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第65号 原子力委員会メールマガジン グローバル化する国際社会における国内標準

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    @mieru(あっとみえる) 原子力委員会メールマガジン
           2010年10月22日号
   ☆★☆ めざせ! 信頼のプロフェッショナル!! ☆★☆
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┏ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┣ 大庭委員からひとこと グローバル化する国際社会における国内標準
┣ 定例会議情報 国際原子力機関(IAEA)第54回総会の結果概要について
┃        原子力委員会「原子力政策大綱(平成17年10月策定)」
┃        の見直しの必要性に関する意見募集の結果等について
┃        第9回原子力政策大綱の見直しの必要性に関する有識者ヒ
┃        アリング 等
┣ 部会情報等  
┣ 事務局だより 暮らす人の想い
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●メールマガジンや、原子力委員会の活動に関するご意見・ご感想等を、
https://form.cao.go.jp/aec-melmaga/opinion-0002.htmlまで、ぜひお寄せく
ださい。

━・・・━ 委員からひとこと ━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━
グローバル化する国際社会における国内標準 大庭三枝

 少し前のことになるが、「The Cove(入り江)」という映画を見た。多くの
方はご存じだと思うが、あまりにも明確な反イルカ猟の立場から描かれたその
内容を巡り、論争を巻き起こしたことで話題になった映画である。
 日本のイルカ猟を「イルカを殺すことは悪である」という価値観の下に告発
するこの映画は、イルカ猟で有名な太地町とそこの地元の人々を「悪」と位置
づける明快な勧善懲悪の図式が、非常にテンポの良い構成で描かれていること
により、大きなインパクトを観客に与える。それゆえ、この映画を、あまりに
も一方的な価値観の押しつけであると感じ、感情的な反発を覚える人々も日本
の中で多かったことは仕方のないことだろう。一部の限られた地方のみで継承
されてきたイルカ猟を批判することが、日本全体への批判と捉えられるかどう
か、という議論はさておき、この映画は、イルカ猟を告発することの正統性を
訴えることに注力するあまり、少々バランスを欠いている部分もあるのではな
いか、という印象を私自身がもったことは事実である。
 しかしながら、イルカ猟を「The Cove」のような視点で描き、自らの意見を
提示することも表現の自由である。意見の多様性、およびそれを表現する権利
を尊重する社会の中で我々は生きている。そのような社会においては、たとえ
それがいかに不快で、かつ心外なことであっても、批判や意見に対して、きっ
ちりと反論し、言葉を尽くして自説を明確に示すことが重要であり、また必要
である。そして今、その「社会」とは一国内で閉じられたものではなく、グロ
ーバリゼーションの下でその範囲は世界大への広がりを見せている。グローバ
ルな国際社会において、ある基準・価値・規範をもとにした観点からの批判が
浴びせられる、あるいはその基準に従うべきである、という意見が突きつけら
れたときに、どのような対応を取るべきか。こちらにはこちらのやり方、事情
、伝統があるのだ、と主張したい気持ちは理解できる。しかしながら、そのよ
うな反論の仕方は、様々な価値・規範についての国際的スタンダードが形成さ
れつつある現在、説得力をもたなくなってきている。イルカ猟の正当性を訴え
ようとするとき、国際社会においてそれなりの説得力を持つ価値・規範に立脚
した論理的な主張が必要となると思う。イルカ猟の是非の議論のみならず、他
の様々な分野における諸問題についても、同様の課題に取り組まざるを得なく
なっている気がしている。
 それにしても、なんと我々は大変な時代に生きているのだろうか。映画の中
で、映画製作者たちの取材に対して悲壮ともとれる表情で抵抗しているイルカ
猟関係者の姿を見たときに、私はそう感じたのである。現在、通信・情報技術
の高度な発達に下支えされつつ、経済面のみならず価値・規範のグローバリゼ
ーションが進行しつつある。こうした世界では、従来であれば知り得なかった
遠い場所における未知の、異質な文化についてこちらが知ることが出来るよう
になった反面、我々が独自に守ってきた文化や伝統であっても、容赦なく異質
な人々の異質な価値観にさらされるのだ。そして場合によってはその文化や伝
統を維持することの正当性について、有効かつ説得力のある説明が求められる
。現在、こうした異質な他者との緊張感あるコミュニケーションが、あらゆる
問題を巡って不可避なものとなってきている。本当に大変な、やっかいな時代
だと思う。しかしながら我々は、自分たちの論理をグローバルな世界において
も説得力ある形で展開することの重要性を、改めて認識する必要があろう。

●次号は尾本委員からのひとことの予定です!

