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放射性物質安全輸送専門部会報告書


昭和49年12月

昭和49年12月19日
原子力委員長 佐々木義武殿
放射性物質安全輸送専門部会長
青木 成文

 放射性物質の輸送に関する技術的基準について
 放射性物質安全輸送専門部会は、昭和49年1月以降放射性物質の輸送に関する技術的基準について検討した結果、次のとおり報告書を取りまとめたので、報告する。
 放射性物質の輸送の安全を確保することは、極めて重要であるので、今後すみやかに関係法令を整備されたい。

放射性物質等の輸送に関する安全基準

第1章 目的等

第1節 目的

 この基準は、放射性物質及び放射性物質によって汚染された物の輸送容器の設計、試験方法、輸送等に関する基準を定め、放射性物質等の輸送の安全を確保することを目的とする。
 なお、この基準は、原子炉施設、放射性物質等の加工、使用、保管等を行う施設の敷地内における放射性物質等の輸送については適用しない。

第2節 定義

 この基準で用いる次の用語の意義は、それぞれ以下の定義に定めるところによるものとする。

101 放射性物質等
 放射性物質等とは、放射性物質又は放射性物質によって汚染された物であって、その比放射能が0.002μCi/g以上のものをいう。

102 特別形放射性物質等
 特別形放射性物質等とは、非散逸性の固体状の放射性物質等又は破壊しない限り放射性物質を取り出すことのできないカプセルに収納された放射性物質等であって、次の各条件を満足するものをいう。

 a 少くとも1辺の外寸法が5mm以上あること。

 b 第7章に定める試験に適合すること。

103 核分裂性物質
 核分裂性物質とはプルトニウム-238、プルトニウム-239、プルトニウム-241、ウラン-233、若しくはウラン-235又はこれらの物質を含むものをいう。ただし、未照射の天然ウラン及び劣化ウラン(ウラン-23519あたりのプルトニウムの量が10-6gをこえず、かつ、核分裂生成物の量が0.25mCiをこえないものをいう。以下同じ。)を除く。

104 A1及びA2
 A1とは、A型輸送容器に収納できる特別形放射性物質等の放射能限度をいう。A2とは、A型輸送容器に収納できる特別形放射性物質等以外の放射性物質等の放射能限度をいう。

105 密封装置
 密封装置とは、輸送容器の一部であって、輸送(輸送中の保管を含む。以下同じ。)中放射性物質等が外部に放出されることを防止するための装置をいう。

106 輸送容器
 輸送容器とは、放射性物質等を輸送する容器であって、密封装置、吸収材、仕切構造、放射線しゃへい材、冷却装置、熱しゃへい材、機械的衝撃の吸収装置等の全部又は一部をそなえたものをいう。

107 A型輸送容器
 A型輸送容器とは、A型輸送容器の設計及び試験条件を満足する輸送容器をいう。

108 B(M)型輸送容器
 B(M)型輸送容器とは、B(M)型輸送容器の設計及び試験条件を満足する輸送容器をいう。

109 B(M)型輸送容器
 B(M)型輸送容器とは、B(M)型輸送容器の設計及び試験条件を満足する輸送容器をいう。

110 輸送コンテナー
 輸送コンテナーとは、輸送途中に輸送物の積み替えをせずに輸送物を輸送するために設計された輸送設備であって、繰返し使用に耐える強度を持ち、輸送中の吊り上げ等のための取扱い設備と適合し、かつ、開放型でない構造のコンテナーをいう。

111 放射性収納物
 放射性収納物とは、輸送容器に収納された放射性物質等をいう。

112 輸送物
 輸送物とは、輸送容器及びこれに収納された放射性物質等又は放射性物質等の貨物をいう。

113 A型輸送物
 A型輸送物とは、A型輸送容器及びこれに収納された放射性物質等をいう。

114 B(M)型輸送物
 B(M)型輸送物とは、B(M)型輸送容器及びこれに収一納された放射性物質等をいう。

115 B(M)型輸送物
 B(M)型輸送物とは、B(M)型輸送容器及びこれに収納された放射性物質等をいう。

116 核分裂性輸送物
 核分裂性輸送物とは、核分裂性物質を収納した輸送物をいう。ただし、次に掲げるものを除く。

 a 15g以下のウラン-233、ウラン-235、プルトニウム-238、プルトニウム-239若しくはプルトニウム-241又はこれらの混合物を収納した輸送物であって、すべての外寸法が10cm以上のもの。

 b 熱中性子炉で照射された天然ウラン又は劣化ウランを収納した輸送物

 c 核分裂性物質が水素化合物に均一にとけた溶液又は核分裂性物質と水素化合物との混合物であって、第1表で定める制限量以下のものを収納した輸送物

第1表 水素化合物に均一にとけた溶液又は核分裂性物質と水素化合物との混合物に関する制限

 d 濃縮度が1wt%をこえず、かつ、ウラン-235に対するウラン-233及びプルトニウムの比が1wt%をこえない濃縮ウランであって、核分裂性物質が均一に分布している輸送物。ただし、金属ウラン又はウランの酸化物の場合は、輸送物中で格子状に配列されていないものに限る。

 e 通常の輸送条件下において10リットルあたりの核分裂性物質の量が、59をこえない輸送物

 f 1kg以下のプルトニウムを収納した輸送物。ただし、プルトニウム-239、プルトニウム-241、又はこれらの混合物のプルトニウムの総量に対する重量比が20wt%以下のものに限る。

 g 濃縮度が2wt%以下の硝酸ウランの溶液であって、プルトニウム及びウラン-233のウラン-235に対する重量比が0.1wt%以下の輸送物

117 核分裂性第1種輸送物
 核分裂性第1種輸送物とは、輸送中に生じることが予想されるいかなる状態においても、輸送物の個数及び配列方法にかかわりなく、核的に安全な核分裂性輸送物をいう。

118 核分裂性第2種輸送物
 核分裂性第2種輸送物とは、輸送中に生じることが予想されるいかなる状態においても、輸送物の個数を制限すれば、その配列方法にかかわりなく、核的に安全な核分裂性輸送物をいう。

119 核分裂性第3種輸送物
 核分裂性第3種輸送物とは、輸送中に生じることが予想されるいかなる状態においても輸送物の個数の制限、特定の配列方法その他特別の管理を行った場合に核的に安全な核分裂性輸送物をいう。

