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高レベル放射性廃棄物処理に関する研究開発の推進について



昭和55年12月19日
放射性廃棄物対策専門部会

1. 放射性廃棄物を適切に処理処分することは、今後の原子力研究開発利用を推進していく上での重要な課題であり、原子力委員会は、昭和51年10月、「放射性廃棄物対策について」を決定し、放射性廃棄物対策の基本方針を示しているところである。また、放射性廃棄物処理処分に関する研究開発の推進については、放射性廃棄物対策技術専門部会が、昭和51年6月に策定した研究開発計画に沿って、動力炉・核燃料開発事業団、日本原子力研究所等における研究開発が進められてきたところである。

2. 放射性廃棄物対策専門部会は、昭和51年10月の原子力委員会決定に示されている基本方針を踏まえ、低レベル放射性廃棄物及び高レベル放射性廃棄物の処理処分の全般にわたる放射性廃棄物対策に関し、今後の推進方策を調査審議することとしているが、今般、これらのうちの高レベル放射性廃棄物の処理処分の研究開発のみに焦点をあて、従来の研究開発計画を見直し、新しい研究開発計画を策定したので、ここに報告する。

 当専門部会としては、今後この報告に基づき、高レベル放射性廃棄物処理処分に関する研究開発を一層強力に推進していく必要があると考える。

3. なお、当専門部会は、今後引き続き、低レベル放射性廃棄物処理処分対策等について精力的に調査審議を進めていくこととしている。


 T 基本的考え方

1. 再処理施設から発生する高レベル放射性廃液には、放射性物質として核分裂生成物、アクチノイド元素(Am、Cm等)、ウラン、プルトニウムの抽出回収残渣、混入物として硝酸、アルカリ塩、腐食生成物(Fe、Cr等)等が含まれている。これらの種類や量は、燃料の種類、燃焼度、冷却期間等によって多少異るが、量的には少ないものの、極めて高い放射能を有し、かつ、長半減期の放射性物質を含むので、それらによる環境の汚染と公衆の放射線被曝を長期間防止する見地から、放射能が減衰し、環境への影境が十分軽減されるまで生活圏から隔離する必要がある。

2. 高レベル放射性廃液は、安定な形態に固定し、一時貯蔵した後、処分する。

 即ち、

(1) 廃液は、固化処理に適する状態になるまで減衰冷却させるため、タンクに一定期間貯蔵する。

(2) 固体化にする。(実用化が近いものとしてホウケイ酸ガラス固化が目標とされている。これは、廃液を脱硝・濃縮又は仮焼して、ガラス素材と混ぜて溶融し、キャニスターに封入する方式である。)

(3) 固定化を処分に適する状態になるまで冷却のため、一定期間貯蔵する。

(4) 処分する。(当面地層処分に重点をおく。)

 なお、処理処分にあたっては、安全評価を十分行うものとする。

3. 以上のような考え方のもとに、昭和51年の放射性廃棄物対策技術専門部会「放射性廃棄物対策に関する研究開発計画」(中間報告)に沿って、動力炉・核燃料開発事業団(以下「動燃」という。)及び日本原子力研究所(以下「原研」という。)を中心に鋭意研究開発が進められている。

 また、この間に、動燃の東海再処理施設の試験運転により、高レベル放射性廃液が同施設のタンクに貯留され始めているほか、再処理事業民営化のための核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の改正、日本原燃サービス(株)の設立等により、民間再処理工場を設置するための諸準備がなされている。

 本報告は、これらの状況を踏まえ前回の中間報告を見直し、今後の研究開発促進のため、研究開発計画の再検討を行ったものである。本報告は、近い時点のものは詳しく、将来のものは全体の展望が明らかになることを念頭においてまとめており、研究開発の進捗に応じて修正が加えられるべきものである。

4. ここに示された研究開発項目は、この問題の重要性に鑑み、国のプロジェクトとして位置付けし、国をあげて推進する体制を作ることが重要である。また、放射性廃棄物問題は各国共通の問題であり、国内における研究開発との関連に留意しつつ、国際協同プロジェクトへの参加、二国間協力の推進を図る必要がある。

