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第179号 原子力事故の精神的・社会的影響

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    @mieru(あっとみえる) 原子力委員会メールマガジン
             2015年7月24日号
   ☆★☆ めざせ! 信頼のプロフェッショナル!! ☆★☆
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┏ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┣ 委員からひとこと 原子力事故の精神的・社会的影響
┣ 会議情報 
┃  (7月21日)
┃   ・我が国における2014年の保障措置活動の実施結果及び国際原子
┃    力機関(IAEA)による「2014年版保障措置声明」の公表に
┃    ついて(原子力規制庁)
┃   ・国立研究開発法人日本原子力研究開発機構原子力科学研究所の原子
┃    炉設置変更許可(FCA(高速炉臨界実験装置)施設の変更)につ
┃    いて(答申)
┃   ・我が国のプルトニウム管理状況について
┃   ・原子力利用の「基本的考え方」について
┃    (一般社団法人 日本原子力産業協会 特任フェロー 服部拓也氏)
┣ 事務局だより 就任挨拶
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━・・・━ 委員からひとこと ━・・・━━・・・━━・・・━━・・・

原子力事故の精神的・社会的影響

                               岡 芳明

 東電福島事故では、「住民の放射線被ばくによる認識できるリスクはない」
と、原子放射線影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)は2013年の報告書
で述べている。しかし、避難に伴い多数の方々が多大な精神的・社会的影響を
受けている。大きい原子力事故では、これを如何に低減できるかが問われてい
る。

 チェルノブイリ事故でも、ロシア、ウクライナ、ベラルーシ3国と、国際機
関合同のチェルノブイリフォーラムの報告書が「事故に伴う精神的健康影響が
大きかった」と、述べている(1)。原子力事故の精神的・社会的影響の低減
は、最大の課題である。

 大きい原子力事故では、地域住民の放射線被ばくによるリスクを低減するこ
とがまず必要である。このために、一時的な避難という選択肢を排除すること
はできないが、その範囲と期間を適切に定め、避難によって生じる別の健康リ
スクと精神的・社会的な影響を防止・低減するための方策を同時に実行する必
要がある。

 科学技術を利用する場合にリスクをゼロにすることはできない。「放射線被
ばくについてはゼロリスクを求めることが、他の健康影響を生じている。」と
の意見がある。「放射線リスクのみが語られることが、他の健康リスクや精神
的・社会的影響を生じている」との専門家の意見もある。

 低線量放射線被ばくのリスクは、さまざまな発がんリスクの一部である。人
間はさまざまな発がんリスクにさらされて生きており、低いリスクレベルでは、
それぞれの発がんリスクを明確に決めることはできず、リスクには誤差・不確
定性がある。低線量被ばくのリスクはその誤差・不確定性の範囲以内にあると
の理解をもとめるのが良いのではないか。様々な生活習慣による発がんリスク
の研究結果は国立がん研究センターのHP(「日本人のためのがん予防法」)で見
つけることができる。

 放射線被ばくを懸念する余り、精神的に大きいストレスを受けたり、被ばく
したといわれて差別をうけたりすることもある。前述のチェルノブイリフォー
ラムの報告書には、「親の態度と、過剰なケアが、子供にその懸念を移してい
るようだ」との記述がある。

 世の中にある様々な発がんリスクには低暴露レベルでは不確定性が存在する。
特定のリスクの低減を低暴露レベルで必要以上に図ることは他のリスク低減と
の関連で考えると合理的ではない。

 日本人のみが特に放射線被ばくに弱いということはない。科学技術を利用す
る場合はその時点の国内外の最善の知見を用いて判断する必要がある。数値の
大小はわかりやすいので、基準値を小さくしたら合意が得られやすいと考える
のかもしれないが、科学的知見は自然の探求の結果なので基本的に中立である。
必要以上に低い基準は合理的でないだけではなく、国際的に知見を共有し、他
国の経験を利用することを阻害する。なお不確実性を低減し、そのリスクを理
解するために低線量放射線被ばくリスク研究や様々な発がんリスクの相対化の
検討を進めることも必要である。最善の知見は改善され続けるのだから。

 被災者の心身のケアはリスクコミュニケーションというより、カウンセリン
グである。医療や保健関係者、行政や損害対策の方々、地域コミュニティの
方々など関係者の努力に敬意を表したい。