120 第1類白輸送物
 第1類白輸送物とは、次に掲げる輸送物(特別の措置を講じた輸送物を除く。)をいう。

 a 核分裂性輸送物でない輸送物又は核分裂性第1種輸送物であって、通常の輸送条件下においてその表面の放射線量率が0.5ミリレム毎時以下のもの

 b 前号の輸送物を収納した輸送コンテナー

121 第2類黄輸送物
 第2類黄輸送物とは、次に掲げる輸送物(特別の措置を講じた輸送物を除く。)をいう。

 a 核分裂性輸送物でない輸送物又は核分裂性第1種輸送物であって、通常の輸送条件下においてその表面の放射線量率が0.5ミリレム毎時をこえ、50ミリレム毎時をこえないものであって、輸送指数が1.0をこえないもの

 b 通常の輸送条件下においてその表面の放射線量率が50ミリレム毎時をこえない核分裂性第2種輸送物であって、輸送指数が1.0をこえないもの

 c 通常の輸送条件下において輸送指数が1.0をこえない輸送コンテナーであって、核分裂性第3種輸送物を収納しないもの(第1類白輸送物を除く。)

122 第3類黄輸送物
 第3類黄輸送物とは、第1類白輸送物又は第2類黄輸送物以外の輸送物をいう。

123 非固定性放射能汚染
 非固定性放射能汚染とは、乾式スミア法によって表面から取り除くことのできる汚染をいう。

124 輸送指数
 輸送指数とは、次の各号に定める数値をいう。

 a 核分裂性輸送物でない輸送物又は核分裂性第1種輸送物にあっては、輸送物の表面から1mの点における放射線量率をミリレム毎時であらわした値の最大値

 b 核分裂性第2種輸送物又は核分裂性第3種輸送物の場合は、次の二つの数値のうち大きい方の数値

ア 輸送物の表面から1mの点における放射線量率をミリレム毎時であらわした値の最大値

イ 輸送制限個数で50を除して得られた数値

 c 輸送物を輸送コンテナーに収納して専用積載で輸送する場合は、次に定める数値をもって、a又はbに定める輸送指数に代えることができる。

ア 核分裂性第3種輸送物以外の輸送物を収納した場合は、次の二つの数値のうち、大きい方の数値

(ⅰ)輸送コンテナーの表面から1mの点における放射線量率をミリレム毎時であらわした値の最大値

(ⅱ)輸送コンテナーに収納した輸送物ごとに輸送制限個数で50を除して得られた数値の合計値

イ 核分裂性第3種輸送物を収納した場合は、50(ただし、輸送コンテナーの表面から1mの点における放射線量率をミリレム毎時であらわした値の最大値が50をこえるときは、その最大値)

 d ウラン及びトリウムの鉱石若しくは精鉱を輸送する場合は、輸送物の集合の表面から1mの点における放射線量率をミリレム毎時であらわした値の最大値に第2表で定める倍数をかけて得られた数値

第2表 輸送指数を求める倍数

125 輸送制限個数
 輸送制限個数とは、輸送中に1か所に集積することの許される核分裂性第2種輸送物又は核分裂性第3種輸送物の最大個数をいう。

126 専用積載
 専用積載とは、車両、大型コンテナー、航空機又は船舶の船倉、区画室若しくは甲板が単一の荷送人によって専用され、かつ、輸送物の積込み及び積降しが荷送人又は荷受人の指示によって行われる場合をいう。

127 非圧縮気体
 非圧縮気体とは、密封装置によって密封したとき、その圧力が大気圧をこえない内部の気体をいう。

128 最高使用圧力
 最高使用圧力とは、輸送容器について排気、冷却その他の特別な操作を行わない場合に密封装置内に生ずる気体の圧力から平均海面上大気圧を差し引いた値の最大値をいう。

129 車両
 車両とは、道路車両(けん引車とセミトレーラーの組合せ等の連結車両も含む。)軌条用車両及び鉄道車両をいう。ただし、トレーラーのけん引車と附ずい車とは別々の車両とみなすことができる。

第2章 輸送物の設計条件

第1節 一般条件

 すべての輸送物は、本節に定める条件を満たさなければならない。

201 輸送物は、取扱いが容易であり、かつ、輸送中その安全性が十分に保たれる設計でなければならない。
 この場合、特に次の点について留意すること。

 a 50kg以下のものは手で、50kgをこえるものは機械的手段により安全に取り扱えること。

 b 輸送物の吊り上げ用具は、急激な吊り上げに対しても耐えるよう適当な安全係数をとること。

 c 吊り上げ用具と間違えられるおそれのある付属物等は、取り外せるか、みだりに利用できなくするか、又は間違って吊り上げられてもbと同程度に安全な構造であること。

 d 輸送物の外面は、できる限り雨水がたまりにくく、除染が容易であり、かつ、突出物のない構造であること。

 e 輸送中輸送物に取り付けられている装置は、輸送物の安全性を減少させないものであること。

202 輸送物の外側は、容易に破れないシール等によりみだりに開封されないようにするとともに、開封された場合には、それがわかるようにすること。

第2節 A型輸送物の追加設計条件

 A型輸送物は、前節に定める条件のほか、本節に定める条件を満たさなければならない。

203 A型輸送容器は、次の条件を満たさなければならない。

 a 輸送容器の材質は、輸送中に予想される温度変化に耐えるものであること。この場合、特に脆性破壊に注意すること。

 b 輸送中に輸送物の受ける加速又は振動に耐えるものであること。特にボルト、ナットその他の締具の受ける影響に注意すること。

 c 輸送容器の材質と材質又は材質と放射性収納物が、物理的にも化学的にも作用し合わないものであること。この場合、特に放射線の影響についても考慮すること。

204 輸送物の外寸法は、10cm以上でなければならない。

205 輸送物は、偶然に又は輸送物の内圧によって開くことはない確実な締具で閉ざすことのできる密封装置を備えなければならない。

206 密封装置が輸送容器から取り外せる場合には、輸送容器から独立した締具で確実に閉ざすことのできるものであること。この場合、次の点に留意すること。

 a 液体又は脆弱な材質の放射線による変質及び化学反応又は放射線分解による気体の発生

 b 周囲の気圧は、0.25kg/cm2まで低下する可能性があること。

207 圧力逃がし弁以外で放射性収納物が外に出る可能性のある弁は、誤操作によるもれを防止できる構造であり、かつ弁からのもれを防ぐ保護具等をつけなければならない。

208 放射線しゃへい体が輸送容器から取りはずせる場合には、輸送容器から独立した締具で確実に閉ざすことのできること。

209 A型輸送容器は、第6章に定める通常時試験を行っても、密封性及び放射線しゃへいに関し、次に定める条件を満たすことのできるものでなければならない。

 a 放射性収納物の損失又は散逸がないこと。

 b 輸送物の表面の放射線量率が200ミリレム毎時をこえないこと。

210 液体状の放射性物質等を収納するA型輸送容器は、第6章に定める追加試験を行っても、209に定める条件を満たすものでなければならない。ただし、収納できる放射性物質等の2倍以上の量の放射性物質等を吸収できる吸収材を密封装置の内部に備えている場合であって、次のいずれかの条件を満足するときは、この限りでない。

 a 吸収材が放射線しゃへい材の内側にあること。

 b 吸収材が放射線しゃへい材の外側にある場合には、収納物が全部吸収材に吸収されたとしても、輸送物の表面の放射線量率が200ミリレム毎時をこえないこと。

211 気体状の放射性物質等を収納するA型輸送容器は第6章に定める追加試験を行っても、209に定める条件を満たすものでなければならない。

第3節 B(M)型輸送物の追加設計条件

 B(M)型輸送物は、201~208に定める条件のほか、本節に定める条件を満たさなければならない。

212 輸送物は、第6章に定める通常時試験を行い、かっ、1週間にわたって第3表に定める環境条件下に放置されたとしても、密封性、放射線しゃへい及び耐熱に関し、次に定める条件を満たすことのできるものでなければならない。
 なお、放射性収納物からの発生熱があるときは、以下の点に留意すること。

