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総合エネルギー調査会原子力部会基本政策小委員会中間報告


昭和52年8月25日
総合エネルギー調査会原子力部会基本政策小委員会

 1 はじめに

 原子力は、石油代替エネルギーのうち最も有望なものとして期待されており、我が国としても、これまで原子力の開発利用の推進に努めてきたところである。

 しかし、最近の我が国の原子力の開発利用をめぐる情勢は厳しく、しかも流動的であり、決して楽観できるものではない。アメリカ、西ドイツ、フランスをはじめとする諸外国の例を見ても、原子力の開発利用は必ずしも順調に進んでいるとはいえない状況にある。しかし、これはいわば次の大きな飛躍のための試練ともいうべきものであり、特に資源に乏しい我が国としては、この現状を打開し、石油代替エネルギーの大宗を占める原子力の開発利用をより一層推進していくことが必要である。

 そのためには、この現状を直視し、総合エネルギー政策の一環として、将来の原子力開発の規模を明確にするとともに、これを達成するための具体的方策を早期に確立し、官民の総力を挙げてこれを実施していくことが必要であると考えられる。

 本小委員会では、昨年12月の原子力部会意見を受けて推進されつつある各対策の現状及びエネルギー関係審議会、部会等における検討状況を踏まえつつ、原子力開発規模、原子力関係の資金問題、パブリック・アクセプタンス確立の問題及び原子力の開発利用に関し当面の具体的対策が必要とされる問題について検討を行ってきた結果、以下のような結論を得たので報告する。

 なお、その際、研究開発を含む資金問題、パブリック・アクセプタンス確立のための具体的対策、重水炉の実用化、ウラン濃縮の事業化等のように、今後の検討方向を示唆することにとどめた問題もあるが、それらの問題は慎重な検討を要する性格のものであり、今後の情勢変化をも配慮しながら、引き続き精力的に検討していくとととしたい。

 2 我が国の原子力の開発利用をめぐる情勢

 今後のエネルギー政策の推進に当たっては、安定的な経済成長に必要なエネルギーを総量として確保するとともに、エネルギーの安全保障の観点に立った質的にも安定的な供給構造を形成することが必要である。

 原子力は、石油に代わるエネルギーのうち最も有望なものとして期待されており、我が国としても、これまで原子力の開発利用の推進に努めてきたところである。現在、原子力発電規模については、運転中の原子力発電所は13基740万kW(世界第二位)、計画中のものを含めると29基2,200万kWに達しており、また、自主技術確立の基本方針のもとで進められている新型炉の開発あるいは濃縮等の核燃料サイクルについても、一応原子力平和利用における先進国の一つとしての位置付けが与えられつつある状況といえよう。

 しかしながら、我が国原子力の開発利用をめぐる最近の内外情勢をみると、以下に述べるように決して楽観できる状況にあるとはいえず、原子力政策の一層の充実強化が求められている。

 すなわち

① 原子力技術は、先端的な技術であり、また高度かつ複雑なものであるため、原子力発電所の軽微なトラブルに対しても国民は不安感を抱きがちである。この国民の不安感を完全には払拭できていないことが原子力発電所の円滑な立地を困難にさせている要因の一つとなっている。

② 我が国は、定期検査あるいは故障が生じた場合の点検補修を慎重に実施していることもあって、一部の原子力発電所について、その稼動率の低下がみられる。このため、安定供給という面からみた原子力に対する信頼感及び他のエネルギーに対する原子力の経済的優位性について疑問が投げかけられている。

③ 原子力に対する信頼感を高めるためには、ウラン資源の確保に始まり使用済燃料の再処理、廃棄物の処理処分に至る核燃料サイクルを早期に、また自主的に確立することが必要であるが、フロントエンド部門、バックエンド部門両部門とも、資源保有国の資源政策、核不拡散政策からくる国際的制約等種々の対応すべき問題に直面している。

④ 我が国が長期的かつ効率的な原子力の開発利用を推進していくためには、長期的な展望に立って技術の研究開発を進めていくことが不可欠であるが、その研究開発は、長期にわたり、しかもかなりの額の資金を要するものである。そのため、将来にわたった所要資金の確保が必要となるが、現段階では、その確保対策について十分には見通しが立っていない状況にある。また、研究開発における官民の協力の具体的な在り方等体制整備の検討も必要である。

