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昭和50年度原子力平和利用研究委託費
の交付決定について




 昭和50年度原子力平和利用研究委託費については、さる3月17日試験研究題目及び申請書の提出期間について官報に告示し、4月10日申請を締切った。その後、書類審査、申請内容聴取、関係機関との意見交換、現地調査を行い、原子力委員会の議を経て、7月1日付けで次の通り交付決定を行った。

昭和50年度原子力力平和利用研究委託費総括表


昭和50年度原子力平和利用研究委託費交付一覧表


昭和50年度原子力平和利用

研究委託費交付概要


1 二酸化ウランペレットの熱変形に及ぼすペレット寸法の影響に関する試験研究

(財)原子力安全研究協会

(研究目的)

 燃料の破損のうち、力学的な原因による燃料破損の代表的なものとしてペレットと被覆管との力学的な相互作用がある。この解明には、これに寄与すると考えられるすべての因子について個々の役割を定量的に究明していく必要があるが、現在、いずれの因子も十分明確になっているとはいえない。とりわけ、照射中におけるUO2ペレットの熱変形並びに熱応力によるペレットの割れ発生の機構については、未だ研究が緒についたばかりであり、ペレットと被覆管の力学的相互作用の機構を明らかにし、力学的因子による破損を解明するには、先ずその基礎となるペレットの熱的挙動とそれが被覆管に及ぼす影響を明らかにする必要がある。
 本試験研究では,昭和48年度に日本原子力研究所JMTR(材料試験炉)で照射した4体のキャプセルの照射後試験を実施し、照射中のUO2ペレットの熱変形に及ぼすペレット寸法の影響を解明するための基礎資料を得ることを目的とする。

(研究内容)

(1)燃料棒の非破壊試験
 4体のキャプセルの外観検査並びにⅩ線透過試験でキャプセル内部の燃料棒の状態を調べた後、各キャプセルを解体し、非破壊試験を実施する。

  ⅰ) 燃料棒の外観検査
  ⅱ)     〃 の寸法測定
  ⅲ)      〃 のγスキャンニング
  ⅳ)     〃 のⅩ線透過試験

(2)燃料棒の破壊試験
 非破壊試験を終了した4本の燃料棒について、破壊試験を実施する。

  ⅰ)  燃料棒内への樹脂注入及び切断
  ⅱ)  二酸化ウランペレットの金相試験
  ⅲ)  β-γオートラジオグラフィー
  ⅳ)  レプリカ膜観察

(3)解析検討
 上記2つの試験結果より、幾何学的因子が照射中のペレットの熱変形と割れに及ぼす影響について検討する。


2 原子炉材料の疲労とクリープの相互効果を考慮した構造設計基準に関する試験研究

(社) 日本溶接協会

(研究目的)

 疲労とクリープの相互効果に関する試験研究では、軽水炉の使用温度300℃近傍におけるこれらの相互効果の発生限界を明確にして、原子炉構造機器の設計並びに安全性評価に必要な資料を得ることを目的として実施する。
 定常の機械的荷重が負荷された構造部材に、機械的または熱的二次荷重が負荷されると、定常荷重によって生じた応力と同一方向に変形が進行していく、いわゆるラチェット変形が生ずる。この変形機構に関する理論的解析は D.R.Millerによって行われ、ASME Boiler and Pressure Code,Sec.Ⅲ(1974)、AppendixⅩⅣのⅩⅣ-1400においても、この理論に基づいて一定内圧を受ける円筒に繰返し熱応力が発生する場合に対して最大許容熱応力範囲が規定されている。しかし、これらの実験的裏付けはまだ十分になされていない。したがって、ラチェット変形機構をより明確にし、原子炉の構成材料に適した設計基準を確立するために、二次荷重として熱的並びに機械的荷重が負荷される場合の実験及び理論解析を行う。

(研究内容)

(1)疲労とクリープの相互効果に関する試験研究
 48年度及び49年度に実施した供試材SUS316,SUS304及び鋼の母材に関する試験結果と比較検討するために、主として同一供託材から溶接継手付試験片を製作して各種の低サイクル疲労試験を実施するとともに母材を用いて荷重保持効果試験時の切欠き付試験片によるき裂の発生機構の解明のための低サイクル疲労試験を行う。
 溶接継手部の溶接は3種の供試材とも同一条件で行い、これらの試験材から平滑丸棒試験片を製作して、空気中において歪速度効果試験、歪保持効果試験、荷重保持効果並びにこれらの基礎データとなるリラクゼーション試験、クリープ試験、静引張試験、クリープ破断試験及び組織試験を行う。

(2)熱応力ラチェット変形機構に関する試験研究
 48年度における三本棒モデル試験片とほぼ同一形状で、熱膨張係数の異なるSUS316及び2 1/4Cr-1Mo材の2種の構造材料から製作した試験片を用いて、一定の機械的荷重を負荷した状態で熱膨張係数の差によって繰返し熱応力を発生させた場合の熱応力ラチェット変形挙動に関する試験を実施する。

