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昭和52年度原子力モニター報告の概要


科学技術庁

Ⅰ アンケート調査

1 アンケート調査の概要

(1)報告時期 昭和53年3月4日~昭和53年3月25日
(2)調査方法 郵送による記述回答方式
(3)調査対象 昭和52年度原子力モニター(全国508名)
(4)回答者数 276名(回答率54%)
 (i)問1 273名(回答率53.7%)
 (ii)問2 274名(回答率53.9%)
 (iii)問3 276名(回答率54.3%)
(5)職業別、年代別、男女別、モニター数及び回答者数
職業別 モニター数 回答者数 (%)
農林漁業 96 43 45
商工・サービス業 93 45 48
事務・販売・
サービス・技能職
 111 53 48
自由業 94 49 52
主婦等 114 86 75
合計 508 276 54
年代別 モニター数 回答者数 (%)
20代 66 32 48
30代 104 46 44
40代 141 75 53
50代 118 68 58
60代 66 47 71
70代 13 8 62
合計 508 276 54
男女別 モニター数 回答者数 (%)
 360 181 50
 148 95 64
合計 508 276 54

2 アンケート調査結果の概要

(1)問1 原子力発電所建設に関して政府が講じている施策は十分であると思うか。またどのような点を改善すべきであるか。

(i)原子力発電所の建設を円滑に推進するため、政府は従来から各種の施策を講じてきているが、今回のアンケート調査によれば、これらの施策が十分であると回答した者は少なく、ほとんどの者がこれらの施策の一層の改善、充実を希望している。

(ii)強化ないし、改善すべき政府の施策として地元に対する血の通った施策を強化、充実すべきであるという意見が最も多く、なかでも、原子力発電所の設置は地元住民の了解を得て行うべきであり、そのためには地元住民に対し、原子力発電の必要性や安全性について十分説明して不安を取り除き、地元住民の理解と協力とを得られるよう努めるべきであるという意見が多い。

 また、原子力発電所を設置する際に、あわせて地元に適した産業の振興や雇用の機会の拡大を図るとともに現在の交付金制度の改善や電気料金の割引等によって地元全体及び個々の住民に利益を還元すべきであるという意見もかなりあり、地元対策の強化策は、これら二つの意見でそのほとんどが占められている。

 次に多いのが一般的な広報活動の強化であり、原子力発電所における安全確保策の強化、すなわち、原子力発電所の安全対策に万全を期しつつ運転すること等によって故障をなくすとともに、より一層の安全を確保するため、安全研究を積極的に進めるべきであるという意見がこれについでいる。

 このほか、放射線モニタリング等のデータを公表すべきである、早く再処理、廃棄物対策を確立すべきであるという意見があり、また、原子力発電所の設置に伴って移住してきた技術者、従業員等と地元住民との心の交流が必要である、電力会社や地方自治体まかせでなく、中央政府が自ら積極的に乗り出すべきである、地元への要人の派遣は代理ではなく代表を、といった意見も見受けられる。

 このほか、原子力発電だけに頼らずに、省エネルギーの開発を進めるべきであるといった意見などがある。

 なお、原子力発電所の建設に反対する意見も若干みられる。

(2)問2 原子力発電の安全性についてはどういう点に不安を感じているか。また、どういうことを知りたいか。

(i)原子力発電の安全性について多くの者が不安を感じさせる原因を指摘しており、全く不安はないと答えた者をかなり上回っている。

(ii)原子力発電の安全性に対する不安としては、事故に対する危惧をあげた者が最も多い。その理由としてはこれまでに多くの故障が起きていること、地震、火災等によって原子炉の施設、設備が破壊され、大事故になるおそれがあること、事故は予想外の原因によって起こるものであり、いかに安全対策に万全を期したとしても、絶対安全ということはないこと、といった懸念があげられている。

 次に多いのが、放射線や放射性物質に対する不安である。原子力発電所などからの放射線や放射性物質が人体に悪い影響を与えるのではないか、原子力発電所から放出される放射性物質によって環境が汚染されるのではないかといった懸念がその理由としてあげられている。