ア 放射性収納物の配列、物理的状態の変化及び缶等に収納されている場合は、缶等の溶解

イ 放射線しゃへい体の熱膨張の差、割れ及び溶解

ウ 水分による腐蝕の促進

 a 放射性収納物の損失が、A2×10-6毎時(希ガスのA2値は、非圧縮状態のものを用いること。)をこえず、表面汚染密度は、第4表に定める値をこえないこと。

 b 容易に人の接近し得る部分の温度は、日陰において、50℃(専用積載の場合は82℃)をこえないこと。

 c 表面の放射線量率は、200ミリレム毎時をこえないこと。

第3表 環境条件

(1)環境温度:38℃

(2)太陽輻射:最低温度の評価においては、0とすること。
最高温度の評価においては、次表によること。


213 輸送物は、第6章に定める事故時試験を行い、かっ、1週間にわたって第3表に定める環境条件下に放置されたとしても、次の各条件を満たすものでなければならない。

 a 試験前、容器から1mの距離で10ミリレム毎時の放射線量率を与えるのに十分な量のイリジウム-192を収納した場合、容器から1mの点における放射線量率が1レム毎時をこえないこと。ただし、特定の核種のみを収納する容器にあっては、イリジウム-192の代りに当該核種を用いてもよい。また、中性子線源を収納する輸送容器にあっては、さらに適当な中性子線源を用いて同じ試験を行うこと。

 b 試験後1週間における放射性収納物の損失の総量がA2(クリプトン-85については10,000Ci、希ガスのA2値は、非圧縮状態のものを用いること。)をこえないこと。
 この場合、試験時において密封装置の圧力は、最小降伏応力をこえないこと。

214 事故時試験のうちの耐火試験に合格するために熱絶縁体を備えた輸送物にあっては、第6章に定める通常時試験及び事故時試験のうちの強度試験を行っても、その熱絶縁体の性能が維持できるものでなければならない。この場合において、熱絶縁体が、輸送物の外面にとりつけられている場合は、通常の輸送条件及び上記の試験で模擬されないような破損、切断、横すべり、摩滅、乱暴な取扱い等に対し、熱絶縁体が性能を維持できるものでなければならない。

第4節 B(U)型輸送物の追加設計条件

215 B(U)型輸送物は、201~208及び212~214に定める条件のほか、本節に定める条件を満たすものでなければならない。ただし、第3表に定める環境温度としては、少なくとも-40℃まで考慮し、事故時試験後1週間の放射性収納物の損失の総量は、A2×10-3(希ガスの値は、非圧縮状態のものを用いること。)をこえてはならない。

216 輸送物は、通常時試験及び事故時試験を行った場合、圧力逃し装置から放射性収納物がもれてはならない。

217 輸送物は、フィルター又は機械的冷却装置を用いなければ、放射性収納物の損失を許容値以下に抑えられない構造であってはならない。

218 輸送物は、輸送中連続排気を行うものであってはならない。

219 平均海面上大気圧から気圧を引いた値に最高使用圧力を加えた値が0.35kg/cm2(G)をこえるおそれがある場合、密封装置は、その値の1.5倍以上の圧力及び予想される最高使用温度の条件下で、次の条件を満たすものでなければならない。

 a 応力は、最小降伏応力の75%以上にならないこと。

 b 応力は、引張り強さの40%以上にならないこと。

220 最高使用圧力は、7kg/cm2(G)をこえてはならない。

第3章 輸送に関する条件

第1節 一般条件

301 輸送物には、収納された放射性物質等の使用に必要な機器又は書類以外の物品を収納してはならない。ただし、これらの機器又は書類が、輸送容器又は放射性収納物と影響しあって輸送物の安全性を損うおそれのあるときは、これらの物品であっても、収納してはならない。

302 輸送物の表面における非固定性放射能汚染は、実施可能な限り低くおさえることとし、通常の輸送条件下においては、第4表に定める最大許容表面密度をこえてはならない。

303 輸送物及び輸送コンテナーには、第2図、第3図又は第4図に掲げる標識を付けなければならない。

304 標識は、輸送物にあっては、相対する2面に、輸送コンテナーにあっては、4側面に付けなければならない。

305 専用積載の場合には、各標識に「専用積載」と記入しなければならない。

306 総重量が50kgをこえる輸送物にあっては、その輸送物の表面にその総重量を鮮明かつ消えないように記入しなければならない。

307 A型輸送物には、rA型」の文字を、B型輸送物には、所管官庁の確認番号及び「B型」の文字をその表面に鮮明かつ消えないように記入しなければならない。

308 B(M)型及びB(M)型輸送物の設計条件に適合している輸送物にあっては、耐火性及び耐水性のある最も外側の輸送容器の表面に、第1図に示す三葉マークを耐火性及び耐水性のある浮き彫り押印その他の手段により明確に印さなければならない。

309 放射性物質等を運搬する車両には、第5図に掲げる標識をつけなければならない。

第1図 基本的な三葉マーク

第2図 第1類白輸送物の標識

第2節 人及びフイルムの被ばくの防止条件

310 輸送物は、放射線による被ばくを防止するため、人の居住区域、作業場所又は旅客若しくは一般人が常時立ち入る場所から隔離しなければならない。

311 輸送に従事する者については、被ばく管理を行わなければならない。ただし、1年間の被ばく線量が05レムをこえるおそれのない場合は、この限りでない。

第3図 第2類黄輸送物の標識

第4図 第3類黄輸送物の標識

第5図 車両用の標識

312 輸送物は、未現像の写真フィルム又は写真乾板等に対して10ミリレントゲンをこえる被ばくを与えないようにこれらの物から隔離しなければならない。

第3節 輸送に関する一般条件

313 放射性物質等を輸送する場合は、次の各条件を遵守しなければならない。

 a 輸送物は、荷くずれ、転落等のおそれがないよう積載すること。

 b 1輸送物あたりの放射線量率は、輸送物の表面で200ミリレム毎時、輸送物から1mの点で10ミリレム毎時をこえないこと。

 c 表面からの平均熱放出率が15w/m2をこえる輸送物は、特別な設備を設けない限り袋詰めになっていない一般の貨物と一緒に輸送しないこと。

 d 輸送物は、事故が起きた場合、その輸送容器の健全性を損うおそれのある危険物と一緒に同一の車両、航空機又は船舶の船倉、区画室若しくは甲板に積載しないこと。

 e 輸送物は、旅客用の区画室に積載して輸送しないこと。ただし、その輸送物に同行することが特別に許された随伴者だけが使用する区画室に積載する場合は、この限りでない。

