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第80号 原子力委員会メールマガジン 南相馬市の放射線授業について


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    @mieru(あっとみえる) 原子力委員会メールマガジン
           2011年7月8日号
   ☆★☆ めざせ! 信頼のプロフェッショナル!! ☆★☆
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┏ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┣ 秋庭委員からひとこと 南相馬市の放射線授業について
┣ 定例会議情報 東京電力福島第一原子力発電所事故によるプラント北西地
┃        域の線量上昇プロセスの解析
┃        放射線医学総合研究所の東京電力福島第一原子力発電所事
┃        故への取組について
┃        核物質防護規制に関する実施状況の報告について
┃        今後の原子力政策に関する有識者ヒアリング 等
┣ 部会情報等  第21回 原子力防護専門部会
┣ 事務局だより 霞が関案内
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

●メールマガジンや、原子力委員会の活動に関するご意見・ご感想等を、
https://form.cao.go.jp/aec/opinion-0017.htmlまで、ぜひお寄せください。

━・・・━ 委員からひとこと ━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━
南相馬市での放射線授業について
                               秋庭悦子

 5月半ば、友人がボランティアをしている福島県南相馬市原町区の避難所を
訪問しましたが、そこは小学校の体育館でした。緊急時避難準備区域なので、
学校は閉鎖されており、子供たちは毎朝校庭に集合してから、隣の鹿島区の小
学校までスクールバスで通学しています。友人から紹介されたこの地域の小学
生を持つお母さん達から、放射線・放射能の健康影響について、畳み掛けるよ
うにたくさんの質問をいただきました。今まで不安に思っていても誰に聞いて
よいかわからなかったと言われ、専門家を派遣する必要性を痛感しました。親
が子供への健康影響について心配するのは当然で、私は学校単位で専門家によ
る説明会を開催すべきと思っていたのですが、なかなか実現していただけませ
んでした。その後、知り合ったお母さん達からのメールを拝見すると、心配の
度合いが強くなり、隣の飯舘村の避難が始まると更に心配が加速していきまし
た。
 そこで、南相馬市の小学校から、財団法人日本科学技術財団が実施している
簡易放射線測定器「はかるくん」を使っての放射線の出前授業を依頼していた
だきました。6月17日に鹿島区の八沢小学校で、5年生を対象に「はかるくん
」を使った授業を行いました。八沢小学校には小高区や原町区の6つの学校の
児童が通学しており、通路に仕切りをして教室にしたり、校庭にユニット教室
を建てたりしています。子供たちは長袖長ズボン姿で、半分以上がマスクを着
け、教室の窓は閉め切っていました。
 「はかるくん」を使った授業では、まず「放射線と聞いて思いつくことは?
」と聞くと即座に「被ばく」、「原発」、「プルトニウム」という答えが返っ
てきていました。「放射線はどこから飛んでくるの?」と聞くと「雨」、「原
発」という答えが返ってきました。さらに、「はかるくん」で身近な塩や湯の
花などを計測した後、「質問は?」と聞くと「菅総理や枝野長官は、直ちに影
響はないと会見でいっていますが、どれぐらいあびると癌になるのでしょうか
」、「放射性物質は主にどんな環境にあるのでしょうか」と大人顔負けの質問
でした。質問には同行いただいた東北大学名誉教授の馬場護先生にお答えてい
ただきました。「放射性物質は既に地面に沈着しており、マスクを外してもい
いですよ。」と言われても、誰も外さなかったことが意外でした。この子供た
ちが大人になった時のことを考えると、今、放射線・放射能について、正しい
基礎知識をしっかり身に着けてほしいと願わずにはいられません。
 子供たちの授業の後、保護者の質問会に移りましたが、時間が終了しても未
