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第66号 原子力委員会メールマガジン 衰退の危険性を孕むエートス

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    @mieru(あっとみえる) 原子力委員会メールマガジン
           2010年11月5日号
   ☆★☆ めざせ! 信頼のプロフェッショナル!! ☆★☆
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┏ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┣ 尾本委員からひとこと 衰退の危険性を孕むエートス
┣ 定例会議情報 国際原子力開発株式会社の設立について
┃        ナトリウム冷却高速炉分野における三機関協力の共同声明
┃        について
┃        第10回原子力政策大綱の見直しに必要性に関する有識者
┃        ヒアリング 等
┣ 部会情報等  
┣ 事務局だより 広く深く
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●メールマガジンや、原子力委員会の活動に関するご意見・ご感想等を、
https://form.cao.go.jp/aec-melmaga/opinion-0002.htmlまで、ぜひお寄せく
ださい。

━・・・━ 委員からひとこと ━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━

衰退の危険性を孕むエートス 尾本彰

 このところ日本経済の衰退や国際社会での影の薄さが海外で半ば興味本位に
語られ、「ジャパンバッシングどころかジャパンナッシングだ」を経て、「陽
の沈む国」とまで揶揄されている。私も海外の友人から「何故そうなったと思
うか」という無遠慮な質問も受けるので、答えを用意して置かねばならない。
戦後の高度経済成長は幾つかの恵まれた条件のお陰で可能であったが、その成
立条件のプラザ合意等による消滅とそれへの対処政策が今日の問題の原因との
見方があろうが、もとより私は経済を専門とするものではない。森嶋ロンドン
大学教授が言われる「より広範な経済学」で問題にする国民のエートスという
観点からこんなことも言えるのではと考えている。(ちなみに森嶋教授は、東
洋のプロテスタントというべき倫理観を持った儒教精神世代から反儒教主義と
国としての主張のない物質主義というエートスを持った世代へと、80年代終
わりに交代があった(「何故日本は行き詰まったのか(2004年刊)」)、さらに
衰退期のローマに似たエートスに真の没落の原因があると述べている。また、
日本の経済活動における「気概」の役割の重要性指摘(F.フクヤマ)もある。
)
 私が思うのは、第一に、「留まるためには走り続けなければいけない」(「
鏡の国のアリス」。含蓄深い言葉と思う)のを忘れ、今までのやり方や路線や
過去の成功体験に安住していたのだろうということ。日夜努力されている方々
に誠に失礼な言い方だが、国全体としてはそうだったのではと思う。原子力で
も「我が国は特殊だから」といった調子で世界のベストプラクテイスに目をつ
ぶりベンチマーキングを怠って来た、あるいは、改善行動に結びつけなかった
か、結びつけられない程の事情もあったのであろう。先日仙台で開かれた原子
力発電プラントの保全に関する国際会議でIAEAデータと具体事例を下にベンチ
マーキングが大切との私見を述べた。ビジネスの世界でも「技術が優れている
ことが第一」とビジネスモデルの重大さと世界で進行しているビジネスのルー
ルの変化に敏感でなかったのではと推察する。
 第二に、リスクテーキングへの躊躇。日本人が他の国との対比でみて、極度
の安全志向でリスク回避姿勢の強い事は知られている。投資ではハイリスクハ
イリターンは常識。「今の若者は内向き志向」と嘆かれているが、そのような
志向を醸成してきたのは無難なリスク回避を旨としてきた大人の責任も無しと
はできない。原子力でも、答えの予め判っていそうな研究を「研究」としてい
る例を見る。チャレンジングな研究が沢山行なわれ宝石が見つかり、それが発
展へと繋がるのに。科学技術の利用に伴うリスクも、リスクという言葉の前で
思考停止に陥らず科学的合理的に向き合うべきだ。
 第三に、エートス形成という点で、「出る釘は打つ」とまで言えそうな教育
、覚えさせる教育、を通じて標準値からの偏差を少なくし、独自思考力を奪っ
て来たのでは無いかという事。かけっこで予め走らせて、同じ順位の仲間ばか
りでグループをつくり走らせて「平等」とするという話に呆れた記憶がある。
勉強はできないけれど走る事ならひけを取らないと自負している子から大きな
機会を奪って何が教育であろう。それに、教育の現場で算数や数学が「面白い
もの」から「覚えるもの」に変じている場合もあるようで、これが原因で理数
系の嫌いな子供が増えるのを憂える。
 ではどうすれば良いのか?上記のような素人考えが的を得ているのであれば
、その逆を行えば少なくとも流れを押しとどめることに役立つはずだ。しかし
、上記の一部が30-40年を経て多勢を占めた戦後エートスの一部だとすると話
は容易では無い。ただ、少なくとも原子力利用の分野では、持続可能な発展に
繋がるエートスを持ちたいものだ。

●次号は近藤委員長からのひとことの予定です!