(3)機械的ラチェット変形機構に関する試験研究
 48年度並びに49年度に実施した試験研究の結果を比較検討するためにSUS316の円筒試験片を用い、常温において試験体の板厚を2条件で試験を行った場合の板厚効果を調べる。この場合の試験方法は、48、49年度と同様に一定内圧を負荷した状態で繰返し軸力を負荷する、定内圧下における完全両振りの歪又は変位制御試験である。

(4)また、49年において実施した550℃における機械的ラチェット変形機構に関する試験研究の結果と比較検討するために、同一温度において同一形状の円筒試験片に定内圧下で平均応力を有する繰返し軸歪が負荷された場合のラチェット変形に関する試験を実施する。

(5)理論解析
 定内圧一繰返し軸力試験における板厚効果並びに平均応力効果に理論的根拠を与え、試験結果の一般化をはかるために、計算方法として空間的には有限要素法を、時間的には増分法を用いて理論解析を行う。


3 原子炉配管系の局部的構造挙動と安全性評価に関する試験研究

(社) 日本溶接協会

(研究目的)

 原子炉配管系の安全評価には、管材の原子炉水中における挙動を十分把握する必要があり、特に応力腐食割れを考える際は、配管系の局部的構造挙動を十分把握し、これらを総合評価しなければならない。このため原子炉配管系として最も多く使用されているオーステナイト系ステンレス鋼の鋭敏化状態における、高温純水中(原子炉水相当)での挙動に関する基礎データを得るとともに、配管系の弾塑性応力解析プログラムを開発し、総合評価のための基礎を作ることを目的としている。

(研究内容)

 原子炉配管系として最も多く用いられるSUS304、SUS304L材について、原子炉水に近い状態の高温純水中での応力腐食割れと鋭敏化条件の関係について試験する。応力解析の面では、局部応力を求めることのできる有限要素法によるプログラムを開発し、それによって配管コンポーネントの局部的な弾塑性応力ひずみ挙動を調べる。また、モデル実験も行い、計算結果と比較検討する。


4 原子炉圧力容器の超音波探傷による欠陥定量測定に関する試験研究

三菱重工業(株)

(研究目的)

 原子炉容器の使用中の安全性確認のため、超音波探傷による供用期間中検査が実施されているが、現状の超音波探傷技術では、検出した欠陥の定量的評価が困難であり、破壊力学を考慮した欠陥寸法を規定した新しいASME code SecⅩⅠ(1974)等の規程に沿って精度良く評価するには困難が伴なう。
 本研究では、欠陥の定量性の点で最近注目を集めている新技術の超音波ホログラフィについて、適用上の基本的な問題点の抽出、解析を行い、原子炉容器の安全性をより合理的に評価し得る非破壊検査技術の確立を目的とする。

(研究内容)

 原子炉容器胴部を対象として、超音波ホログラフィを用いた超音波探傷について下記の研究を行う。

(1)平板試験片による欠陥定量性の検討
 平板に人工欠陥を加工した試験片及び溶接欠陥を有する試験片を使用し、基本的探傷条件を変えて、欠陥の定量測定に最適な探傷条件を検討する。

(2)オーバーレイの影響の検討
 オーバーレイを施した平板に人工欠陥を加工した試験片を使用して、オーバーレイが欠陥定量精度に与える影響を検討する。また、溶接欠陥についても同様の検討を行う。

(3)曲率の影響の検討
 曲率を持つ試験片を使用して、欠陥定量精度がどのように変化するかを検討する。


5 8×8型燃料集合体に対する炉心スプレー系の冷却能力に関する試験研究

日立製作所

(研究目的)

 沸騰水型原子炉の燃料集合体は現在の7×7型から、熱的余裕の大きい8×8型へと移行する予定になっている。
 本試験研究は、この8×8型燃料集合体を装荷した沸騰水型原子炉において、一次冷却材喪失事故を想定した場合の安全性に関するもので、非常用炉心冷却系の1つである炉心スプレー系の冷却能力を実験的に評価し、安全余裕を確認するために行うものである。
 実験で得られたデータ及びそれらを整理した結果は、非常用炉心冷却系の設計基準及び安全審査における判断資料として活用する。

(研究内容)

 実験は既存のECCS実規模試験装置の一部を利用し、これを実寸大の8×8型電気加熱模擬燃料集合体を装荷して行う。模擬燃料集合体は実際の原子炉の燃料集合体1体当りの容積を持つシュラウドに収納される。シュラウドの上下にはそれぞれプレナムが接続され、上部プレナムにはスタンドパイプ及び気水分離器を模擬した流路、下部プレナムにはジェットポンプを模擬した流路が設けられる。さらに下部プレナムには蒸気の注入口、上部プレナムにはスプレーノズルが設けられる。また、模擬燃料集合体は破損に至るまでのデータをとるために2体用意する。
 実験には次の4項目に分けて行う。

(1)非加熱実験
 上部から散布されたスプレー水が燃料を冷却する過程で発生する蒸気を模擬して、下部プレナムに蒸気を注入し、模擬燃料集合体には出力を与えない状態で、蒸気上昇流と模擬燃料集合体内に流入するスプレー水量との関係を調べる。

(2)定常加熱実験
 上部からスプレー水を散布した状態で、模擬燃料集合体に一定出力を与え、かつ下部プレナムに蒸気を注入したときの模擬燃料集合体内を上昇する蒸気流量と模擬燃料集合体内に流入するスプレー水量との関係、及び模擬ジェットポンプからの蒸気流出の割合を調べる。

