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第122号 原子力委員会メールマガジン
高速炉国際会議に出席して

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    @mieru(あっとみえる) 原子力委員会メールマガジン
             2013年3月15日号
   ☆★☆ めざせ! 信頼のプロフェッショナル!! ☆★☆
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┏ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┣ 委員からひとこと 高速炉国際会議に出席して
┣ 会議情報   平成25年度原子力関係予算ヒアリング
┃        第14回アジア原子力協力フォーラム(FNCA)コーディネー
┃        ター会合の開催結果について 等
┣ 事務局だより まだマシ
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━・・・━ 委員からひとこと ━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━

高速炉国際会議に出席して
                              近藤 駿介

 今月の4日から7日まで、パリで開催された「高速炉とその燃料サイクル:
安全な技術と持続可能なシナリオ」と題する国際原子力機関(IAEA)主催の国際
会議FR13に出席した。この会議は、2009年にIAEAが主催し、日本政府がスポン
サーとなって京都で開催された高速炉システムに関する国際会議FR09に続くも
ので、フランス政府(代替エネルギー及び原子力庁)がスポンサーとなり、フ
ランス原子力学会の協力を得て開催していた。登録参加者は34カ国から約700
人、口頭発表論文数が378件で、ポスタ発表論文数が187件と、FR09より規模の
大きなものであった。我が国からは日本原子力研究開発機構や大学の研究者が
多数出席し、講演していた。
 小生は、我が国の高速炉開発の考え方について説明することを求められたの
で、この機会を利用して、まず、2年前の3月に発生した東京電力(株)福島第一
原子力発電所の過酷事故で広大な地域が放射性物質に汚染された結果、いまな
お16万人の方が故郷を離れて将来に不安をいだきながら生活しておられること、
国としてはこれらの方々にご帰還頂けるように除染の取組を進めているが、そ
の際、誠に申し訳ないことに、作業に伴って発生する廃棄物の置き場所を、被
害を受けておられる皆様の土地に設置することをお願いせざるを得ず、ご理解
を頂くのに時間が掛かっていること、福島県では今も、農水産物の生産制限が
課されていることを報告し、これまで国際社会からいただいた暖かいご支援と
連帯の表明に感謝申し上げるとともに、安全が確保された同県産品の生産者や
福島県の観光業者が風評被害に苦しんでおられることは理不尽であり、その解
決に向け協力を賜りたいとした。
 ついで、我が国の高速炉の研究開発活動について、現在は、この分野の研究
者・技術者の多くにその知見を活かして除染活動や事故を起こした原子炉の廃
止に必要な基盤技術の開発に参加して頂いていること、この活動の今後の方針
については、政府の原子力政策の一部であるべきところ、現政権はこれを改め
て検討するとしたことから未定とした。その上で、我が国における今後の原子
力発電規模は事故以前の水準から低下することは間違いないので、従来のよう
に単独で高速炉の実用化を目指すのではなく、持続可能な原子力発電技術とし
てこれを開発していく諸国の取組、特にそうした技術に相応しい安全性の実現
や、高速炉の特徴を生かして原子力発電から発生する放射性廃棄物の体積や発
熱量の低減を目指す原子炉や核燃料サイクルの実現を目指す取組に、これまで
培ってきた知識ベースや研究施設を含む研究開発力、産業界の設計能力を磨き
つつ活用して貢献していくことが適切と考え、関係者にその方向で取組の在り
方を検討するようお願いしていることを述べた。
 現在、世界で稼働中の高速炉は、ロシアのBOR、BN-600、インドのFBTR、日
本のJOYO、MONJU、中国のCEFRに限られる。ただし、インドでは原型炉PBFR、
ロシアではBN-800の建設が間もなく完了すること、フランスでは原型炉ASTRID
の概念設計活動が第二段階に入ったこと、韓国、中国、インドで実証炉の設計
作業が進んでいること、ベルギーで加速器駆動の鉛ビスマス冷却炉の実験炉
MYRRHAの建設プロジェクトが承認されたこと、欧州の多国間協力でガス冷却高
速炉や鉛冷却炉、ロシアで鉛ビスマス冷却炉SVBR、鉛冷却炉BRESTの設計が進
んでいること、これらに関連しての基礎データの収集、安全概念、コンピュー
タシミュレーション技術、原子炉技術や燃料技術、核燃料サイクル技術に関す
る研究開発活動が着実に進展していることから、会議における研究発表と議論
は活発であった。
 その中で私が注目したのは、第一には安全性に関する進展である。小生は、
2009年に日本の高速炉研究開発グループに対して、21世紀中葉の実用化を目指
す原子炉は固有の安全特性に優れているべき、さらに、国際社会でこの頃なさ
れ始めた新設炉は設計基準事故を超える事故の発生を防止する工夫やその影響
を緩和する工夫を備えるべきという提案は、高速炉に対しては強制規定化され
るべきと判断して、国際の場でこれらを核とする将来の高速炉の安全基準を確
立する作業をリードするよう提案した。今回の会議で、我が国のリードで始め
られたこうした取組が多くの国の賛同を得て前進し、このような考え方を踏ま
えた将来の高速炉の安全基準が近く国際合意できる見込みがあることや、この
ような考え方を将来炉の設計に取り入れるための様々な技術的工夫が報告され
たのは、福島の事故の影響が大きいとはいえ、適切な動きありと感じた。
 一方、原子力発電で発生する高レベル放射性廃棄物の毒性や体積、したがっ
て地層処分場の面積を高速炉の特性を活かして最小化する取組については、我
が国は当初より重要な開発課題にしてきたが、国際社会においては、処分場面
積の大小は単に地下掘削作業の大小、つまり経済性の観点から処分方式の選択
に考慮することでよいという意見も、これまでは少なからずあった。しかしな
がら、今回の会合では、フランスの新型原型炉ASTRIDが、処分場面積の小さい
ことには経済性以外の社会的意味があるとしてこれを使命に掲げ、具体的に、
水溶液を用いるこのための再処理技術の実現に向けての研究成果を示したこと
から、これが次世代の高速炉システムの備えるべき必須の特性になった感が
あった。ただし、再処理過程でアメリシウムをプルトニウムと共に回収して燃
焼させるだけでも廃棄体の発熱量が大幅に減少し、使用済燃料の直接処分の場
合に比べ処分場面積が10分の1以下になることから、当面は多くの核種の分
離・転換にこだわるのではなく、この実用化に力を入れるべきであろう。
 こうした成果の報告や議論を聴いていて、我が国は、このような分野に真剣
に取り組むことにより、原子力発電のもたらす利益を人類が長期にわたって享
受できる条件を整備することに貢献できるので、この貢献を福島の原子力発電
所の事故の後始末の取組と両立させていく知恵を出さねばと感じた。

