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第143号 原子力委員会メールマガジン 英国における政府主任科学顧問の評価

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    @mieru(あっとみえる) 原子力委員会メールマガジン
             2014年1月31日号
   ☆★☆ めざせ! 信頼のプロフェッショナル!! ☆★☆
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┏ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┣ 委員からひとこと 英国における政府主任科学顧問の評価
┣ 会議情報  (1月21日)
┃       ・原子力関係経費平成26年度予算政府案ヒアリング(外務
┃        省、文部科学省、経済産業省、原子力委員会)
┃       ・鈴木原子力委員会委員長代理の海外出張報告について
┃       (1月28日)
┃       ・環境汚染への対応に係る研究開発
┃       ・秋庭原子力委員会委員の海外出張報告について
┣ 事務局だより 無人のエスカレーター
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━・・・━ 委員からひとこと ━・・・━━・・・━━・・・━━・・・

英国における政府主任科学顧問の評価
                              近藤 駿介

 年末年始は自宅にいて、帰還困難地域の除染実証事業のデータを眺めたり、
東電福島炉の最近の写真やデータを見ながら、オフサイト及びオンサイトの今
後の重点課題を考えたり、原子力委員会の在り方の議論を傍聴していて参考に
すべきではと気になっていた英国の政府科学顧問制度の在り方についての議会
や学術団体の報告書に、もう一度目を通して過ごした。福島の復興に向けた政
府の取組については、最近の決定について先日の委員会会合で関係行政機関か
ら説明を聴き、考えていたところを述べさせていただいたので、ここでは科学
技術顧問に関する報告について述べる。
 目にしたものの一つに、東電福島炉の事故の際に存在感を知らしめた英国の
政府主席科学顧問のベディントン氏が退任し、オルポート氏が就任した昨年4
月にタイミングを合わせて発行された、サセックス大のウイルソン教授とケン
ブリッジ大のダブルデイ教授が、政府に対する科学助言の仕組みの将来につい
ての18人の識者の寄稿を纏めた報告がある
( http://www.csap.cam.ac.uk/media/uploads/files/1/fdsaw.pdf ) 。
これには、海外からの意見や、卓越した個人を顧問に任命する制度は時代遅れ
とする意見を含む多くの意見が含まれていて、考えさせられることが多かった。
冒頭には、編者が各寄稿を踏まえて主要論点を示し、新主任に対して提言を述
べている1文が付されているので、その論点を紹介しよう。
 編者が第1の論点とするのは、科学顧問の資質である。これについての伝統
的見解は、顧問は特定の科学的見解を述べる助言者というよりは科学的知見の
媒介者、仲裁者であるから、内外の科学界において尊敬されているのみならず、
そうした知見の翻訳、統合、合成能力を備えているべしとする。前出のベ
ディントン氏は寄稿のなかで、顧問の仕事は一人の専門的助言者というより知
識の導管だといっているが、趣旨は同じであろう。他方で、個人にそんなスー
パーヒーローを期待する時代ではないとした上で、選任する以上は、政治世界
での意思決定につきあっていくことを楽しめる人物を選ばないといけないとい
う、醒めた意見を述べた寄稿もあった。
 第2の論点は、出現している専門家のアドバイスの生態系とそのダイナミズ
ムに注目するべきというものである。エビデンスに基づく行政が急速に広まっ
てきて、今や科学技術に基づかない行政はない。多くの政策が専門家の提出す
るエビデンスを踏まえて設計されており、それに加えて、オープンな政府を目
指してその原案に対して専門家を含む公衆のコメントを求めている。その結果
は、様々な段階で各種の専門家が参加する政策決定運営システムの存在であり、
専門家のアドバイスがつくる豊かな生態系が生じている。よって、そこでの政
府科学顧問の役割を理解することこそが肝心ではないかという。他方で、確か
にBSE事件以来、オープンな政策決定が流行になっているが、それが中央集権
的アプローチの限界を認識したオープンドアシステムに発展するのか、透明だ
が閉じている窓が存在していて、政策策定過程はみえるが、それに対するアプ
ローチは制御されるシステムに落ち着くのかという疑問も提出されていた。が、
いまや急速なソーシャルメディアの普及が利害関係者との相互作用の在り方を
変えるはずであり、それがひどいことになるかどうかは我々が整合的な意見交
換、信頼の形成、学習、咀嚼の能力をどう整備していくかに掛かっているとい
う問題提起に出会い、これにこそ真剣に向き合わねばならないのではと思った。
 第3の論点は、科学助言の科学、つまり、どういう助言が役立つのかをもっ
と研究する必要があるというものである。この点では、助言が役立つかどうか
は、供給(される助言)のみならず(助言の)需要に掛かっているという顧問
経験者からの意見が核心をついていると思ったが、ネットワーク分析等でこの
点を明らかにしていく取組は有益とする意見も賛同できる。他方で、米国の
STS(科学技術研究)者ジャサノフ女史は、STSは非生産的な車の空回りみたいな
議論を持ち出すと批判されるが、車はまわす力が働くからまわるのだとSTSを
擁護する前置きをして、科学助言の重要性に鑑みれば、科学助言をなす人に対
する批評家がシステムの健全性を維持するのに不可欠であり、それが民主主義
の原則だとしていた。いかにもSTSからの見立てである。
 第4の論点は、政府の科学技術顧問に社会科学の専門家がいた方がいいので
はないか、肥満対策、安全問題等、地球温暖化等の政策立案には社会科学的洞
察も必要かつ有用ではという議論である。これに対しては、主任哲学者が省庁
の論理や存在意義に深い疑問を呈するのはどうか、予測の時代からこそ歴史学
者に後知恵を汲み出してもらうことがあっていいのではないかとか、いろいろ
の提案があった。が、編者は、アドバイスを得たいのは政策決定者であるから
して、結局は、そのために諸学代表の意見を取り纏めることができる主任が必
要であること、そして、実はあまり語られないが、いまなお学問間には階層が
あるのだと議論を括っていた。
 最後に編者は、新主任科学顧問にいくつかの提言を行なっているが、その核
心は、『細い線の上を優雅に歩んだ』と形容される前任のベディングトン氏が
築いた各行政機関の主任科学顧問のネットワークを活用すること、危機に際し
て政府の対応をコーディネートし、公衆を大人として扱い、科学的に不確実な、
あるいは専門家に意見の相違がある領域の存在を認めつつ、リスク情報を伝え
る役割を果たす冷静さが求められる時が到来することを予定しておくこと、公
共サービスをより効果的で効率的にするためにエビデンスに基づく行政に科学
技術情報を活用する取組が本格的に展開されるよう力を尽くすべきこと等で
あった。
 原子力委員会に全てが当てはまるわけではないが、会務を設計するのに参考
になることが多くあるように思われたので、要点を紹介した次第である。