 f 輸送物を輸送する場合には、1車両、1船舶又は1航空機あたりの輸送指数の合計が50以下であること。ただし、輸送物を十分な厚さをもった常設の障壁で区画されている場所又は6m以上離れた場所に積載して輸送する場合には、それぞれの場所ごとの輸送指数の合計が50以下であればよい。

 g 輸送コンテナーに輸送物を収納して輸送する場合には、次の条件を満足すること。

ア 輸送コンテナーの輸送指数は、50をこえないこと。

イ 大型輸送コンテナーの側面に、第5図に示す標識を付けること。

第4節 鉄道輸送に関する追加条件

314 放射性物質等を輸送する車両には、第5図に示す標識をその両側面に付けなければならない。ただし、大型輸送コンテナーを輸送する車両であって、開放型のものにあっては、大型輸送コンテナーの標識をもってこれに代えることができる。

315 車両の表面における放射線量率は、200ミリレム毎時をこえてはならない。この場合において車両が開放型であるときは、その外輪郭に接する垂直面及び車両の底面においてそれぞれ200ミリレム毎時をこえてはならない。

316 車両の側面(開放型車両の場合は、外輪郭に接する垂直面)から1mの点において、放射線量率が10ミリレム毎時をこえてはならない。

317 1車両あたりの輸送指数の合計は、50をこえてはならない。

第5節 道路輸送に関する追加条件

318 放射性物質等を輸送する車両には、運転手及び助手以外の者を乗車させてはならない。

319 放射性物質等を輸送する車両には、第5図に示す標識をその両側面及び後面に付けなければならない。ただし、大型輸送コンテナーを運搬する平型の車両の場合は、大型輸送コンテナーに付けた標識をもってこれに代えることができる。

320 車両の表面における放射線量率は、200ミリレム毎時をこえてはならない。この場合において、車両が開放型であるときは、その外輪郭に接する垂直面及び車両の底面においてそれぞれ200ミリレム毎時をこえてはならない。

321 車両の側面(開放型車両の場合は外輪郭に接する垂直面)から1mの点において、放射線量率が10ミリレム毎時をこえてはならない。

322 1車両あたりの輸送指数の合計は、50をこえてはならない。

323 乗務員が通常乗り込む場所の放射線量率は、2ミリレム毎時をこえてはならない。ただし、乗務員に関して被ばく管理を行う場合は、この限りでない。

第6節 船舶輸送に関する追加条件

324 輸送物を船舶に積載する場合は、船舶全体の輸送指数が200をこえてはならない。ただし、専用積載の場合は、この限りでない。

第7節 航空機輸送に関する追加条件

325 B(M)型輸送物を輸送する場合は、専用機を用いること。

326 B(U)型又はB(M)型輸送物の表面で人が容易に近づき得る部分の温度は、専用積載の場合であっても、50℃をこえてはならない。

327 連続換気を行うB(M)型輸送物、補助冷却系による外部冷却を行う必要のある輸送物及び輸送中特別な操作を行う必要のある輸送物は、輸送してはならない。

328 自然発火性の液体状放射性物質等は、輸送してはならない。

329 輸送物を航空機に積載する場合は、航空機全体の輸送指数は、200をこえてはならない。

第8節 郵送に関する追加条件

330 放射能が、第5表の放射能限度の10分の1以下である放射性物質等は、郵送することができる。

331 郵便による国際間の輸送は、次の条件を満足させなければならない。

 a 国内郵政当局の認めた荷送人によってなされること。

 b 輸送は、原則として航空便で最短コースを通って行われること。

 c 輸送物の外側に「放射性物質」と書いた白ラベルをはりつけること。

 d 輸送物の外側に荷送人の住所及び氏名を明記して、配達ができないときは返送できるようにしてあること。

 e 輸送容器の表面に荷送人の住所及び氏名並びに放射性物質等の種類及び数量が明記されていること。

第9節 事故時の措置等に関する条件

332 放射性物質等を輸送しようとするときは、荷送人又は運送人は、事故を防止するため、次の措置を講じなければならない。ただし、郵送の場合その他輸送物の量が少ない場合は、この限りでない。

 a 輸送物の種類、量、輸送日時、輸送経路等をあらかじめ、関係機関に連絡すること。

 b 輸送物の種類、取扱い方法、輸送に際し留意すべき事項等を輸送に従事する者に周知させること。

 c 事故が発生した場合、連絡すべき機関、担当者の氏名、電話番号を輸送に従事する者に周知させておくこと。

 d 輸送に際し、消火器、放射線測定器、保護具等を携帯させること。

333 荷送人又は運送人は、事故が発生した場合、次のような措置を講じなければならない。

 a 事故により被害を受けた者を救助すること。

 b 警察署、消防署等関係機関にただちに連絡すること。

 c なわ張り等の手段により、関係者以外の者の立入りを禁止すること。

 d 事故が発生した時近くにいた者を確認し、すみやかに被ばく検査等を行うこと。

 e 放射線に関する専門家により、汚染状況の検査除染等を行うこと。

 f 事故後定期的に、汚染した場所の検査を行うこと。

334 荷送人又は運送人は、事故が発生したときは、事故の原因、事故に際し講じた措置、事故の状況等について、関係機関に報告しなければならない。

第4章 適用を免除する放射性物質等

第1節 放射性物質等

401 本節に規定する放射性物質等は、次の各条件を満足する場合は、第2章及び第3章(第8節を除く。)の規定の適用を免除する。ただし、爆発性又は自然発火性のものは、この限りでない。

