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第67号 原子力委員会メールマガジン 大きな可能性をもたらす大規模な構造改革

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    @mieru(あっとみえる) 原子力委員会メールマガジン
           2010年11月19日号
   ☆★☆ めざせ! 信頼のプロフェッショナル!! ☆★☆
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┏ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┣ 近藤委員長からひとこと 大きな可能性をもたらす大規模な構造改革
┣ 定例会議情報 UNSCEA2008年報告書について
┃        平成23年度原子量関係経費の見積りについて    
┃        第11回アジア原子力協力フォーラム(FNCA)大臣級会合
┃        の開催について 等
┣ 部会情報等  
┣ 事務局だより 旅を通して
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

●メールマガジンや、原子力委員会の活動に関するご意見・ご感想等を、
https://form.cao.go.jp/aec-melmaga/opinion-0002.htmlまで、ぜひお寄せく
ださい。

━・・・━ 委員からひとこと ━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━

大きな可能性をもたらす大規模な構造改革 近藤駿介

 先日、第7回のスーパーコンピューティングの原子力応用に関する国際会議
で基調講演を行った。講演を依頼された時、このシリーズの国際会議の第1回
を1990年に水戸で開催するにあたってOECDの原子力機関(NEA)と米国原子力
学会、日本原子力学会の間の主導権争いを調整したことを思い出し、懐かしさ
を感じたが、もう研究実務の現場を離れて久しいから辞退するべきと思った。
しかし、1年ほど前に原子力委員会の研究開発専門部会で研究開発分野の政策
評価を行った際、「研究開発組織のトップマネジメントは、現場におけるモデ
リングとシミュレーションの取組みの強化を研究経営の重要課題と認識して取
組むべし」と提言したことを思い出し、その状況把握のためと考えなおし、引
き受けた。ここでは、その講演でも触れたこの提言の背景を少し述べる。

 大学に勤務するようになった40年前、いわゆる大型計算機が研究手段として
使えるようになって、そのうち、航空機の設計において風洞は計算機風洞に置
き換わるだろうとか、船の開発には水槽を必要としなくなるだろうと予言した
人が少なくなかった。しかし、航空機や船などの自分の設計対象についてシミ
ュレーションを行った人々は、実験との比較で、自分のモデルが原子、分子か
ら成り立つ流体の振る舞いを自分の関心に対応するスケールで記述したものに
すぎないことに気づいた。他方、内燃機関内の燃焼現象、溶鉱炉の中の現象の
シミュレーションを目指した人々は、計算機の横で、現象のモデリングの困難
さに考え込まなければならなかった。そして、人々は自然の奥深さを改めて認
識すると同時に、対象を顕微鏡でみる人と肉眼で見る人、さらに対象が環境と
行う相互作用(共同現象)を見る人が、様々な物理に基づき構築するモデルを
組み合わせて対象をシミュレーションするマルチスケール・マルチフィジック
スシミュレーションへの挑戦を開始した。このためには、シミュレーション結
果を活用する研究や新製品開発の現場が、基礎研究、応用研究、新製品開発に
関する取組みの間の垣根を取り払って垂直水平に連携できるようにする構造改
革が要請される。そこで、「計算機は大きな可能性を有するが、これを活用で
きるためには組織の在り方を大胆に問い直すことが必須である」とのスローガ
ンのもと、各方面でこれを成し遂げる大競争が始まった。しかし、これが今日
、なお唱えられていることは、これが容易ではないことを意味するのだろう。

 数年前に、米国の原子力研究開発のメッカともいうべきアルゴンヌ国立研究
所に、所長を務める数値宇宙物理の専門家であるシカゴ大学のロズナー教授を
訪ねて懇談した際、彼は、「この研究所を運営してみて、自分の宇宙物理にお
けるモデリング・シミュレーションで培った知見が役立つ研究開発や産業現場
が沢山あることが分かった。その体験を踏まえてこの研究所の構造改革を推進
しているが、簡単ではない。」と言っていた。この記憶が提言の背景の第1で
ある。

 第2は、水戸に続いて米国で開催された第2回の会合の記憶である。折から
、温室効果の評価のためのモデルの研究が注目を集めていたが、現場における
計算機資源の効果的活用に関する発表も妙に記憶に残っている。病院の粒子線
によるがん治療の現場で、患者の画像診断の結果に基づいて治療のために患部
に粒子線ビームを入射する際には、固定されている患者の患部付近における詳
細な荷電粒子の振る舞いをシミュレーションで求めてビームを設計しなければ
ならず、必要な計算機資源量が一時的に急増する。そこで、そのために病院中
の計算機を連結しておいてそうした需要に柔軟に対応することを試みたという
発表である。いまは世界中のパソコンをネットワークを通じて連結して大きな
計算を実施する取組みまで行われているから、そんなことは珍しくもないが、
当時、病院において、患者の体内における荷電粒子輸送方程式を解くために病
院事務の計算機までも一時的に動員する取組みを企画推進することは、大変な
リーダーシップを要請する企てに聞こえ、日本では病院はおろか研究開発機関
でも難しいのではとの感想を持ったのである。今日、研究機関においては計算
機資源の運用をどうしているのであろうか。スーパーコンピュータのネットワ
ーキング、クラウドコンピューティングの時代であるから、もはや経営中枢の
課題ではないかもしれないが、やはり、上記の改革の一部として注目されるべ
きと考えた。