⑤ 原子力の開発利用が以上のような状況にあるため、我が国の原子力機器産業も、操業率が低下し、採算が悪化してきている。これをこのまま放置すれば機器の性能向上、新規事業分野への進出及び研究開発に対する機器産業の意欲をそぐこととなり、ひいては原子力の開発利用の速度が鈍ることにもなりかねない。

⑥ 原子力の開発利用は、核不拡散という観点から国際的な規制が行われており、その中心的なものとして核不拡散条約が存在している。

 しかしながら、近年、原子力の開発利用が各国に拡大されるのに従い、核不拡散の一層の徹底化を求める動きがアメリカを中心に高まりつつある。

 特にアメリカは、去る4月7日、商業的再処理の無期延期、高速増殖炉の開発の延期及び核燃料サイクル再評価のための国際的な協議の推進を骨子とする新原子力政策を発表し、各国に対して強く協力を求めてきている。

 また、国際的な核燃料サイクルの評価計画(INFCEP)が近々開始され、核不拡散の観点から各種の核燃料サイクルについて具体的な評価が行われる予定となっている。

 このような世界的な核不拡散政策の動きは、その動きいかんによっては、我が国原子力の開発利用に影響が生じる可能性がある。

 3 原子力の開発利用の必要性と対策の基本的方向

(1) 原子力開発の必要性

 原子力は、石油火力に比べ、経済性を有すること、外貨負担が少ないこと、燃料の炉内での使用期間が長いため相当期間の備蓄を行っているのと同等の効果を有すること等多くの利点を有し、また長期的な観点からみても、新型炉等の技術開発によりウラン資源の大幅な有効利用を行うことによって来世紀に至ってもエネルギーの相当量の供給が可能である。

 したがって、資源に乏しく、技術力、工業力に期待せざるを得ない我が国としては、石油代替エネルギーの大宗として原子力の開発利用を大いに進めることが必要である。

 しかしながら、既に述べたように、原子力の開発利用の進展に伴い、ますます、原子力エネルギーの位置付けと具体的対応策について国民各層のより深い理解と合意とを得なければならない状況になっている。

 このような状況下において、立地可能性、核燃料確保可能性、電源構成上の位置付け、国際的環境に対する対応等を勘案しつつ、今後の原子力の開発規模について検討した結果、開発目標としては、現在の対策を継続的に推進していく場合には昭和60年度2,600万kW程度とみられるが、官民を挙げて最大限の努力を行うとともに、その開発を国民全体の問題として取り上げ、国民的合意の形成を図りつつ、昭和60年度3,300万kW、また昭和65年度6,000万kWとすることが望ましい。

(2) 対策の基本的方向

 このような開発目標を達成し、長期にわたり原子力エネルギーを確保するためには、原子力発電の推進のみならず、これに対応してその基盤となる核燃料サイクル及び原子力機器産業の確立、研究開発の推進等各分野における対策を強力に推進することが必要である。その場合、以下のような基本的方向に立って対策を検討すべきである。

 第一に、原子力開発利用についての国民的合意の形成を図るためのパブリック・アクセプタンスの確立である。原子力の開発利用を円滑に進めていくためには、我が国の実情に即したパブリック・アクセプタンスを得る方策を早急に確立し、これを実行していくことが必要である。

 第二に、今後急速に原子力関係各事業の事業規模が拡大するとともに、濃縮、使用済核燃料の再処理、新型炉等新規の分野が生じるため、各分野における事業の全体との整合性、効率性について十分配慮することが不可欠である。

 このため、エネルギー政策、産業政策等の観点から、整合性がとれ、かつ、実行性のある長期計画を策定することが必要である。計画の策定に当たっては、長期的観点から生じ得る不確定要素に柔軟に対処することができるように多様な対策について十分な配慮が行われるべきである。