 a 第2章第1節に定める条件を満たす容器に入れること。
 ただし、405に定めるものは、この限りでない。

 b 輸送物の表面の放射線量率が0.5ミリレム毎時をこえないこと。

 c 輸送物の表面の非固定性放射能汚染の密度が第4表の値をこえないこと。

 d ウラン-235を収納した輸送物にあっては、ウラン-235の量が159をこえないこと。
 ただし、404に定めるものは、この限りでない。

 e 輸送物のすべての外寸法が10cm以上あること。

 f 輸送にあたっては、その輸送書類に「適用免除放射性物質」と明記すること。

402 第5表の放射性物質等の欄の放射能限度をこえない放射性物質等(403から405までに規定するものを除く。)であって、次の各条件を満足するもの。

 a 通常の輸送条件下においては、放射性物質等がもれないこと。

 b 輸送容器のよく見える部分に「放射性物質」と表示されていること。

403 放射性物質を含む時計、電子管、電子装置等の装置又は機器であって、次の各条件を満足するもの。

 a 装置又は機器の表面から10㎝の点における放射線量率が10ミリレム毎時をこえないこと。

 b 輸送物の放射能が、第5表の装置又は機器の欄の放射能限度をこえないこと。

 c 装置又は機器に、「放射性物質」という表示があること。ただし、放射線発光文字盤を用いた時計類については、この限りでない。

第5表 適用を免除する放射性物質等の放射能限度

404 天然ウラン、劣化ウラン又は天然トリウムを用いて作られた機器であって、これらの放射性物質の表面が金属その他の不活性な被覆で覆われているもの。

405 放射物質等を収納したことのある空容器であって、次の各条件を満足するもの。

 a 破損等がなく、確実に閉じられていること。

 b 内部が十分に除染され、内部の非固定性放射能一汚染の密度が第4表に掲げる値の100倍をこえないこと。

 c 放射性物質等の輸送の際使用したすべての標識は見えないようになっていること。

第2節 容器に収納しなくてもよい放射性物質等

 本節に規定する放射性物質等は、第2章の規定にかかわらず、容器に収納せずに輸送することができる。

406 放射性物質によって汚染された機器及び装置、放射性廃棄物等であって、次に定める条件を満たすもの。

 a 専用積載で輸送すること。

 b 通常の輸送条件下において放射性物質が容易に飛散しないものであること。

 c 放射線量率は、表面で200ミリレム毎時以下、1mの点で10ミリレム毎時以下であること。

 d 表面汚染密度が第4表に掲げる数値をこえないこと。

407 ウラン又はトリウムの鉱石であって、次の条件を満たすもの。

 a 専用積載で輸送すること。

 b シート等で完全に覆われていること。

 c 放射性量率は、表面で200ミリレム毎時以下1mの点で10ミリレム毎時以下であること。

 d 表面汚染密度が、第4表に掲げる数値をこえないこと。

第3節 特別の措置を講じた輸送物

408 第2章及び第3章の規定にしたがうことが著しく困難な輸送物であって、輸送物の表面の放射線量率が1,000ミリレム毎時以下、輸送物から2mの点における放射線量率が10ミリレム毎時以下のものは次に定める条件の全部又は一部を満たすことによって安全上支障がないと認められる場合は、所管官庁の認可を得て、専用積載で輸送することができる。

 a 伴走車をつけること。

 b 放射線管理に関する専門家を添乗させること。

 c 走行速度の制限を行うこと。

 d 交通が混雑する時間及び経路を避けること。

 e 輸送に従事する者の被ばく管理を行うこと。

 f 適切な事故対策を講じうること。

 g その他輸送の安全を確保するために必要な措置が講じられること。

第5章 核的安全のための条件

第1節 一般条件

501 核分裂性物質は、輸送中のいかなる状態においても臨界に達することがないよう包装されなければならない。この場合

 a 輸送物内への水の侵入

 b 中性子吸収材又は中性子減速材の効力のそう失

 c 輸送物中における放射性収納物の配列の変化又は輸送物からの漏洩によって生ずる放射性収納物の配列の変化

 d 輸送物相互又は放射性収納物相互の接近

 e 輸送物の水中又は雪中への浸漬

 f 温度変化
 等の可能性に留意し、かつ具体的には、第2節及び第3節の規定を参考とすること。
 なお、第2節及び第3節の規定を適用するにあたっては、輸送物の集合の全面が水による完全反射があるものとし、かつ、輸送物間は、最適濃度の水素減速であるものとする。

第2節 核分裂性第1種輸送物に関する条件

502 核分裂性第1種輸送物は、第6章に定める通常時試験において、任意の個数の輸送物を任意の配列に並べた場合、臨界に達しないものでなければならない。
 特に、放射性収納物の配列及び密封装置の形状の変化によって反応度が有意に増加しないこと。

503 核分裂性第1種輸送物は、第6章に定める通常時試験、事故時試験又は核分裂性輸送物に関する追加試験において250個の輸送物を任意の配列に並べた場合、臨界に達しないものでなければならない。
 なお、これらの試験の結果にかかわらず、密封装置の中へ水が侵入するものとして本評価を行うこと。ただし、輸送物が多重高性能防水構造であるもの、輸送容器の製造及び維持に関し高度の品質管理が行われ、積載の前に各輸送物ごとに密封性を実証するための特別の試験を行うもの等水の侵入を十分防げるものである場合は、この限りでない。

第3節 核分裂性第2種輸送物に関する条件

504 核分裂性第2種輸送物は、第6章に定める通常時試験において輸送制限個数の5倍の数の輸送物を任意の配列に並べた場合、臨界に達しないものでなければならない。
 特に次の各条件に適合するものであること。

 a 臨界安全の評価の根拠となる容積又は空間の減少は、5%をこえないこと。また、輸送物の構造に生じるくぼみは、10cm3をこえないこと。

 b 放射性収納物の配列及び密封装置の形状の変化によって反応度が有意に増加しないこと。

505 核分裂性第2種輸送物は、第6章に定める通常時試験、事故時試験又は核分裂輸送物に関する追加試験において輸送制限個数の2倍の数の輸送物を任意の配列で並べた場合、臨界に達しないものでなければならない。
 なお、これらの試験の結果にかかおらず、密封装
置の中へ水が侵入するものとして本評価を行うこと。ただし、輸送物が多重高性能防水構造のもの、輸送容器の製造及び維持に関し高度の品質管理が行われ積載の前に各輸送物ごとに密封性を実証するための特別の試験を行うもの等水の侵入を十分防げるものである場合は、この限りでない。

第4節 核分裂性第3種輸送物に関する条件

506 核分裂性第3種輸送物は、本章第1節に定める条件を満たし、かつ、その核的安全性について所管官庁の認可を受けなければならない。

第6章 輸送物に関する試験等

第1節 試験の方法

601 本章に定める試験は、次のいずれかの方法又はその組み合わせによって行うことができる。

 a 輸送容器の原型容器又はサンプルによる試験の実施。この場合、試験に使用する輸送容器に入れる物は、収納することが予想される放射性物質等をできるだけ模擬すること。

 b 適当な縮尺模型による試験の実施
 この場合、貫通直径または圧縮負荷等のパラメータについては、適切な調整を行うこと。

 c 計算方法が信頼できるものである場合は計算。

602 実際に試験に供する供試物の数は、輸送容器の製造量、使用頻度等に応じて増加させなければならない。
 なお、試験結果によっては、最大破損をおこす試験要件を満足するまで供試物の数を増加して、試験を行わなければならない。