5. また、ここに示された研究開発項目は、我が国において発生する高レベル放射性廃棄物の処理処分対策の推進のみならず、返還廃棄物対策の一環をも成するものであり、研究開発はこの点も念頭において推進する必要がある。

 U ガラス固化処理技術開発

1. ガラス固化処理技術開発の基本的考え方

@ 固定処理技術にいては種々の方法について研究開発が行われているが、近い将来実用化が見込まれ、世界的に固化処理技術の主流となっているのはホウケイ酸ガラスによる固化処理技術(以下「ガラス固化」という場合は、「ホウケイ酸ガラスによる固化」を指す。)である。したがって、これに重点をおいて研究開発を進め、その成果を集約して固化・貯蔵パイロットプラントを建設、運転し、ガラス固化処理(及びこれに伴う一時貯蔵)技術の実証を行うことを目標とする。

A @と並行して、固化、貯蔵、輸送等に各工程における安全性評価に必要なガラス固化体の安全評価試験を進める。

 それらの結果は、当面、固化・貯蔵パイロットプラントの設計、建設、英国及びフランスへの再処理委託に伴う返還ガラス固化体の受け入れに関する一連の検討に利用する。

図−1 ガラス固化処理技術開発の全体像


2. ガラス固化の工程と研究開発項目

 ガラス固化処理技術は、廃液前処理技術、オフガス処理技術、ガラス溶融技術及びキャニスター・ハンドリング技術からなっている。

 これらの技術及び一時貯蔵技術とガラス固化の工程との関連は図−2のとおりである。

 また、それぞれの工程に関連した安全評価のための研究を並行して行う。

図−2 ガラス固化の工程と研究開発項目


3. ガラス固化処理技術開発の手順

 ガラス固化処理技術は、高レベルの放射性物質を扱うため、図−3に示すように、コールド試験とホット試験、実験室規模での試験と工学規模での試験を組み合わせて、順を追って開発を進めることとする。

 一方、これと並行して進められる安全評価試験は実験室規模におけるコールド試験及びホット試験を行う。

図−3 ガラス固化処理技術開発の手順


4. ガラス固化処理技術開発の進め方

 ガラス固化処理技術の研究開発は、技術の実証を行うための施設である固化・貯蔵パイロットプラントを昭和62年度に運転開始することを目標に進めている。この固化・貯蔵パイロットプラントの建設運転に当っては、以下に示す各種の研究開発が必要である。

(1) 工学規模コールド試験(模擬廃液固化処理試験)

 現在、@廃液前処理技術開発、Aガラス溶融炉技術開発、Bオフガス処理技術開発、Cキャニスター及びハンドリング・システム開発、D一時貯蔵技術開発について工学規模コールド試験を行っており、昭和56年度からこれらの成果をモックアップ試験に発展させることとしている。これらの成果は、固化・貯蔵パイロットプラントの設計、建設及び実証運転に反映させる。

図−4 ガラス固化処理に関する主要な技術開発スケジュール


(2) 実験室規模ホット試験(実廃液固化処理試験)

 現在建設中の高レベル放射性物質研究施設(Chemical Processing Facility、以下「CPF」という。)を使って、昭和56年度から実廃液による固化処理試験を行う。その成果は、固化・貯蔵パイロットプラントの設計、建設及び実証運転に反映させる。

(3) 工学規模ホット試験(実証試験)

 (1)及び(2)での成果を活用しつつ、昭和62年度固化・貯蔵パイッロットプラントの運転開始を目標に、設計及び建設を進める。その一環として昭和55年度には、概念設計、昭和56年度には基本設計を行う。

(4)安全評価試験

 現在、種々の廃液組成による模擬廃液ガラス固化体を用いたコールド試験を行っているが、これと併せて昭和57年度からは放射性核種を添加した合成廃液で作られたガラス固化体を用いたホット試験を、廃棄物安全試験施設(Waste Safety Testing Facility、以下「WASTEF」という。)において開始する。これに引き続き、昭和61年度からは実廃液で作られたガラス固化体を用いたホット試験を開始する。

 これらの成果は、ガラス固化体及び固化・貯蔵パイロットプラントの安全審査及び運転管理上の規制基準の作成に反映させる。

5. ガラス固化処理技術開発課題

(1) 工学規模コールド試験(模擬廃液凝固化処理試験)

