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軽水炉改良標準化調査中間報告書について



通商産業省

 Ⅰ 経緯

 通商産業省では原子力発電の一層の信頼性向上、従業員の被ばく低減等を図るべく、原子力発電機器標準化調査委員会及び原子力発電設備改良標準化調査委員会による検討を踏まえ、自主技術による軽水炉の改良標準化計画を進めてきている。

 52年度においては3年間にわたる第1段階の改良標準化を完了し、保護点検作業能率の向上、従業員の被ばく低減を中心に大きな成果を得たところである。これをベースとして、今後、更に、昭和55年度までに日本型軽水炉を確立するための第2次改良標準化を進めるべく、上記委員会において、その方向について検討を進めてきた。本報告書は、その検討の成果をとりまとめたものである。

 Ⅱ 報告書の概要


  1 第1次改良標準化の成果

(1) 第1次改良標準プラントの特長は、第1に、原子炉格納容器を従来に比して格段と大きくし(容積で1.5~2倍)、かつ内部の諸機器の配置を改善したことであり、これにより保守点検作業スペースが拡大され、また、大型階段、モノレール等が設置されるため、保守点検作業能率の向上が期待される。

(2) 更に、沸騰水型(BWR)では制御棒駆動機構(CRD)及び燃料の交換機の自動化、加圧水型(PWR)では蒸気発生器自動検査機器の採用等の改良を取り入れた。

(3) 以上の結果、第1次改良標準プラントは、従来に比して従業員の被ばくは25~35%低減され、また稼動率も世界的にもトップレベルの75%程度(時間稼働率)となるものと期待される。

  2 第2次改良標準化の目標

(1) 第2次改良標準化を進めるに当っては、第1次改良標準化の成果をベースに、更に、検査機器の自動化・高速化等による点検作業の効率化及び従業員の被ばく低減並びに各種機器の信頼性向上の改良を実施するとともに、耐震設計の標準化、負荷追従運転機能等の運転性能の向上を図ることとする。

(2) 以上のような観点から、改良は次のような項目を中心に行っていくこととする。

 (イ)BWR

  ① 燃料検査、燃料交換の自動化・高速化等による点検作業の効率化
  ② コバルトフリー代替材の開発、配管等の検査機器の自動化による被ばく低減
  ③ 燃料、炉心構造、制御棒駆動機構の改良による運転性能の向上

 (ロ)PWR

  ① 原子炉圧力容器の上蓋部の改良、燃料・蒸気発生器の検査システムの改良による点検作業の効率化
  ② 配管等の検査機器の自動化による被ばく低減
  ③ 核燃料の改良による運転性能の向上

(3) また、標準化に当っては、設計、建設等の効率化を図るため、最終的にはプラント全体を標準化するとともに、我が国では極めて重要な耐震設計法等について標準化を進めることとする。

(4) 以上の改良標準化を実施していくことにより、第2次改良標準プラントでは従業員の被ばくは従来の30~50%に低減され、また、稼働率も80%程度(時間稼働率)となるものと考えられる。

 Ⅲ 今後の方向

 すでに第1次改良標準化の成果は、九州電力(株)の川内原子力発電所1号機(PWR)、東京電力(株)福島第2原子力発電所2号機(BWR)を初めとして多くのプラントへの採用が決定されている。

 通商産業省としては、今後、本報告書を踏まえ改良標準化を積極的に推進していくとともに、その成果を取り入れるよう電気事業者、原子力機器メーカーを指導していく方針である。


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