「平成24年度原子力研究、開発及び利用に関する計画(案)」に
基づき、原子力関係経費の概要等について説明があり、同計画に対する原子力
委員会の決定(案)が審議されました。
 委員からは、計画(案)の「はじめに」において、今年度の予算が現行政策大
綱に基づくものと、東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故からの復旧等に
基づくもので構成されていることを記載し、これを明確化すべき等の意見があ
り、計画(案)を一部修正の上、原子力委員会の決定とすることとしました。

※資料等は以下のURLでご覧いただけます。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/index.htm

●次回定例会議は4月24日(火)に開催します。議題は以下のとおりです。
(1) 独立行政法人日本原子力研究開発機構における量子ビーム応用研究につい
  て(独立行政法人日本原子力研究開発機構)
(2) その他

●定例会議を傍聴にいらっしゃいませんか。定例会議は通常毎週火曜午前、霞
ヶ関にある合同庁舎4号館で開催しており、どなたでも傍聴できます。開催案
内や配布資料はすべて原子力委員会ホームページでご覧いただけます。

━・・・━━ 部会情報等 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━
●原子力委員会には、調査審議組織として専門部会や懇談会等が設置されてい
ます。これらの部会や懇談会等は原則として一般に公開しており、どなたでも
傍聴することができます。開催案内や配布資料はすべて原子力委員会ホームペ
ージでご覧いただけます。

●4月12日(木)第11回原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会の概要
は以下のとおりでした。
詳しくはホームページに掲載される議事録をご覧下さい。
<主なやりとり等>
 事務局より、前回の議論を踏まえて改訂した資料「第3ステップ評価の条件
について」、原子力比率IIにおけるシナリオ毎に2030年までの定性・定量評価
結果を比較した資料「ステップ3の評価:2030年まで(原子力比率IIのケース)
」、留保の位置づけを説明した資料「留保(wait and see)について」の説明が
あり、その後議論を行いました。次に、事務局より、政策を変更する際に影響
を受ける項目を列挙した資料「政策変更または政策を実現するための課題」に
ついて説明がありました。
 専門委員からは、定量評価の結果を検証できるようにデータを公開すべき、
2030年以降の定量評価結果も示すことでシナリオ間の差を見てみたい、留保の
意味合いを明確化すべき、我が国が核燃料サイクルの政策を変更した際の国際
社会へ与える影響を評価すべき、等の意見がありました。

●4月19日(木)第12回原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会の概要
は以下のとおりでした。
詳しくはホームページに掲載される議事録をご覧下さい。
<主なやりとり等>
 事務局より、原子力比率I、II、III、それぞれに対してシナリオ1〜3毎に20
30年までの定性・定量評価結果を比較した結果、及び六ヶ所再処理事業の実施
が困難になり、使用済燃料が原子力発電所に返送された場合の影響に関する資
料について説明があり、その後議論が行われました。続いて、電気事業連合会
より、核燃料サイクル政策が変更となった場合に、原子力施設立地地域と事業
者の関係に与える影響について説明がありました。次に、日本原子力研究開発
機構より、原子力比率IIを対象とした、2030年以降の長期的な天然ウラン需給
量、使用済燃料貯蔵量、放射性廃棄物発生量、等について評価した結果の説明
がありました。
 専門委員からは、各シナリオに基づく核燃料サイクルの総費用については、
計算結果の検証が出来るようにデータを公開すべき、使用済燃料が原子力発電
所に返送され、原子力発電所が運転停止した場合の代替発電コストを考慮すべ
き、等の意見がありました。また、再処理によるメリットやFBR導入の可能性
が判断出来るまでの期間として、計算上20年間再処理の実施を遅らせた評価を
するべき、という意見があり、これに対し20年間の再処理施設の維持コストが
かかる、生きているプラントを20年間止めるのは技術的にプラントを殺すのと
同じなど、待つことに合理性がないという意見がありました。
 次回の委員会において、専門委員の意見を踏まえて資料を修正するとともに、
ステップ3のまとめ(案)を提示することとなりました。

●次週の専門部会等開催情報
・第17回新大綱策定会議を開催します。
 開催日時:平成24年4月24日(火) 13時00分〜16時00分
 開催場所:砂防会館(別館) 淀・信濃の間
     (東京都千代田区平河町2-7-5)
 議題: (1) フランスの研究開発の現状について
     (2) 不確実性のある技術に対する研究開発の在り方について
     (3) 原子力発電に係る論点整理について
     (4) その他

・第13回原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会を開催します。
 開催日時:平成24年4月27日(金) 13時00分〜16時00分
 開催場所:全国都市会館 第2会議室
     (東京都千代田区平河町2-4-2)
 議題: (1)核燃料サイクルの政策選択肢の定量的評価について
     (2)その他

+-+-+-+-+-+-+ 事務局だより +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

15年ぶりの東京生活

 4月から原子力委員会の事務局に赴任いたしました。原子力政策大綱を策定
する仕事に関われることを、大変光栄に感じております。また、これまでの仕
事内容から、大きく変わり、戸惑うことが多いですが、ご迷惑をおかけしない
様に頑張っていきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願い致します。
 元々、大学院卒業まで東京に住んでいましたが、就職に伴い地方へ移り住み
ました。15年ぶりに再び東京で生活を始めてみると、大きな戸惑いがありまし
た。地方では、車通勤が当然であり、道路が多少混むことはあっても、とても
快適でした。それが、満員電車通勤に変わり、朝からかなり体力を消耗してし
まいます。さらに、駅の改札が、タッチ式の自動改札に変わっていました。初
めて定期券をタッチするときは、ちゃんとゲートが開くだろうかと正直ドキド
キしました。
 また、私が勤務する合同庁舎の最上階のレストランから、国会議事堂が見え
ることに少し感動し、夜、宿舎に帰る途中で、多くの人とすれ違うことに驚い
ている自分を感じ、とっくに自分は東京人ではなくなっていたのだと、しっか
り認識させられました。
 東京には東京の、地方には地方の良いところ、悪いところがそれぞれあると
思います。今回の東京赴任では、悪いところには目をつぶり、良いところだけ
を見ながら前向きに生活していきたいと思います。(たまたま、記念すべきメ
ルマガ第100号で、事務局だよりを担当させて頂けることになったことも、良
いところかもしれません??)
(田口)

●次号配信は、平成24年5月11日(金)午後の予定です。

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発行者:内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局)
○ご意見、ご感想、ご質問などはこちらへ
 https://form.cao.go.jp/aec/opinion-0017.html
○配信希望、アドレス変更、配信停止などはこちらへ
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/melmaga/index.htm
○原子力委員会ホームページ  http://www.aec.go.jp/
○このメールアドレスは発信専用のため、ご返信いただけません。
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