@ 廃液前処理技術開発

 廃液をガラス形成材とともに溶融固化するためには前処理を行う必要がある。その方法としては、廃液を脱硝・濃縮し、ガラス形成材とともにそのまま溶融炉へ供給する方法と、先ず「仮焼体」を作り、それをガラス形成材と混合し、ガラス溶融炉へ供給する方法との2通りが主力と考えられている。このため、現在までは、最適な技術を求めて、脱硝・濃縮研究開発を進めるとともに、仮焼技術については流動床仮焼法及びスプレー仮焼法について研究開発を進めてきた。

 昭和56年度からは、これらの方法のうちから、固化処理工程の前処理法として最適と考えられる脱硝・濃縮法に絞って、固化処理モックアップ試験によってコールドでの技術を確立する。

A ガラス溶融炉技術開発

 前処理された廃液をガラス形成材とともに溶融する溶融炉の開発及び炉の運転、保守、除染及び解体に関する技術開発を進める。

 このため、現在まで最適な技術を求めて、直接通電ガラス溶融及び高周波ガラス溶融の2種類の溶融炉について工学規模での溶融試験を行ってきた。

 昭和56年度からは、これらの方法のうちから、溶融法として最適と考えられる直接通電ガラス溶融法に絞って、固化処理モックアップ試験によってコールドでの技術を確立する。

B オフガス処理技術開発

 廃液前処理時及びガラス溶融時に発生するオフガス中の主要放射性核種であるルテニウム、セシウム及びオフガスの主成分であるNOXについて重点的に処理技術開発を行う。

 ルテニウムの除去方法として、シリカゲル酸化鉄等の吸着材による吸着試験を行う。

 また、NOX除去方法として、触媒による分解除去試験及びスクラバーによる洗争除去試験を行う。

 これらの方法のうちから、今後固化・貯蔵パイロットプラントに採用する方法を絞り、昭和56年度から固化処理モックアップ試験によってコールドでの技術を確立する。

C キャニスター及びハンドリング・システムの開発

 長期にわたる機械的健全性の要求を充たすキャニスターを開発するとともに、溶融ガラスの充及びその後の密封のための溶接、貯蔵前の除染等一連の後処理及び検査のための技術システムを開発する。

 また、搬送中における落下事故を考慮し、落下時の健全性の評価等も行う。

 現在、溶融ガラスの充から溶接、除染、搬送の一貫したシステムを作成し、試験を進めている。

 これらを総合して、昭和56年度から固化処理モックアップ試験によってコールドでの技術を確立する。

D 一時貯蔵技術開発

 固化後、処分までには冷却のための貯蔵施設での貯蔵が必要である。この貯蔵施設の具備すべき条件の把握及び施設の建設、運転、保守等に係る技術の開発を行い、固化・貯蔵パイロットプラントの設計、建設、実証運転に反映させる。

 一時貯蔵時の最も大きな問題は除熱対策である。除熱対策としては、水冷方式及び空冷方式があるが、水冷方式は使用済燃料の貯蔵経験が活かされるものと考えるので、当面の研究開発は空冷方式を対象としている。即ち、解析による検討及び実験装置を用いた計測により強制空冷及び自然空冷のそれぞれについて冷却特性の研究を行い、この成果を固化・貯蔵パイロットプラントの設計に反映させる。

(2) 実験室規模ホット試験(実廃液固化処理試験)

 実廃液を使って作られたガラス固化体の特性を調べ、その結果を逐次固化・貯蔵パイロットプラントの設計・建設に反映する。

 このための施設として、CPFの建設を現在進めており、昭和55年度中に完成し、試運転を開始する予定である。この施設では、実廃液を用いて、以下のような試験を行う。

@ 廃液前処理、ガラス溶融、キャニスター充、溶接及びそれらのプロセスから発生するオフガスの処理等、ガラス固化に関連する一連の試験
A 非破壊検査による廃棄物の均一性の検査及びヘリウムの漏洩検査
B できあがったガラス固化体の物性時間的変化の計測
C ガラス固化体の強度等機械的物性検査、浸出試験、伝熱特性試験
(3) 実証試験(固化・貯蔵パイロットプラント)

