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新原子力委員会の発足に当たって


 昭和31年に原子力に関する内閣総理大臣の諮問機関として発足した原子力委員会は、爾来23年の間、我が国原子力政策の立案、策定と原子力に関する安全確保等に、大きな貢献をして参りました。この度、更に安全規制のための組織を強化して国民の信頼に応える為に、原子力安全委員会が設けられたことはご承知の通りであります。

 かくて、安全規制の面をそちらに委ねて、新しい原子力委員会は、原子力に関する政策面に努力を集中することになったわけでありますが、最近、原子力の研究開発利用は、益々重要となる一方、国内的にも種々の意味で難かしさを加え、又、国際的にも複雑となって、参っております。

 この様な時に当たり、この重大な原子力の平和利用を担当する原子力委員会の責務は非常に大きいものがあり、私の微力をもって国民の皆様のご期待に沿うことは極めて荷が重く、今は神仏の力にも縋りたい気持であります。しかし、命を受けた以上は、国民の皆様のご支援によって、できる限りの努力をするつもりであります。

 このため、まず、我が国のあらゆる組織を活用して客観的科学的な事実認識を行い、次にはそれに基づいてできるだけのケーススタディをしていくことにより、最も良識的な方策を立案し、充分国内各方面のご意見も承った上、政治哲学的な観点から政策の決定をしていく必要があると考えております。

 幸い、前委員会で、53年9月に新しい長期計画を策定されましたので、基本的には、それを継承して参る所存であります。ご承知の通り、原子力は非常にリードタイムの長い仕事であり、エネルギー問題が実際に行き詰まってからでは間に合いません。言わば孫の時代の事を今決断せねばならぬのであり、国民の皆様におかれても、どうかこのような点を充分ご理解いただき、ご支援下さる様、祈ってやみません。

昭和53年10月
清成 

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