(3)非定常冷却実験
 実際の原子炉で冷却材喪失事故を想定した後の炉心スプレー系作動時の状況をできるだけ模擬した状態で、模擬燃料集合体内に流入した水、及び蒸気による冷却効果を調べる。

(4)蒸気冷却実験
 下部プレナムに蒸気を注入し、模擬燃料集合体に一定出力を与えて定常状態を維持したときの蒸気単相流による熱除去量を調べる。

(総合評価)

 上記の4項目の実験結果から、8×8型燃料集合体に対して炉心スプレー系が作動した場合の燃料集合体内に流入する水量及び冷却能力を定量的に把握し、炉心スプレー系の有効性について総合的に評価する。


6 遮蔽構造における高速中性子の挙動に関する試験研究

(財)原子力安全研究協会

(研究目的)

 遮蔽構造におけるダクト等での高速中性子のストリーミングの挙動を解明するには、モンテカルロ法、輸送理論計算法等を用いた詳細な計算を行う必要がある。しかし、実際には計算時間等の制約のため、何らかの方法でこれらの計算の簡略化が必要であり、アルベド(後方散乱率)を適宜積分した形で利用することが多い。一方世界的にアルベドに関する実験は少なく、このため測定値も少なく、また、実験上の測定条件は限定されている。この様な現状に鑑み、わが国においてこの分野の研究を行うことは、原子炉の安全性確保に重要な問題である。このため、本試験研究は原子炉の遮蔽構造の中性子漏洩問題に適用することを目的として、アルベドモンテカルロ計算プログラムを作成するとともに、その適用における問題点の検討を行うものである。

(研究内容)

(1)高速中性子漏洩計算のためのアルベドモンテカルロ計算コードの作成
 昭和49年度の試験研究で整備検討された多群モンテカルロ計算コード(MORSE)を基本として、必要な新らしいサブルーチン群の追加を行い、中性子漏洩量の評価ができるアルベドモンテカルロ計算コードを作成する。また、例題計算を通じてその機能を検討する。

(2)高速中性子アルベドの整備及び特性の検討
1次元輸送コード(ANISN)のアルベド計算への適応性を検討し、鉄平板に対して高速中性子の入射エネルギー、入射角を変えてアルベドの計算を行い(1)項で開発整備されたアルベドモンテカルロ計算のデータとする。

(3)鉄平板後方散乱に対するモンテカルロ計算と実験値との比較検討
 昭和49年度の試験研究により整備検討された多群モンテカルロ計算コード(MORSE)及び実験的後方散乱測定法を用いて鉄平板の後方散乱を実験と計算両面から比較検討し、後方散乱の特性を明確にする。
 実験は昭和49年度に使用した約22cm厚の鉄平板を用いて、昭和49年度とは異なった入射角、反射角に対して実験を行う。特に、その内の1ケースについては、スペクトルの積分的測定法のみでなく、ONE-218及びHe-3スペクトロメータを用いたスペクトル精密測定を行う。

(4)中空鉄製直円筒に対する高速中性子ストリーミングの測定
 高速中性子源炉実験孔からの高速中性子を用いて、単純ダクト体系としての中空(鉄製)直円筒による中性子漏洩量の測定法を検討整備する。その測定体系により上記形状がダクトの肉厚長さが異なった場合の影響を測定する。
 使用する直円筒ダクトは肉厚約3cm ×内径約10cm×長さ約50cmが1種、肉厚約6cm×内径約10cmについて長さ約20cm、約50cm約100cmが3種合計4種とする。なお、肉厚約6cm×内径約10cm×長さ約50cmの1ケースについてはNE-213液体シンテレータ及びHe-3スペクトロメータを用いたスペクトルの精密測定を行う。


7 原子炉建物と地盤の相互作用に関する試験研究

(社)日本建築学会

(研究目的)

 原子炉建物は一般の建物と異なり建物の剛性が非常に高く、かつその重心が極端に低く地中に深く理込まれているため地震時の建物の動的挙動は、地盤と建物との相互作用、特に地下側壁と基礎底面の効果に大きく支配されるため、動的解析では原子炉建物と地盤の相互作用を適切に解析する方法が必要である。
 本試験研究は上記の理由から、地震時における原子炉建物など剛構造物の側壁の効果を含む地下逸散減衰の性状を正当に評価し、原子力発電の耐震設計の余裕度を明らかにすることを目的とする。

(研究内容)

 原子炉建物と地盤の相互作用を検討するため、昭和49年度試験研究を参考にして地下逸散減衰を(1)基礎底盤のみ、(2)主として地下側面からとした2つの場合について実地盤上に於て実験研究を行う。

(1)振動エネルギーの地下逸散が基礎底盤からとした場合

a)原子炉建物の性状を模擬したプレハブ型式による4層の鉄骨試験体を製作し室内における振動実験を行い上部架構の振動性状を明らかにする。

b)地盤上にコンクリート基礎(A型)を製作し振動実験を行い基礎底盤と地盤との相互作用を検討する。

c)(a)項試験体を(b)項基礎上に設置し振動実験を行い達成系の振動性状を明らかにする。
(2)振動エネルギーの地下逸散が主として地下側面からとした場合
a)一部を地中に埋設したコンクリート製剛体モデル(B型)の埋め込み深さを変化させ、埋め込み深さ各段階に応じた上部加振による振動実験を行う。
b)a)項の各段階において試験体側面の土圧、試験体及び周辺地盤の振動振幅を測定し試験体と地盤との相互作用を解明する。