 模擬廃液固化処理試験及び実廃液固化処理試験の成果等をもとに、動燃の再処理施設に対応する規模の固化・貯蔵パイロットプラントの建設を進め、昭和62年度から実施試験を開始することを目標とする。

 このため、現在、種々のケースを想定して概念設計を行っており、今後基本設計、詳細設計を進める。

(4) 安全評価コールド試験

 種々の模擬廃液によってガラス固化体を作製し、ガラス組成、溶融条件等をパラメーターに密度、熱伝導率、熱膨張率、軟化温度、浸出率等の特性を各種の方法により評価するとともに、化学的熱的安全性、機械的強度の評価を行うにあたって必要となるデータの計測方法を明らかにする。

 これまで、国内及び諸外国で考えられている廃液組成で固化体を作製し、上記の項目について種々の方法で、例えば浸出率については粉末煮沸法、ソックスレイ法、高温高圧法で試験を行い、データの収集、解析、検討を行ってきたが、今後は昭和57年度からの安全評価ホット試験に備え、上記安全評価項目についての計測方法の特性をとりまとめる。

(5) 安全評価ホット試験

 放射性核種を添加した合成廃液によるガラス固化体を用い、(4)に記した安全評価項目に対する計測を昭和57年度から、また、実廃液で作製したガラス固化体を用いて同様の計測を昭和61年度からそれぞれWASTEFにおいて行う。

 現在、この安全評価ホット試験を行うための施設であるWASTEFを建設中である。


 V 地層処分研究開発

1. 地層処分研究開発の基本的考え方

(1) 地層処分の意図するところは、地層中に埋設した放射性廃棄物からの放射能の人間環境に対する影響が放射能の減衰によって充分小さくなるまでの間、人間環境から放射性廃棄物を隔離することであり、その手段として「障壁(バリア)」と「人間環境からの距離」を利用することである。処分された廃棄物と人間環境をつなぐ媒体は地下水による溶解と運搬であり、この観点から、できるだけ地下水が少ない安定した地層を選出するよう努めるとともに、多重バリアの考え方、即ち、「地層という天然バリアに工学的バリアを組み合わせることによって処分システムを構成する」という考え方を処分の基本的概念とする。

(2) 地層処分の研究開発には、極めて長期間を要するため、全体として整合性のとれた研究開発を合理的に進めていくためには、長期的な展望のもとに段階的に研究開発を行い、各段階の成果を踏まえて次の段階に進むものとする。

2. 地層処分研究開発の手順と研究開発項目

図−5 地層処分研究開発の全体像

 また、これらの研究開発と並行して安全評価に関する研究を進め、各階段における処分技術の評価に反映させる。

 各段階において行うべきことについては、図−6に示すとおりであり、「可能性ある地層の調査」については、研究開発の手順及び研究開発項目が明確になっているが、その先の段階についての研究開発の内容については、展望的な形でまとめている。したがって、これらの手順は、それぞれの段階の進捗に応じて明確化されることになる。

 図−6の手順部分の右欄の研究開発の内容については主として動燃が、中央の棚の内容については国が、左欄の安全評価研究の内容については主として原研がそれぞれ担当する。

図−6 地層処分研究開発の手順と研究開発項目


3. 地層処分研究開発の進め方

 当面の中心課題は、可能性ある地層の調査にある。このため、動燃においては、以下に示すように、@地層に関する調査研究、A工学バリアに関する研究及び、B地層処分システム研究を行い、これらの成果を踏まえて、昭和58年度に可能性ある地層について総合評価する。その結果を、国のしかるべき評価機関においてチェックし、次の段階の広域調査を行うべき有効な地層を国として選定する。

 また、原研においては処分技術開発の各段階において必要となる安全評価に関する研究開発を進める。

(1) 地層に関する調査研究

 可能性ある地層の賦存状態を明らかにするために文献調査及び地質概査並びに水理機構調査を行うとともに、天然バリアとしての地層の機能を明らかにするために岩石特性試験、透水性試験及び核種吸着試験を行い、地層の包蔵性を調査する。

(2) 工学バリアに関する研究

 地層という天然バリアに組み合わせる工学バリアに関して、グラウト技術及び緩衝材技術を開発するとともに、工学バリアの有効性を評価するための健全性評価試験及び工学バリアと地層の両立性試験を行う。