 また、このような長期計画の具体化のために必要な資金対策を確立することが必要である。

 原子力開発の資金については、原子力発電所の建設、核燃料対策、研究開発等を合計して、今後10年間に約13兆円に達するとみられる。この中で、濃縮、使用済燃料の再処理等新しい事業の確立のための資金及び国が行うべき研究開発のための資金は、合計約4兆円に達するとみられるが、原子力については、国の研究開発の担う役割が大きいこと、新たな事業分野の確立のためには国の助成が必要なことなどに十分配慮し、またリードタイムが長期にわたることにもかんがみ、この資金問題についてエネルギー政策全体の資金問題の一環として検討することが要請される。

 第三には、国際情勢に対する対応である。我が国の原子力の開発利用を進めるに当たって、核不拡散の立場からの国際的な要請に対しては、資源に乏しい我が国としてはエネルギー政策の基本路線として原子力発電の推進、核燃料サイクルの確立、高速増殖炉の開発等の原子力の開発利用が不可欠であるとの立場を明らかにするとともに、他方原子力平和利用先進国の責務として積極的に国際的な核不拡散政策に協力していくことが従来にも増して要請されている。

 このような基本的方向に従って、それぞれの分野の当面の具体策は以下に述べるとおりである。

 4 具体的対策

(1)安全性の確保及び信頼性の向上の推進

① 安全対策の充実強化

 (イ) 原子力発電の開発に当たっては安全性の確保が第一であり、従来から安全性の確保と環境保全に万全を期して進められて来ているが、原子力技術は、先端的な技術であり、また高度かつ複雑であって一般には理解しにくいことなどから、原子力発電所でときおり発生するトラブルはたとえそれが軽微で、外部の環境や住民に支障を与えるおそれがないものであっても、国民に不安感を与え、がちである。

 このため、国は、原子力基本法等の一部改正法案の早期成立を図り、原子力安全委員会の新設、安全規制行政の一貫化等原子力行政懇談会の意見に沿った安全行政体制の確立に努めるとともに、今後とも厳重な安全規制を行う必要がある。

 また、従来から行っている安全研究の一層の推進、技術基準及び指針の整備等の施策を充実強化する必要がある。

 (ロ) 今後ますます増大する審査、検査業務に対処するため、原子力発電の安全審査及び検査体制を更に充実強化するとともに、審査及び検査業務のより一層の効率化を図る必要がある。

 また、原子力発電プラントの諸検査を効率的に実施するため、中立的な検査専門機関の充実を図るとともに、その適切な活用について検討する必要がある。

② 軽水炉の改良・標準化及び信頼性の向上

 (イ) 原子力発電所の信頼性及び稼動率の向上を図るためには、自主技術による改良・標準化を推進することが最も重要である。現在、その第一段階として、官民協力の下に、機器の信頼性の向上、格納容器内スペースの拡大、作業性の向上等を目標とする改良・標準化が進められているが、この成果の今後の軽水炉プラントへの採用を積極的に推進する必要がある。この結果、プラントの信頼性の向上、従業員被曝の相当程度の低減、定期検査期間のかなりの短縮とともに、稼動率の向上が期待される。

 以上の成果を踏まえ、第二段階として、比較的長期の技術評価を要するものについて具体的目標を早急に策定し、日本型軽水炉標準プラントの仕様を早期に作成することに努み、このための改良項目、標準化範囲の拡大等に関し、調査、検討を行う必要がある。

 (ロ) 軽水炉発電の安全性に関する国民の理解を深めるとともに、我が国の軽水炉技術の一層の向上を図るため、耐震性、蒸気発生器の健全性等各種の大規模実証試験が進められているが、その拡充及び円滑な実施のため、官民の協力及び(財)原子力工学試験センターの充実強化等が望まれる。

 (ハ) 原子力発電の信頼性の向上を図るため、民間は現在進めている研究開発を更に推進するとともに、原子力発電プラントの運転管理、保守の整備確立を図ることが重要である。このため、技術情報の集中管理及び情報交換の円滑化を促進するとともに、運転、保守等に必要な各種要員の確保を行うことが必要である。また、定期検査等における機器の点検、補修の的確化及びその期間の短縮を図るため、これらの作業を合理的に処理しうるようユーザー、メーカーが協力して、原子力発電プラントのアフターサービス体制の整備、改善を図る必要がある。