 上記各実験項目について解析し理論解析結果との比較を行う。また、上記2つの実験結果を合せて検討することにより、原子炉建物と地盤の相互作用効果を明らかにする。


8 一体型舶用炉の信頼性解析に関する試験研究

(社)日本造船研究協会

(研究目的)

 今後の舶用炉あるいは原子力船の開発に当っては、これらの安全性の評価及び確保を最優先的課題として取り上げるべきである。このため現在最も実用化が進んでいる一体型舶用炉について舶用炉の特殊性を考慮した信頼性解析を行い一体型舶用炉の設計に反映させるための基礎資料を得る。

(研究内容)

 研究の対象としては、46~48年度に概要をまとめた一体型舶用炉(330MWt)を考え、代表的電気的系統と機械的系統の2系統について、構成要素の信頼性データを収集し、既存の陸上用信頼性解析プログラムを舶用に修正して、信頼性を解析し、船個有の問題が炉舶用の安全性、信頼性に与え影響を調べる。


9 隔膜法によるガス状放射性廃棄物の分離特性に関する試験研究

東京芝浦電気(株)

(研究目的)

 現在、原子力施設からの排ガス中の放射性希ガスを除去する方法としては、種々の方法が開発されつつある。これらの中で、隔膜法はその操作温度が常温で、かつその操作が簡単であることから有望視されている。
 しかし隔膜のガス透過係数が小さいことと分離係数が小さいために、分離性能が小さくなり、その結果装置が大きくなるという欠点を有している。
 隔膜法による希ガス分離装置のガス分離性能は装置を構成する分離セルの分離係数とカスケードの分離性能に依存する。そこで48年度に分離セルの分離係数の向上に関する検討を行い、ガス透過傾向の異なる二種類の中空円筒状膜を1つの分離セルに組みこむことにより、分離セルの分離係数を大きくすることができるようになった。
 本研究は、49年度に設計、試作したクリプトンガス分離装置を用いて還流比、リサイクル比のカスケード分離係数への影響と起動時のカスケードの過渡分離特性に関する評価を行う。

(研究内容)

 上記の目的を達成するために試験研究では以下の項目を行う。

(1)機器設計製作
 既設のクリプトンガス分離装置の過渡特性を試験するために自律式圧力調整弁、小流量計及びガスサンプリング装置を製作し、既設のクリプトンガス分離装置に組込む。

(2)過渡特性の検討
 クリプトンガス分離装置の起動時の過渡分離性能を検討する。

(3)試験
 濃縮最終段における還流比及びリサイクル比をパラメータとしてクリプトンガス分離試験を行う。さらにクリプトンガス分離装置の起動時における分離係数を測定する。

(4)評価
 試験結果をもとに沸騰水型軽水炉の放射性希ガス分離装置のカスケード段数等の装置規模について評価を行う。


10 高温燃焼ガス中の放射性物質の除去に関する試験研究

大阪府

(研究目的)

 中規模の放射線施設においても使用されるような、可燃性廃棄物の焼却減容装置が要望されている。本試験研究の目的は、このような装置の製作に際して問題となる、排ガス中に含まれる放射性物質の簡便な除去方法を開発するための基礎資料を得ることである。

(研究内容)

(1)高温焼却炉、サイクロン、熱交換器、フィルター及び集灰装置からなる小型の高温燃焼装置を設計、製作し、(2)コールド試験を行い、最適運転条件を定める。(3)砂、アルミナ、石英、及びゼオライトのフィルター素材について、200~800℃に焼成後のイオン交換能、粒径分布及びⅩ線回折による結晶構造を調べ、フィルター素材の特性を把握する。(4)ホット試験を実施し、装置全体の除塵及び除染特性を調べる。


11 環境放射能試料に関する各種測定器の分析目標値の最適化に関する試験研究

(財)日本分析センター

(研究目的)

 原子力施設の環境保全のため低レベル放射能の測定は、従来γ線を放出する核種を含む試料については、NaI(Tl)シンチレーションγ線スペクトロメータが一般に用いられており、最近はこれに代ってGe(Li)検出器を使用するつ′線スペクトロメータが普及している。これらのスペクトロメータは一長一短があり、環境試料中に含まれる放射能濃度と核種の構成によってその得失を異にする。
 わが国においては、NaI(Tl)、Ge(Li)検出器を用いた機器分析法の基準の検討が行われているが、低レベル環境放射能測定に適した手法についての明確な結論は得られていない。
 よって、これらの結論を早急に得て、定常的な測定手法の効果的、効率的運用を図ることを目的とする。

(研究内容)

 49年度(粘土質海底土)に引き続き、今年度は、砂質、サンゴ質海底土並びに海水、海産物、野菜、牛乳などを対象とした検出限界に関する研究を進めることとし、核種については、従来のCo-60、Cs-137、Ce-144のほか、更にI-131についても関連試料について実施することとする。このため、採取試料及び人工模擬試料を用いて次の研究を行う。

