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第78号 原子力委員会メールマガジン 3.11以後の毎日




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    @mieru(あっとみえる) 原子力委員会メールマガジン
           2011年6月10日号
   ☆★☆ めざせ! 信頼のプロフェッショナル!! ☆★☆
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┏ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┣ 近藤委員長からひとこと 3.11以後の毎日
┣ 定例会議情報 今後の原子力政策に関する有識者ヒアリング
┃                第2回国際原子力エネルギー協力フレームワーク(IFN
┃         EC)運営グループ会合の結果について
┃        鈴木原子力委員会委員長代理の海外出張について
┃        尾本原子力委員会委員の海外出張報告について 等
┣ 部会情報等  
┣ 事務局だより 「なぜ」を10回くりかえす
┃          
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

●メールマガジンや、原子力委員会の活動に関するご意見・ご感想等を、
https://form.cao.go.jp/aec/opinion-0017.htmlまで、ぜひお寄せください。

━・・・━ 委員からひとこと ━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━
3.11以後の毎日
                              近藤 駿介

 3月11日の大地震とこれに続く津波の来襲を受けた東京電力(株)福島第一
原子力発電所で大きな事故が発生してから3か月が経過しようとしています。
この事故は、発電所周辺に住んでおられる皆様をはじめとする福島県の多くの
皆様に緊急に避難をお願いし、さらに避難先で不便かつ不安な生活をお願いし
、また、広範囲の地域の人々に放射性物質による汚染の不安を与えました。し
かも、それが今日に至ってもなお解消できず、今後も当分の間、皆様に多大の
ご苦労をおかけし続けることになると予想されます。将来のエネルギー資源を
確保し、国民生活の福祉の向上に寄与すること等を目指す我が国の原子力の研
究、開発及び利用に関する事項等について企画、審議、決定することを所掌す
る原子力委員会の委員長として、このことに反するこのような事態の発生を極
めて深刻に受け止め、大変なご迷惑をおかけしている皆様に心からお詫び申し
上げます。
 私は、事故の発生以来、爆発その他の度重なる衝撃的出来事の発生を見て、
皆様には大変なご苦労を強いることになることを認識し、皆様の不安・不便の
軽減に最大限の努力を行うよう関係方面にお願いしつつも、敷地内における対
策がこれ以上の状況の悪化を防止することに抜かりがあってはいけないと、こ
のことに内外の知恵を総動員することにほとんどの時間を費やすことにしてき
ました。
 同時に、国内においては現在も多くの原子力発電所が存在し、いくつかは建
設中であり、その周辺に多くの人々が生活しておられるのですから、原子力発
電所の所有者に対し、安全確保の第一義的責任を有する者の当然の責務として
、原子力発電所に関係してこうした事態の発生する可能性が十分低くなってい
ることを確かめ、その内容を皆様に説明し、ご理解を頂くことに取り組むこと
を委員会の見解等を通じてお願いしてきました。
 また、原子力発電所が運転されている世界の各地域にあっても、そこに住む
人々が身近なところで同じ事態が発生するのではと心配するでしょう。そこで
、東京電力福島第一で何が起きたのかをなるべく早く公表し、それに基づき、
同じようなことが自分の発電所で起きる可能性を各自が検討できるようにする
義務が我が国にはあると考えました。このため、今月20日から予定されている
国際原子力機関主催の原子力安全に関する閣僚級会合の前には必ずこのことを
記した報告書を国際社会に公表するよう各方面にお願いしてきました。
 同時に、このような事態の発生をなぜ許してしまったのかについて、委員長
を拝命する以前にいろいろな形でお手伝いしてきた、確率論的安全評価技術の
普及、シビアアクシデント対策の導入、TMI事故を踏まえた原子力防災指針の
策定、JCO事故を踏まえた原子力防災指針の大改訂とオフサイトセンターの設
置、安全目標の策定、安全確保に係る取組の品質保証活動の規定化、耐震安全
設計審査指針改定等の取組を振り返り、どこで何をどう間違えたのかと自問自
答してきました。
 報告書については、最近に至り、事態の推移とそれから学ぶべき教訓を取り
まとめたものとして原子力災害対策本部から公表されました。これを一読して
、ここに記載された教訓を我が国が今後の取組にいかに俊敏に反映していくか
について内外から注目されることになると感じたところです。
 原子力委員各位が最も大切と考えているのが、被災住民の皆様の安全・安心
の確保のための取組です。この取組は国と自治体の協力により進められていま
すので、委員会としては、放射線安全に関して知見を有する原子力関係機関が
この取組に全面的に協力するようお願いしてきています。当面の課題は、放射
性物質による環境汚染の程度・様態を把握し、環境放射線を日常生活に差し支
えない水準に低下させる取組に関して、多方面の知恵を動員して最適な方法を
見出し、これを実施するために必要なルールを定めることです。これについて
はすでに関係者により取り組みが開始されていると理解しています。
 次には、これを多様な状況と要望を踏まえて広い地域において実施し、回収
した放射性物質で汚染されたものを適切に管理する体系的取組を、住民の皆様
のご理解を得て共同して推進することになります。そこで、これを着実に推進
する仕組みを遅滞なく整備するようお願いしなくてはと考えているところです
。
 敷地内の取組は放射線レベルが高い環境ゆえに作業の進捗が思うに任せない
ようですが、事態の悪化を防止するとの固い決意のもと進められているものと
理解しています。特に、状況の安定化に重要な水処理に係る措置の第一段階の
取組が来週には開始されると理解しています。これを踏まえて、さらに全炉を
安全な停止状態に至らしめることに全力で取り組んでいただくことが重要です
。私どもとしては、その先において使用済燃料を敷地から運び出す取り組みを
、そのための環境を整備しつつ進めることを含め、いつごろから開始できるか
を年単位でいいから見定めることが大切と考え、これを明らかにすることに早
急に取り組むようお願いしたところです。