 これに続くのが、よく分らないから不安であるというものであり、とかく原子力というと専門的でむずかしいものであると受け取られがちであることもあって、原子力に対して漠然とした不安感をもっている者がかなりみられる。

 ついで、廃棄物の処理処分方法や使用済燃料の再処理対策が確立していないから不安である、過激派に襲撃を受けるおそれがあるから不安である、という意見が多いが、このほか、従業員の健康が気がかりだといった意見などがある。

(iii)原子力発電所の安全性について知りたいことは、これに対して不安を抱く理由としてあげられたことと多少異なり、安全性一般という回答が最も多く、ついで放射線の人体に対する影響、原子力発電所における事故防止対策、放射性廃棄物の処理処分、放射線監視システム、測定データの順となっている。

 このほかでは、フイジカルプロテクション、実際に働いている従業員の健康状態、使用済燃料の再処理、反対派の考えなどがある。

(3)問3 当庁が行っている原子力広報を見たことがあるか。また、その広報は効果があると思うか。更に、どのような点を改善したらよいと思うか。

(i)当庁が行っている何らかの広報を見たことがあるとした者は全体の約3分の1に止まっている。

(ii)原子力に関して現在行われている広報の効果については、その効果が必ずしも十分でないとする者が多い。広報活動の強化改善策のうち、活用すべき広報手段としては、テレビをあげた者が最も多く、例えばアニメーション等を使って分かりやすい内容の番組を皆が見られるような時間帯に頻繁に放映することが必要であるというのが大方の意見である。

 次に多いのがパンフレット類であり、代表的な意見は、分かりやすいパンフレットを大量に作成し、多くの人の目にふれる場所、例えば市役所や町村役場の窓口、病院、学校等で配布すべきであるというものである。

 このほか、日刊新聞紙や自治体広報紙の利用、原子力に関する映画の映写会や原子力発電所の見学会の開催等の意見があり、学校教育の利用を望む意見もかなりある。

(iii)次に、広報の内容については、エネルギー危機との関連において原子力発電の必要性を訴えるべきであるという意見が、原子力発電の安全性について広報すべきであるという意見を上回っている。なお、広報よりも、原子力発電所の安全性の向上に努め、故障をなくし、稼動率を向上させ、一日も早く安全であることを実証することの方が大事であるという意見もある。

Ⅱ 随時報告

1 随時報告の概要
(1)報告数 162件
(2)事項別報告数
 ○原子力広報 54件
 ○原子力行政 22件
 ○安全性 11件
 ○開発利用 8件
 ○モニター制度 7件
 ○「むつ」 5件
 ○省エネルギー 4件
 ○再処理 3件
 ○温排水 3件
 ○放射線 3件
 ○核燃料 3件
 ○原子炉衛星 3件
 ○地震対策 2件
 ○廃棄物処理 2件
 ○その他 32件
(3)職業別・年代別報告数
 職業別 件数 (%)
 ○農林漁業 29 18
 ○商工・サービス業 18 11
 ○事務・販売・サービス・技能職 30 19
 ○自由業 32 20
 ○主婦等 53 33
 年代別 件数 (%)
 ○20代 15 9
 ○30代 21 13
 ○40代 35 22
 ○50代 55 34
 ○60代 31 19
 ○70代 5 3

2 随時報告意見の概要

(1)52年10月の随時報告

 10月26日の「原子力の日」に関連した意見として、「原子力広報において、この日をもっと有効に利用せよ。」「学校教育、社会教育等あらゆる機関を通じて原子力について国民の認識を高めるよう強く働きかけることが必要である。」等の意見が寄せられた。

 原子力開発利用についての意見の中では、特に、「原子力発電所が地震に対してどの程度安全なのか」、「排出された放射性廃棄物の濃度が基準値より大きい場合どうするのか」といった安全確保についての意見がみられた。