 第3は、原子力界固有のことである。この分野では、安全規制に係る人々と
システム設計に係る人々は同一現象についてすら別のシミュレーションツール
を使っていた時代が続いてきた。しかし、21世紀に入ってからは、最も精度よ
くシミュレーションが可能なツールを共同して開発するのが常識になりつつあ
り、欧米で、そしてアジアで、新しい原子炉の設計にも安全解析にも使えるシ
ミュレーションプログラム体系の整備が進められている。ところが、我が国で
は、安全規制解析とプラント設計解析の関係者が共同して現実を最も精度よく
シミュレーションするツールの開発に資源と英知を結集して取組む姿が諸外国
と比べて弱い。今後我が国は、優れた技術を国際社会に使ってもらいたいと考
えているのだから、縦割りを排し、リーダーを決め、最高性能のシミュレーシ
ョンを可能にするソフト開発にチーム日本で取組むべきであろう。

●次号は鈴木委員長代理からのひとことの予定です!

━・・・━━ 定例会議情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━
●11月9日(火)第59 回定例会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはホ
ームページに掲載される議事録をご覧下さい。

・UNSCEAR2008年報告書について(放射線医学総合研究所)
<主なやりとり等>
 放射線医学総合研究所の酒井放射線防護研究センター長より、UNSCEAR(原
子力放射線の影響に関する国連科学委員会)が人体と環境への放射線の影響に
ついてまとめた報告書について説明がありました。
 委員からは、自然放射線の被ばくに関して日本独自のデータ収集を実施して
いるのかなどの質問や、放射線医療では患者への放射線の正しい情報伝達が重
要であるなどの意見がありました。

・第4期科学技術基本計画策定に向けた検討状況について(内閣府)
<主なやりとり等>
 内閣府より、第4期科学技術基本計画の検討状況について説明がありました
。本計画については、総合科学技術会議が年末に答申を出し、それを受けて年
度末までに閣議決定を予定しているとのことです。
 委員からは、科学技術政策への国民参加についてこれまでにどのような議論
がされてきたのか、民間の研究開発投資を促進するための具体的な施策は何か
などの質問がありました。

・平成23年度原子力関係経費の見積りについて
<主なやりとり等>
 原子力委員会は、7月6日に委員会決定した「平成23年度原子力関係経費の
見積りに関する基本方針」に基づいて各府省庁からヒアリングを実施してきま
した。その結果を平成23年度における原子力関係経費の見積りとしてまとめ、
原子力委員会決定しました。

・中部電力株式会社浜岡原子力発電所の原子炉の設置変更(1号、2号、3号
、4号及び5号原子炉施設の変更)について(答申)
<主なやりとり等>
 平成22年7月12日付けで経済産業大臣より諮問のあった中部電力株式会社浜
岡原子力発電所1〜5号炉の固体廃棄物処理系の固化装置の変更申請について
、同申請が平和利用、計画的遂行、経理的基礎の観点から適合しているという
経済産業大臣の判断は妥当と認める答申を決定しました。

・第11回アジア原子力協力フォーラム(FNCA)大臣級会合の開催について
<主なやりとり等>
 事務局より、11月18日に中国の北京で開催される第11回アジア原子力協力フ
ォーラム大臣級会合の開催について説明がありました。
 委員からは、原子力輸出の国際協力について具体的な新しい成果が見えるよ
うな会合にしてもらいたいなどの意見がありました。

・近藤原子力委員会委員長の海外出張について
<主なやりとり等>
 近藤委員長より、11月14日から19日にかけて、ブルーリボン委員会(※)に
出席するため米国のワシントンDCへ、その後第11回FNCA大臣級会合に出席す
るため中国の北京へ出張する予定であることについて説明がありました。
(※)核燃料サイクルのバックエンドにかかる政策の包括的なレビューを行う
ために、大統領の指示により米国エネルギー省に設置された諮問委員会

・尾本原子力委員会委員の海外出張について
<主なやりとり等>
 尾本委員より、11月16日から26日にかけて、第11回FNCA大臣級会合に出席す
るため中国の北京へ、その後IAEAの技術協力に関する会合に出席するためマレ
ーシアのクアラルンプールへ出張する予定であることについて説明がありまし
た。


●11月16日(火)第60回定例会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはホー
ムページに掲載される議事録をご覧下さい。