 私どもは、被災住民の皆様の健康管理にはじまり、環境回復、そして復興の
取組、燃料の取り出しを含む廃炉措置の取組等の東電福島原子力発電所の敷地
内外での取組は長期にわたって我が国の原子力政策の中心課題でありつづける
と考えています。並行して、総理がフランスのドービルにおいて開催されたG
8サミットで約束した、我が国の原子力活動を最高の安全水準を達成するもの
につくり変えていくための取組を、原子力発電所に始まり、これの燃料サイク
ルのフロントエンド及びバックエンドの活動に至るあらゆる活動において推進
することも喫緊の政策課題と考えています。安全規制組織の改編が言われてい
るところですが、このために何を直していくかが最も大事ですから、改編の前
であっても、先に言及した報告書にある教訓を血肉化する取組を行っていただ
くことを強力に働きかけていきたいと考えています。以上、とりあえず、近況
の報告まで。

●次号は鈴木委員長代理からのひとことの予定です!

━・・・━━ 定例会議情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━
●5月31日(火)第17回定例会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはホー
ムページに掲載される議事録をご覧下さい。

・今後の原子力政策に関する有識者ヒアリング〜“3つの25”は達成可能だ〜
(特定非営利活動法人気候ネットワーク代表 浅岡美恵氏)
<主なやりとり等>
 特定非営利活動法人気候ネットワーク代表の浅岡美恵氏より、地球温暖化対
策を進めるため方策についての説明がありました。説明では、2020年に、エネ
ルギー消費を1990年比で25%削減、温室効果ガス排出量を1990年比で25%削減
、発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合25%という“3つの25”は、
原発に頼らなくても達成可能であると述べられました。
 委員より、再生可能エネルギーの割合を25%とした場合に再生可能エネルギ
ーの出力変動などの技術的制約を考慮しているか、省エネによる経済への影響
を考慮しているかなどの質問がありました。

・今後の原子力政策に関する有識者ヒアリング〜既存原発止まれば、影響は10
年単位に〜(日本経済研究センター理事長 岩田一政氏)
<主なやりとり等>
 日本経済研究センター理事長の岩田一政氏より、既存の原子力発電所が停止
した場合の経済への影響等について説明がありました。説明では、既存の原子
力発電所が停止した場合、電力供給不足は今年の夏よりも来年の夏の方がより
深刻となると試算されることやスリーマイル事故やチェルノブイリ事故を参考
に仮定を置いた試算では福島第一原子力発電所の事故処理費は5.7〜20兆円で
あると述べられました。
 委員より、福島の事故処理費に関して土壌修復した場合の試算はあるか、産
業構造を省エネ型にすることで中期的にどの程度経済に影響するかなどの質問
がありました。