 温排水にふれたものとして、「温排水利用による魚介藻類養殖研究所を設置し、200カイリに対する減船の救済とせよ」とする積極的利用を望む意見があった。

 また、「原発の建設が再処理工場の建設よりも先に進んでいるのはおかしい」とし、「あわてず、しっかりした構想に基づいた政策を望む」とした意見が寄せられた。

(2)52年11月の随時報告

 11月2日にモニターあて「エネルギーミニ知識」等の出版物を送付したところ、早速モニターより、反響があった。このなかで、「このような分かり易い方法で原子力に関する知識の普及を行え」、「ウランと石油のエネルギー比較をもっと正確に。」など、多くの意見が寄せられた。

 原子力広報についての意見では、「エネルギー不足に備えての原子力の必要は認めるが、こんなに不安が多いのに説明もされず事が運ばれているように思う」といった意見があり、原子力の安全性、必要性等についての広報を積極的かつ広域的に推し進めよとの意見が多かった。

 モニター制度については、「モニター会議の開催」や「原研等の見学」を希望する意見が寄せられた。

 廃棄物について「放射性廃棄物の最終的処理はどうするのか」といった意見がみられた。

 また、「本当の安全と信用を住民に知ってもらうには、まず、地元と生活を共にする必要がある」として「出稼ぎ根性で、原発を作っているとしたら、地元の人達は、原発を恐れるであろう」としており、関係者の地元への親近感の必要性を説く意見があった。

(3)52年12月、53年1月の随時報告
 原子力広報についての意見は、相変らず多いが、その中で、「原子力エネルギーは安いのか高いのか、国民経済を豊かにしてくれるのかどうか、この点をもっと分かり易くPRせよ。」

 「10月22日の“主婦のための原子力教室”などのテレビ啓蒙番組は、タイムリーな好企画、今後とも、この種の企画を活発に。」との意見が寄せられた。

 モニター制度についての意見では、

 「各県ブロック別のモニター会議を開き、原子力行政の推進の一助となるよう希望する。」との意見が寄せられた。

 また、安全性についての意見では、
 「国は原発の安全性のデーターを示して国民の協力を得るように。」

 「施設の設置計画等は、地域住民に公開し、その安全性や、必要性を十分理解せしめ、民意の掌握を図ることが大切である。」との意見が寄せられた。

 放射線を取り扱う技術者についての意見では、

 「放射線を取り扱う資格を段階別に作り、指導・内容に応じた資格の取得を義務づけてはいかがであろうか。」とした意見が寄せられた。

 原子炉衛星落下についての意見では、

 「被害を受けるのは、国民なのだから、目で見ることのできない放射能に関する情報は、隠さず速やかに公表せよ。」とした意見が寄せられた。

(4)53年2月、3月の随時報告
 原子力モニターにあて「やさしい原子力の話」を送付したところ、これに対する反響があった。この中で、
 「科学に弱い主婦にも大変判り易いもので、この貴重な資料を出来るだけ多くの機会に多くの人々に配布していただきたい。」

 「だれにでもわかり易く、こういった形式のパンフレットをもっと身近に置いてもらいたい。」等の意見があった。

 モニター制度についての意見では、
 「アンケート調査を増やし、○×式と記述式のアンケートにしたらどうか。」

 「少なくとも1回位は県別のモニター会議を設け、率直な意見を話し合い政府の回答を聞きたい。」等の意見が寄せられた。

 再処理についての意見では、

 「再処理工場を日本国内の全部の使用済燃料が処理できるほど多数建設して欲しい。」とした意見が寄せられた。

 原子炉衛星落下についての意見では、

 「墜落した時の補償などをとりきめておくべきだ。」とした意見が寄せられた。

 原子力行政についての意見では、

 「原子力安全委員会の設置を具体化し、原発の安全性を国民に周知徹底せしめよ。」とする意見があった。

 また、ラジオアイソトープ盗難事件について、

 「危険物の管理はもっと厳重に行われるべきだ。」とした意見が寄せられた。

Ⅲ 参考

1 昭和52年度原子力モニター構成

2 原子力モニターの職種分類

3 原子力施設関連都道府県
青森県
宮城県
福島県
茨城県
新潟県
福井県
静岡県
島根県
愛媛県
佐賀県
鹿児島県


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