●次号は鈴木委員長代理からひとことの予定です!

━・・・━━ 会議情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━・
●原子力委員会の会議を傍聴にいらっしゃいませんか。会議は原則として霞ヶ
関にある合同庁舎4号館で開催しており、どなたでも傍聴できます。開催案内
や配布資料は、すべて原子力委員会ウェブサイトでご覧いただけます。

●3月14日(木)の会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはウェブサイトに
掲載される議事録をご覧下さい。

【議題1】平成25年度原子力関係予算ヒアリング(文部科学省、外務省、原子
力委員会)
<主なやりとり等>
 文部科学省、外務省及び内閣府より、各府省における平成25年度原子力関係
予算について説明がありました。
 各委員からは、文部科学省に対して、もんじゅの運転再開を前提とした予算
となっているのか、外務省に対して、チェルノブイリに関する基金は継続的な
拠出となるのか、等の質問がありました。

【議題2】第14回アジア原子力協力フォーラム(FNCA)コーディネーター会合の
開催結果について
<主なやりとり等>
 事務局から、3月11日から12日に東京の三田共用会議所にて開催された同会
合の結果概要の説明がありました。
 各委員は、原子力安全、核不拡散、核セキュリティを今後FNCAとしてどのよ
うに議論して行くかを考える必要がある、リスクコミュニケーションに対する
関心が高まっているので各国の情報共有をしっかりと行うべき、等の感想を述
べられました。

【議題3】秋庭原子力委員会委員の海外出張について
<主なやりとり等>
 秋庭委員は、3月17日から24日にかけてフィンランド及び英国へ出張し、我
が国の高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する国民の信頼醸成への取組を推
進するために、両国政府・自治体の関係者及び高レベル放射性廃棄物の処分実
施主体者との意見交換を行う予定です。

※資料等は以下のURLでご覧いただけます。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/index.htm

●次回は3月26日(火)に会議を開催する予定です。詳しくは、以下の開催案内
をご覧下さい。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/topic/kaisai.htm

+-+-+-+-+-+-+ 事務局だより +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

まだマシ

 自分の好きな言葉に「まだマシ」というのがある。何かを変えた方がよいと
思ったときに、従来より少しでも良くなる点があるのであれば、変えるために
努力しようと思う。その時の自分への合い言葉が「まだマシ」である。
 皆さんも業務を行っている際に、少しでも良くしたい(楽をしたい)という
気持ちから、これまでのやり方を変えたいと思ったことはないだろうか?この
ときに、「ちょうど良い機会だから、ここも変えよう」とか、「ここも変えな
いと完璧ではないのではないか」とか考え、結果的に変えることが大きくなっ
てしまうことがある。しかし、一気に変えてしまおうとすると、周囲からそれ
は理想だと反対されたり、実際に変えてみても継続的に行うことが難しかった
りし、結局何も変わらなかったということが意外にも多いと思う。
 せっかくものごとを良い方向に変えようと意気込んでいるのに、成果が出な
いとは残念である。そこで、こう考えてはどうだろうか、やらないより「まだ
マシ」でいいじゃないかと。変化は小さい方が周囲からの反対も少ないし、継
続的に行うことも容易である、この小さな変化を積み重ねることで結果的には
大きな変化に結びつけることもできる。そのように考えて、まずは、継続でき
る程度の「まだマシ」を少しずつ積み重ねて、結果的には「ずいぶんと変わっ
たなぁ」と思えるように、色々なことを自分なりに変化させていくことを楽し
みたい。
(尾上)

●次号配信は、平成25年3月29日(金)午後の予定です。

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発行者:内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局)
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