(3) 地層処分システム研究

 我が国に適した地層処分システムの概念を明らかにするとともに、固化体、工学バリア及び地層の各バリア並びに処分システムの性能評価を行う。

(4) 安全評価に関する研究

 高レベル放射性廃棄物の処理処分が人間に与える影響を評価するため、処分後発生する事象の解析、安全評価シュミレーションモデルの作成及び安全評価用データの蓄積を行い、安全評価手法を確立する。

 これらの成果を踏まえて試験地の総合安全評価を行う。

図−7 可能性ある地層の調査開発スケジュール

図−8 地層処分研究スケジュール


4.地層処分研究開発課題

(1) 地層に関する調査研究

@ 地層賦存状態の調査

(a) 文献調査及び地質概査

 地層処分の研究の観点から、我が国において広範に分布している地層(岩種)及び諸外国において研究の対象とされている地層(岩種)について、我が国における分布状況を文献調査により把握するとともに、地震、活断層、洪水、人口密度及び環境状況等自然的、社会的要因について文献調査を行う。

 また、地方資源調査、学術調査等の既存の地質資料を収集、解析し、地層の賦存状態の概略を明らかにするとともに、地質概査を行う。

(b) 水理機構調査

 高レベル放射性廃棄物中に含まれる放射性核種を人間環境に運ぶ主な要因は地下水の移動であり、その移動速度や方向等の水理機構を解明する必要がある。そのため、地下資源開発等の分野で得られたデータを収集、整理し、水理モデルを開発する。

A 包蔵性の調査研究

 地層処分における天然バリアを評価するために岩石の透水性、核種吸着性及びこれからに対する熱や応力の影響等地層の包蔵性を調査する。

(a) 岩石特性試験

 一般的なサンプル及び深部地層から採取したサンプルによる岩石の強度、熱影響、放射線影響等の特性を調べる。

(b) 透水性試験

 処分環境を模擬した条件下の試験及び地下空洞を利用した試験により地層の状態と透水性の関係を調べる。

(c) 核種吸着性試験

 文献調査及び試験により核種吸着性に関する基礎的データを収集するとともに、トレーサーを用いた原位置試験を行い、地層の核種吸着性を調べる。

 なお、OECD/NEAにおいて核種の吸着性に関する国際データバンクシステムが企画されており、これに参加することにより有効なデータの取得に努める。

(2) 工学バリアに関する研究

 地層という天然バリアに組み合わせる工学バリアに関して、地下水の浸入を防ぐ機能及び核種移行を遅延させる機能を有する材料の選定、開発及び施工技術を開発する。

@ グラウト技術の開発

 処分場建設時のシャフト(立杭)、トンネル(坑道)等の堀削時に地層にかかる応力により影響を受けた部分を修復し、母岩と緩衝材との境界を補強するグラウト技術を開発するため、適切なグラウト素材を選定するための試験及び地層中への注入技術を開発する。

A 緩衝材技術の開発

 放射性核種の移行の媒体となる地下水の浸入を防ぎ、また、一旦地下水が浸入し、放射性核種を溶かした後は、核種の移行を抑制する効果を持つ緩衝材技術を開発するため、適切な緩衝材を選定するための試験及び施工法の開発を行う。

 なお、緩衝材としては、オーバーパック、処分孔と固化体の間隙を埋める充材、トンネル、シャフトの埋め戻し材、試錐孔あるいはモニタニング孔等に施こす栓等があり、それぞれの目的に合わせた素材及び施工技術の開発を行う。

