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日本原子力船開発事業団の統廃合問題について


昭和54年12月27日
原子力委員会

1 我が国における原子力船研究開発は、日本原子力船開発事業団(以下「事業団」という。)の原子力第1船「むつ」を中心として進められているが、諸般の事情によりその開発計画は大幅に遅延し、未だ所期の成果をあげるには至っていない。また、原子力船の商船としての実用化の可能性は早くから指摘されていたにもかかわらず、世界的に原子力商船実用化の動きは顕在化していない。このため、我が国における原子力船研究開発の進め方について再検討を求める声も聞かれるようになっている。

 一方、日本原子力船開発事業団法は、昭和55年11月30日までに廃止するものとされているが、この期限は、事業団を研究開発機関に移行させるために必要な検討期間として国会において設定されたものである。

 原子力委員会は、以上のような状況に鑑み、この機会に今後の原子力船研究開発の進め方を再検討することとし、本年2月、原子力船研究開発専門部会を設置して原子力船研究開発の課題、研究開発体制のあり方等について専門的な調査審議を行った。当委員会は、去る12月20日、同専門部会から報告を受け、現在鋭意検討を進めているところであり、近く考え方をとりまとめる予定である。

2 今後の事業団のあり方については、上述の原子力船研究開発の進め方の一環として検討すべきものであるが、現在政府において検討が進められている特殊法人の統廃合問題に関連して、事業団の統廃合問題について早急に原子力委員会としての見解をとりまとめるよう委員長から提案があったので、この問題について鋭意審議を重ねてきた。

 その結果、当委員会としては、今後の事業団のあり方について、次のような考え方が妥当であると判断するに至った。

(1) 放射線漏れ発生以降の「むつ」開発の経緯及び現状に鑑み、「むつ」の開発がある段階に達するまでの間は、事業団は責任ある独立機関として「むつ」開発を推進すべきである。その期間は、少なくとも5年間程度と見込まれる。

(2) 「むつ」開発と密接な連携を保ちつつ、将来の原子力船のための研究開発を行い得るよう、所要の機能を事業団に付与すべきである。

(3) 将来における事業団の統廃合の具体的方法については、今後数年間の「むつ」開発の推移を十分見極めた上、慎重な検討を経て決定するものとする。



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