国際熱核融合実験炉(ITER)計画の推進について

平成13年6月5日
原子力委員会決定

1. 核融合は、将来のエネルギー供給に有望な選択肢を付与し得るもので、開発に長期間を要する高度な科学技術であり、基礎・基盤研究との均衡ある発展を図りつつ研究開発を効率的かつ着実に進めてきております。
具体的には、我が国における核融合の研究開発は、平成4年5月に定めた「第三段階核融合研究開発基本計画」(以下、「基本計画」という。)に基づき、総合的に推進しています。

 

2. 当委員会は、これまで累次にわたり、核融合会議からITER計画の推進について報告を受けてきました。また、本年5月18日には、ITER計画懇談会(以下「懇談会」という。)より、今後の我が国のITER計画への取り組みに関する検討結果の報告を受けました。
ITERは、基本計画の目標に合致したトカマク型の実験炉です。技術的な側面においては、これまで核融合会議より報告されてきた検討結果から、設定された技術目標を満たし得るものです。
これに加え、懇談会では、各界各層の有識者で構成された専門委員により、 ITER計画の進め方について、将来のエネルギー供給や国際貢献をはじめ社会的、経済的側面を含めた幅広い調査審議を行い、さらに報告書のとりまとめにあたっては、報告書案に対し、国民の方々から広く意見を募集しました。

 

3. 当委員会としては、人類の直面するエネルギー制約、その中での核融合エネルギーの意義、そしてITER計画の実現可能性等の技術的側面と、我が国の国際的役割や国家的アイデンティ、我が国社会の倫理性・公共的意識等の社会的側面とを勘案し、核融合会議及び懇談会におけるITERへの取り組みに関する検討の結果を適切なものであると判断し、今後、核融合研究開発を総合的に推進していく中で、ITER計画については、懇談会の報告書を尊重して推進していくことが適当と結論しました。
同時に、当委員会としては、懇談会が、「我が国がITER計画に主体的に参加するだけでなく、設置国になることの意義が大きいと結論した。」としていることを踏まえつつ、ITERの我が国への誘致を念頭において、当面、
(1) 「サイト選定調査」を行い、我が国にサイトとなり得るところがあるかどうかを見極めること、
(2) 他極の状況の把握に努めるとともに、ITER計画が我が国の利益を最大化するものとなるよう他極と協議を行うこと、
が必要と考えます。これらの経過及び結果を注意深く見守り、財源や人材の確保など懇談会報告に示された今後検討すべき事項についての関係者の検討結果や検討状況も勘案して、その上で、必要な判断を行うこととします。

 

4. 当委員会としては、今後とも、基本計画に基づき、ITER計画に積極的に取り組みつつ、バランスのとれた総合的な核融合研究開発を推進していきます。
その際、ITER計画をはじめとする核融合研究開発の意義、進捗状況について、節目ごとに評価し、その結果を公表するとともに、安全面も含めた情報の提供を行うなど、十分な国民理解が得られるよう、透明性の高い継続的な努力を行うことが重要であると認識しています。関係者の一層の努力を求めるとともに、当委員会自らも積極的に取り組んでまいりたいと考えます。


  • ITER計画懇談会報告書 −国際熱核融合実験炉(ITER)計画の進め方について−