だ個人的に馬場先生に質問している方がいらっしゃるほどでした。質問内容は
、「夏場にエアコンを使っても大丈夫か」、「家庭菜園でつくったものを食べ
てもよいか」、「野菜の汚染は個人でも測定できるのか」、「井戸水で生活し
ているが大丈夫か」など、この地域での日々の暮らしに密着した質問が多かっ
たのが印象的でした。中には測定器を購入して毎日数値に一喜一憂している方
もいらっしゃいましたが、計り方、天候によっても数字が変わることをお話し
させていただきました。保護者からは、1回聞いただけでは理解できないこと
もあるので、何回か重ねて勉強会を開催してほしいとの要望がありました。
 さらに、この日は鹿島小学校で間借り授業をしている4つの小学校の校長先
生との話合いも行いました。中でも、警戒区域となっている小高区の校長先生
は、「393名いた児童が各地に散らばって避難しており、現在はわずか10分の
1の39名になってしまった。せめて転校先の学校に書類を送ってやりたいと思
っても、学校が20km圏内なので取りにも行けない。」と辛い心境を語られまし
た。また、それぞれの校長先生からも子供たちの教育環境を心配するご意見を
いただきました。「日本の国民に浜通りのことを『そういえばそんな地域があ
ったよね』と言われることがないように、子供たちの安全を前提に、戻れるん
だよ、と確かな言葉を言ってほしい」、「教育は地域があってこそ。間借りの
ところでの授業は、本物の教育ではない。今後は心の教育も重要となる」、「
避難のために児童数が少なくなった学校は、教員が異動させられている。わざ
わざカウンセラーを派遣するより、子供たちや保護者の心の安定のためにも、
今までの先生を異動させないでほしい」などと伺い、重く受け止めました。同
席していたPTA会長からは、「家庭でも線量計で測っている方が増えているが
、多くの人は放射線について知らないことからくる不安が多い。正しい情報が
知りたい。また、情報はどこでもらえるのかをみんなにわかりやすく伝えてほ
しい」と言われ、ますます学校単位で専門家による放射線の学習の場を設ける
必要性を痛感しました。
 早速、保護者の放射線勉強会を企画しようと思っているところに、朗報があ
りました。独立行政法人日本原子力研究開発機構が福島事務所などを設置し、
発電所サイト内支援を始め、環境修復に関する支援や実証などと共に、地域と
のコミュニケーション活動も実施すると伺ったのです。福島県の教育委員会を
通じて、県内の幼稚園、小・中・高校に実施要領を配布して、各学校からの申
し込みを受けるとのこと。これで、福島県内の保護者の方々のご心配に専門家
が答える仕組みができたとホッとしました。あとは、この仕組みをいかに地域
の方たちの要望に合うようにするかが大切です。各学校からの申し込みを待っ
ているだけではなく、まずは学校や地域の方たちが、今、何が不安なのか、何
を知りたいのか、どういう形式で開催すれば参加しやすいのかなど、積極的に
把握するところから始めていただきたいと思います。この仕組みが真に地域の
方々の心に寄り添うものになることを期待しています。
                                 以上

●次号は大庭委員からのひとことの予定です!

━・・・━━ 定例会議情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━
●6月28日(火)第23回定例会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはホー
ムページに掲載される議事録をご覧下さい。

【議題1】東京電力福島第一原子力発電所事故によるプラント北西地域の線量
上昇プロセスの解析(独立行政法人 日本原子力研究開発機構 原子力基礎工
学研究部門 副部門長 茅野政道氏)
<主なやりとり等>
 緊急時環境線量情報予測システム世界版(WSPEEDI)を用いた、福島第一原
子力発電所の北西地域の線量上昇のプロセス解析結果について説明がありまし
た。特に、大量の放射性物質の放出があったと推定される3月15日から16日に
かけてのシミュレーションの結果、空間線量率分布パターン及び時間変化は、
実測の地上及び航空機モニタリングと概ね一致したことなどが述べられました
。
 委員からは、WSPEEDIは緊急避難時に活用できるか、今後の防災計画を見直
す上で参考となり得るものはあるかなどの質問がありました。

