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第147号 原子力委員会メールマガジン 人間性を忘れるな

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    @mieru(あっとみえる) 原子力委員会メールマガジン
             2014年3月28日号
   ☆★☆ めざせ! 信頼のプロフェッショナル!! ☆★☆
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┏ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┣ 委員からひとこと 人間性を忘れるな
┣ 会議情報 
┣ 事務局だより スーパーカミオカンデ
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━・・・━ 委員からひとこと ━・・・━━・・・━━・・・━━・・・

人間性を忘れるな

                             鈴木 達治郎

 4年前の2010年1月、就任して初めての原子力委員会定例会議で、私は
「研究者の心を忘れずに職務に取り組む」と述べました。これは「根拠ある合
理的な政策決定」を目指す、という意味であり、今でも「根拠ある政策
(evidence-based policy)」が重要であるとの思いには全く変わりはありま
せん。
 しかし、2011年3月11日の東日本大震災とそれに続く東京電力福島第
一原子力発電所の事故の体験、そしてその後の活動を通じて、私はそれだけで
は不十分であることを痛感しました。最も忘れてはいけないもの、それは「人
間性(humanity)」であり、政策立案にとっても人間性が不可欠であることを
学びました。
 特に、事故後に福島を訪れて避難を余儀なくされた市民の方々と直接お話を
させていただいた体験は、今でも忘れることはできません。放射線被曝のリス
クは、公表されているデータを見る限り、チェルノブイリ事故よりも少ないと
見られていますが、住民の方々のお話を伺って、そういった科学的・合理的な
説明では到底納得が得られないことを痛感させられました。住民の皆さんに
とって不条理な状況をもたらした事故やその遠因となる原子力政策に対する強
い憤り、怒り、健康や将来に対する不安、不便な生活や将来の見通しが立たな
いことからくるストレス、離れ離れになった家族への思い等を伺い、とても謝
罪や説明だけでは信頼してもらえない事実を重く実感いたしました。その時に
思い出した言葉が「人間性(humanity)を忘れるな」でした。
 その原点は、ちょうど60年前の1954年3月のビキニ水爆実験とそれに
よる第五福竜丸事件にまで遡ります。ビキニ水爆実験を聞いた英国在住の物理
学者ジョセフ・ロートブラット博士は、哲学者バートランド・ラッセルや物理
学者アルバート・アインシュタインなどと一緒に翌年の1955年に「ラッセ
ル・アインシュタイン宣言」を発表します。この宣言は、核兵器は非人道的な
結果をもたらす大量殺りく兵器であり、ひいては人類を滅ぼしかねない恐怖の
兵器であること、そのような大量殺りく兵器を開発させる原因である戦争をな
くさない限り、人類に平和は訪れないこと、等を科学者と哲学者が、学者の立
場のみならず、一人の人間として訴えた感動的な宣言でした。その中に、「人
間性を忘れるな。他の全てを忘れても(Remember Humanity, Forget the 
Rest)」という言葉が出てきます。その後、私はこの宣言がきっかけになって
発足したパグウォッシュ会議の活動に積極的に参加するようになりました。そ
してこの言葉の持つ本当の意味を今、東電福島第一事故から学んでいると思い
ます。
 東電福島第一事故がもたらした被害は、核兵器のもたらす被害に比べれば、
比較にならないほど小さいかもしれません。しかしながら、被害にあった方々、
汚染された大地や自然を見るたびに、原子力事故がもたらす「非人道性」につ
いても、忘れてはならないと思います。
 東電福島第一事故後の原子力政策は、未だに混迷を続けています。世界のエ
ネルギー環境情勢を合理的に考えれば、私は原子力発電が人類にとって重要な
選択肢の一つである、という結論に変化はないと思っています。しかしながら、
東電福島第一事故を踏まえ、政策決定をそのような合理性だけで進めていくこ
との限界も強く感じています。人間性を忘れることなく、「心のこもった、血
の通った政策決定」でなければ、国民の信頼を得ることはできません。
 政策を議論していく上で、合理性に加え人間性を忘れてはいけない。これが、
東電福島第一事故以降、原子力委員として学んだ最大の教訓でした。まもなく、
私は原子力委員を退任します。今後はこの教訓を忘れることなく、再び研究者
として、よりよき政策立案に貢献できるよう、そして核の被害が二度と訪れる
ことのないよう、微力ながら尽くしていく所存です。

━・・・━━ 会議情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━・
●原子力委員会の会議を傍聴にいらっしゃいませんか。会議は原則として霞ヶ
関にある合同庁舎4号館で開催しており、どなたでも傍聴できます。開催案内
や配布資料は、すべて原子力委員会ウェブサイトで御覧いただけます。

●前回のメールマガジンNo.146(平成26年3月14日号)配信後、原子力委員会
の会議開催はありませんでした。次回は3月31日(月)に会議を開催する予定で
す。詳しくは、以下の開催案内を御覧ください。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/topic/kaisai.htm

+-+-+-+-+-+-+ 事務局だより +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

スーパーカミオカンデ

 少し前のことですが、夏に岐阜県飛騨市神岡町のスーパーカミオカンデの見
学に出かけてきました。

 東京からバスで飛騨高山に行き、更に他のバスに乗り継いで、合計約7時間。
初日は宿に泊まって、明日の見学者集合に備えて早めに就寝しました。
 翌朝、集合場所に行くと、既に数十人が集まっています。受付を済ませて、
再びバスに乗り、暫くして神岡鉱山入り口に到着。夏の暑い日でしたが、地下
水の温度が一定のため、気温は年中一定で、坑道からは冷風が出てきていまし
た。スーパーカミオカンデは、地下1000mにあるそうですが、巨大な山体
の中のため、坑道はほぼ真横に伸びています。ここを、再び小さなバスで更に
数分進んで、研究施設群に到着しました。
 スーパーカミオカンデのある大空洞の広さに圧倒され、次にカムランドを回
る。その後、研究施設の学生さんの研究内容のプレゼンを聞き、質疑応答があ
りました。予備知識があったので、少し意地悪な質問をしてしまいましたが、
学生時代を思い出しながら、楽しく聞かせて頂きました。最後に、坑内の食堂
で昼食を食べた後、地上に上がって時計を見ると、4時間ほど経過していまし
た。

 ちなみにこの見学会、毎年夏に開催していて、今年は7月19日、20日を
予定しているそうです。「スーパーカミオカンデ 見学」などのキーワードで
検索するとすぐ見つかるので、興味のある方は応募してみてはいかがでしょう
か。
 研究施設の見学だけというのはちょっと・・・という方も、飛騨高山や白川
郷の観光、あるいは温泉などと組み合わせて地底探検をいかがでしょうか。

(宮本)

●次号配信は、平成26年4月11日(金)午後の予定です。

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発行者:内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局)
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