603 供試物については、試験の前に少くとも次の事項を確認し、記録しなければならない。

 a 仕様又は図面との相違

 b 構造上の欠陥又は損傷

 c 腐食又はその他の劣化現象

 d 外観上の変形

604 密封装置の仕様は、明確になっていなければならない。

605 供試物は、同じ種類の輸送物と簡単かつ明確に対比できるものでなければならない。

606 落下試験台の上面は、なめらかな水平面でなければならない。

第2節 通常時試験

607 通常時試験は、次のとおりとする。

 a 次の吹きつけ試験

ア 地面の単位面積あたりの水量は、50ミリ毎時の雨量に等しいこと。

イ 水は、水平からおよそ45。の角度で供試物にかけること。

ウ 水の吹きつけを受ける方向の供試物の表面には雨にぬれたときのようにほぼ均一に水がふりかかること。

エ 水の吹きつけ時間は、少なくとも1時間とすること。

オ 供試物に水を吹きつける場合は、最も厳しい方向から行うものとし、供試物は、水たまりの中につからないよう支持すること。

 b 自由落下試験

ア 供試物は、最大の破損を受けるように落下試験台上に落下させること。

イ 供試物の最下部から試験台の上面までの落下高さは、第6表に示した高さを下回らないこと。

第6表 自由落下試験の高さ

ウ 核分裂性第2種輸送物については、長方体の場合には、あらかじめ、それぞれのかどについて、円筒形輸送物の場合には各端面の周縁の各四半分について0.3mの高さから自由落下試験を行うこと。

エ 50㎏以下の繊維板製又は木製の長方形輸送物については、別の供試物により、それぞれのかどについて0.3mの高さから自由落下試験を行うこと。

オ 100㎏以下の繊維板製の円筒形の輸送物については、別の供試物により各端面の周縁の各四半分について、0.3mの高さから自由落下試験を行うこと。

 c 圧縮試験

ア 次のいずれか大きい方の荷重をかけて24時間行うこと。

(ⅰ)供試物の自重の5倍に相当する荷重

(ⅱ)供試物の鉛直投影面積に0.13㎏/cm2を乗じた数に相当する荷重

イ この荷重は、供試物の底面及びその対面に均一にかけること。

 d 貫通試験

ア 供試物は、試験中動きにくく、かつ、固くてなめらかな水平面上に置くこと。

イ 重量6㎏の直径3.2cmの棒をその半球形の先端を下にして、長軸を垂直にし、十分深く貫通した場合には、密封装置に当たるように供試物の最も弱い部分に落下させること。

ウ 試験に用いる棒は、試験によって、著しく変形するものでないこと。

エ 供試物の上面から棒の最下端までの落下高さは1m以上あること。

 e 液体状及び気体状の放射性物質等を収納した輸送物に関する追加試験
 液体状及び気体状の放射性物質等を収納した輸送物は、次の追加試験を行うこと。ただし、供試物にとって、次に定める追加試験のうち、どちらが厳しいものであるかということが証明できる場合は、その厳しい方の試験を行えばよい。

ア 自由落下試験
 供試物は、その密封装置が最大の破損を受けるように落下試験台上に落下させること。供試物の下端から落下試験台表面までの落下高さは9m以上とすること。

イ 貫通試験
 本章第2節に定める貫通試験を行うこと。ただし、落下高さは、1.7m以上とすること。

608 通常時試験を行う場合は、最初に水の吹きつけ試験を行わなければならない。

609 自由落下試験、圧縮試験及び貫通試験は、供試物が最大限にぬれた状態にある時に開始し、供試物の表面が全然乾かないうちに終了しなければならない。

第3節 事故時試験

610 事故時試験は、次のとおりとする。

 a 強度試験

ア 落下試験 Ⅰ
 供試物は、それが最大破損を受けるよう落下試験台上に落下させること。供試物の最下部から落下試験台上面までの落下高さは9m以上であること。

イ 落下試験 Ⅱ

(ⅰ)供試物は、それが最大破損を受けるよう落下試験台上に落下させること。
 供試物の最下部から落下試験台上面までの落下高さは、1m以上とすること。

(ⅱ)落下試験台の上面は、なめらかな水平面であり、直径15cm±0.5cmの軟鋼丸棒(ふちのまるみは、半径6mm以下であること。)の上端面であること。

(ⅲ)落下試験台上に垂直に固定されていること。

(ⅳ)その長さは、20cm以上のもので供試物に最大の破損をひき起こすに十分な長さのものであること。

ウ ア及びイの落下試験は、耐火試験で供試物が最大の破損を受けるような順序で行うこと。

 b 耐火試験
 耐火試験は、次のすべての条件を満足するものであること。

ア 供試物に入射する熱流束は、少なくとも0.9の熱放射係数をもつ800℃の熱放射環境に供試物全体を30分間さらしたときに受けると同等以上であること。ただし、供試物の表面の熱吸収係数は、輸送物が火にさらされた場合に生ずる数値と0.8とのいずれか大きい方をとること。

イ 対流熱については、それが重要である場合には30分間800℃の静止した周囲の空気を基礎として、対流熱を考慮すること。

ウ 供試物に対する外部からの加熱を停止した後、次のようにすること。

(ⅰ)供試物は、加熱停止後さらに3時間が経過し、又は内部温度のすべてが下がり始めたことが実証されるまで、人工的に冷却を行わないこと。

(ⅱ)供試物を形成する材料が燃えている間は、いかなる燃焼であっても、加熱停止後3時間は、そのまま燃焼させること。ただし、3時間経過するまでに、自然に消火する場合は、この限りでない。

 c 浸漬試験

 供試物を15m以上の水頭下に8時間以卜浸漬すること。これは、1.5kg/cm2(G)の水圧によって代えることができる。

611 事故時試験は、同一の供試物を用いて、強度試験、耐火試験及び浸漬試験をこの順序で行わなければならない。ただし、浸漬試験は、別の供試物を用いて行うことができる。

第4節 核分裂性輸送物に関する追加試験

612 核分裂性輸送物は、本節に定める試験を行わなければならない。ただし、核分裂性第3種輸送物及び第5章第2節503ただし書及び第3節505ただし書において評価のために最大反応度に達するまでのもれ試験が仮定されている輸送物は、この試験を免除する。