(2) 原子力立地の推進

① パブリック・アクセプタンス(PA)の確立

 (イ) 原子力発電所の立地を円滑に推進するためには、安全性の確保、信頼性の向上及び環境の保全が大きな前提となるが、我が国のエネルギー事情や原子力発電所の必要性、安全性について、正しい知識の普及等を通じて広く国民の理解を求めていくことが不可欠であり、今後とも原子力開発に関する広報活動の強化等を図る必要がある。

 このため、PA活動を進めている国、地方公共団体、電気事業者等のそれぞれの役割を明確化し、体系的なPA活動の展開を図ることが望まれるとともに、そのための中枢的機関の育成について検討することが望ましい。

 (ロ) また、原子力立地に対する地元住民の理解と協力を得るため、発電用施設周辺地域整備法等いわゆる電源三法について、産業基盤整備への活用等その運用の拡大強化を積極的に検討し、地元住民の福祉向上を強力に推進することが必要である。

(ハ)更に、その際、環境影響調査を十分実施するとともに、必要に応じ環境保全面からの検討結果の公開、周知及び地元住民等の適切な意見の立地計画への反映を図ること等により、環境の保全等に万全を期すべきである。

② 行政面の体制整備

 原子力行政体制の強化するため、原子力安全規制行政の一貫化等原子力行政懇談会意見を尊重し、その具体化を図るとともに、原子力立地を円滑化するため、個別の立地地点に即した具体的対策を確立し、地域の実態を考慮しつつ、政府と地方公共団体との密接な連携のもとに、各省庁協力してその立地に関する調整、推進に努める必要がある。このため、各地点に関係省庁の出先機関、地方公共団体等による電源立地連絡会の設置が進められ、電源立地企画官(中央)及び電源立地連絡調整官(地方)等による立地促進が図られることとなったが、今後ともこのような体制の強化と円滑な運用が望まれる。

(3) 核燃料サイクル対策

 原子力発電規模を順調に拡大していくためには、安定供給確保の観点から自主的な核燃料サイクルを確立する必要がある。また、原子力発電以降のいわゆるパックエンド部門の整備は、原子力エネルギーのパブリック・アクセプタンスの確保の観点からも焦眉の急である。

① ウラン確保対策協議会の設立及び積極的運用

今後のウランの需給ひっ迫に備えるため、長期購入契約の確保、ウラン探鉱、開発、引取り、備蓄等の対策を総合的に推進することが必要であり、このための母体として、ユーザーである電力会社、鉱山会社等による「ウラン確保対策協議会」を速やかに設立させる必要がある。

 国は「ウラン確保対策協議会」を中心とする民間のウラン鉱石確保等をバックアップする見地から、金属鉱業事業団等の出資制度の活用、長期購入契約に対する融資買鉱等の助成を行うとともに、動力炉・核燃料開発事業団の調査、探鉱の充実強化を図ることが必要である。

② ウラン備蓄対策

 原子力エネルギーは、ひとたび原子炉に燃料を装荷すると1年以上発電を続けることが可能であり、この意味で石油等の他のエネルギーに比べ備蓄機能を有するといえるが、天然ウランの供給途絶、濃縮ウランの工場の故障等による濃縮ウランの供給停止等の事態に対処するため、核燃料の備蓄が必要である。

 このため、相当量の濃縮ウランを電力会社が協力して備蓄し、国が備蓄施設、備蓄用濃縮ウランについて開銀の融資等の助成を行うことが必要である。

③ 再処理工場等の建設準備の推進

 使用済燃料の一時貯蔵及び再処理、プルトニウムの貯蔵、プルトニウムの加工、高レベル廃棄物処理等は、我が国の核燃料サイクル対策上緊要な課題となっているが、これらは一体的に進められる必要があり、核燃料パーク構想としてその推進を図るべきである。

 このため、当面再処理事業を中心にその事業化のための原子炉等規制法の一部改正法案の早期成立を図るとともに、法律の成立後速やかに再処理事業会社を設立する必要がある。

 再処理事業会社はサイトの確保、再処理工場の設計等建設準備に着手し、国はプルトニウム利用についての具体的方策の確立、安全性及び保障措置についての基準の整備、アセスメントの実施等パブリック・アクセプタンスの確保のための措置等を行うとともに、資金助成等を行うことが必要である。