━・・・━━ 定例会議情報 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━
●10日12日(火)第54回定例会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはホー
ムページに掲載される議事録をご覧下さい。

・国際原子力機関(IAEA)第54回総会の結果概要について(内閣府・外務省)
<主なやりとり等>
 内閣府及び外務省より、9月20日から24日まで、ウィーンにおいて開催され
た第54回IAEA総会の結果概要として、海江田大臣の政府代表演説の概要及び主
要な議題の中から決議の内容や投票結果について報告がありました。
 政府代表演説では「我が国の原子力の平和的利用の推進及び核不拡散の強化
にIAEAと共に取り組む中で培ってきた知見と経験を途上国支援に一層役立てて
いくこと」等が表明されました。
 また、「科学技術・技術及び応用に関連したIAEAの活動の強化」に関する決
議の中で米国の平和利用イニシアティブに言及があったことや世界的な放射性
薬剤モリブデン99の供給不足の懸念が盛り込まれたことなどが紹介されました
。
 委員より、日本がIAEA総会で特に力を入れて取り組んだ事柄は何かなどの質
問がありました。

・近藤原子力委員会委員長の海外出張報告について
<主なやりとり等>
 近藤委員長より、オーストリア、フランスへの出張(9月18日〜30日)の結
果について報告がありました。
 委員長は、IAEA保障措置分析ラボの視察、第54回IAEA総会への出席、Le Las
er Megajoule(LMJ)施設の視察及び第17回日仏原子力専門家会合(N-20)の
出席などを行いました。

・鈴木原子力委員会委員長代理の海外出張について
<主なやりとり等>
 鈴木委員長代理より、10月14日から18日にかけて米国へ出張することについ
て説明がありました。スタンレー財団が主催する平和に向けた戦略会議に出席
し、核セキュリティ等に関する討論に参加する予定です。

・原子力委員会「原子力政策大綱(平成17年10月策定)」の見直しの必要性に
関する意見募集の結果等について
<主なやりとり等>
 原子力政策大綱の見直しの必要性について、意見募集の結果及び有識者ヒア
リングの結果(中間報告)等について事務局より報告しました。
 意見募集に対しては、1205名から1520件のご意見をお寄せいただきました。
 その約9割が原子力政策大綱の見直しが必要とのご意見でした。その理由と
しては、安全の確保に対するご意見が約1/4、原子力発電の位置付けに対す
るご意見が約1/6を占めていました。
 また、9月14日までにご意見をいただいた17人の有識者の多くが、基本的な
方針に変更はないものの5年間の国内外の状況を踏まえた部分的見直しが必要
とのご意見でした。15名の方から国際的取組みの推進に関してご発言がありま
した。
 さらに、意見募集/ご意見を聴く会の参加者/有識者別、男女別、立地地域
/非立地地域別で寄せられる意見分布に特徴があったことを紹介しました。
 その後、原子力委員からは、意見募集にあわせて送付いただいた参考資料に
関する意見などがありました。
 詳しい結果は、
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2010/siryo54/siryo4-1.pdf
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2010/siryo54/siryo4-2.pdf
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2010/siryo54/siryo4-3.pdf
でご覧いただけます。

●10月19日(火)第55回定例会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはホー
ムページに掲載される議事録をご覧下さい。

・東京電力株式会社福島第一原子力発電所の原子炉の設置変更(6号原子炉施
設の変更)について(答申)
<主なやりとり等>
 9月1日付けで経済産業大臣より諮問のあった東京電力株式会社福島第一原
子力発電所6号機の主蒸気隔離弁漏えい抑制系止め弁の機能廃止及び可燃性ガ
ス濃度制御系再結合装置の容量変更を行う設置変更申請について、同申請が平
和利用、計画的遂行、経理的基礎の観点から適合しているという経済産業大臣
の判断は妥当と認める答申を決定しました。

・鈴木原子力委員会委員長代理の海外出張について
<主なやりとり等>
 鈴木委員長代理より、10月23日から11月3日にかけてメキシコ、ロシア、英
国に出張することについて説明がありました。メキシコでは第17回環太平洋原
子力会議に出席し、我が国の原子力政策に関する講演を行う予定です。ロシア
では国際会議ATOM-ECO2010に出席し、講演を行う予定です。また、英国ではウ
ラン濃縮工場のURENCOの視察及び関係者との意見交換を行う予定です。