613 供試物を0.9m以上の水頭下に8時間以上浸漬すること。この場合、放射性物質等のもれが最大になると考えられる方法によること。

614 本節に定める試験を行う前に、同一の供試物を用いて、前節に定める強度試験及び耐火試験を行わなければならない。

第5節 輸送物を輸送する場合に行うべき検査等

615 輸送物は、初めて輸送しようとするときは、次の検査を行わなければならない。

 a 輸送物の設計条件を満足するものであること。

 b B(U)型輸送物及びB(M)型輸送物については、そのしゃへい及び密封装置の効果並びに熱伝導特性が、認可された設計上の制限値内にあることを確認すること。

 c 密封装置が0.35kg/cm2(G)をこえる最高使用圧力に耐えるよう設計されている輸送物の場合は、その圧力下において認可された設計どおり、密封装置が健全性を維持できることを確認すること。

 d 核的安全のための条件に適合させるため、輸送容器の構成要素として中性子毒物が最初から含まれている場合は、その毒物の存在及び分布を確認するための試験を行うこと。

616 輸送物は、毎回発送する前に、次の検査を行わなければならない。

 a 輸送物の設計条件を満足していること。

 b 輸送物の積載方法、輸送方法等が、第4章に定める輸送に関する条件を満足していること。

 c 所管官庁の認可が必要な場合には、認可を受けていること。

 d 輸送に関し記録すべき事項が記録されていること。

 e B(U)型輸送物及びB(M)型輸送物については、温度及び圧力に関する条件に適合するまで十分平衡状態に達せしめること。ただし、所管官庁がその必要がないと認めたときは、この限りでない。

 f 放射性収納物がもれ出すおそれのある密封容器のふた、バルブ及び開口部は、完全に密封すること。

 g 吊上げ装置の安全性を確認すること。

第7章 特別形放射性物質等に関する試験

第1節 試験方法等

701 供試物は、輸送に供されるものでなければならない。また、放射性物質等は、できるだけ模擬しなければならない。

702 試験を行う場合は、試験ごとに、異った供試物を使用することができる。

703 特別形放射性物質等は、次の各条件に適合するものでなければならない。

 a 第2節に規定する衝撃試験、打撃試験及び曲げ試験を行った場合、こわれないこと。

 b 第2節に規定する加熱試験を行っても、融けたり分散したりしないこと。

 c 第2節に規定する浸漬試験を行った場合、水中へもれ出る放射性物質の量が0.05μCi以下であること。

第2節 試験

704 特別形放射性物質等の試験は、次のとおりとする。

 a 衝撃試験
 供試物を、9mの高さから落下試験台に落下させること。この場合、落下試験台は、第6章第1節に定めるものを用いること。

 b 打撃試験

ア 供試物を、表面がなめらかで、かつ、固い鉛板上に置き、鋼製ビレットの平端面で打つこと。この場合、1mの高さから1.4kgの物質を自由落下させた場合と同等の衝撃を加えること。

イ ビレットの平端面の直径は、25mmで、そのかどは、半径3±0.3mmであること。

ウ 鉛板は、ビッカース硬度3.5~4.5、厚さ25mm以上のものであって、供試物が占める面積以上の面積をもつこと。

エ 鉛板は、ビレットの打撃ごとに傷のない表面を使うこと。また、ビレットによる供試物への打撃は、最大破損をひきおこすようにすること。

 c 曲げ試験

ア 本試験は、長さ10cm以上、長さ対幅の比率が10以上の輸送物についてのみ適用する。

イ 供試物は、水平にクランプの面からその2分の1が出るように強く固定すること。

ウ 供試物は、その自由端が鋼製ビレッの平面によって打撃された場合最大破損が生じるようにすること。この場合、高さ1mのところがら1.4kgの物質を自由落下させた場合と同等の衝撃が加わるようビレットを打ちつけること。

エ ビレットの平端面の直径は、25mmで、そのかどは、半径3±03mmであること。

 d 加熱試験
 供試物を800℃の温度中に10分間保持し、それから冷却すること。

 e 浸漬試験

ア 非散逸性固体状放射性物質等の場合

(ⅰ)供試物を周囲温度と同じ温度の水中に7日間浸漬すること。この場合、20℃における水のPHは6~8で、最大電気伝導度は10μmho/cmであること。

(ⅱ)次に供試物とともに、その水を50±5℃の温度まで加熱し、4時間この温度を保持すること。

(ⅲ)次に、水中の放射能濃度を測定すること。

(ⅳ)次に、温度30℃、湿度90%以上の静止した空気中に少くとも7日間貯蔵すること。

(ⅴ)さらに、供試物を(ⅰ)と同じ条件の水中に浸漬し、50±5℃まで加熱し、この温度を4時間保持すること。

(ⅵ)次に、水中の放射能濃度を測定すること。

イ カプセルに収納された放射性物質等の場合

(ⅰ)供試物を、周囲温度と同じ温度の水中に浸漬すること。この水は、PH6~8で、最大伝導度は10μmho/cmであること。

(ⅱ)次に、水及び供試物を50±5℃まで加熱し、この温度を4時間保持すること。

(ⅲ)次に、水中の放射能濃度を測定すること。

(ⅳ)次に、供試物を30℃以上の静止した空気中に少なくとも7日間放置すること。

(ⅴ)さらに、供試物を(ⅰ)に定める水中に浸漬すること。

(ⅵ)水中の放射能濃度を測定すること。

第8章 行政上の措置等

第1節 輸送物等に関する認可

801 10-3A1をこえる放射能をもつ特別形放射性物質等は、その設計について所管官庁の認可を受けなければならない。

802 B(U)型輸送物及びB(M)型輸送物はその設計について所管官庁の認可を受けなければならない。

803 核分裂性第2種輸送物及び核分裂性第3種輸送物はその設計について所管官庁の認可を受けなければならない。

第2節 輸送に関する認可

804 次に掲げる輸送物は、その輸送に関し所管官庁の認可を受けなければならない。

 a 連続換気を行うB(M)型輸送物

 b A1×3×103をこえる放射能をもつ特別形放射性物質等を収納した輸送物

 c A2×3×103をこえる放射能をもつ特別形放射性物質等以外の放射性物質等を収納した輸送物

 d 3×104Ciをこえる放射性物質等を収納したB(M)型輸送物

 e 核分裂性第3種輸送物

 f 特別な措置を講じた輸送物

第3節 輸送記録等

805 荷送人は、放射性物質等を輸送しようとするときは次に掲げる事項について記録し、その記録を保存しておかなければならない。

 a 輸送しようとする放射性物質等の種類及び量

 b 輸送容器の型

 c 輸送物の種類

 d 輸送指数(輸送物の個数)

 e 輸送方法

 f 輸送経路

 g 輸送の日時

 h 運送人の氏名及び住所

 i 輸送の安全確保のためにとるべき措置

 j 輸送責任者の氏名

 k 輸送人に対し指示した事項

 l 輸送に際し講ずべき特別な措置

806 荷送人は、運送人に対し、輸送物を定全に輸送するため、次のような事項について必要な指示をしなければならない。

 a 輸送物の種類、内容その他の輸送物に関する事項

 b 輸送物の取扱い方法

 c 輸送の方法その他輸送中留意すべき事項

 d 事故時にとるべき措置

別表1 A1及びA2




別表2 ウラン及び天然トリウムにおける放射能と質量の関係

参考I A1及びA2の決定方法

1 単一核種の場合

a 核種の明らかな1種類の放射性核種だけを含む放射性物質の場合は、別表1に定める値をもってA1又はA2とする。

b 核種の明らかな2種類の放射性核種だけを含む放射性物質であって、別表1に該当する核種がない場合は、次の方法を用いて得られる値をもってA1又はA2とする。

ア A1の決定方法
 1種類の放射線だけを放出する核種の場合は、次の(ⅰ)から(ⅳ)までの方法を用いて、A1を決定する。また、数種類の放射線を放出する核種の場合は、それぞれの放射線について、(ⅰ)から(ⅳ)までの方法を適用し、得られた値のうち最少のものをもって、A1とする。ただし、いずれの場合においても、A1は、1,000Cⅰをこえてはならない。
 さらに、娘核種が半減期10日以内の短半減期放射性核種である場合は、’親核種と娘核種の両方について、(ⅰ)から(ⅳ)までの方法を適用し、得られた値のうち小さいものを親核種のA1とする。