以上

●次号は鈴木委員長代理からのひとことです!

━・・・━━ 会議情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━・
●原子力委員会の会議を傍聴にいらっしゃいませんか。会議は原則として霞ヶ
関にある合同庁舎4号館で開催しており、どなたでも傍聴できます。開催案内
や配布資料は、すべて原子力委員会ウェブサイトで御覧いただけます。

●1月21日(火)の会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはウェブサイトに
掲載される議事録を御覧ください。
【議題1】原子力関係経費平成26年度予算政府案ヒアリング(外務省)
<主なやりとり等>
 外務省、文部科学省、経済産業省及び原子力委員会事務局より、原子力関係
経費平成26年度予算政府案の各担当部分について説明があり、委員からは、
予算の内訳、増減の理由等について質問がありました。

【議題2】鈴木原子力委員会委員長代理の海外出張報告について
<主なやりとり等>
 鈴木委員長代理より、1月12日〜15日のインドネシア・デンパサールへ
の出張で出席した国際ワークショップについて報告がありました。

●1月28日(火)の会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはウェブサイトに
掲載される議事録を御覧ください。
【議題1】環境汚染への対応に係る研究開発
<主なやりとり等>
 独立行政法人日本原子力研究開発機構 理事 森山氏、及び、同機構福島技
術本部 福島環境安全センター長代理 油井氏より、環境汚染への対応に係る
研究開発について説明があり、委員からは、海外の事故での経験の活用、住民
の方とのコミュニケーションの状況等についての質問がありました。

【議題2】秋庭原子力委員会委員の海外出張報告について
<主なやりとり等>
 秋庭委員より、1月12日〜16日のフランスへの出張について報告があり
ました。

※資料等は以下のURLで御覧いただけます。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/index.htm

●次回は2月4日(火)に会議を開催する予定です。詳しくは、以下の開催案内
を御覧ください。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/topic/kaisai.htm

+-+-+-+-+-+-+ 事務局だより +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

無人のエスカレーター

 まだ記憶に新しいと思いますが、東日本大震災の直後は空前の省エネ対応で、
一時期、公共機関をはじめとしてほとんどのエスカレーターは停止しておりま
した。しかし、お年寄りなどエスカレーターを必要とする方々もいる中で、
少々やり過ぎ感はありました。
 現時点では止めているエスカレーターのほうが珍しいくらいですが、今度は
「無人でも稼働しているエスカレーター」が気になります。
 比較的新しい施設などには導入されている「対人感知式」のエスカレーター
ですが、普及しているとは言い難いですね。15年ほど前に行ったドイツの地方
都市では、駅周辺の地下道など全てに「対人感知式」が導入されており、驚い
た記憶があります。
 調べたわけではありませんが、対人感知センサーシステムだけ後付けが難し
いのでしょうか。エスカレーターを丸ごと買い換えるとなると設備投資などに
影響が出ますので、なかなか普及が進まないのも仕方がないのか。
 バリアフリーと省エネと公共投資、並び立たせるのは難しいですね。

(栗原)

●次号配信は、平成26年2月14日(金)午後の予定です。

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発行者:内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局)
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