・第2回国際原子力エネルギー協力フレームワーク(IFNEC)運営グルー
プ会合の結果について
<主なやりとり等>
 内閣府より、5月18日、19日に韓国で開催された第2回国際原子力エネルギ
ー協力フレームワーク(The International Framework for Nuclear Energy  
Cooperation:IFNEC)の運営グループ会合(局長級)の結果について報
告がありました。
 会合では、冒頭、日本から福島第一原子力発電所事故の現状を報告し、その
後、原子力エネルギー事業のファイナンスなどが議論されました。

・鈴木原子力委員会委員長代理の海外出張について
<主なやりとり等>
 鈴木委員長代理より、6月9日から10日にシカゴへ、6月13日から16日にソ
ウルへ出張することについて説明がありました。
 シカゴでは、国際ワークショップ「リーダーシップと原子力エネルギーの将
来」に参加し、我が国の原子力政策ならびに福島第一原子力発電所の事故に関
する報告等を行う予定です。
 また、ソウルでは、国際会議「核・原子力の将来」において福島第一原子力
発電所の事故に関するパネルディスカッション、核・原子力問題に関する日米
韓3者会談に出席する予定です。

●6月2日(木)第18回臨時会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはホー
ムページに掲載される議事録をご覧下さい。

・今後の原子力政策に関する有識者ヒアリング〜2030年までの電力需給シナリ
オ〜(京都大学エネルギー科学研究科教授 石原慶一氏)
<主なやりとり等>
 京都大学エネルギー科学研究科教授の石原慶一氏より、2030年までの電力需
給シナリオなどについて説明がありました。説明では、温室効果ガスの削減目
標を維持しつつ、安定した電源システムを構築するためには、再生可能エネル
ギーを最大限導入しても、原子力発電を全てなくすことは困難であると述べら
れました。
 委員より、各シナリオのコストは試算しているか、節電による経済への影響
 はどの程度かなどの質問がありました。

●6月7日(火)第19回定例会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはホー
ムページに掲載される議事録をご覧下さい。

・今後の原子力政策に関する有識者ヒアリング〜気候変動に対する日本のエネ
ルギーシステムシナリオ〜(電力中央研究所社会経済研究所主任研究員 今中
健雄氏)
<主なやりとり等>
 電力中央研究所社会経済研究所主任研究員の今中健雄氏より、気候変動に対
する日本のエネルギーシステムシナリオについて説明がありました。説明では
、原子力や再生可能エネルギーの割合等を変えて設定した「Iラブメガテク」
「VIVAロハス」「BEST!ミックス」の3つのシナリオにおける2050年
の将来像と、シナリオから得られる示唆について述べられました。
 委員より、福島第一原子力発電所の事故を受け、シナリオに影響することは
何か、再生可能エネルギーを最大限活用する「VIVAロハス」シナリオでエ
ネルギーの安定供給は可能かなどの質問がありました。

・今後の原子力政策に関する有識者ヒアリング〜原発は電力自由化(発送電分
離)の下で維持できるか〜(大阪大学招聘教授・学習院大学客員研究員 八田
達夫氏)
<主なやりとり等>
 大阪大学招聘教授・学習院大学客員研究員の八田達夫氏より、発送電分離を
した場合の原子力発電所の継続可能性について説明がありました。説明では、
原子力発電所事故の賠償費用の政府負担最小化のため、発送電の分離や電力自
由化などの提案が述べられました。
 委員より、発送電を分離した場合必要なインフラへの設備投資が滞る懸念は
ないか、災害時の対応は問題ないか、エネルギーセキュリティをどのようにコ
ストに反映させるのかなどの質問がありました。

・尾本原子力委員会委員の海外出張報告について
<主なやりとり等>
 尾本委員より、5月28日から6月2日にかけてアラブ首長国連邦へ出張した
結果について報告がありました。委員は、ドバイで開催された原子力発電に関
する国際会議(Nuclear Power World MENA 2011)に出席し、日本において原
子力発電が進められた背景および福島第一原子力発電所の事故に関する説明等
を行いました。また、アブダビにおいて、政府関係者等と事故に関する意見交
換を行いました。

●6月9日(木)第20回臨時会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはホー
ムページに掲載される議事録をご覧下さい。