(ⅰ)ガンマ線を放出する核種にあっては、

 Fは、ガンマ線の放射定数、すなわち1Cⅰの線源から1mの点における放射線量率をレントゲン毎時で表わしたガンマ線の放射定数であり、定数9は、A1Ciの線源から3mの点での線量率が1レム毎時になるようにA1を定めるための係数である。

(ⅱ)x線を放出する核種にあっては、原子番号(Z)に応じて、A1を次のとおり定める。

Z≦55の核種ではA1=1,000Cⅰ
Z>55の核種ではA1=200Cⅰ

(ⅲ)ベータ線を放出する核種にあっては、ベータ線の最大エネルギー(Emax)に応じて表1に定める値をもってA1とする。

(ⅳ)アルファ線を放出する核種にあっては、

A1=1,000A3Ci
A3は、表2で定められる数値である。

表1 ベータ線を放出する核種におけるA1とEmaxとの関係

表2 放射性核種における原子番号とA3との関係

イ A2の決定方法
 その核種のA1の値と、表2で定められるA3の値とをくらべて、小さい方をA2とする。

ウ 核種の不明な1種類だけの放射性核種を含む放射性物質の場合はA1を2Cⅰ、A2を0.002Ciとする。ただし、その原子番号が82以下であることがわかっている場合にはA1を10Ci、A2を0.4Ciとする。

2 複合核種及び崩壊連鎖のある場合

a 核分裂生成物が混在する放射性物質であって、核種について精密分析が行われない場合は、その最大放射能を次のとおり定める。

A1=10Ci
A2=0.4Ci

b 崩壊連鎖を作る1種類の核種であって、その放射性核種の存在比率が天然のものと等しく、すべての娘核種の半減期が10日以内であり、かつ、親核種の半減期より短い場合は、単一核種であるとみなす。この場合、放射能値としては崩壊連鎖の親核種の放射能値を取り、A1及びA2は、同じく親核種に対応する値を取るものとする。娘核種のうち、半減期が10日をこえ、又は、親核種の半減期より長い半減期をもつものがある場合は、親核種とその長半減期の娘核種との混合とみなす。

c 異なる核種の混合であって、すべての核種の種類及び個々の放射能値がわかっている場合は、ⅰ番目の核種の許容放射能を次のとおり定める。

ここで、A1(ⅰ)及びA2(ⅰ)は、それぞれⅰ番目の核種が単独で存在する場合のA1及びA2の値であり、R1(ⅰ)及びR2(ⅰ)は、それぞれⅰ番目の核種の混合系における特別形放射性物質等及び特別形放射性物質等以外の最大放射能である。

d すべての核種の種類はわかっているが、いくつかの核種の個々の放射能値がわからない場合は、前項の公式を用いて、個々の放射能値はわからないが、その全放射能がわかっている核種群を一つの集団とみなし、それぞれの単一核種に対応するA1及びA2値のうち最小のものを前項の公式の分母の値に、その全放射能値を分子の値に代入してA1及びA2を定める。

e すべての核種の種類はわかっているが、それぞれの核種の放射能値がどれもわからない場合は、それぞれの単一核種に対応するA1及びA2値のうち最小のものを複合核種のA1及びA2とする。

f どの核種もその種類がわからない場合は、A1を2Ci、A2を0.002Ciとする。ただし、アルファ線を放出する核種が含まれないことがわかっている場合は、A2を0.4Cⅰとする。

参考Ⅱ 特別の措置を講じた輸送物の具体例

 特別の措置を講じた輸送物について具体的な例をあげて限定することは困難であるが、たとえば、次のようなものが考えられる。

1 使用済燃料

(1)大部分の使用済燃料は、現在、B型の基準に適合した輸送容器に収納して輸送しているが、近い将来一部のものについては、輸送容器の基準には適合するものの容器表面の放射線量率200ミリレム毎時以下、容器から1mの点における放射線量率10ミリレム毎時以下という制限を遵守することが困難な場合が生じることが予想される。

(2)このような輸送物については一般公道を輸送する場合には、車両側面から1mの点における放射線量率は10ミリレム毎時以下におさえるとともに、輸送物を完全に固定し、輸送に従事する者の被ばく管理を行い、一般人の接近を防止する等の措置を講じ、安全を確保することとする。

(3)また、船舶輸送の場合には、専用船を使用し、取扱者を限定し、管理区域を設定する等の措置を講じ、安全を確保することとする。

2 非破壊検査装置

(1)現在使用されているコバルト-60、イリジウム-192を収納した非破壊検査装置は約300台であるが、これに本基準を適用した場合、9mの落下試験に合格しないおそれがある。

(2)これらについては、衝撃吸収材、木枠、木箱、鉄枠等により容器を強化する対策を講じ、安全の確保を図ることとする。

3 医療、理工農用の大量線源照射装置等

(1)現在使用されているコバルト-60、セシウム-137等の大量照射線装置は約600台であるが、これに本基準を適用した場合、800℃30分の耐火試験等に合格しないおそれがある。

(2)これらについては、2-(2)と同様な対策のほか、消火器等を携行する等の措置を講じ、安全を確保することとする。

放射性物質安全輸送専門部会構成員

(アイウエオ順)
*青木 成文
奥泉 省吾
加賀山 正
後藤 壮介
五味  弘
佐々木秋生
関  義辰
田島 義弘
筒井 天尊
中島健太郎
浜田 達二
矢嶋 三策
吉沢 康雄
渡辺 博信
(*:部会長)
東京工業大学
(株)日本航空
(株)日本原子力発電
(株)東北電力
(株)日本通運
(株)日本アイソトープ協会
(株)三菱原子燃料
(株)日立造船
京都大学
動力炉・核燃料開発事業団
理化学研究所
(株)大阪商船三井船舶
東京大学
放射線医学総合研究所

 

 

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