【議題2】放射線医学総合研究所の東京電力福島第一原子力発電所事故への取
組について(独立行政法人 放射線医学総合研究所 理事 明石真言氏)
<主なやりとり等>
 放射線医学総合研究所が福島第一原子力発電所事故に対して実施した取組に
ついて説明がありました。具体的には、総理官邸や原子力安全委員会などへの
専門家派遣、被ばく医療患者の受け入れ、スクリーニング、電話相談、英語で
の情報発信などを実施しています。更に今回の活動を踏まえた今後の取組など
について説明がありました。
 委員からは、今後の取組を進める上での課題や、国際社会への情報発信にお
ける反省点などの質問がありました。

【議題3】鈴木原子力委員会委員長代理の海外出張について
<主なやりとり等>
 鈴木委員長代理より、7月1日から6日にかけて、ドイツ、イギリスへ出張
し、ベルリンで開催される核兵器廃絶を訴える科学者の会議である第59回パグ
ウォッシュ会議に出席し、福島第一原子力発電所の事故に関する基調講演を行
うとともに、ロンドンで開催されるイギリス議会科学技術委員会公聴会に出席
し、原子力の研究開発に関する意見を述べる予定であるとの説明がありました
。

【議題4】アジア原子力協力フォーラム(FNCA)「原子力発電のための基盤整
備に向けた取組に関する検討パネル」第3回会合の開催について
<主なやりとり等>
 内閣府より、7月5日、6日にインドネシアで開催される第3回パネル会合
について説明がありました。
 会合では、アジア地域の原子力技術の平和で安全な利用を進めるための基盤
整備に資するため、アジアにおける原子力安全の強化方法、人材育成などにつ
いて参加各国で情報交換を行う予定です。
 また、福島第一原子力発電所事故により中止となったコーディネータ会合の
議題のフォローアップを行うとともに、事故情報とその知見の共有を行う予定
です。更に、昨年より議論が希望されていた地震・津波に対する安全対策につ
いて、日中韓の現状報告と今後のあり方などについて参加国間で情報交換を行
う予定です。

●7月5日(火)第24回定例会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはホー
ムページに掲載される議事録をご覧下さい。

【議題1】核物質防護規制に関する実施状況の報告について(原子力安全・保
安院、文部科学省、国土交通省)
<主なやりとり等>
 平成22年度の核物質防護規制に関する重点検査項目の説明がありました。ま
た、核物質防護規制に関する実施状況を検査または確認した結果、いずれも問
題となるような事項は認められなかったとの説明がありました。
 委員からは、重点検査項目の決定基準や、重点検査項目以外についての検査
方法などの質問がありました。

【議題2】今後の原子力政策に関する有識者ヒアリング〜福島第一原子力発電
所事故による諸外国の原子力開発政策への影響〜(財団法人日本エネルギー経
済研究所 原子力グループマネージャー 村上朋子氏)
<主なやりとり等>
 ドイツ、イタリア、スウェーデンを中心に諸外国の原子力開発政策の現状と
その背景などについて説明がありました。
 委員からは、ドイツにおいて再生可能エネルギーの比率を上昇させた場合の
国民負担の増加の見通しや、再生可能エネルギーの比率上昇による供給安定性
の影響についての議論の状況などの質問がありました。

【議題3】今後の原子力政策に関する有識者ヒアリング〜東日本大震災におけ
る科学者の役割〜(独立行政法人 科学技術振興機構 研究開発戦略センター
 センター長 吉川弘之氏)
<主なやりとり等>
 福島第一原子力発電所事故のような危機において、科学者が社会に対し十分
な役割を果たしていくためには、必要な情報が科学者に直接流れる仕組みが必
要であること、また、科学者が連携して対応する必要があることなどについて
説明がありました。
 委員からは、科学者が必要とする情報とはどのような情報なのかなどの質問
がありました。また、科学者が連携して対応するためには、専門用語を極力排
した共通言語でコミュニケーションを図ることが重要などの意見がありました
。

