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その1.「ふげん」の近況について



動力炉・核燃料開発事業団

1 はじめに

 「ふげん」は新型転換炉原型炉(重水減速沸騰軽水冷却型)として、動燃事業団が昭和45年11月に原子炉設置許可を得て、敦賀半島北端(福井県敦賀市明神町3番地)に着工し、8年有余の建設期間を経て昭和54年3月20日本格運転(定格電気出力165MW、原子炉熱出力557MW)を開始した。

 「ふげん」は本格運転開始直後の昭和54年4月1日に、事業所名を新型転換炉ふげん発電所とし、一般に「ふげん」の略称で親しまれている。

 新型転換炉は、軽水炉の使用済燃料を再処理して回収されるプルトニウム、減損ウラン等を有効に利用できる炉であり、その核燃料特性からみて、ウラン資源消費量及び濃縮作業量の節減、核燃料資源の弾力的活用等に優れた性能が期待されている。

2 「ふげん」の近況
(1) 54年度の運転実績
 本格運転開始以来「ふげん」は定格出力運転を続け、昭和54年6月と11月の2回の計画停止を行うとともに短期間出力を下げて運転し、主蒸気隔離弁試験及び制御棒パターン変更を行い、昭和55年2月1日から計画通り第1回の定期検査に入った。(図-1 参照)

 この結果昭和54年度に約10.5億KWHを発電し、その設備利用率は72.4%であった。

(2) 第1回定期検査
 定期検査の期間は解列から並列まで85日、最終検査まで105日を計画したが、実績工程は予定通りに推移し、5月15日最終検査を完了して定期検査の合格証の交付を受け、通常運転を再開した。(表-1 参照)

 以下に、定期検査の主要項目の実施状況をのべる。

(ⅰ) 燃料について

 原子炉運転中の炉水のヨウ素-131の濃度は、1×10-5μCi/㏄以下であり、原子炉停止後の炉内シッピングにおいても異常は認められず、燃料破損の徴候はなかった。取出した36体の燃料について外観、寸法検査を行い異常のないことを確認した。

(ⅱ) 主要点検作業について

(イ) 原子炉冷却系の再循環ポンプの点検
(ロ) 主蒸気隔離弁、蒸気ドラム安全弁、重水循環ポンプ等の分解点検
(ハ) 非常用炉心冷却系(高圧注水系、低圧注水系、急速注水系)及び隔離冷却系の自動起動試験
(ニ) 一次冷却材圧力バウンダリーの機器・配管に関する供用期間中検査(ISI)のうち10ケ年計画に基づいた54年度分として、蒸気ドラムの胴継手部及び低圧注水系のノズル取付部、入口管・上昇管等の配管溶接部の超音波探傷試験、液体浸透探傷試験、目視検査
(ホ) 燃料交換装置の開放点検
(ヘ) 制御棒駆動装置の分解点検及び局部出力検出装置(LPM)の取替
(ト) 非常用ディーゼル発電機の自動起動負荷検査

 以上の点検、検査及び試験の結果に特別な異常がなく、所定の機能・性能を満足した。

なお、タービン復水器伝熱管の点検の結果、浸食の認められるものについては一部塞栓を施した。

(ⅲ) 主な改造工事について

(イ) 定期検査の開始までに、使用済燃料貯蔵プールのラックの改造を行い、貯蔵容量の増加(270体分から730体分に)をはかった。

(ロ) 原子炉起動時の原子炉冷却水中の溶存酸素濃度を効率良く低減(SCC対策)させるため、原子炉浄化系配管を改造した。

(ハ) 重水浄化系のイオン交換樹脂の性能劣化を低減させるため、過酸化重水素分解用触媒塔を新設した。

(ニ) 点検時の被曝低減化のため、上昇管の油圧防振器をメンテナンス・フリーのメカニカル防振器に一部取替えた。

(ⅳ) 被曝線量について

(イ) 定期検査時の放射線量率は、昭和54年6月及び11月の計画時に、主要測定ポイントで実測した値を基に予測し、これを用いて定期検査時の予想被曝線量を算定した。またこの予測線量率の妥当性をプラント停止後の実測により確認している。

(ロ) 定期検査時の被曝線量の低減を図るため、高線量雰囲気下作業に重点を置いて例えば次のような対策を施した。

(a) 再循環ポンプまわりに鉛毛入りマット、鉛板を布設し、ポンプ分解点検エリアの空間線量率を低減した。

(b) 防振器の交換については、事前に図面等による作業内容の検討確認、リハーサルを行って仕事の効率化をはかり、被曝時間の短縮をはかった。

(c) 重水循環ポンプの分解に先立ち、ヘリウムガスによってポンプ内の残留重水を乾燥除去し、分解後の作業環境のトリチウム濃度を十分低く抑えたので、トリチウムによる被曝は殆んど問題とならなかった。

 これらの結果、定期検査期間中の総被曝線量は約230マン・レムであった。

(ⅴ) 今後の定期検査に反映する事項

(イ) 定期検査期間の短縮化

 今回の定期検査では制御棒駆動装置(49台中15台)の分解点検作業がクリティカル工程の一つになっていたが、予備機の保有数(現在5台)を増やすことによって点検期間を短縮し、クリティカルパスから外すことができるので、設備利用率の向上の観点から工程短縮に努める。

(ロ) 検査の効率化と被曝の低減化

 今後の供用期間中検査では検査機器の改良及び開発、作業環境の整備ならびに簡易遮へい体の採用等により、さらに検査の効率化と被曝の低減化をはかる。

(3) 今後の運転計画

 「ふげん」は電気出力16万5千キロワットで運転を行い、技術的諸性能の確認、安全性評価データの蓄積を行うとともに、プルトニウム富化減損ウラン燃料の利用技術を実証することとしており、具体的には以下の計画を予定している。

(ⅰ) 55年度について

 図-1に示すように概略以下の計画で運転を行う。

(イ) 通常運転開始 55年5月15日
(ロ) 第1回計画停止 6月下旬~7月上旬
(ハ) 第2回計画停止 11月上旬~11月中旬
(ニ) 第2回定期検査開始 56年3月上旬

 計画停止時及び定期検査時に燃料交換及び点検を行う。

(ⅱ) 高富化燃料の採用について

 「ふげん」は現在、混合酸化物燃料(以下「Mox燃料」という。)として天然ウランにプルトニウム(プルトニウムの平均核分裂性物質量0.66wt%)を混合したもの及びウラン燃料として15wt%徴濃縮ウランを原料とした燃料を用いているが、56年度の中ばから、高富化燃料(Mox燃料としてウランとプルトニウムの核分裂性物質量の合計が約2.0wt%のものまたはウラン燃料として1.9wt%徴濃縮ウラン)を用いて、燃焼度の増加(平均燃焼度12,000Mwd/t→17,000Mwd/t)をはかり、燃料費の経済性及び稼動率を向上させる。

 また、「ふげん」の高富化燃料には再処理工場から回収されるプルトニウムと減損ウランを有効に利用していくこととしている。

(ⅲ) 使用済燃料体の照射後試験計画の具体的な検討を進める。

 これらの実績データを「ふげん」に反映させるとともに、実証炉の設計にも適宜反映させていくこととしている。


図-1 新型転換炉ふげん発電所 運転実績(昭和54年度)及び運転計画(昭和55年度)


表-1 新型転換炉ふげん発電所 第一回定期検査実績工程表


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