B 健全性評価試験

 処分後環境を模擬した条件における工学バリアの健全性評価及び工学バリアと地層との両立性試験を行う。

 なお、OECD/NEAストリパ計画は、これらの観点を含めた原位置試験を当面の開発課題としており、これに参加することにより我が国の試験研究に反映させる。

(3) 地層処分システム研究

@ 地層処分システム設計

 地層処分システムに要求される機能、処分する廃棄物の特性、現状で想定される工学的対応及び地層条件の情報等をもとに、システムの概念を明らかにする。

A 性能評価研究

 地層処分システムを構成する各バリアにおける移行経路を想定して核種の移行シナリオを策定する。

 これをもとに、固化体、工学バリア及び地層のそれぞれの隔離性または移行遅延効果を数式化し、固化体及び処分環境から与えられる条件をもとに解析モデルを作成する。

 次に、地層に関する調査研究及び工学バリアに関する研究により収集・蓄積されたデータをもとに解析を行い、各バリア及び処分システムの性能評価を行う。

 なお、OECD/NEAの核種移行シナリオのワークショップに参加することにより、シナリオの作成に当たって諸外国の例も参考とする。

(4) 安全評価に関する研究

 放射性廃棄物の処分が、人間に対し与える影響を評価する。

 具体的方法としては、

@ 地層処分開始後発生することが予想される事象とその発生確率の推定を行う。

A それらをシステム化した核種の環境移行経路モデル及び環境被曝解析モデルを作成する。

B モデルに組み込む種々のデータの測定を行う。

C モデルに試験地のデータを入れ、試験地の総合安全評価を行う。

@ 事象解析

 処分地点から人間の環境に放射性物質が移行する原因となる事象はどのような内容か、また、その発生確率は、どの程度かを解析・検討する。

 このため、フォルト・ツリーを作成するとともに、それらに発生確率値を付与し確率計算を行う。

A 安全評価シュミレーションモデルの作成

(a) 環境移行経路モデルの作成

 最も発生確立の高い事象により環境移行経路のシュミレーションモデルを作成し、海、河川、湖沼への放射性物質の移行量を計算する。

(b) 環境被曝解析モデルの作成

 事象解析、環境移行経路モデルによって推定される地表への核種放出量をもとに、人間環境における放射性物質の移行経路を解析し、個人及び集団の被曝線量を評価する。

 このため、人間環境中における放射性物質の移行経路モデルの解析によって人間に対する被曝線量を計算するとともに、それらの生起確率を考慮してリスクの算定と評価を行う。

B 安全評価データ

 実験室規模でホット試験を行うとともに天然バリアと地層バリアに関する安全評価手法の屋外確認試験を行うことにより、次に続く試験地の安全評価のためのデータを得る。

C 試験地の総合安全評価

 模擬固化体現地試験、実固体化現地試験及び試験的処分の各段階を通じて長期モニタリングシステム及び総合安全評価手法の開発、実証を行う。


W その他

 高レベル放射性廃棄物対策及びこれに必要な研究開発を全体として、整合性のとれた形で体系的に進めていくためには、「管理システムに関する調査研究所」が必要であり、又、将来ガラス固化体を移動させる必要が生ずるので、これに備えた「輸送に関する研究開発」が必要である。

 更に、処理処分に関して、現在開発を進めている技術に代替するような技術の開発、即ち、より優れた固化方式に関する研究開発、群分離・消滅処理に関する研究開発、処分の実施が遅れた場合の長期貯蔵に関する研究開発、海洋底処分に関する調査も推進する必要がある。

 一方、高レベル廃液とは性状の異なるハルの処理については、放射化された金属片であること及び核分裂生成物やウラン、プルトニウム等が付着していることを考慮したうえで、これまでの調査検討を踏まえて減容処理技術開発を進める。

1. 管理システムに関する調査

 固化、貯蔵、輸送、処分等放射性廃棄物の管理に関しては、我が国の環境に適合し、国民的合意が得られるよう、安全性に重点をおき、合理的な管理システムの検討を行い、本格的処理処分方策の確立を図る必要がある。

 このため、長期的かつ全体的な放射性廃棄物管理の観点から、高レベル放射性廃棄物管理シナリオの検討、作成を行い、技術面、制度面、法的面など総てを織込んだシナリオを作成する必要がある。

2. 輸送に関する研究開発

 ガラス固化体の輸送については、既に実施されている使用済燃料の輸送の経験と実績が十分活かされるものと考えるが、輸送に帰因する各種要因により放射性物質の漏洩等許容限度を超える物性の変化等を起こさないように配慮することが重要である。

したがって、今後このための最適輸送システムを考慮した輸送機器の整備、輸送前後におけるガラス固化体に関する検査方法の検討、輸送の安全評価及び輸送機器の検討に資するために、輸送容器の衝撃特性、熱特性、耐圧特性等についての検討を進める必要がある。

