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第3回日・IAEA保障措置合同委員会の結果について


原子力安全局保障措置課

 日・IAEA保障措置協定に基づく第3回日・IAEA保障措置合同委員会が、次の通り開催された。

1. 会合期日及び場所
 昭和57年6月28日~30日
 東京 外務省 国際会議室
2. 出席者
(日本側)
赤羽 科学技術庁原子力安全局長
金子 外務省国際連合局原子力課長
川崎 科学技術庁保障措置課長
市橋   〃  保障措置課査察管理官
川島 核物質管理センター事務理事
(IAEA側)
B.アグー 保障措置局実施A部長
L.ソーン 極東課長
R.ライナー 法律部職員
J.ウィルソン 実施A部職員
3. 主要結果
(1) 我が国における保障措置実施状況についての総合評価

(a) IAEAは、日本での保障措置実施について、国内システムによってなされた進展について全般的に申し分のないものであると評価した。

(b) さらに、日本とIAEAとの協力が保障措置の実施のみならず技術開発においても行なわれていることを高く評価した。

(2) 現状の問題点と今後の課題

 IAEA側の新しい査察機器の適用、各種査察機器の国内輸送・保管及び各施設に即した現状の問題点と今後の課題に関し、以下のような討議が行われた。

(A) IAEA側の新しい査察機器の適用

 新しい査察機器の現場における実証から実際の通常使用に至るまでの日・IAEA間の協力の手続きが確立していなかったため、種々の問題が生じていた。

 これを解決するために、新しい査察機器の実証(実演)及び通常使用に際し、予め目的、機器の性能、測定対象物、実証試験を行う施設等の情報を公式にIAEAから日本へ提出させ、日本側の技術的検討を含む総合的判断が行える手続きを確立した。

 なお、現在の個別の問題については、以下の通りである。

(ⅰ) 核燃料製造施設においてNCC(Neutron Coincidence Collar;中性子同時計数装置)の実証をIAEAが提案していたが、日本側は、中性子源使用の許可が必要であること及び測定器の着脱の際燃料表面に傷をつけない改善の必要なことなどを指摘し、今後、実施のための情報交換を行うことで双方了承した。

(ⅱ) プルトニウム燃料製造施設(PPFF)におけるHLNCC(High Level neutron coincidence counter;高水準中性子同時計数装置)の通常使用をIAEA側が提案していたが、通常使用に対する技術的検討を日本側が行うに足る実証試験結果をIAEA側から提出するよう要求した。今後、実施のための情報交換を行うことで双方了承した。

(ⅲ) 発電用原子炉の使用済燃料に対する査察機器として、IAEA側がNVD(Night Vision Device;チェレンコフ光視認装置)の通常使用を提案していたが、本装置の使用時は、室内の照明を消す必要がある。日本側は、作業安全上問題のあることを述べ、通常照明状態で紫外波長(チェレンコフ光の波長領域)のみ選別できる装置の適用の技術的開発の可能性を説明した。IAEAは、JASPASによってこの技術の実証がなされることを期待する旨述べた。

(B) IAEAの査察機器の国内移動・施設内保管について

(ⅰ) PPFF(プルトニウム燃料施設)、FCA(高速炉臨界実験装置施設)等に保管されているIAEAの査察機器が、施設側の作業現場に置き去りになっているため、本来の作業に不都合を生じており、かつ、移動が容易でないこと(大きな梱包、重量物である)に加えて、管理責任も不明確であるため、これらを解決するために、日本側から、査察機器を可搬型架台に収納して移動容易な保管方法を採ること及び施設者の善良な管理以上の責任は負えないことを指摘した。今後、IAEA側でこの問題解決に努力することで了承された。

(ⅱ) IAEAの査察機器の国内移動について

 従来は、日本側が輸送業者との交渉等行って来たが、IAEAの長期駐在査察員制度が確立した現在は、輸送業者との交渉を長期駐在査察員が行うこととし、科学技術庁、施設者及び輸送業者間の連絡フォーマットを確定した。

(C) 個別施設における査察適用上の問題
(ⅰ) 東海再処理工場のPu溶液貯槽の較正

 東海再処理工場にある7基のPu溶液貯槽のうち3基の貯槽の較正(溶液レベルと容量の関係)をIAEA査察員立会いのもとで行う必要があるとの指摘が従前よりあった。しかし、再処理の運転計画上の問題及び較正に伴う廃液処理上の問題から日本側は、これまでこの要求に対して回答を延引していたが、今回運転に支障をもたらさないタイミングで1回に1基づつ貯槽の最高液面まで1回の計測により較正を行うことで解決した。