(1)試料の処理条件と検出限界
 49年度の研究の結果、検出限界を決定するための各種要因との関係は、基本的にはその成果を適用し得ると考えられるが、前処理との関連による密度、形等の形態による影響が特に重要であることが確認された。したがって、試料の形、量、比重、化学組成等の違いによる検出限界の差を求めることに重点をおき、49年度に順じた研究を行う。

(2)アンチコンプトン測定系による検出限界の改善
 環境放射能による内部被曝として特に重要な核種であるI-131に重点をおき、かつ、環境放射能の情報解析として重要なCo-60、Cs-137、Ce-144等の検出限界の改善も併せて追求するため、Anti Compton-Ge(Li)γ線スペクトロメータを用いて基礎資料を得る。

(3)二次元同時計数法の検討
 Co-60、Ru-106等、同時に2本以上のγ線を放出する核種について有効とされているNaI(Tl)-NaI(Tl)γ線検出装置による二次元スペクトル測定を行い、(2)の測定方法等との比較検討を行う。

(4)以上の結果を基とし、各試料に適合する分析目標値について測定条件及び誤差について最適化をはかり、目的に合致した測定結果を得る最適な測定方法について検討を行う。


12 放射線量算定に必要な微風構造に関する試験研究

(財)日本気象協会

(研究目的)

 微風時の大気拡散については、原子炉安全解析のための気象の手引で更に正確な実験研究が必要とされているので、微風の物理的構造を究明して、気体廃棄物の拡散現象を解明し、原子力施設の安全管理に役立てることを目的とする。

(研究内容)

(1)微風の実体把握
 茨城県飯野にある約20mの塔に、3成分超音波風速計をそれぞれ20m、10mの高さに設置する。
 風速が1m/s以下を微風とみなし、自動的に磁気テープに記録させる。
 これを用いて風向頻度図表、風速頻度図表、風向、風速の時系列図表、流跡線図等を作成する。

(2)微風モデル作成
 上記のデータを基として微風時系列モデル、微風頻度分布モデル、微風流跡線モデル等を作成する。

(3)現行の平常時、想定事故時の微風の簡便取扱い法の検討
 上記のモデルを基として簡便法の妥当性、安全側か否かについて検討する。

(4)安全解析における微風の取扱い法についての研究
 上記(2)(3)を基として微風の取扱い法について改善策を研究する。


13 中レベル放射性廃棄物の固化処理に関する試験研究

(財)電力中央研究所

(研究目的)

 原子力発電所、再処理施設等から発生する放射性廃棄物の処理処分の方針の確立は、わが国原子力発電開発上の重要な課題である。
 低レベル放射性廃棄物のセメント固化については、すでに国内における研究成果もあり、この成果を基に「試験的海洋処分用低レベル放射性廃棄物のセメント固化体に関する暫定指針(原子力委員会・環境安全専門部会報告書)が作成されている。これに引続いて、今後は中レベル放射性廃棄物の処理処分に関する研究開発を早急に推進し、もって技術基準を策定し、処分実施にあたって安全評価に資する研究成果を得ることがきわめて重要である。
 本研究は、その一環として中レベル廃棄物の海洋処分及び陸地保管を想定し、それぞれの処分方法に適合する廃棄物の固化手法、固化体の物理的・力学的性質と安定性、並びに固化体容器の安全性について、昭和49年度に引きつづき研究を実施しようとするものである。

(研究内容)

 試験研究内容はつぎのとおりである。

(1)アスファルト固化に関する実験研究
 濃縮廃液、イオン交換樹脂、フィルター、スラッジ等のアスファルト固化に関し、固化体製造上の諸性状を実験的に検討し、処分条件に適合した最適配合を導くための基本的資料を得る。

(2)セメント及びアスファルト固化体の物理的・力学的性状と安定性に関する実験研究
 セメント及びアスファルト固化体の海洋処分あるいは長期陸地保管への適合性を検討するため、
① アスファルト固化体の諸性状(比重、針入度、変形特性等)、及び力学的挙動(高水圧下、衝撃荷重下等) 

② セメント及びアスファルト固化体の長期安定性に関する実験研究を行う。

(3)固化体容器に関する実験研究
 高強度コンクリート、ポリエチレン等を内巻き材料とする多層構造容器に関し、昭和49年度に実施した小型の縮尺容器の開発研究の成果を基に、昭和50年度においてはこれを発展させ、200l実規模容器を既発製作し、この容器パッケージについて高水圧実験、落下衝撃実験を実施し、その変形特性、耐力を明らかにする。また均圧弁を取付けた容器の特性についても明らかにする。


14 中レベル廉イオン交換樹脂の化学分解による減容処理法に関する試験研究

日本揮発油(株)

(研究目的)

 原子力委員会環境安全専門部会放射性固体廃棄物分科会は、廃棄イオン交換樹脂等の中高レベル放射性廃棄物の処理方法として、一時的に地下タンク等に貯蔵しておき、ある程度放射能が減衰するのを待って、減容処理等の適当な処理を行って固化することを推奨している。
 この越旨にそって本委託研究では、化学分解による減容処理法を取り上げ、技術条件の選定と安全性の評価を実証的に行い、本法の実用性を検討することが目的である。