④ ウラン濃縮の事業化

 濃縮ウランの安定供給のため、自主技術による国産工場の建設を進める必要があるので、動力炉・核燃料開発事業団で現在建設中のパイロットプラントに続いて実証プラントの建設を進めることとし、事業主体及び資金の官民の分担について検討を行う必要がある。

⑤ 放射性廃棄物処理処分

 低レベル廃棄物については、国の責任のもとに(財)原子力環境整備センター等を活用して実証試験、試験的処分を進めるとともに、民間における本格的処分の事業化を検討することが必要である。

 また、高レベル廃棄物については、再処理計画に対応して高レベル廃液の固化技術及び保管方法等について研究開発を促進するとともに、その事業化の検討を行うことが必要である。

 更に、高レベル廃棄物の長期保管及び最終処分等については、国が責任を負うこととし、そのための研究開発を推進する必要がある。

(4) 新型炉の開発導入

①高速増殖炉(FBR)の開発

 (イ) 原子力利用の拡大に伴って、ウラン等核燃料資源の確保が一層重要となる。このため長期的には、資源効率の高いFBRを開発し、実用化することが必要であり、我が国としては軽水炉-FBRを基本路線とし、その実現に官民は総力を傾注すべきである。

 (ロ) このため、FBRの実用化を目指して、研究開発の一層の充実を行いつつ原型炉建設の早期着手を図るとともに、原型炉に続く実証段階の大型炉の建設についても、その開発計画及び開発体制の検討を進め、早期に具体化を図る必要がある。

 (ハ) また、FBRの開発及び建設には多額の資金と高度の技術を要するので、官民の密接な協力によりその効率的推進を図るべきである。

② 重水炉の実用化

 (イ) 前述したように、我が国の原子力発電開発の基本路線は軽水炉-FBRであるが、例えばFBRの開発の遅れがウラン所要量及びその確保策に大きな影響を及ぼすなど核燃料サイクル上長期的な不確定要素が存することにかんがみ、上記基本路線を踏まえつつも、技術的に多様な対応手段を検討し、かつ、用意しておくことが望まれる。

 (ロ) このため、核燃料サイクルに柔軟性を与え、かつ、FBR路線をバックアップする炉として、重水炉の開発導入の検討が重要な課題である。

 (ハ) 現在、開発導入の検討の対象となっている重水炉としては、新型転換炉(ATR)とCANDU炉があり、それぞれ核燃料サイクル上の特徴を有する。その実用化に関し、現在、技術的、経済的な側面からの検討が進められているが、今後とも鋭意検討を重ねていくべきである。

 (ニ) ATRは自主技術開発を目指し、ナショナルプロジェクトとして動力炉・核燃料開発事業団が開発を進めており、近く原型炉「ふげん」が臨界に達する予定であり、更に実証炉の概念設計も進められている。今後原型炉の運転実績等をみつつ実証炉建設について昭和50年代半ばまでに結論を得る必要がある。

 (ホ) CANDU炉は、カナダを中心にかなりの運転実績をあげているが、我が国に導入するに際しては、耐震性等について引き続き改良手段の検討が必要である。今後電源開発(株)は、国の安全面等での検討と平行して、一般電気事業者等とも連携を保ちつつ、その導入に当たっての具体的問題点の調査、検討を進めるべきである。

(5) 原子力機器産業の基盤強化</div>
① 原子力産業の長期的振興策

 機器製造については、信頼性の向上の観点から自主技術の確立が必要であり、そのため改良標準化による日本型軽水炉の確立、濃縮等核燃料サイクルの確立、新型炉の開発等原子力開発全般の整合性のとれた長期振興策を講ずる必要がある。

 また、自主技術の確立を推進しつつ核不拡散に関する我が国基本方針に則って、原子力プラント等の輸出を促進することも望まれる。

② 機器製造体制の確立

 日本型軽水炉の確立、核燃料事業の推展、新型炉の開発に対応しつつ効率的な研究開発と長期にわたる技術蓄積を可能とするため、そのための体制及び更にそれを円滑に実用化につなぐ体制の整備を速かに行う必要がある。