(ⅱ) 核物質の封印システム

 IAEAによるシールされた核物質に対するNDA(非破壊分析)を行う基準、FA(施設附属書)の取極内容以外のシールに対する要求等に対しては、IAEAの政策ペーパーの作成をまって日・IAEA間で協議して行くこととなった。

 なお、FCAのPu/HEU Bird.Cage(貯蔵容器)の封印に関し、日本側の改善案を提案し、IAEA側はこの案について更に技術レベルでの検討をつづけることで了承した。

(D) 査察データ、査察スケジュール等
(ⅰ) 通常査察での計量記録検認

 期間がIAEAと日本側で異っていることについて、データの相互確認が出来ないことなどを指摘し、検認期間の一致を日本側が提案した。検討の結果、IAEA側が日本の提案する査察時から査察時までの期間単位とすることについて内部で検討することを了承した。

(ⅱ) 査察スケジュールについて

 IAEAより日・IAEA協定上の我が国の義務とされている6ケ月毎(1月~6月、7月~12月)の長期査察スケジュールを各期間に先立ち3ケ月以前に日本側からIAEAに提出するよう要求があり、日本側はできる限りIAEAの要望に沿うよう今後努力していくことを述べIAEAもこれを了承した。

(ⅲ) 核物質の国際間移動(輸出入)を一元的にIAEAが把握出来るようにするために、輸出入時の移動報告で両国のバッチナンバー(管理番号)の対応が取れるように改めるIAEAの勧告が56年12月に出されたが日本側は、すべての国がこの勧告を受け入れ、同時に実行することを条件として、近い将来我が国はIAEAの勧告を実施していくこととした。

(ⅳ) 査察時に採取された試料の分析に関して、日本側の努力により、分析結果及び出荷の時間短縮に顕著な成果を納められたことが確認された。更に、日本側からPAT-Ⅱ型収納容器の使用に係る問題点等を指摘するとともに今後の改善の方向として、レジンビーズ技術開発及びこれに伴う郵便輸送上の問題解決に努力を集中することを述べIAEA側もこれを了承した。

(E) 長期滞在査察員等

 長期駐在査察員、補助員等に関し、IAEA側は、正式なフィールドオフィスを日本に設けたい希望を述べ、合同委員会はこれをテークノートすることとした。

(F) その他

(ⅰ) JRR-3の使用済燃料を現在の貯蔵プールから乾燥保管施設へ移送する件について、日本側より資料に基づき計画の概要を述べた。この移送に係る保障措置の適用について検討を進めており今後、国内査察の内容を決めたのち、IAEAに資料を提出する旨を説明した。

(ⅱ) 第3回共同分析の提案資料に基づき、再処理工場における試料の過去2回の共同分析について概略を説明したのち、第3回共同分析では、再処理工場における製品側から採取した試料及びウラン濃縮プラントで採取した試料の2種類を対象とすることを提案し、IAEAは了承した。

(ⅲ) TASTEXで開発された査察のための機器の通常使用への導入スケジュールについて、資料に基づき日本側から説明を行い、IAEA側は了承した。

(3) FA(Facility Attachment;施設付属書)の一部変更等の現状について

 日本側からFAの一部変更等について、改正案を公式にIAEAへ提出していて回答のないものについて資料(一覧表)を提出し、説明し、IAEA側は、これを確認した。

4. 今後の対応

(1) IAEA側は過去1年におけるIAEA保障措置に対する批難、あるいは国際的信頼性の見地から危機感を抱いており、これらの批判に応えていくためには、保障措置上重要な施設(再処理、濃縮、MOX燃料加工、高速増殖炉)において適切に保障措置が適用されていることを実証していく以外には方法がないとの認識を有しており、これらの施設を有する日本における保障措置適用が単に日/IAEAの問題のみならず国際的にも極めて重要であることを強調した。そして、かかる観点から日本のより積極的かつ建設的なIAEAへの協力を期待していることをくりかえし述べていた。

 この様な状況を受け、我が国としては、IAEAの保障措置の改善については、単に受け身に対応するのではなく、積極的に我が方からの改善案の提出等の協力をしていくことが重要である。

(2) 我が国の原子力活動の活発化に伴い、保障措置技術もIAEA及び我が国の努力により改善されつつあるが、今日の討議を通じ、このような新しい保障措置技術をどのようにして我が国における実際の査察の適用に組み入れていくかの手続きの確立の必要性が我が方及びIAEAの双方で痛感され、基本的な手続きについて合意したことは大きな前進であった。

 今後は更に個別問題について事業者-国-IAEA間の密接な情報交換が必要である。

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