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原子力委員会委員就任にあたって

中江要介



 去る10月27日原子力委員会の委員に任命されました。

 早速その日の午後から「原子力委員会」の会議に出席し、11月9日には新委員長として伊藤宗一郎科学技術庁長官をお迎えし、その間、新任の挨拶廻りやら、関係部局のブリーフィングやら、・・・大袈裟に言えば“目の廻るような”日々でしたが、やっと東京に晩秋の色が濃くなってきたと思うと、今度は前任地北京からの船便の引越荷物が届くという始末で、私の「兎小屋」は足の踏み場もない有様となっています。

 というような次第で、原子力委員会の仕事に専念できるようになるのはいよいよこれからだと思いますが、目下のところ“門前の小僧”です。そのうちには、“眼光紙背に徹する”ようになりたいと思っています。

 外務省を退官した私が原子力委員会の仕事をするよう命ぜられたとき、とっさに頭に浮んだことは、一つには国際社会の法秩序のことであり、もう一つは国際情勢のことでした。

 在外勤務(フランス、ブラジル、国連代表部、ベトナム、ユネスコ常駐代表、ユーゴー大使、エジプト大使、中国大使)と、本省勤務(主として条約局とアジア局)とをそれぞれ約20年づつ経験して、そこから得たものとしては、一つは、国際社会がどの程度の自己規制能力−たとえば、核を人類の幸福の為に役立たせるのか、それとも人類の破滅に利用するのか、についての−をもっているのか、という問題、もう一つは、国際情勢がどう動いてゆくのかを見極めることの重要さと難しさ、でした。

 これらについての多少の知識と経験を、原子力の平和利用と安全確保、更にその分野における国際協力において、どれほど役立てられるだろうか・・・新日米原子力協力協定の締結、核物質防護条約への加入、放射性廃棄物の海洋投棄の問題、などが既に11月の原子力委員会での話題となっています・・・そんなことをふと考えている昨今です。

 どうぞよろしくお願いいたします。

(昭62.11.24記)



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