(研究内容)

 廃棄イオン交換樹脂の完全分解の処理条件について詳細に検討し、安全性と経済性を確保する最適条件を選定する。このためにまずプロセス条件の選定と安全性の検討に関する基礎実験を回分的に行う。この基礎実験結果を検討、解析し、化学分解反応、分解ガスの処理及び分解残渣の後処理等の各工程をシステムとしてまとめ、反応槽が3l規模のベンチスケール装置を作成する。この装置で、基礎実験の確認を行うとともに、総括的に本分解法の実用性を検討する。
 具体的研究項目は、次の通りである。

1 プロセス条件の選定
①化学分解反応条件の選定
②分解ガス(酸より生ずるガス)の処理法の検討
③分解残渣の後処理法の選定
④減容比の定量を行い、最適なプロセス条件を選定する。

2 安全性の検討
①オフガス中への放射性核種(ヨウ素、金属核種)の挙動の検討
②樹脂と混酸の反応に関する安全性の確認を行なう。


15 使用済核燃料輸送容器の海中落下時の安全性に関する試験研究

三井造船(株)

(研究目的)

 我が国でも使用済核燃料の輸送が近い将来本格的に行われる見通しにあり、日本及びIAEAの輸送基準に基づく指針が与えられており、また、輸送容器の海上輸送にかかわる安全性に関しては、これに使用される使用済燃料運搬船について、船体構造を不沈性のものとして本船自体で安全性が確保されることとなっている。
 さらに万全を期することを目的とし、災害評価の一つとして、輸送容器が万一海中に落下した場合を仮想し、輸送容器に水圧を加えて試験を行うものである。

(研究内容)

 本試験研究では、将来、大量の使用済燃料を海上輸送する際に使われる可能性のある80ton級の輸送容器を想定し、これらの縮尺モデルをつくって輸送容器に大きな外圧がかかった場合における容器の耐圧強度、気密性等を追求する試験研究を行う。
 なお、試験は深さ約2,000mの海中に輸送容器が落下したときの安全性を確認する事を目標にして行う。


16 環境放射線測定管理のためのエキソ電子線量計材料の開発に関する試験研究

松下電器産業株式会社
(研究目的)

 微弱な環境放射線量の検出、測定を行うため、固体のエキソ電子放出を用いたエキソ電子線量計の開発を目的とする。

(研究内容)

 ある種の固体に放射線を照射してのちに、これを加熱すると、電子が固体外に放出される。これを強電界によってパルス増幅し、検出するのがエキソ電子線量計である。これは固体表面近傍の部位が関係しており、試料を薄くできる等の特徴があり、微弱なβ線等の測定に適している。最近重要視されつつある原子炉施設周辺並びに国土の環境放射線の測定管理の面から期待されるものである。
 試験研究は、次の3項目について行う。

(1)エキソ電子放射材料の探索
 母体材料として、可能性の見込まれる各種硫酸塩及び各種酸化物を対象とする。また、添加不純物としては可能性の見込まれる鉛、ナトリウム、イオン等について検討する。実験試料を多数試作し、エキソ電子放射特性をしらべる。これらの材料の製作法としては、高温溶解法、セラミック製作法、再結晶法等による。

(2)エキソ電子放射素子の試作
 上項の検討から、エキソ電子線量計に向くと考えられる材料について、素子成型法を検討する。すなわちエキソ電子放射材料と電気電導性材料を混合し、ホットプレスを試みる。
 また、他の方法として化合物材料組成に含まれる陽イオン性金属を蒸着し、のちにこれを酸化させる方法を試みる。

(3)放射線特性試験
 上項によって得た素子に放射線を照射し、放射線感度、安定性等について試験する。


17 放射線被ばく登録管理を目的とした被曝線量当量評価に関する試験研究

(社) 日本保安用品協会
(研究目的)

 原子力平和利用の進展と共に、直接放射線作業に従事する職業人をはじめ、一般公衆を含め、国民の放射線被曝の機会はますます増大するものと考えられるが、原子力委員会「原子力従業員災害補償専門部会」の報告をはじめ、関係方面から指摘されているごとく、我が国において、放射線作業従事者各個人の被曝歴に関する集中的な登録管理システムを早急に確立することが必要である。
 本試験研究は、放射線作業従事者の個人被曝線量測定の評価に必要な諸因子の実験的研究を行うと共に、放射線被曝登録管理に必要な個人被曝歴データのコード化を検討し、そのシステム化をはかることを目的とする。

(研究内容)

 個人被曝線量当量の評価法に関する基礎的研究を行うと共に、全国放射線使用施設での被曝管理の実態を調査し、被曝管理及び統計解析システムの確立に必要な試験研究を行う。

(1)高エネルギー(3MeV以上)放射線被曝線量当量測定法の確立
 3MeV以上のx線、γ線被曝が予想されるベータートロン、サイクロトロン及び原子力発電、核燃料工場等を対象とした施設の被曝管理と被曝線量当量評価法の実態調査、フィルム・バッジ、螢光ガラス線量計及び熱発光線量計での実測等により、これ等の関連したエネルギーの減弱、散乱及びエネルギーと線量の相対関係についての実験を行う。