 (イ) 軽水炉

 自主技術による日本型軽水炉の確立のため、関係企業は、共同して技術開発を推進する必要がある。

 (ロ) FBR

 原型炉及びその後の実証炉の建設を推進するため、これらの建設計画に対応しつつ、エンジニアリング機能の一元化等その体制の整備を行うとともに、安定的事業活動を可能とする環境整備を推進する必要がある。

 (ハ) 濃縮機器

 濃縮についても、FBRと同様そのパイロットプラント及びそれに引き続く実証プラントの建設を推進するため、これらの計画に対応しつつ、機器の共同製作の体制整備等を進めるとともに、そのための環境整備を行う必要がある。

(6) 原子力研究開発の促進

 自主技術の確立を進めていくためには、新型炉の開発及び核燃料サイクル各分野、更にはより長期的な観点からの多目的高温ガス炉、核融合等の研究開発を長期的見通しのもとに計画的、総合的に遂行する必要がある。

 原子力研究開発は、多額の資金が必要となるが、研究開発の性格、民間における事業化の可能性等に総合的に配慮しつつ、官民の分担及び資金確保のための具体的対策を検討する必要がある。

(7) 原子力開発と核不拡散政策との調整

 我が国がエネルギーの安定供給のため原子力の開発利用を進めるに当たっては、国際的な核不拡散の立場からの要請に十分対応する必要がある。

① 核不拡散の観点からの我が国の政策の明確化及び国内管理体制の充実強化

 我が国の原子力基本法の趣旨及び核不拡散条約に従い、核不拡散に万全を期しつつ原子力平和利用を進めるため、国際的な合意に従って保障措置、輸出入管理、フィジカル・プロテクション等の対策を講ずる旨の我が国の基本政策を明確にする必要がある。

 また、この基本政策に従って保障措置、フィジカル・プロテクション等について法令等の整備を進めるとともに、官民における核物質の管理体制の充実強化を図る必要がある。

② 国際核燃料サイクル評価計画(INFCEP)への積極的参加等

 INFCEPに対しては、我が国の原子力の開発利用が阻害されないことを前提に、再処理等についての我が国の研究開発データを提供する等積極的な参加を行うことが必要である。

 また、保障措置の強化、プルトニウムの国際管理等について主導的な立場をとることも検討し、核不拡散に対する国際協力に積極的に貢献する必要がある。

参考1

長期エネルギー需給暫定見通し

参考2

長期電力需給

参考3

軽水炉の改良標準化の進め方

参考4

核燃料の需要及び供給

別紙1

総合エネルギー調査会原子力部会
基本政策小委員会名簿
委員長 有沢広巳 (社)日本原子力産業会議会長
稲葉秀三 (財)産業研究所理事長
石原周夫 海外経済協力基金総裁
円城寺次郎 日本経済新聞社会長
正親見一 電気事業連合会副会長
佐波正一 東京芝浦電気(株)取締役副社長
瀬川正男 動力炉・核燃料開発事業団副理事長
田中直治郎 東京電力(株)取締役相談役
土屋 清 総合政策研究会理事長
野瀬正儀 電源開発(株)副総裁
平塚保明 金属鉱業事業団理事長
松根宗一 (社)経済団体連合会エネルギー対策委員長

別紙2

総合エネルギー調査会原子力部会
基本政策小委員会専門委員会名簿
委員長 田島敏弘 日本興業銀行常務取締役
飯田正美 関西電力(株)専務取締役
生田豊朗 (財)日本エネルギー経済研究所所長
井上 力 電源開発(株)理事
浦田 星 (株)日立製作所取締役電力事業本部長
末田 守 エネルギー総合推進委員会事務局長
瀬川正男 動力炉・核燃料開発事業団副理事長
田宮茂文 濃縮再処理準備会顧問
富永守之 三菱重工業(株)常務取締役原動機事業本部長
長橋 尚 電気事業連合会専務理事
西家正起 住友金属鉱山(株)専務取締役
堀 一郎 東京電力(株)常務取締役
森 一久 (社)日本原子力産業会議常任理事
吉田正一 中部電力(株)常務取締役
吉田陽吉 東京芝浦電気(株)常務取締役
(通商産業省)

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