3. 新固化方式等に関する研究開発

 現在実証段階にあるホウケイ酸ガラスと比較して、貯蔵時及び処分時の耐久性に優れた固化体を開発することを最終目標として、当面諸外国においても研究開発を進めている金属マトリクス法、結晶化ガラス法及び焼結固化法等の研究開発を進める。

 このうち、金属マトリクス固化技術については、金属マトリクス固化体製造試験、ガラスビーズ製造試験等を進め、溶融ガラスのビーズ化から、マトリクス固化までプロセスの概念設計を行う。

 結晶化ガラスについては、溶融固化条件、最適組成等についての調査研究を進める。

 焼結固化については、セラミックス焼結固化及び金属複合焼結固化に関し、焼結技術、固化体の最適形状に関する検討を進める。又、鉱物組織を利用した岩石固化法についても調査検討を行う。

4. 群分隔等に関する研究開発

 高レベル放射性廃液から、ストロンチウム、セシウム、超ウラン元素を分離する群分離、超ウラン元素を短半減期核種に変換する消減処理は未だ世界的に確立されておらず、実用化までには多くの解決すべき問題があるとされており、我が国においても、当面、基礎研究を進めていくこととする。

@ 群分離

 我が国においては、消滅処理することを目標として超ウラン元素を分離する研究開発及び固化処理することを目的としてストロンチウム、セシウムを分離する研究開発を進めている。現在は、溶媒抽出法とイオン交換分離法により、実廃液を用いた分離試験に着手しているが、今後、当面昭和58年度まで実廃液分離試験を行い、分離回収率、安全性及び経済性等について検討する。

A 消滅処理

 これまで炉物理上の理論計算を行うなどその可能性について検討を進めてきた。

 今後は、当面、臨界実験装置等を用いて基礎データの収集を図っていく。

5. 長期貯蔵に関する研究開発

 一時貯蔵を行い、冷却後は、処分を行うこととしているが、万一の技術開発の遅れ、その他の事情から冷却後直ちに処分が可能でない場合は、さらに、長期の貯蔵が必要になる場合も考えられる。

 このような場合も一応考慮に入れ、「一時貯蔵の応用技術」の観点から貯蔵施設に使用される構造材料の耐蝕性、機械強度、物理化学的特性等に関する長期健全性について検討を行うとともに、それらの健全性が失われた場合の検出方式及び補修方式についても検討し、長期貯蔵に関する意識決定のための技術的基礎を整える。

6. 海洋底処分に関する調査研究

 高レベル放射性廃棄物の地層処分の代替法として海洋底処分の調査研究がOECD/NEAを中心に進めらている。我が国においても、このNEAの活動への協力の一環として昭和53年から文献調査により、我が国周辺海域を対象に高レベル放射性廃棄物の海洋底処分の可能性に関する調査研究を開始した。

 当面、この活動の中で、@海水の物理化学特性、海水の流動状況等の海洋構造 A海洋底地形、海洋底推積物、海洋底の構造等の海洋底地質構造 B漁業資源、海産生物の放射能バックグラウンド等の海洋性生物に関する調査を進めている。

 今後とも、OECD/NEAの活動の中で各国との情報交換を中心に調査研究を進めていく必要がある。


X 審議経過

 本専門部会は、昭和54年1月23日、原子力委員会において設置が決定され、別紙1の構成員により昭和54年4月19日に第1回専門部会を開催し、調査審議を開始した。以来、別紙2のとおり12回にわたる調査審議の結果、本報告書をとりまとめた。

別紙 1

放射性廃棄物対策専門部会構成員


別紙 2

放射性廃棄物対策専門部会開催状況
第1回 昭和54年4月19日(木)
第2回 昭和54年6月6日(水)
第3回 昭和54年7月17日(火)
第4回 昭和54年10月9日(火)
第5回 昭和54年12月25日(火)
第6回 昭和55年2月26日(火)
第7回 昭和55年4月8日(火)
第8回 昭和55年5月22日(木)
第9回 昭和55年6月20日(金)
第10回 昭和55年7月23日(水)
第11回 昭和55年8月28日(木)
第12回 昭和55年10月16日(木)


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