 東電福島事故では、影響を受けた地域の住民の精神的・肉体的な健康保持を
大きい目標に、住民の意思をよく聞きつつ、以前よりよい自立的な生活環境を
実現するための様々な取り組みを、自発的、自主的な活動も尊重しつつ進める
ことが求められる。

 大きい原子力事故では住民の健康確保の視点からの対策や被ばく基準を考え
ることが、精神的社会的影響の軽減に役立つはずである。東電福島事故を大き
な教訓として、国際的にこの視点を共有する必要がある。避難を伴う大きい原
子力事故の場合に、他の健康リスクとの関係で除染や住民帰還にかかわる考え
方や線量基準を国際的に再検討することも必要ではないか。

 出典
(1)Chernobyl’s Legacy, 
 https://www.iaea.org/sites/default/files/chernobyl.pdf  p34-37


●次号は阿部委員からのひとことです!

━・・・━━ 会議情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━・
●原子力委員会の会議を傍聴にいらっしゃいませんか。会議は霞ヶ関周辺で開
催しており、どなたでも傍聴できます。開催案内や配布資料は、すべて原子力
委員会ウェブサイト(以下URL)で御覧いただけます。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/index.htm

●7月21日(火)の会議の概要は以下のとおりです。詳しくはウェブサイトに
掲載される議事録を御覧ください。
【議題1】我が国における2014年の保障措置活動の実施結果及び国際原子
力機関(IAEA)による「2014年版保障措置声明」の公表について
(原子力規制庁)
<主なやりとり等>
 原子力規制庁より、本年7月1日に原子力規制委員会で報告された、我が国
における2014年の保障措置活動の実施結果及び国際原子力機関(IAEA)
による「2014年版保障措置声明」の公表について説明がありました。委員
からは、核物質管理センターにおける人材、予算、守秘義務等についての質問
がありました。

【議題2】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構原子力科学研究所の原子
炉設置変更許可(FCA(高速炉臨界実験装置)施設の変更)について(答申)
<主なやりとり等>
 前回委員会で原子力規制委員会原子力規制庁より説明のあった、国立研究開
発法人日本原子力研究開発機構原子力科学研究所の原子炉設置変更許可(FC
A(高速炉臨界実験装置)施設の変更)について、事務局より、試験研究用等
原子炉が平和の目的以外に利用されるおそれがないものと認められるとする原
子力規制委員会の判断は妥当とする答申案の説明を行い、原子力委員会として、
案のとおり答申することとしました。

【議題3】我が国のプルトニウム管理状況について
<主なやりとり等>
 平成26年末時点での国内外において使用保管されている分離プルトニウム
管理状況について、事務局より説明を行いました。

【議題4】原子力利用の「基本的考え方」について(一般社団法人 日本原子力
産業協会 特任フェロー 服部拓也氏)
<主なやりとり等>
 原子力委員会で議論を進めている原子力利用の「基本的考え方」の策定に向
けて、一般社団法人 日本原子力産業協会 特任フェロー 服部拓也氏より御意
見を聴取しました。服部氏からは、信頼回復、国際展開、人材育成が重要であ
るとの説明がありました。委員からは、3E+3S、核セキュリティ等につい
ての意見がありました。

●次回の委員会開催については、以下の開催案内から御確認ください。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/topic/kaisai.htm

━・・・━ 事務局だより ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━

就任挨拶

 4月1日から政策企画調査官として事務局に採用されました。40有余年原子
炉メーカーに在籍し、定年退職し新たな人生をスタートしました。
 現在は、放射性廃棄物の最終処分、東電福島第一原発の廃炉関係などに従事
しておりますが、不慣れな職場環境ということもあってなかなか思うようにア
ウトプットが出せないのが悩みです。諸先輩方のご指導をいただきながら、よ
り多く貢献できるよう頑張ってまいりたいと思っております。ご指導、ご鞭撻
の程よろしくお願いいたします。

(長島)

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●次号配信は、平成27年8月7日(金)午後の予定です。

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発行者:内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局)
原子力委員会:岡 芳明委員長、阿部 信泰委員、中西 友子委員
○メルマガへの御意見・御感想はこちらへ(お寄せ頂いた御意見に対しては、
原則として回答致しませんが、今後の原子力委員会の業務の参考とさせていた
だきます。)
 https://form.cao.go.jp/aec/opinion-0017.html
○配信希望、アドレス変更、配信停止などはこちらへ
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/melmaga/index.htm
○原子力委員会ホームページ  http://www.aec.go.jp/
○このメールアドレスは発信専用のため、御返信いただけません。
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