(2)個人被曝線量計着用以前における被曝線量当量の推定
 個人被曝線量計着用以前における放射線作業内容を調査、細分化し、その各種作業内容及び作業方法を再現し、実測を行うことによって被曝線量を推定するとともに、これらの推定線量と現在の実測における被曝線量測定値とを比較し、被曝管理の体系を検討する。

(3)計算等によって個人被曝線量を推定している施設での線量評価
 開業医(含歯科医)獣医及び工業関係下請業者等計算等で個人被曝管理を行っているところの個人の積算線量当量等の情報を得るため全国の開業医を中心として、被曝線量及び被曝線量推定に関する実態調査を行い、その一部についてフィルム・バッジ等を貸与して実測を行う。


18 ラジオアイソトープ電池を用いた心臓ペースメーカーの安全評価に関する試験研究

(財)日本心臓血圧研究振興会
(研究目的)

 心臓疾患の治療手段として人工心臓刺激装置(ペースメーカー)が臨床に広く用いられている。しかしその寿命が短かいため患者に与える肉体的精神的経済的負担がきわめて大きい。このため、長寿命のアイソトープ電池を使用するペースメーカーが着目されている。
 しかし、保有者並びに周囲に対するアイソトープ電池ペースメーカーの及ぼす影響について平常時並びに事故時についての充分な安全評価が行われて始めて、その実用は可能となる。
 このような現状を考えるとき、我が国においてもアイソトープペースメーカーそのものの安全性の評価を行い、実用上の諸問題を検討しておくことが急務となっている。

(研究内容)

(1)プルトニウム電池の安全性を確認するため熱源カプセルについて、火葬及び火災条件下での耐熱性、加圧下での溶接部の耐熱性、高速での耐衝撃性、並びに機械的歪みを与えた後の溶接部の耐食性の試験を行い、密封法を評価する。

(2)漏洩放射線測定
 漏洩中性子線束角度分布の測定を行い、昭和49年度のデータと合せて電池の漏洩線量分布を推定する。

(3)電子部品の安全性
 CMOS-ICを使用したペースメーカーの時間設定回路に電池からの漏洩放射線の10年間に相当する放射線量を照射し、損傷の程度を測定し、ペースメーカーの安全性を評価する。更に完成したペースメーカーの電子回路においても同様な試験を行いその安全性を検討する。


19 放射線発がんの誘発機構の解明及び放射線障害の検出技術の確立に関する試験研究

(財)原子力安全研究協会

(研究目的)

 人体に対する放射線障害の科学的信頼度の高いアセスメントを行うこと。このため特に、低線量領域に関する身体的、遺伝的影響に関する科学的情報を得ることは、原子力の平和利用の公衆への理解を得る基礎として不可欠のものである。本目的の達成のために大量の実験動物を用いた定量的データを得ることが中心課題となる。このため放射線医学総合研究所を中心としてマウスを用いた放射線発がん、霊長類の細胞遺伝学的研究、及び内部被曝について研究が実施されている。しかしながら、本目的の達成のためには、これと一体となった体系的、総合的データが必要であり、特に低線量領域の研究のために必要な基礎的研究の確立と技術開発が必要となる。

(研究内容)

(1)低線量放射線の発がん作用への寄与の研究

① ラットについて10~200radの速中性子線(14.1MeV)とプロラクテンの乳がん発生への併用効果について検討する。
② 種々の量のⅩ線全身照射を行ったマウスの各臓器における白血病ウイルス(MLV)の感染価の推移を経時に調査し、各線量域における白血病発生率との相関を調べる。

(2)低線量放射線の子宮内被曝の影響の研究
① 低線量Ⅹ線(25R程度)の照射をうけたマウス胎仔につき、神経細胞の増殖と分化への放射線の影響と胎齢にともなう大脳の放射線感受性の変化を明らかにする。
② ウサギ胎仔(胎齢25日)よりとり出した胚軟骨細胞に対し、100rem程度の放射線照射を行い分化機能発現への放射線障害を調べる。

(3)人類・猿類の染色体異常の検出技術の開発研究
① 正常日本人の末梢リンパ球を材料とし、リンパ球の染色体異常の種類及び頻度について調査する。
② 実験用動物として可能性の高い新世界ザルの内のリスザルの2系統を用いて飼育条件について検討するとともに、自然における固有の染色体異常について調査を行う。

(4)培養細胞における突然変異の検出に関する研究
 栄養非要求株の前進突然変異検出系を用いて、低線量放射線(100R以下)照射による誘発突然変異率を算定し、その感度を検討する。

(5)内部被曝によるがん発生の疫学的研究
 「トロトラスト」注入者保存病歴の調査を行うとともに、「トロトラスト」注入者の剖検例における内部被曝線量の調査を行う。


20 核融合燃料アイスペレットに関する試験研究

三菱原子力工業(株)

(研究目的)