※資料等は以下のURLでご覧いただけます。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/index.htm

●次回定例会議は7月12日(火)に開催します。議題は以下のとおりです。
・今後の原子力政策に関する有識者ヒアリング〜原子力発電の経済性について
 〜(京都大学大学院教授植田和弘氏)
・IAEA閣僚会議の結果報告(内閣府参与 広瀬研吉氏)
・アジア原子力協力フォーラム(FNCA)「原子力発電のための基盤整備に向
 けた取組に関する検討パネル」第3回会合の開催結果について
・尾本原子力委員会委員の海外出張報告について
・その他

●定例会議を傍聴にいらっしゃいませんか。定例会議は通常毎週火曜午前、霞
ヶ関の合同庁舎4号館で開催しており、どなたでも傍聴できます。開催案内や
配布資料はすべて原子力委員会ホームページでご覧いただけます。

━・・・━━ 部会情報等 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━

●原子力委員会には、調査審議組織として専門部会や懇談会等が設置されてい
ます。これらの部会や懇談会等は原則として一般に公開しており、どなたでも
傍聴することができます。開催案内や配布資料はすべて原子力委員会ホームペ
ージでご覧いただけます。

●6月30日(木)に第21回原子力防護専門部会を開催しました。
詳しくはホームページに掲載される議事録をご覧下さい。
<主なやりとり等>
 事務局より、核セキュリティに係る国際動向、核セキュリティに関する我が
国の基本的考え方に盛り込むべき要素について説明があり、その内容について
、議論が行われました。
 専門委員からは、セキュリティとセーフガードの棲み分け方や、内部脅威対
策が重要などの意見がありました。
 事務局より、基本的考え方の取りまとめ及び核セキュリティの実務を踏まえ
た技術的・専門的議論のための技術検討ワーキンググループの設置について説
明があり、部会において了承されました。

+-+-+-+-+-+-+ 事務局だより +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
霞が関案内

 みなさんは霞が関を歩かれた経験はありますか?ここでは霞ヶ関官庁街、中
でもメインストリートといえる、国道1号線の桜田門交差点から虎ノ門交差点
までをご紹介したいと思います。
 桜田門交差点で、皇居の桜田門を背に右を仰げば警察ドラマでお馴染みの警
視庁、左を見れば旧法務省の美しい赤れんが棟が目に入ります。1895年完成で
すから、すでに100年以上の月日が流れていることになります。
 桜田門から虎ノ門方向へ進むと、国会通りと交差します。やや脱線しますが
、国会通りには、外国の要人が訪日した際、日章旗とともにその国の国旗が掲
げられます。国旗マニアにはたまらないスポットと言えるでしょう。
 話を戻します。この交差点は霞が関官庁街一のビュースポットです。桜田門
を背に右手に伸びる潮見坂を見上げれば、1936年完成の国会議事堂をわずかな
がら見ることができ、左手に目を転じれば1922年完成の日比谷公会堂を眺める
ことができます。それに加えて圧巻なのは、右前方に並ぶ財務省、文部科学省
(旧庁舎)の高さが揃っていることです。完成した年はそれぞれ1943年と1933
年(2007年に改修)で、その間10年の開きがあります。財務省を建設する際、
10年前に建てられた文部科学省(旧庁舎)の高さを意識したとすれば、都市景
観の向上が論じられる現在からすると、先見の明があったといえるのではない
でしょうか。
 このように、地味ながらいろいろな発見がある霞が関を、一度散策されてみ
てはいかがでしょうか。
(藤野)

●次号配信は、平成23年7月22日(金)午後の予定です。

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発行者:内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局)
○ご意見、ご感想、ご質問などはこちらへ 
https://form.cao.go.jp/aec/opinion-0017.html
○配信希望、アドレス変更、配信停止などはこちらへ
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/melmaga/index.htm
○原子力委員会ホームページ  http://www.aec.go.jp/
○このメールアドレスは発信専用のため、ご返信いただけません。
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