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日本原子力船開発事業団法の一部を改正する法律について


原子力局原子力開発機関監理官室

 我が国における原子力船の開発については、昭和38年、日本原子力船開発事業団を設立し、原子力第一船「むつ」の開発を進めてきたが、昭和49年9月の放射線漏れの発生等の事情により、その開発計画は大幅に遅延している。このため、我が国の原子力船に関する技術は、既に原子力船の建造・運航の経験を有する米国、西独等の先進諸外国に比して、かなり遅れた段階にあると考えられる。

 政府は、このような情勢にかんがみ、我が国における今後の原子力船に関する研究開発の進め方について改めて検討を加えた結果、エネルギー資源に乏しく、かつ、世界有数の造船・海運国である我が国としては、海運の分野におけるエネルギー供給の多様化及び安定化を図る見地から、長期的な観点にたって原子力船に関する技術を着実に蓄積していくことが必要であるとの結論に達した。すなわち、「むつ」については、所要の修理・点検を完了したうえで実験航海等を実施し、実験船として最大限の活用を図ることとし、さら

に、「むつ」開発の成果を踏まえつつ将来における原子力船の経済性、信頼性の向上をめざした研究開発を推進する必要があると判断した。

 このためには、現在の日本原子力船開発事業団に所要の研究開発機能を付与し、「むつ」の開発を引き続き進めるとともに原子力船の開発に必要な研究を行う機関に改組することが適当である。改正前の日本原子力船開発事業団法は、昭和55年11月30日までに廃止するものとされているが、これは、同事業団法改正の政府原案が昭和52年の第82回国会において一部修正のうえ議決されたものである。その修正の趣旨は、日本原子力船開発事業団が原子力船についての研究開発機関に移行するための必要な措置として、同事業団法の廃止するものとされる期限を前述の期日まで延長するというものであり、今回11月29日の日本原子力船開発事業団の改組は、この修正の趣旨にも沿うものである。

 今回の法改正は、以上のような判断から、現在の日本原子力船開発事業団を改組し、従来の「むつ」開発業務に加えて原子力船の開発に必要な研究業務を行う日本原子力船研究開発事業団とするものである。

 なお、11月26日に成立した本法律においては、改正前の日本原子力船開発事業団法の廃止に関する規定を改正し、政府の行政改革計画に沿つて、昭和60年3月31日までに日本原子力船研究開発事業団を他の原子力関係機関と統合するものとし、このために必要な措置を講ずるものとすることを定めている。

 改正の概要は次のとおりである。

一 名称等

 名称を「日本原子力船研究開発事業団」に改め、法律の題名を「日本原子力船研究開発事業団法」とする。

二 目的

 日本原子力船研究開発事業団の目的を、原子力船の開発及びこれに必要な研究を行い、もつて我が国における原子力の利用の促進並びに造船及び海運の発達に寄与するものとする。

三 業務

 日本原子力船研究開発事業団は、第二の目的を達成するため、原子力船の開発業務に加え、原子力船の開発のために必要な研究及び調査の業務を行うものとする。

四 統合

 政府は、昭和60年3月31日までに日本原子力船研究開発事業団を他の原子力関係機関と統合するものとし、このために必要な措置を講ずるものとする。

五 日本原子力船研究開発事業団への移行

 改正前の日本原子力船開発事業団は、この法律の施行の時において、日本原子力船研究開発事業団となるものとする。

六 その他

 罰則及び関係法律について所要の改正を行うものとする。



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