・高速増殖炉サイクル実用化研究開発(FaCT)プロジェクトの中間評価につい
て(文部科学省、経済産業省、日本原子力研究開発機構)
<主なやりとり等>
 日本原子力研究開発機構より、高速増殖炉サイクル実用化研究開発プロジェ
クトの中間とりまとめの概要について説明がありました。また、文部科学省、
経済産業省より、その中間とりまとめに対する妥当性評価を実施する旨説明が
ありました。
 委員からは、評価にあたってはプロジェクト全体の開発目標を明確に示すこ
とが重要、炉システムや燃料製造システムには検討継続課題があるので実用炉
の開発に向けてきちんと検討して欲しいなどの意見がありました。

・東京電力株式会社東通原子力発電所の原子炉の設置について(一部補正)(
原子力安全・保安院)
<主なやりとり等>
 原子力安全・保安院より、東京電力株式会社東通原子力発電所の原子炉設置
に係る原子炉設置許可申請書への補正事項について説明がありました。平成18
年9月29日付で申請のあった内容に対し、原子力原子力安全委員会における二
次審査の審議を踏まえた記載修正や各種データ等の更新がなされたとのことで
す。

・北海道電力株式会社泊発電所の原子炉の設置変更(1号、2号及び3号原子
炉施設の変更)について(答申)
<主なやりとり等>
 平成22年3月26日付けで経済産業大臣より諮問のあった北海道電力株式会社
泊発電所1〜3号炉の原子炉施設の変更申請について、同申請が平和利用、計
画的遂行、経理的基礎の観点から適合しているという経済産業大臣の判断は妥
当と認める答申を決定しました。

・鈴木原子力委員会委員長代理の海外出張報告について
<主なやりとり等>
 鈴木委員長代理より、米国への出張(10月14日〜18日)及びメキシコ、ロシ
ア、英国への出張(10月23日〜11月3日)の結果について報告がありました。
 委員長代理は、米国においてスタンレー財団が主催する平和に向けた戦略会
議に出席して核セキュリティ等に関する討論を行いました。
また、メキシコにおいては第17回環太平洋原子力会議に出席し我が国の原子力
政策に関する講演を行いました。ロシアにおいては国際会議ATOM-ECO2010に出
席して講演を行うとともに、ロスアトム社の関係者と原子力政策の情勢につい
て意見交換を行いました。英国においてはウラン濃縮工場のURENCOの視察及び
関係者との意見交換を行いました。

※資料等は以下のURLでご覧いただけます。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/index.htm

●次回は11月30日(火)に開催します。
 議題については原子力委員会HPにおいて26日(金)に公表予定です。

●定例会議を傍聴にいらっしゃいませんか。定例会議は通常毎週火曜午前、霞
ヶ関の合同庁舎4号館で開催しており、どなたでも傍聴できます。開催案内や
配布資料はすべて原子力委員会ホームページでご覧いただけます。


━・・・━━ 部会情報等 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━

●原子力委員会には調査審議組織として専門部会や懇談会等が設置されていま
す。これらの部会や懇談会等は原則として公開しており、どなたでも傍聴でき
ます。開催案内や配布資料はすべて原子力委員会ホームページでご覧いただけ
ます。

※現在、開催が予定されている部会はありません。

+-+-+-+-+-+-+ 事務局だより +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

旅を通して

 冬の到来待ち遠しく、芭蕉の句「旅に病んで夢は枯れ野をかけ廻る」が頭の
中をかけ巡っている今日この頃。「青春18きっぷ」(原則普通列車のみ&年
齢制限なしの切符)を手にローカル線に車窓や温泉を求めてのぶらり旅が趣味
で、時刻表を眺めては想像にふける日々を過ごしているところである。とくに
、冬期の五能線や只見線は格別で、冬の日本海の荒波の景色や、只見川と森と
雪とが織りなす深緑の濃淡と白の景色などは、感嘆させられる。なお、鉄道の
旅がいいのは、自分が運転しないので、このように車窓を眺めたり、音楽を聴
いたり、読書などをして自由に過ごせる点であり、さらには飲酒運転の心配が
ない点にある。という感じでもって、日本全国ある程度廻ってきて思うのは、
この狭い国土で、ほんとに様々なところに人の営みがあるということ(自分も
九州の山の中育ちだが)。そして、その営みを支えるための様々なモノがきち
んと人々に行き届いているという物流のすごさである。当たり前なのかもしれ
ないが、そのようなことを考えさせられる。
 そんなこともあって、原子力に携わるようになってからは、この豊かな生活
に不可欠なエネルギー源となっている原子力発電や、我が国における核燃料サ
イクルの重要性を痛感させられている。現在の部署に配属となって、早4か月
と少し、自分の職責を果たせるよう日々努めていきたいと思う。
(近藤)

●次号配信は、平成22年12月3日(金)午後の予定です。

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発行者:内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局)
○ご意見、ご感想、ご質問などはこちらへ 
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○原子力委員会ホームページ  http://www.aec.go.jp/
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