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その2.重イオン科学用周波数可変型線型加速器の完成について



理化学研究所

 理化学研究所において、昭和49年以来、20数億円を投じて、建設を進めてきた重イオン科学用線型加速器が3月に完成し、4月早々より試運転を行ってきたが、このたび重イオンの加速に成功した。

 この加速器は性能的にはネオンより重い総ての重イオンを直線的に加速でき、加速周波数に17〜45MHzの範囲で変化させることができる周波数可変型の線型加速器である。重イオンを加速できる線型加速器は我が国では最初のものである。(米国、ドイツにそれぞ

れ3台、英国、仏国、ソビエトに各1台ある。)また、加速周波数を変化させることができる線型加速器は世界ではじめてのものである。

 当研究所は、仁科芳雄博士以来、サイクロトロンを用いる研究では我が国において先導的な立場にあり、昭和41年には、従来我が国では加速できなかった陽子から酸素イオンまでの加速に成功しているが、これまでの技術電極に加えて、加速電極に加える高周波電

力の周波数を変化させる技術、清浄な超高真空をつくる技術等多くの技術開発を行い、この成果が、このたび重イオン加速の成功を産み出した。

 この加速器の完成により、原子物理学の研究はいうまでもなく、イオン打込みによる新しい特性をもつ材料の開発研究、重イオン照射による癌治療の研究、不純物の超徴量分析の研究等社会的要請の大きい研究についても新たな伸展が図られるものと期待されてい

る。

重イオン加速器

 なお、当研究所は、この加速器により得られる加速重イオンを更に加速する「リングサイクロトロン」の建設計画を進めており、その一部が昭和55年度より着手された。この一連の加速器が完成すると、世界有数の大型重イオン加速施設となるため世界の学会から注目を集めている。 (昭和55年4月)


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