前頁 |目次 |次頁

医療機関における「放射性同位元素等による
放射線障害の防止に関する法律」の規制を受ける
放射性同位元素等の取扱いについて



 科学技術庁は、本年7月、名古屋鉄道病院及び国立浜田病院において、相い次いで診療用226Ra管・針の紛失事故が発生したことを重視し、放射線障害防止法の規制を受けてRIの使用を行っている全医療機関の長に対して、原子力局長名により次の文書を送付し、放射線管理の徹底を図るよう求めた。

50原局第894号
昭和50年8月28日

許可、届出使用に係る
医療機関の長各位

科学技術庁原子力局長 生田 豊朗


医療機関における「放射性同位元素等による放射線障害の防止
に関する法律」の規定を受ける放射性同位元素等の取扱いについて


 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律の規制を受ける放射性同位元素等の取扱いについては同法の規定するところに従い、放射線障害の防止、公共の安全の確保について日頃より格段の御努力を願っているところでありますが、先般、2病院において別紙(1)のとおり診療用密封放射性同位元素の紛失事故があいついで発生し、関係者が鋭意探査に努めましたが、現在なお発見されるに至っておりません。なお、昨年も医療機関において別紙(2)のとおり類似の事故が発生したことは、御承知のとおりであります。
 これらの事案は、いずれも放射性同位元素等の取扱いないし管理体制に不備のあったことが原因と考えられます。貴事業所においても、昭和49年5月20日付け49原局第494号「放射性同位元素等の取扱いに関する安全の確保について」をもって通知したところにより定期点検を実施されていることと思いますが、この際特に下記の点に留意して改めて点検され、放射線管理の徹底を図り、放射線障害の防止及び安全の確保に万全を期されるよう要請します。


1. 安全管理体制に関する事項

(1)放射線障害予防規定に必要事項が十分、かつ具体的に記載され、事業所の実状に適合しているか。

(2)実体的にも放射線管理組織が確立しており放射線取扱主任者の職務が明確になっているか。

(3)事故及び危険時の措置が実体的にみて十分か。
 また、関係官公庁への通報体制が十分か。


2. 放射性同位元素等の取扱い等に関する事項

(1)放射性同位元素等の使用、保管等(特に診療用密封放射性同位元素の使用後の点検及び盗難の防止)が法令及び放射線障害予防規定どおり行われているか。

(2)記帳が、医師法第24条による診療録とは別の帳簿で行われ、かつ使用、保管等の必要事項がその都度記載されているか。

(3)教育訓練が、放射線作業従事者等に対して十分行われているか。

(4)放射性同位元素又は放射性同位元素によって汚染された物(放射性廃棄物)の廃棄については、法令に従って行っているか。(保管廃棄し、許可廃棄業者に引き渡しているか。



別紙1

最近発生の2件


1. N病院(名古屋市)226Ra管紛失事故

(1)昭和50年7月9日226Ra管(11.18ミリキュリー、11.44ミリキュリー)が所定の保管庫にないことに気付いた。(前回使用49年3月)

(2)7月9日以降病院内探査、さらに7月15日以降は学識経験者の応援を得るとともに専門業者にも依頼し、保管室、排水系統、病院内焼却炉等病院内をくまなく探査するとともに、院外の廃棄物処理系統も追跡調査しているが、現在なお発見されていない。


2. H病院(浜田市)226Ra針紛失事故

(1)昭和50年7月16日、226Ra針(1ミリキュリー10本)を患者の治療に使用し、次の患者の治療に使用しようとしたとき9本しかないことに気付いた。

(2)7月16日から8月12日までの間延134名が約560時間病院内のすべての場所、患者の帰宅経路全域、患者の利用したタクシー及びその運行経路並びにその後に乗車した乗客、あるいは市内のゴミ処理場等の探査を行ったが、現在なお発見されていない。



別紙2

昭和49年発生の3件


1. T病院(高崎市)における226Ra管の紛失事故

(1)昭和49年6月19日、226Ra管(20ミリキュリー1本、10ミリキュリー3本)を患者に使用中、紛失した。

(2)20ミリキュリー1本及び10ミリキュリー1本は、探査の結果、同日中に下水系統から発見されたが、10ミリキュリー2本は、延182名が40日間、病院内全域及び下水系統について探査したが、未発見である。


2. H病院(熊本市)における60Co管紛失事故

(1)昭和49年7月2日、60Co管10ミリキュリーが所定の保管庫にないことに気付いた。

(2)病院内関係者のほか、放射線関係業者にも依頼し、相当の人員と時間をかけて病院内外を探査したが、未発見である。


3. M病院(松江市)における226Ra管紛失事故

(1)昭和49年12月24日、場所の線量率の測定の際に持ち出した226Ra管(10ミリキュリー2本)が紛失していることに気付いた。

(2)消防職員等の応援を得て、病院内全域及び市内のゴミ処理場の探査を実施した結果、同月25日未明市のゴミ処理場中から発見された。



前頁 |目次 |次頁