●10月21日(木)第56回臨時会議の概要は以下のとおりでした。詳しくはホー
ムページに掲載される議事録をご覧下さい。

・第9回原子力政策大綱の見直しの必要性に関する有識者ヒアリング
<主なやりとり等>
 原子力政策大綱の見直しの必要性について、毎日新聞論説委員の青野由利氏
、日本経済新聞編集委員兼論説委員の滝順一氏、朝日新聞編集委員兼論説委員
の竹内敬二氏及び産経新聞論説委員の長辻象平氏からご意見を伺いました。
 青野氏からは「国内外の状況もこの5年間で大きく変化しており、また、5
年前の議論が十分だったといいきれないことから、原子力政策大綱の見直しが
必要である。」、滝氏からは「4つの基本的目標は変わらないし、現状認識は
おおむね5年前の延長線上にあるものの、変化のテンポは速いことから、原子
力政策大綱の見直しが必要である。」、竹内氏からは「核燃料サイクルの進展
は止まっており、それに合わせた政策を考える必要があることから、原子力政
策大綱は時代に合わせて見直すべき。」、長辻氏からは「現原子力政策大綱の
抜本的改変の必要はないが、原子力を取り巻く社会情勢に変化が生じている部
分もあり、そうした諸変化に対応した修正、また現実に照らした修正は、当然
のことながら不可欠である。」などのご意見をいただきました。
 その後、各原子力委員から各有識者に対して、いただいたご意見に関する質
問を行いました。


※資料等は以下のURLでご覧いただけます。
 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/index.htm

●次回は10月26日(火)に開催します。議題は以下のとおりです。
・国際原子力開発株式会社の設立について
・ナトリウム冷却高速炉分野における三機関協力の共同声明について
・近藤原子力委員会委員長の海外出張について
・その他

●定例会議を傍聴にいらっしゃいませんか。定例会議は通常毎週火曜午前、霞
ヶ関の合同庁舎4号館で開催しており、どなたでも傍聴できます。開催案内や
配布資料はすべて原子力委員会ホームページでご覧いただけます。


━・・・━━ 部会情報等 ━━・・・━━・・・━━・・・━━・・・━━

●原子力委員会には調査審議組織として専門部会や懇談会等が設置されていま
す。これらの部会や懇談会等は原則として公開しており、どなたでも傍聴でき
ます。開催案内や配布資料はすべて原子力委員会ホームページでご覧いただけ
ます。

※現在、開催が予定されている部会はありません。

+-+-+-+-+-+-+ 事務局だより +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

暮らす人の想い

 今年7月に六ヶ所村での4年間の単身赴任勤務にピリオドを打ち、原子力委
員会の事務局に参りました。
 六ヶ所村は真夏でもエアコンいらずの寒冷な気候ですが、冬の一時期を除け
ば思いの外過ごしやすい土地です。自然豊かで、春は水芭蕉や座禅草、リュウ
キンカ、ニッコウキスゲなどが群落で咲き誇り、夏は8月末まで紫陽花が楽し
めます。秋にはナナカマドが赤く色づき、白鳥の飛来が冬の準備をする時が来
たことを知らせる合図でした。
 その様な四季折々、地元の方とウニ、アワビ、鮭などの海産物や豊富な山菜
を肴に盃を傾けながら語り合い、議論し、そして共に笑い合うという時間も何
度となくありました。
 その中で強く印象に残ったのは、むつ小川原開発第一次基本計画が昭和47年
に閣議了解された後、将来の村の発展を夢描き、荊棘の道を乗り越えて開墾し
た土地を残して移住された方の今の想い、そして地元の方々の国や事業者に抱
き続ける期待でした。
 六ヶ所村にある核燃料サイクル施設は原子力長期利用に不可欠なものですが
、そのような地元に暮らす人々の想いは原子力に関わる者として矜恃を正して
取り組まなければならない責任の重さを強く感じました。
 昨年から今年にかけ、もんじゅの試験開始やプルサーマルの開始など、核燃
料サイクルは大きく歩を踏み出したところですが、慎重な意見を持たれる方を
含め、核燃料サイクルには様々な人の様々な想いが込められていることを胸に
、業務に精励したいと思います。
(石沢)

●次号配信は、平成22年11月5日(金)午後の予定です。

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発行者:内閣府原子力政策担当室(原子力委員会事務局)
○ご意見、ご感想、ご質問などはこちらへ 
 https://form.cao.go.jp/aec-melmaga/opinion-0002.html
○配信希望、アドレス変更、配信停止などはこちらへ
 https://form.cao.go.jp/aec-melmaga/opinion-0001.html
○原子力委員会ホームページ  http://www.aec.go.jp/
○このメールアドレスは発信専用のため、ご返信いただけません。
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