 核融合炉の実用化には、プラズマの閉込、加熱等の炉心工学技術、ブランケット等の炉工学技術の他に、炉心工学技術の一つである燃料注入技術を確立する必要がある。この燃料注入の方法の一つにアイス・ペレット法があるが、この技術は、磁場閉込核融合炉の燃料注入技術としてだけではなくレーザー核融合炉には必須の技術である。また、核融合炉実用化途上の実験炉や、各種基礎的実験にも必要な技術である。このような背景から、諸外国では、アイス・ペレット法の実用化に積極的に取組み、ある程度の技術レベルに達している。一方、日本ではアイス・ペレット製作の基礎技術には早くから着手し、成果を上げたが、その後の技術実用化では遅れており、この分野の研究を進めるものである。

(研究内容)

 アイス・ペレット法の実用化とは、燃料となる重水素を連続的に、かつ一定の大きさの氷滴にし、炉心プラズマ中に充分制御された条件で加速注入する技術を確立することである。実用までのステップとして、1)液滴の製作2)液滴の氷結固化(アイス・ペレット化)、3)アイス・ペレットの加速が考えられる。
 本試験研究ではアイス・ペレット製作技術確立の先行試験として水素より液化が容易で、安全性についても問題の少ないと考えられる酸素を用いて液滴製作実験を行う。減圧零囲気で形成された液滴は落下中に蒸発により、潜熱をうばわれ、氷結固化する。
 実験では液滴形成に必要な諸条件を検討し、液滴形成状況を肥握する。次いで液滴落下時における液滴変化の観察と周辺状態の変化の測定を行う。

(1)試験装置の設計と製作
 酸素、水素の状態式、関連物性値等を調査検討し、液滴製作装置の設計製作を行う。本試験において液滴噴出部(ノズル)の設計が実験の成果に大きな影響を及ぼす。微小な液滴を再現性よく製作するためにノズル形状、ノズル孔の大きさ、ノズルに与える振動モード等の検討を行い、ノズル部は装置本体から簡単に取りはずし可能な構造とする。ノズルの取替えにより、連続式及び制御単発式で液滴を製作できるような設計を行う。また試験装置は装置減圧槽の周辺圧力の瞬時的な変化を測定できる機能を有し、酸素液滴の観察ができる様に設計製作を行う。

(2)液滴製作と測定
 酸素液滴の製作にあたっては、製作条件(ノズル形状、ノズルに与える振動、初期周辺圧力〔1~500torr〕)等を変化させ、液滴化の条件を求める。液滴製作が可能となったら、その液滴の形成状況、液滴の個数、落下速度、形状の変化等を高速度カメラで観察し、同時に液滴の蒸発による周辺圧力の変化を計測する。液滴は落下していくうちに蒸発により潜熱をうばわれ、氷結固化するが、氷結同化させるに必要な液滴サイズ、初期周辺圧力、落下速度等の諸条件を見い出すべく試験検討を行う。

(3)まとめ
 実験結果をもとに酸素液滴の製作条件を求め、その結果と、調査した水素、酸素の物性値の関連性とから水素のアイス・ペレット製作技術に必要なデーターを得る。


21 保障措置検証手段としてのガンマスペクトロメトリによる核物質の測定に関する試験研究

(財)核物質管理センター

(研究目的)

 保障措置上、国が実施すべき検証手段として非被壊測定機器使用による核物質の測定に関して、その実効性の検討を行い、わが国の保障措置の効果的な実施に資することを目的とする。

(研究内容)

 核物質の非被壊測定機器のうち、パッシブガンマスペクトロメトリ法による、①NaI(Tl)検出器と可搬型ガンマ線測定器と②Ge(Li)検出器と多重波高分析器とを用いて、ウラン-235濃縮度の異なるペレット及び燃料棒のウラン-235濃縮度を測定することにより、以下の検討、考察を行う。

(1)測定精度の検討
 上記2種の測定機器について、同一対象物を同一条件で測定し、両者の測定の再現性を比較検討する。

(2)測定因子の検討
 測定にあたって影響を与えると思われる測定系の幾何学的条件、測定操作方法についての検討を行う。

(3)適用性の考察
(1)、(2)の検討結果をもとに、保障措置検証手段としてのガンマスペクトロメトリ法の適用性の考察を行う。


22 トリウムーウラン・サイクルの予測・評価に関する研究

住友原子力工業(株)

(研究目的)

 トリウムーウラン・サイクルは、これまで個々に部分的に研究が行われてきたが、必ずしも燃料サイクル全体の流れの中で、一貫した研究が行われていないので、この面の研究を行う。

(研究内容)

 本研究は、ウランープルトニウム・サイクルをベースとした核燃料対策の問題を指摘し、核燃料多角化の一環として、トリウムーウラン・サイクル導入の可能性を研究する。
 このため研究対象は、トリウムーウラン・サイクルに関係する諸量の資源の世界的賦存状況を調査し、ついでトリウムーウラン・サイクルに採用される技術の現状を考察して、将来の技術予測を行い実用規模のトリウムーウラン・サイクルのため諸プラントの諸元と導入時期を予測する。そして現在から、2020年に至る期間の発電設備量に見合うウランープルトニウム・サイクルとトリウムーウラン・サイクルにおける燃料サイクル諸量の計算を行い、ウランープルトニウム・サイクルの中でのトリウムーウラン・サイクルの導入の可能性を評価する。
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