━・・・━━ 定例会議情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━
●10月26日(火)第57 回定例会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはホ
ームページに掲載される議事録をご覧下さい。

・国際原子力開発株式会社の設立について(国際原子力開発株式会社)
<主なやりとり等>
 国際原子力開発株式会社の武黒代表取締役社長より、同社の設立について説
明がありました。また、当面の活動、役割及び行動規範等について説明があり
ました。同社は、原子力発電を新規に導入する国の要望に応え、原子力発電の
建設、運転保守、人材育成等の技術・ノウハウを官民一体となり包括的に提案
することを目的に設立されたものです。
 委員からは、同社と原子力国際協力センター(JICC)の関係や、相手国の要
望が原子力発電に関わることを越えたときに、国を含めた調整をどのようにし
ていくのかなどについて質問がありました。

・ナトリウム冷却高速炉分野における三機関協力の共同声明について(日本原
子力研究開発機構)
<主なやりとり等>
 日本原子力研究開発機構より、日本原子力研究開発機構とフランス共和国原
子力・代替エネルギー庁及び米国エネルギー省がナトリウム冷却高速炉技術の
協力に関する覚書を延長したことについて説明がありました。
 委員からは、第四世代原子力システム国際フォーラム(GIF)などの多国間
協力の枠組みと今回延長した三機関協力との関係などについて質問がありまし
た。

・近藤原子力委員会委員長の海外出張について
<主なやりとり等>
 近藤委員長より、11月2日から6日にかけて、第1回国際原子力エネルギー
協力フレームワーク(IFNEC)執行委員会会合に出席するため、ヨルダンのア
ンマンへ出張する予定であることについて説明がありました。

●11月2日(火)第58回定例会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはホー
ムページに掲載される議事録をご覧下さい。

・第10回原子力政策大綱の見直しの必要性に関する有識者ヒアリング
<主なやりとり等>
 原子力政策大綱の見直しの必要性について、青森県知事の三村申吾氏、福井
県立大学地域経済研究所講師の井上武史氏からご意見を伺いました。
 三村氏からは「核燃料サイクル政策は堅持すべきであり、政策を実現するた
めには国の主体的な関与が重要である。」、井上氏からは「電源立地地域対策
交付金について一括交付金化や一般財源化への改革が必要であり、改革のため
には原子力委員会のバックアップが必要ではないか。」などのご意見をいただ
きました。
 その後、各委員から2氏に対して、いただいたご意見に関する質問がありま
した。

※資料等は以下のURLでご覧いただけます。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/index.htm

●次回は11月9日(火)に開催します。議題は以下のとおりです。
・UNSCEAR2008年報告書について(放射線医学総合研究所)
・第4期科学技術基本計画策定に向けた検討状況について(内閣府)
・平成23年度原子力関係経費の見積りについて
・中部電力株式会社浜岡原子力発電所の原子炉の設置変更(1号、2号、3号
、4号及び5号原子炉施設の変更)について(答申)
・第11回アジア原子力協力フォーラム(FNCA)大臣級会合の開催について
・近藤原子力委員会委員長の海外出張について
・尾本原子力委員会委員の海外出張について
・その他

●定例会議を傍聴にいらっしゃいませんか。定例会議は通常毎週火曜午前、霞
ヶ関の合同庁舎4号館で開催しており、どなたでも傍聴できます。開催案内や
配布資料はすべて原子力委員会ホームページでご覧いただけます。


━・・・━━ 部会情報等 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━

●原子力委員会には調査審議組織として専門部会や懇談会等が設置されていま
す。これらの部会や懇談会等は原則として公開しており、どなたでも傍聴でき
ます。開催案内や配布資料はすべて原子力委員会ホームページでご覧いただけ
ます。

※現在、開催が予定されている部会はありません。

+-+-+-+-+-+-+ 事務局だより +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

広く深く

 今は、球団自体がなくなってしまいましたが、高校生の頃、私は近鉄ファン
でした。その当時は近鉄の黄金時代で、ランナーが出たら次のバッターはバン
ト、カウントが0ストライク・3ボールなら次の球がどんないい球でも打たな
いことなどがセオリーの、確率にこだわる、勝ちにこだわる野球が全盛の中で
、近鉄は、(ネーミングが当時からイマイチだと思っていましたが)「いてま
え打線」が爆発。ホームランを量産し、豪快に勝ち、そして豪快に負けていま
した。
 そんな近鉄の中でも、野茂選手が特に好きでした。独特のトルネード投法か
ら繰り出されるフォークで三振の山を築き、「ドクターK」の異名で大活躍し
ていました。そんな野茂選手が、ある記者から「太く短い野球人生と細く長い
野球人生のどちらがいいか」というような主旨の質問をされ、それに対して「
太くっ、長くっ!」と言い放っていたことを今でも覚えています。
おそらく、まじめで気の小さい高校生だった私なら「細――く、長――く」と
答えていたことでしょう。
 ところで、私は7月から内閣府で原子力委員会の事務局の仕事をしています
。私の内閣府での仕事の第一印象は、「なんと原子力政策とは広いのか!」と
いうことです。内閣府に来る前は原子力発電所で仕事をしており、発電所に関
することであれば関心が高かったのですが、それ以外のことについては関心が
低かったと思います。ところが、今の職場では、発電所、フロント・バックエ
ンドを含む核燃料サイクル、放射性廃棄物、研究開発、人材育成、広聴・広報
などだけでなく、世界の中の日本という視点でも考える必要のある様々な分野
の仕事があります。それだけでなく、それぞれの分野は未だに全貌がつかめな
いぐらい奥深いものがあります。また、原子力政策には、エネルギー利用とい
う側面の他に医療、農業、工業等の分野も含まれます。これまで私が、いかに
狭い視野であったか、「井の中の蛙」であったかを痛感させられ、また昔から
もっと関心をもって勉強しておくべきだったと毎日反省しています。
 しかし、今私は広く深い世界に接することができる恵まれた職場にいます。
今は狭く浅い私ですが、広く浅くでも、狭く深くでもなく、「広く深く」なり
たいと思います。
(小森)

●次号配信は、平成22年11月19日(金)午後の予定です。

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発行者:内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局)
○ご意見、ご感想、ご質問などはこちらへ 
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○原子力委員会ホームページ  http://www.aec.go.jp/
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