・今後の原子力政策に関する有識者ヒアリング〜福島原子力発電所事故後のエ
ネルギー政策について〜(地球環境産業技術研究機構研究所長 山地憲治氏)
<主なやりとり等>
 地球環境産業技術研究機構研究所長の山地憲治氏より、福島原子力発電所事
故後のエネルギー政策について説明がありました。説明では、再生可能エネル
ギーの代替可能性を設備容量などの数値に基づき分析した上で、再生可能エネ
ルギーを最大限導入しても原子力を代替することは難しく、原子力という選択
肢を維持することが現実的ではないかと述べられました。
 委員より、将来の一次エネルギー需要や電力需要の見通しや、蓄電池や地熱
 の導入拡大の実現可能性などの質問がありました。


※資料等は以下のURLでご覧いただけます。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/index.htm

●次回定例会議は6月14日(火)に開催します。議題は以下のとおりです。
・今後の原子力政策に関する有識者ヒアリング〜福島の復旧のための取組〜(
会津大学長 角山茂章氏)
・今後の原子力政策に関する有識者ヒアリング〜福島事故からの教訓と「原子
力・社会」問題〜(東北大学名誉教授 北村正晴氏)
・今後の原子力政策に関する有識者ヒアリング〜「原子力」に今求められてい
るもの〜(大阪大学コミュニケーションデザインセンター副センター長・教授
 小林傳司氏)
・その他

●定例会議を傍聴にいらっしゃいませんか。定例会議は通常毎週火曜午前、霞
ヶ関の合同庁舎4号館で開催しており、どなたでも傍聴できます。開催案内や
配布資料はすべて原子力委員会ホームページでご覧いただけます。

━・・・━━ 部会情報等 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━

●原子力委員会には調査審議組織として専門部会や懇談会等が設置されていま
す。これらの部会や懇談会等は原則として公開しており、どなたでも傍聴でき
ます。開催案内や配布資料はすべて原子力委員会ホームページでご覧いただけ
ます。

※現在、開催が予定されている部会はありません。

+-+-+-+-+-+-+ 事務局だより +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
「なぜ」を10回くりかえす

 建設現場では「ご安全に」、登山時にすれ違う人たちは互いに「こんにちは
」と声掛けし、挨拶で互いの健康状態を確認する。寮近くの建設中のマンショ
ンからは、朝一のラジオ体操と「ご安全に」の掛け声がきこえてくる。
 私は原子力安全に携わりたいと進学し数年前の大学院での研究テーマは、原
子炉の炉心が溶融し原子炉圧力容器に蓄積した場合の圧力容器の外面冷却の有
効性を検討するというものだった。原子炉圧力容器はステンレス製の丸底容器
、溶融デブリは水、崩壊熱はヒーター、冷却材は液体窒素で模擬した。崩壊熱
は外面冷却により除去され、デブリは固化してクラストを形成し、外面冷却が
できさえすれば圧力容器の健全性を確保できる見通しを得た。社会人になって
からも、“安全”をキーワードに、事故解析や水素処理装置の性能評価等に携
わるなどした。
 しかし、私は、これらのどの場面においても、チェルノブイリやTMIの事故
以来、原子力安全分野は研究し尽くされている、事故は起こらないし起こりえ
ないと心の片隅で思っていたかもしれない。福島原子力発電所の事故が起こり
、今の自分に何ができるか考えたが、原子力に関する中途半端な知識や技術だ
けでは何も役に立たないことを痛感した。「なぜ」も10回繰り返すと本質にた
どりつくという。なぜ想定しなかったのか。人は想像以上のことには思いが及
びにくい。何を守りたかったのか、なぜ守れなかったのか。今の私にも何かで
きることがあるとすれば、既存の考えや自身で勝手に頭の中に定めた枠にとら
われず、少しでも思考の枠を広げて想像力を豊かにすることだ。(西村)

●次号配信は、平成23年6月24日(金)午後の予定です。

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発行者:内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局)
○ご意見、ご感想、ご質問などはこちらへ 
https://form.cao.go.jp/aec/opinion-0017.html
○配信希望、アドレス変更、配信停止などはこちらへ
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/melmaga/index.htm
○原子力委員会ホームページ  http://www.aec.go.jp/
○このメールアドレスは発信専用のため、ご返信いただけません。
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